【ONE90】あと1週間、フォラヤンとの再戦へ。青木真也─01─「俺の状態が悪かったんだろうなって」
【写真】「あまり好きではない。でも求められるのであれば最善の努力はします」ということで青木は2年4カ月前のフォラヤン戦前後を語ってくれた (C)MMAPLANET
いよいよ31日(日)に開催が迫ってきたONE Championshipにとって初の日本大会。東京都墨田区の両国国技館で開催されるONE90「A NEW ERA」のメインでエドゥアルド・フォラヤンの持つONE世界ライト級王座に挑戦する青木真也をAbema TVが制作するドキュメンタリー番組= ONE DAY が追った。
今回は日本MMA界の将来を左右する大会のメイン出場の青木の日常を3回分の配信で追うONE DAY。そのなかでMMAPLANETではめっきり自らの試合について語ることが少なくなった青木に、背景や情景、格闘技界云々でなく、試合自体についての言葉が欲しくインタビューを行った。
──2年半前のフォラヤン戦、改めて敗戦は何だったと考えていますか。
「敗因は僕のコンディションが悪かったことです。それは調子が悪いとかいうのではなく、僕の負けるリズムというか……負けるバイオリズムだった」
──あの試合が現時点で、Evolve MMAで試合前の調整を行った最後の一戦となります。
「そうですね。あの時のイヴォルブはヘッドコーチもいなくて、孤独に苛まれた時期でしたね」
──そのような心境で試合に集中できなかった?
「あの時はブルーノ(プッチ)しかいなくて。だから未だに一緒にやってくれたことをブルーノには感謝しています」
──青木選手としてはどのような状況を望んでシンガポールに入っていたのですか。
「ブラジル人をみんな、集めてくれるということだったけど、チャトリもそれどころではなくて環境が整っていなかった。でもレアンドロ・イッサがいたかな……。来たり来なかったりでしたけど」
──試合の準備ができていないという意識を持っていた?
「なかったといえば嘘になります。でも、あの時のベストは尽くしましたよ」
──その環境でのベストではあっても、青木真也のベストではなかったわけですよね。
「それもあるし……あの当時って、他に日本ジもいないし……1人でやっていたので本当の意味で孤独でした。全く何もなかった。だから孤独にやられたんだと思います。孤独に負けたんだけど、ずっと勝ち続けていたから孤独を作る作業も実は大切だったと思っていて。
結局、勝つって慢心することなんですよ。勝ち続けるって慢心することだから。要は皆がチヤホヤするので慢心していく。そのチヤホヤすることから離れれば、孤独に追い込める。勝つって孤独になること。慢心することを避けるために孤独になり続ける。その孤独の限界だったんだと思います。
本当にもっと強ければ、その孤独すら感じることなく強かったんでしょうけど。割と人間っぽかったのかも」
──ベン・アスクレンのような神経の持ち主ではなかった?
「アスリートだから強いんじゃないですか、彼らは。僕のように物語を考えようとすると……孤独に追い詰めるということがあるので」
──それでも青木選手が、どのような状況でもエドゥアルド・フォラヤンに負けることはないと思っていました。
「そうでしょうね。俺自身も……えぇと、辛く苦しい人生の始まりでしたよ、アレが(苦笑)」
──テイクダウンからポジションを取っても逃げられるという展開が続きました。
「それは自分のなかでは、今でも何でああなったかは分からないです。なんであんなにコントロールできなかったのか。俺の責任なんだろうな、俺の状態が悪かったんだろうなって思っていますけどね」
──逃げられる度に青木選手が焦っていくように見えました。
「う~ん、何かあったんでしょうね」
──2Rに入るとテイクダウンを切られる度に打撃をもらうようになった。そこでヤバイかもと思い始めました。青木選手としては逃げられるけど、続けていれば勝てるという気持ちでいましたか。
「そういうことを思うテンションがなかったです。もう辛いなって……やる前から。計量方法が新しく変わった時期でもあったし。人間関係もそうだし、孤独に追いやられていた。う~ん、辛かったですよね」
──凡庸な表現をするとカマル・シャロルスを一方的に下した青木選手が、フォラヤンを相手にああなるとは思えなかったです。
「そこでいうと……穴が開いた時期だったんだと思います」
──あの敗北で、自分を変えた部分はありますか。
「僕、ケンドー・カシンに憧れて格闘技を始めて、そして桜庭和志に憧れた。ケンドー・カシンと桜庭和志は2人とも大きな存在で。ケンドー・カシンと触って、桜庭にも触って。その時に俺、一つ達成したんじゃないかと思ったんですよ。これ以上興奮することないじゃん。これ以上、大きいことはないじゃんって思ったんです。
お金でもないし。なんか、ぽっかりして定まっていなかったんでしょうね。そういうのがあるくらいだから、あの時に負けて落ちて……。なんで格闘技やっているんだろうって考えるようになっていた。だからあの負けは良かったと思っています」
──試合に負けた……枝葉でいえば葉の部分、バックを取っていても尻をずらされて逃げられただとか、立ち上がられただとかという部分は気にしましたか。
「全くなかったです。試合云々でなく、どうやって生きていこうかということを本当によく考えました」
──孤独でなく、バイオリズムが悪くなければ取れていたと考えることは?
「それは分からないです。試合は相手があることなので。負ける時が来るとは思っていました。だから本当に特別な感情はないんです。アレがあったから、どう生きていこうかと考えた試合であって」
──あの勝利でフォラヤンとラカイ勢は自信をつけたでしょうね。やってきたことは間違っていなかったと。あの試合がステップボードになり、ラカイは強くなっていったと思います。
「そうっスね。それはありますね。フォラヤンはヌグエンに負けて、エブ・ティンに互角の試合をしていた。強くはなっているとは思うけど、今のONEのライト級は正直どんぐりの背比べ」
──自身を含めて、ですか。
「僕も含めて、どんぐりの背比べ。みんな強くなって、抜きんでているヤツはいない。アルバレスだってGPで勝てるか分からない。ダギ(ザイード・フセリン・アルサナリエフ)がいるし、ローウェン・タイナネスだっている。割と実力のあるヤツが揃っている」
──青木選手は追いつかれたということになります。
「そうっスね。そういう見方、デキると思いますけど……それで言うと僕は何年走ってきたんだという話だし。追いつかれた意識はないけど、その場、その場で戦い続けている気はするので。人間がやっていることだから、誰もが8割ぐらいまではいくでしょう」
<この項、続く>
■ONE90対戦カード
<ONE世界ライト級(※77.1キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]エドゥアルド・フォラヤン(フィリピン)
[挑戦者]青木真也(日本)
<ONE世界女子ストロー級(※56・7キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]シィォン・ヂィンナン(中国)
[挑戦者]アンジェラ・リー(米国)
<ONE世界ミドル級(※93.0キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]オンラ・ンサン(米国)
[挑戦者]長谷川賢(日本)
<ONE世界バンタム級(※65.8キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]ケビン・ベリンゴン(フィリピン)
[挑戦者]ビビアーノ・フェルナンデス(ブラジル)
<ONEフライ級(※61.2キロ)ワールドGP準々決勝/5分3R>
デメトリウス・ジョンソン(米国)
若松佑弥(日本)
<ONEライト級(※77.1キロ)ワールドGP準々決勝/5分3R>
エディ・アルバレス(米国)
ティモフィ・ナシューヒン(ロシア)
<キック72キロ契約/3分3R>
ヨーセングライ・IWE・フェアテックス(タイ)
アンディ・サワー(オランダ)
<ONEフライ級(※61.2キロ)ワールドGP準々決勝/5分3R>
ダニー・キンガド(フィリピン)
仙三(日本)
<ONEフライ級(※61.2キロ)ワールドGP 準々決勝/5分3R>
和田竜光(日本)
イヴァニウド・デルフィーノ(ブラジル)
<ONEフライ級(※61.2キロ)ワールドGP準々決勝/5分3R>
カイラット・アクメトフ(カザフスタン)
リース・マクラーレン(豪州)
<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
V.V Mei(日本)
クセニア・ラチコワ(ロシア)
<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
ゲイリー・トノン(米国)
アンソニー・アンゲレン(オランダ)
<ムエタイ・フライ級/3分3R>
ロッタン・ジットムアンノン(タイ)
ハキーム・ハメック(フランス)
<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
パニコス・ユーサフ(キプロス)
モハマド・ビン・マフムード(マレーシア)
<キック・フライ級/3分3R>
秋元皓貴(日本)
ヨゼフ・ラシリ(イタリア)
<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
ユン・チャンミン(韓国)
バラ・シェッティー(インド)