【PJJC2019】日本勢激減のパン柔術。マイキー・ムスメシ降臨のルースター級に芝本幸司&澤田伸大が出場
【写真】マイキーがポイントを確認するときに、このように眼の細めるのも柔術会場でお馴染みの光景だ (C)SATOSHI NARITA
21日(木・現地時間)から24日(日・同)にかけて、カリフォルニア州アーヴァインのブレン・イベントセンターにてIBJJF主催のブラジリアン柔術パン選手権が行われる。世界選手権への前哨戦とも言えるこの大会のプレビュー第1回は、芝本幸司と澤田伸大のトライフォースコンビが出場する最軽量ルースター級の見所を紹介したい。
絶対王者ブルーノ・マルファシーニが昨年の世界大会優勝とともに引退を決めた最軽量級。加えて昨年世界2位のホドネイ・バルボーザ、3位の橋本知之──今年1月のヨーロピアンにて決勝を争った2人──も欠場とあって、他の選手にも大きくチャンスが広がったかに見えた今大会だが、ここにマルファシーニに匹敵する絶対的な優勝候補がエントリーした。昨年、一昨年と一つ上のライトフェザー級で世界大会2連覇中のマイキー・ムスメシ(ブラザCTA)だ。
昨年の世界大会においては、準決勝でチアゴ・バホスを下から一方的に攻め続け、決勝ではアリ・ファリアスからバックを奪って完勝したムスメシ。強豪たちの実力が拮抗し、試合がモダン柔術を駆使した椅子取りゲームのごとき出し抜き合い──試合終了時点で上になっていた者が勝ち──になりがちの軽量級において、頭一つ抜けた地力を見せつけての米国人初の世界二連覇達成は、まさに圧巻だった。
本人は「自分の体重はルースターとライトフェザーの中間くらい」と語っており、実際に2016年の世界大会黒帯デビュー時はルースター級での出場だっただけに、減量が大きく響く可能性も低い。もし昨年同様の充実ぶりで試合に望むなら、まさに難攻不落、不動の優勝候補筆頭と言えるだろう。
しかし今回の最軽量級には、その強力な対抗となりうる選手も階級を下げてエントリーしている。一昨年のパン大会のライトフェザー級にて、(その2ヶ月後に世界王座に輝く)ムスメシからポイント勝利を収めて世界を驚かせたクレベル・ソウザ(アトス)だ。ソウザは今年1月のヨーロピアンのライトフェザー級初戦コブリーニャの息子ケネティ・マシエルと注目の新世代対決を戦う。そして、いきなりの飛びつき三角を皮切りに強烈な攻撃を繰り出し続けは、最後はマシエルのオモプラッタをスタックして潰し、背後から絞めを極めて完勝している。
その欧州では準決勝で充実のジョアオ・ミヤオに敗れたものの、実力を改めて見せつけている。今回、ルースター級においてムスメシとの再戦が実現するとすれば準決勝、5月の世界大会の行方を占う重要な一戦となる。
さらにもう一つのブロックには、昨年のヨーロピアン王者にして、世界大会3位のイアゴ・ガマ(アリアンシ)の名前がある。軽量級らしい巧みなオープンガードと密着度の高いトップからのバランスキープを用いて、両大会において芝本幸司(トライフォース)との僅差のポイントゲームを制しているガマは、決勝進出の有力候補だ。
そのガマのブロックには、昨年の準優勝者である芝本の名前がある。国際大会では毎回優勝候補に挙げられる実力を持ちながらも、昨年のヨーロピアンと世界大会はガマに、パン大会決勝では橋本知之にことごとく僅差で敗れた芝本。全日本とアジア大会は順当勝ちしたものの、1月のヨーロピアンでは新鋭のカルロス・アルベルト相手に序盤にニアパスを奪われると、流れを挽回できずにまさかの初戦敗退を喫している。
現在38歳の芝本だが、長年世界のトップと渡り合ってきた技術と、勝負所にて相手を組み伏せる瞬発力をうまく活かせば、どんな強豪からも勝利を得る可能性を秘めている。今回デイヴィッド・ヘレイラ(ソウルファイターズ)との初戦を突破すると、準決勝でガマとの雪辱戦に望むことが濃厚だ。ここで3度目の正直となる打倒ガマを果たし、2年連続の決勝進出を大いに期待したい。
さらに同級には、芝本の後輩である澤田伸大も出場する。昨年の世界大会初戦では独自の入り方の腕十字=澤田バーで見事な一本勝ちを収めた澤田は、昨年末にノーギワールドで日本人柔術家初となる黒帯(=ルースター級)を制している。
2019年に入ってもヨーロピアン大会を皮切りに各国のプロ正体大会に出場。階級上の相手に苦戦が続きではあるが貴重な経験を積み上げている。自分本来の階級で戦える今大会、一回戦でサドジ・バドハラム(ヘナート・トラヴェス)戦を突破すれば、澤田は次戦ではムスメシとの一戦を迎える。必殺の澤田バーで世界を驚かす場面を見たいところだ。