【IFL】復帰戦に挑む“ワンダーボーイ”ホロデッキー
いよいよ21日(金・現地時間)に行われるShoXCから、北米MMAワールド黄金2ウィークスがスタート。UFC、EXC、IFLなど北米のメジャープロモーションが一気にイベントを行う2週間が幕を開ける。
【写真】4月4日IFL,ニュージャージー大会でも3大タイトルマッチが行われる (C) IFL
4月4日(金・同)のニュージャージー州イーストラザフォードのイゾット・センター(旧コンチネンタル・アリーナ)で行われるインターナショナル・ファイト・リーグ(IFL)「New Blood New Battle」大会。IFL独自の団体戦はヘンゾ・グレイシー柔術アカデミー×シカゴ・ベースの新チーム=ミッドウェスト・コンバット、アメリカン・トップチーム×ミレティッチ・ファイティング・システムズの2つのジム対抗戦が行われる。
この対抗戦には前回大会同様、王者ウラジミール・マティシェンコ(ミッドウェスト・コンバット)に、ジャマール・パターソン(ヘンゾ・グレイシー柔術)が挑むIFL世界ライトヘビー級選手権試合が含まれている。
対抗戦以外のタイトル戦はIFL世界フェザー級選手権試合ヴァグネイ・ファビアーノ(王者/ヘンゾ・グレイシー柔術)×シャド・ライルレー、IFL世界ウェルター級選手権試合ジェイ・ヒエロン(王者/チーム・トンプキンス)×マーク・ミラー(ミッドウェスト・コンバット)の2試合。さらにスーパーファイトとして、IFLのワンダーボーイ=クリス・ホロデッキーが昨年末の敗北から復帰戦として、ネイト・レモッティと戦うことが決定している。
18歳の誕生日から1週間後にMMAデビューを果たしたホロデッキー。5戦目からIFLに出場するようになり、破竹の10連勝を果たしたワンダーボーイだったが、昨年末のIFL世界ライト級王座決定戦で、ライアン・シュルツにTKO負けを喫した。卓越した打撃センスを誇る新世代のMMAファイターに、MMA PLANETがインビューを行った。
「寝技が必要だったら寝技で戦うよ」
Interview by Manabu Takashima
――クリス、まず格闘技経験を教えていただけますか。
「6歳の時に空手を始めたのが、マーシャルアーツとの出会いだよ。小林流空手という流派だった。その後、ショーン・トンプキンスに出会い、13歳でムエタイを習うようになった。ハイスルクールに入ってからはレスリングも同時にやるようになり、柔術もやっているよ」
――空手をやろうと思ったきっかけは。
「なんだろう?プロレスが好きだったし、MMAの大ファンになったように感性としてマーシャルアーツが合っていたんだと思う。ムエタイを始めた時には、凄くナーバスだったんだ。だって、空手には顔面パンチはなかったからね。最初のスパーリングで鼻を殴られて、もうビビッちゃって。でも、『あぁ、これが本当の戦いだ』って感じて、のめり込んでしまったよ」
――キックやムエタイの戦績を教えてもらえますか。
「キック、ムエタイ、K-1、立ち技の試合は大体30試合ぐらいやったかな。9割は勝っている。負けたのはアマチュアの試合でほんの少しだけさ。エルボー? ヒジ打ちはなかった。アマチュアの試合が多かったし、プロになってからも多くはK-1ルールだったから」
――打撃オンリーからMMAへ転向したのは、なぜ?
「転向したわけじゃないよ。さっきも言ったように僕はMMAのファンだったから、いつもグラップリングの練習ができる機会を窺っていたし。14歳のときにはアマチュアのパンクレーションの大会に出たんだ。
パンチはなかったけど、MMAへの入り口だったよ。オープンハンドで顔を殴っていいし、関節も投げもあるルールの試合だったから。当時は関節技の練習なんて見よう見まねだったけど、グラップリングの練習もしていたしね。で、高校生になってから毎週末のようにレスリングの大会に出ていたよ」
――クリスは素晴らしい打撃の持ち主なので、グラップリングとなかなかイメージが結びつかないです。
「柔術だって、シカゴのジェフ・カーランのところでやっていたしね。ショーンとジェフは、2003年のハワイのスーパーブロウルっていう大会で会って、意気投合し僕らの交流が始まったんだ。それに僕の祖父母が、当時シカゴに住んでいたから、僕は祖父母の家に滞在して柔術を習っていた」
――実は日本のファンは、クリスが主戦場にしているIFLのことは、あまり知りません。昨年までは都市名がついたチーム戦、今年はジム対抗戦。それでも、カナダ人のクリスがLAアナコンダスに所属し、今年もエクストリーム・クートゥアー所属と名乗っていたのが一転、チーム・トンプキンスとなりました。凄く複雑に感じてしまいます。
「もともとIFLはバス・ルッテン、パット・ミレティッチ、モーリス・スミス、そしてヘンゾ・グレイシーの4チームからスタートしたんだ。僕はIFLにとって二度目のショーにバス・ルッテンのチームからライト級の所属選手として出場した。
ショーンは、バス・ルッテンのトップスチューデントだったから、バスに預けられるような形で、LAアナコンダスの所属になり、2007年シーズンを戦うこととなった。その後、バスはIFLの副社長の座につくことになったので、チームから離れることになり、アナコンダスはアシスタント・コーチのショーンに委ねられることとなった」
――クリスは、生活のべースをどこに置いているんですか?
「住んでいるのはオンタリオの自宅だけど、LAやラスベガス、練習しながら色んなところで生活をしている。今年からショーンはエクストリーム・クートゥアーのメインコーチになったんで、チーム・トンプキンスとエクストリーム・クートゥアーは一つのチームになった。だからIFLにはラスベガスに本拠地を置く、チーム・トンプキンス所属選手として出場するんだ」
――これまで主にスタンドの打撃を中心に戦ってきたのですが、これでテイクダウンやグラウンドの磨きがかかるということですね。
「僕はエキサイティングな試合をしたい。だから、ファンが望めば立ち技で戦う。だけど、グランドだって過不足ない技術を備えているつもりだし、寝技を軽視したことはない。ファンのニーズに応えたいだけなんだ。それに僕のベースは打撃だから、スタンドで戦うことは得意だしね。僕の長所はスタンドにあることも間違いない。でも、寝技が必要だったら寝技で戦うよ」
――昨年末のIFL世界ライト級選手権で、ライアン・シュルツ選手のパウンドで敗れています。
「結果はいろんな要素が重なってのことだから、あの敗北で僕が寝技はできないということには結び付けてほしくない。あの晩は、ライアンの動きが良かったんだ。それにしても、自分が負けたシーンをスクリーンで見るのは気持ちのいいもんじゃないね。敗北を受け入れることは簡単じゃなかった。でも、事実を認めた時、僕はより勝利を欲するようになった。もっと強くなってリングに戻るだけだよ」
――シュルツ選手へのリベンジとタイトルの獲得が当面の目標ですか。
「急いではないよ。与えられた試合に勝っていくこと。それが大切だと思っている。楽しんで、キャリアを積みたいんだ」
――最近のMMAにおけるライト級の充実度は、凄いものがありますね。
「とんでもない状態だよ。トップはBJ・ペン、そして彼はパウンドフォーパウンドだ」
――そのBJ・ペン選手が王者に認定されているUFCが、このスポーツのトップ・オーガナイザーであることは疑いようがありません。IFLはクリスに素晴らしいチャンスを与え、未来への扉を開いてくれましたが、IFL以外で戦うことは念頭にありますか。
「このスポーツには、ビジネスとして契約というものが存在するからね。この契約云々という部分を除外して、一人のファイターとしての意見なら、当然強い選手となら誰とでも、どこのプロモーションであろうが戦いたいよ。そういう気持ちを持っていないなら戦う意味はないだろう?」
――日本のプロモーションのライト級にはどのような印象を持っていますか?
「日本人、いや日本人に限らずアジア系のファイターは、軽量級、ライト級に限らず、フェザー級もバンタム級でも存在感を持っている。北米では、WECがスポットライトを当てるようになったこれらの軽量級だけど、今も日本のプロモーションの影響力は高いと思う。僕もいつの日か日本で戦いと思っている。絶対にキャリアのなかで、一度は日本のファンの前で試合がしたいんだ」
――ところでクリスのチームメイトである、マーク・ホーミニック選手やサム・スタウト選手は、日本の立ち技格闘技プロモーション、シュートボクシングやK-1MAXにも出場しています。彼らはMMAファイターですが立ち技のみの試合を日本でしました。
「MAXは世界最高の立ち技の大会だね。凄く興味がある。当然僕も戦ってみたい。ただし、あれだけのトーナメントだからね、あの場に立つならば、MMAの練習を取りやめて、立ち技のトレーニングに集中する必要がある。MAXで戦うことは僕の夢でもあるよ」
クリス・ホロデッキー(Chris Horodecki)
1987年9 月24 日、カナダ・オンタリオ州ロンドン出身
MMA戦績11戦20勝1敗 IFL戦績6戦5勝1敗
■対戦カードは下記の通り
IFL世界ライトヘビー級選手権試合
【王者】ウラジミール・マティシェンコ(ミッドウェスト・コンバット)
×【挑戦者】ジャマール・パターソン(ヘンゾ・グレイシー柔術)
IFL世界フェザー級選手権試合
【王者】ヴァグネイ・ファビアーノ(ヘンゾ・グレイシー柔術)
×【挑戦者】シャド・ライルレー
IFL世界ウェルター級選手権試合
【王者】ジェイ・ヒエロン(チーム・トンプキンス)
×【挑戦者】マーク・ミラー(ミッドウェスト・コンバット)
<ミッドウェスト・コンバット×ヘンゾ・グレイシー柔術>
バート・パラゼウスキー×デイヴィダス・タウロゼヴィチュス
ブラッド・ブラックバーン×デウソン・ヘレノ
<アメリカン・トップチーム×ミレティッチ・ファイティング・システムズ>
ラファエル・ディアス×LC・デイビス
エミール・バサダ×ローリー・マーカム
カルメロ・マレロ×マイク・シエスノレヴィッチ
<スーパーファイト>
クリス・ホロデッキー×ネイト・レモッティ