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【ONE86】2年9カ月振りの復帰、ローウェン・タイナネス「僕が頑張ることでハワイのMMAが成長する」

Lowen Tynanes【写真】以前はもっとヤンチャ系の顔つきをしていたが、すっかりと落ち着いた表情の持ち主になっていたタイナネス (C)MMAPLANET

25日(金・現地時間)、フィリピンはマニラのMOAアリーナでONE86「Hero’s Ascent」が行われ、ローウェン・タイナネスが2年9カ月振りの実戦に挑む。

20歳の時に父マイルスと共に来日し、HEATでヨースキ・ストーを相手にMMAデビュー戦を行ったタイナネスは、キャリア2戦目にして既にONEのメインイベンターだった現ONE世界ライト級王者エドゥアルド・フォラヤンとURCCのリングで戦い、ヒジ打ちの連打でパウンドアウトした。その後ONE進んだタイナネスだが、2016年4月に安藤晃司を判定で破り、キャリア9連勝としたところで、その足跡はブツリと途絶えることになる。

明日が2年9カ月振りのファイト、この間にタイナネスの身に何が起こっていたのか。そして待望のカムバック後に彼が見据えるMMAファイター人生とは。


──2年9カ月振りの実戦復帰となります。この長い期間、試合に出ていなかったのはなぜですか。

「コージ・アンドウと戦ってから6月、7月、8月と物凄くトレーニングに集中していたんだ。体のことも考えずに、クレイジーなトレーニングを繰り返し、結果的に背中に問題を抱えるようになった。

この背中の負傷で一旦、MMAのトレーニングから離れることになり、フィジカルだけでなくメンタルにもダメージをうけ、長い間リカバリーに努めていたんだ」

──精神的にもケガが大きな負担になっていたのですね。

「もの凄く好きで取り組んでいたモノを手放すことになり、心が空っぽになってしまった。ケガ自体は17歳の時に1年を棒に振る重症を経験をしていて、その時の方が大きかった。でも、それから8年ほどして再び大きなケガをしたことで、数カ月間は本当に精神的に厳しかったよ」

──ケガがあるので、まずは精神的に自分を取り戻すことが必要だったのではないですか。

「そうだね。だから海に出てサーフィンを楽しんでバックアップするようになったんだ」

──さすがハワイアンですね。大洋に癒されたと。17歳の時の大きな負傷、デビューをしてからも所属ジムを離れる時の契約問題で1年ほどブランクがあった。そして、この2年以上のブランクとまさに山あり谷ありのMMAファイター人生を送っています。

「その通りだね。山あり谷ありというか、谷が多くて山もその中を彷徨っていた感じだね。そんな時、歩き続けるのか、諦めるのか。2つの選択肢があった。全ての出来事が僕の将来のアドバンテージになると信じ、そして自分を信じて諦めなかったんだ。

でも、もう一度ジムのドアを開けるまでは時間がかかった。コーチからメッセージを貰い、チーム・メイトが待っていてくれた。それなのに……思ったように動けない。だからゆっくりと時間をかけてMMAに馴染み、柔術やスパーリングに復帰するようにした。それまでの間、体を元に戻すことを第一に考えてフィジカルトレーニングやヨガを続けていたんだ」

──お父さんのマイルスもMMAファイターでしたが、どのようなアドバイスを受けましたか。

「とにかく体が発するメッセージに耳を傾けろって言われたね。そして、MMAを引退した後も人生は長い、人生を楽しめと。ケガをする前の僕は必死になり過ぎていて、周囲が見えていなかった。父の言葉もあって、一歩下がってMMAと向き合うことができたんだ」

テイクダウン&スプロール・パウンダーのタイナネス。持ち味はねちっこさだが、今のONEでどのように評価されるのか

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──以前はUFCで戦うことを目標にしていましたが、この間のONEの成長は目を見張るものがあります。

「凄いことになっているよね。ONEと新しい未来が見られるような気がする。もちろん、UFCは今も凄いイベントを続けているよ。皆、UFCや大きな舞台で戦いたいと思っている。そのなかでONEの存在感は凄く大きくなった。楽しみでしょうがないよ」

──ライト級ワールドGPにエディ・アルバレスが参戦を果たしました。

「ONEにとって、エディのようなレジェンドがやってくることは本当に良いことだと思うよ」

──このタイミングで、ローウェン・タイナネスのカムバックも非常に嬉しいニュースです。まだ日本のファンも、恐らくは世界のファンもローウェンのポテンシャルに気づいてないはずですが……。

「ありがとう。前にもさ、世界でもっと知名度がない実力者だとかって言ってもらえたことがあって(笑)。僕はただファイティングが好きで戦ってきたからね」

──この間、ONEと同様にハワイのMMAの盛り上がりもすさまじいものがあるかと思います。

「その通りだ。マックス・ホロウェイがUFC世界チャンピオンになり、イリマレイ・マクファーレンがベラトール、アンジェラ・リーはONEの世界王者だ。そしてPFLではブラダ・ボーイ(レイ・クーパー3世)がブレイクした。

今、僕自身はハワイ・エリートMMAに所属しているけど、グレイシー・テクニックスで柔術の練習もしている。所属ジムとか関係なく、可能な限り活きの良いファイターは一緒に汗をかいているんだ。この集団のことをチーム・ハワイと呼んでね(笑)。ハワイの皆で強くなっているんだ。

ブラダ・ボーイ……彼や僕はハワイのMMAの第3世代だけど、もうその年下の18歳、19歳っていう連中が必死になってトレーニングに励んでいる。僕やブラダ・ボーイの父親世代から、BJ・ペンがMMAで成功するという扉を開き、僕らの次の世代が育っている。言っておくよ、第4世代……アイツらはマジで凄いことをやってのけるよ。

僕は彼らを引っ張る存在にならないといけない。僕が頑張ることで奴らも頑張れる。そしてハワイのMMA社会が成長するんだ。それが僕のモチベーションになっている」

──そのための復活祭、明日のホノリオ・バナリオとの試合から、MMAファイターとしてリスタートが切られます。

「とにかく、勝つよ。どれだけ勝利を欲してきたか。ケージに戻ることが楽しみでしょうがないんだ。肉体的にも精神的にも、最高の気持ちを味わえるのはケージの中だけだ。もう2度と手放さないよ」

■ONE86対戦カード

<ONE世界フライ級(※61.2キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]ジェヘ・ユースタキオ(フィリピン)
[挑戦者]アドリアーノ・モライシュ(ブラジル)

<ライト級(※77.1キロ)ワールドGP準々決勝/5分3R>
ホノリオ・バナリオ(フィリピン)
ローウェン・タイナネス(米国)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
ダニー・キンガド(フィリピン)
和田竜光(日本)

<ムエタイ・フライ級/3分3R>
ファディ・カレッド(チュニジア)
ロッタン・ジットムアンノン(タイ)

<ミドル級(※93.0キロ)/5分3R>
ライニア・デリダー(オランダ)
ファン・ロン(中国)

<キック・バンタム級/3分3R>
ジョシュ・トナー(豪州)
秋元皓貴(日本)

<キックボクシング・フェザー級/3分3R>
ブラウン・ピーナス(オランダ)
バングプリーニ・ペッチインディーアカデミー(タイ)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
イ・スンジョン(韓国)
タン・カイ(中国)

<ムエタイ・フライ級/3分3R>
エリアス・マムーディ(アルジェリア)
小笠原裕典(日本)

<キック・バンタム級/3分3R>
モハマド・ビン・マフムード(マレーシア)
鈴木博昭(日本)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
エギー・ロステン(インドネシア)
ヒマンシュ・コシィック(インド)

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