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【ONE】躍進ONEチャンピオンシップの裏に、長南亮あり─01─「日本を知ってもらうことに努めた」

Ryo Chonan【写真】ピラニアならぬオヤカタ・バージョンの長南氏 (C)KEISUKE TAKAZAWA

2018年のMMA界のトピックとして、ONE Championshipの躍進が挙げられることは間違いない。特に日本での浸透度は過去6年間のONEの活動期間とは比較にならないといっても過言でないだろう。

ONEが国内で存在感が増すために欠かせない役割を果たしたのが、長南亮氏だ。過去2年、ONEと日本の関わり合いのなかで長南氏が行ってきた行動は、選手ありき。より良い日本の格闘技界のために、長南氏がどのような取り組みを行なってきたのか。

そこに存在するチャトリ・シットヨートンCEO兼会長への信頼関係を軸に語ってもらった。


──Abema TVのライブ配信の復活から日本人選手の毎大会2名出場確定、日本大会開催発表、そしてテレビ東京での放送決定とONEに関してポジティブな状況が、過去8カ月続いています。

「ここまでやってきたことが繋がっていたという状態になっていますね。それまでの流れや、ここからの動きというのは日本の格闘技界ではなかった状況なので、色々と楽しみです。

日本の格闘技界の歴史は、財を成した人が格闘技に参入してくると、その人にたかるような感じになり、格闘技に対する情熱が失わせる。その繰り返しでした。なので自分もONEと仕事をやっていくうえで、絶対にそうならないようにしなければと思ってきました」

──長南さんがONEの日本におけるアドバイザー、そして選手の世話をするようになって2年が経ちました。当時はどのような気持ちで、この仕事を受けたのですか。ともすれば、一つのプロモーションと仕事をすることで弊害が出て来る立場にあったと思うのですが。

「自分にはTribe TOKYO MMAというジムがあり、所属選手はUFCに行きたいという者、RIZINに出たい者がいました。自分自身もRIZINの手伝いをしていたので、全方位外交は心掛けていましたし。敵を作らずに進みたい先は選手が決めることだと。

だから、どこかに属して仕事をするというつもりはなかったです。以前、PXCに選手を紹介していたことがあって、マネージメントをしたり、航空券の発券の手伝いをしてもパーセンテージも取っていなかったですし。選手の経験になってくれれば良いという感じでした。

チャトリから日本でこういう風にやっていきたいから一緒にやらないかと言われた時も、ONEに出られる選手がいればそれは良いことだから、PXCの時と同じように手伝うことにしたんです。『お金は要らないから』とチャトリに伝え」

──まさに長南さんも業界の手弁当体質に染まっていたのですね。良い話ですが、それはそれで仕事にならないことに通じる問題でもあります。

「ハイ、本当にそうで。チャトリもその時に『それでは困る。そんなのは仕事じゃない。労力を使ったことには、対価が発生しないといけない』とすぐに言ってきたんです。日本の格闘技界で育った自分からすると、そういう発想は全くなかったです。

日本は全部ボランティアじゃないですかッ!! 自分はジムを生業にして生活にしているから、そういうこともできた。だからイベント業務でお金になるという発想がないほど、感覚が麻痺していたんですよね」

──そのウェットさの良い点もあるのですが、それが当然になっていたのも確かです。結果、長続きしないという冒頭の話に通じてきます。そこで長南さんは仕事としてONEと付き合うようになったわけですね。

「そうなった時に色々なことも言われました。『ONEは契約で選手を縛るけど、試合を組まないから悪質だ』とか」

──そこは2年前なら、間違った指摘でもなかったかと。

「そういう時期もありました。それも彼らが日本人選手の状況を理解しておらず、その説明を誰もしてこなかったからだと思います。そこで自分が手をつけようになったのは、契約選手を増やすことではなく、契約している選手に試合機会が与えられるようにすることでした。そこが最優先で。

それが成されてからでないと、新しい選手の紹介はできないということも伝えました。『だったら、お前の仕事は何だ?』という空気にもなったのですが、その時に自分が見て来た日本の格闘技界、そして選手の現状、興行のスタイルなどをリポートし、日本を知ってもらうことに努めたんです。

ONEは選手がチケットの手売りをして興行が成り立っているとか、日本の情報は何も知らなかったですから。そこで自分は全てを英文でレポートし提出しました」

──まず契約下にあった選手の試合機会が増えて行ったと。

「ONEも選手に試合を組まないと、どういう状況に陥るのか理解してくれたと思います。ただ、そんな時でも日本でビジネスを展開していくにあたって、チャトリでも『テレビ放送が欲しい』というような大きな話ありきだったんです」

──長南さんが現場の声を伝えることで、ONEの日本市場への介入方法も変わってきたのですね。

「そこは自分だけでなく、色々とサポート、アシストしてくれる人が増えたというのもあります。形から入らず、身の丈に合った状態から構築していけるようになりましたね。ただチャトリが凄いなと思うのは、身の丈で動く一方で、テレビの件だとか大事もやってしまうんですよ。

正直、この仕事をすると決めた時も自分自身はチャトリが言っているプランが現実になるのか半信半疑でした。それは自分に自信がなかったんですよね。日本の状況もありますし、自分で興行をやったことがあるからこそ、チャトリのような大きなビジネスをやり遂げる素質は自分にはないです」

──そこは役割分担ということではないでしょうか。

取材は昨年12月29日、格闘代理戦争3rdシーズン決勝の日に行われた。ケージ解体作業中の長南氏

取材は昨年12月29日、格闘代理戦争3rdシーズン決勝の日に行われた。ケージ解体作業中の長南氏

「自分は現場の人間です。人を育て、支えて、手伝う。そうしてくることでD-Netでの活動もそうですが、信頼だけは得ることはできました。そこがONEの仕事で生きています」

──ONEのイメージが付きすぎているという声も実際にあります。今ではOENの人だと。

「この間、ONE絡みで色々なモノを見てきました。そこでチャトリが悪者にされることとか、筋が違う──自分には許せないこともありました。この業界にチャトリのようなしっかりとしたビジネスマンが必要だと、自分は思っています。

これまでと違う……Abema TVの存在もそうですし、このような人たちが格闘技に関わってくれることは本当に有難いです」

──チャトリCEO、長南さん、そしてAbema TVの北野雄司プロデューサーの共通点は度を越しているところだと自分は思っています。そのような人達は色々と言われるでしょうが、逆に絶対的な信頼を得ることもできるのではないかと。

「そこで絆ができますよね。自分自身、何も分からなかった。どうなるのかなんて展望も描けていなかった状態でやってきて……。本当はD-NETもTTFCももっとやっていきたい。でも、手一杯で動けていない状況です。この状況だからこそ腹を括ってチャトリがやるなら、絶対に成功させる──その力にならないといけないと思っています」

<この項、続く

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