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【TTFC10】長南代表に訊く、TTFC再開の意図「せっかくのチャンスが“出ました記念”にならないように」

【写真】日々プロ選手を指導・育成する立場だからこそ、見えてくるものがある。それを長南代表が形にしたイベント=TTFCだ (C)TAKUMI NAKAMURA

16日(金)に東京都練馬区の練馬coconeriホールで開催されるTTF CHALLENGE10。TRIBE TOKYO MMAの長南亮代表がプロモーターを務めるTTF CHALLENGE(以下、TTFC)が約3年8カ月ぶりに活動を再開する。
Text by Takumi Nakamura

コロナ禍の2020年12月の大阪大会以来、大会開催から遠ざかっていたTTFC。久々の開催に向けて長南代表はプレスリリースにて「自主興行の必要性はなくなってきている昨今ではありますが、若手選手たちと共にホンモノの戦いを提供できればと、選手育成の視点から再び練馬の地で開催する運びとなりました」と説明している。

MMAPLANETでは改めて長南代表にインタビューし、TTFC再開の目的・意図を訊いた。


――TTF CHALLENGE(以下、TTFC)が約3年8カ月ぶりに開催されることとなりました。また大会を開催しようと思った理由は何だったのですか。

「(TRIBEがある)練馬界隈では指導後に食事をしていたりすると『もう大会はやらないんですか?』と聞かれることが多くて。ジムが忙しすぎて簡単にイベントをやるような状況ではないのですが、他所のイベントを見ていて興行のスキルが落ちているのを感じることもあって、何とかしたいなと。あとはTRIBEの所属プロ選手も10名以上いて、今回のTTFCを見てもらっても分かる通り、片側のコーナーはTRIBEの選手でも埋まっちゃうくらいなんですよ。色んな団体さんと交渉して試合を調整するぐらいなら、一度、うちで興行をやって試合を組もうと思ったのも理由の一つですね」

――TRIBE所属の選手でも試合待ちになっているような状況ですか。

「そうですね。毎月どこかで所属選手の試合がありますし、そのなかで試合が流れてしまう選手がいたり、デビュー間もない選手はこちらから売り込まないとなかなかチャンスが来なかったり。あとはうちの後藤亮なんかは知名度はないけどそこそこ強いから試合を断られちゃうたりもするんですよ(苦笑)。TRIBEとしては、そういう状況がありますね」

――地元・練馬のみなさんからもTTFCに対する反響はありますか。

「また大会をやってほしいという人もいれば、最近知り合ってうちが大会をやっていることも知らない人もいて、そういう人たちに大会を見せたいというのもありますよね。練馬coconeriホールの担当の人もTTFCをやることを歓迎してくれていて、担当者のなかには『練馬を格闘技の街にしましょう!』と言ってくれる方もいたんですよ。練馬にはパラエストラ東京もあるし、GRABAKAもあるんで。そういう部分でも練馬coconeriホールで大会をやることに意味を感じています」

――先ほど「他所のイベントを見ていて興行のスキルが落ちているのを感じることもある」という言葉もありました。プロモーター目線では、ずばり既存の団体に対して、こうした方がいいんじゃないかと思うところもありますか。

「今回はメインとセミを国際戦にしたんですけど、RIZIN以外の団体でもメイン級の選手には外国人選手を当てて欲しいですよね。どうしても日本人同士の試合になると、内々の戦いになってしまって、外(海外)との比較ができない状態だと思うんですよ。日本国内ではいいレコードを作ったとしても、海外に行くと全く通用しなかったり。それは単純に外国人選手とやる機会がないからだと思うんですよね。パンクラスさんは積極的に外国人選手を招聘していますけど。例えばうちの(エフェヴィガ)雄志もデビューしてから連勝しているので、そういう選手がステップアップできるようなカードとして外国人選手と試合を組みたいと思って、そこにトライしてみました」

――国際戦が減っている状況は業界としても変えていきたいですか。

「後楽園規模の大会を勝ち抜いて、RIZINに出て外国人選手と戦うという流れはあると思うんですけど、RIZINまでいかなくても後楽園規模の大会で、そういう試合を組んでいってもらいたいです。もちろん色々と面倒なことや調整しなければいけないことはたくさんあると思いますが、本業がイベント屋じゃない自分がチャレンジできていることなので、既存の団体にはそこを頑張ってほしいという想いはありますね」

――国際戦は費用や集客面で難しい部分もありますが、その機会が減っていることは選手にとってはマイナスですよね。

「選手の数は増えているけれど、それと同じように全体的なレベルが上がっているかと言われれば、そうじゃないと思います」

――日本人相手に連勝して、いざビッグイベントや海外団体で戦うチャンスを掴んでも、そこで慣れない外国人選手と戦って結果を出すことが出来ない。結果的にチャンスの芽を潰してしまうことにもなりかねないです。

「せっかく掴んだチャンスがぶっつけ本番になっちゃうんですよね。しかもそれが海外になるとなおさらですよね。初めて言葉も通じない環境に身を置いて、初めて外国人選手と戦うというシチュエーションもありえるし、対戦相手関係なく、その環境だけで力を発揮できないことも多々あるわけで。それでせっかく掴んだチャンスをすべて台無しにしてしまうのは……考えどころですよね。日本から世界へステップアップするための試合や舞台が必要だと思います。繰り返しになりますけど、日本でも外国人選手と戦える機会があったり、少し昔だったらPXCとか、すごくいいバランスの大会だったじゃないですか。ああいう大会で海外での試合、VS外国人を経験できたのは、すごく大きかったですよね。自分も年1回という頻度だったら、そういう試合やイベントを創ることができると思うので。今回の大会をちゃんと成功させて、次につなげたいですね」

――それこそエフェヴィガ選手は試合後のマイクでも日本人選手が試合を受けてくれないことを口にしていましたし、キャリア的には外国人選手と戦ってもいい時期だと思います。

「そこは(試合を受けない選手に)正直いい加減にしろよって思いますけど(苦笑)、その気持ちは雄志の方が絶対に強いと思います。実は雄志にはDWCSからオファーが来ていたんですよ。ただその前にTTFCに出ることが決まっていたし、雄志自身もいきなり次戦がDWCSというのは、対戦選手のレベルが急に上がりすぎる、と。チャンスは限られているかもしれせんが、ただ飛びつくだけ飛びついて、そこで勝てなかったら何の意味もないですから。そこは雄志ともしっかり話して、TTFCでエマニエル・サンチェスに勝つことが出来たら、海外のローカル団体で実績とキャリアを積んでからUFCにチャレンジしたいという意向です」

――世界に挑むための準備が整わないと、ですよね。

「“出ました記念”にはしたくないですからね。準備が整わないままチャンスに飛びついて、そこで勝てなかったら、次いつチャンスが巡ってくるか分からないじゃないですか。だったら海外で勝てる実力と実績を作っておいて、そこから勝負できるようにしておいた方がいいと思っています」

――とは言え練馬coconeriホールの規模で海外から2選手招聘するのは大変ではなかったですか。

「でもアメリカはアメリカで選手が増えすぎちゃって、メジャーイベントをリリースされて試合の機会がない選手も多いそうなんですよ。あとはまだ日本で試合をしたいという憧れを持っている選手も多くて、ティル・サンは『チケットを100枚売るから使ってくれ!』と言ってきました、在日ミャンマー人のコミュニティがあるから強気なのか。絶対100枚は売れないだろ!と思いましたけどね(笑)。でもまだまだ日本で試合をしたがっている選手は多いです」

――海外にもそういった事情があるんですね。

「あとは日本人だったら勝てると思っている選手もいると思います。白星を重ねてキャリアを作り直して、メジャーイベントに再挑戦したい選手にとっては、そういう狙いもあるんだと思います」

――TTFCも10回大会となりましたが、その時々で日本のMMA業界が抱えている課題を解決するべく、テーマを持って大会を開催していますよね。

「コロナ禍の時は格闘技イベントそのものを目にする機会がなくなるんじゃないかと思い、当時はONEの仕事も手伝っていたんですけど、それで何も動かないのは嫌だったのでTTFCをやりました。同じ年に大阪でも大会をやったんですけど、それはBLOWZの中蔵隆志代表から『東京の選手と試合をする機会が欲しい』という話を聞いて、だったら東京から乗り込んでいったら面白いじゃんというところで開催に至りました。そうやって大会ごとに異なるテーマがあるなかで、今回に関していえばTRIBEの選手が増えている状況のなか、TRIBEの力を見せたいと思ったし、ジムを構える練馬に貢献したいという気持ちもあります。そのうえで上を目指す選手のために国際戦を組もうと。過去にTTFCはのちにUFCファイターになるジェシー・ジェスを招聘したこともありますからね」

――まさにTTFCはジムで選手を抱えてるからプロモーターだからこそのイベントですね。

「松根(良太)君なんかもそうですよね。地元の沖縄にジムを出して、沖縄に修斗を広げるために大会を開催して。あと主催者として選手に対してフェアにならないといけないから、自分はTTFCではセコンドはやらないようにしているんですよ。だからジムのヘッドコート目線で言えば『TRIBEのお前ら、絶対負けるなよ!』という気持ちはありますけど、プロモーター目線で言えば『TRIBEの選手たちを喰って上に行ってやる』という選手は大歓迎だし、出場選手たちには感謝しています」

――例えばTTFCと同じような取り組みをする大会が各地方にも増えて欲しいですか。

「GladiatorさんやHEATさんは各地域でそういう取り組みをしていると思いますし、ただ日本人が外国人に苦戦している現状もあるので、そこはまだ選手育成の部分が追いついてないところもあるのかなと。だから今回の大会では雄志の試合でそれが試されると思っています」

――今大会を機にTTFCは今後も定期開催を予定していますか。

「来年も練馬coconeriホールを抑えて、今後もTTFCを定期開催していくつもりです。そのためにもまずは目の前の大会を成功させることが一番です」

■視聴方法(予定)
8月16日(金)
午後6時25分~ツイキャスLIVE

■TTF CHALLENGE10対戦カード

<ライト級/5分3R>
エマニュエル・サンチェス(米国)
エフェヴィガ雄志(日本)

<64キロ契約/5分3R>
上田直毅(日本)
ティオール・タン(ミャンマー)

<フェザー級/5分2R+ExR>
大越崇宏(日本)
小森真誉(日本)

<ライト級/5分2R+ExR>
岩倉優(日本)
チェ・ジョンミン(韓国)

<グラップリングマッチ 78キロ契約/10分1R>
伊集龍皇(日本)
室谷勇汰(日本)

<フェザー級/5分2R+ExR>
狩野優(日本)
轟轟(日本)

<バンタム級/5分2R+ExR>
永井奏多(日本)
唐沢タツヤ(日本)

<ライト級/5分2R+ExR>
後藤亮(日本)
グラップラー脇(日本)

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