【Special】月刊、青木真也のこの一番:11月─その壱─ベリンゴン×ビビアーノからのクリスチャン・リー
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ11月の一番、第一弾は9日に行われたONE81からケビン・ベリンゴン×ビビアーノ・フェルナンデスの一戦を引き続き語らおう。
判定論争はMMAにつきもの。そして話題はベリンゴン✖ビビアーノからクリスチャン・リーへ。
<青木真也のベリンゴン✖ビビアーノ論、Part.01はコチラから>
──そういうなかでエドゥアルド・フォラヤンはラカイ勢にあって、自らテイクダウンを取ってアミール・カーンを下しライト級王者に返り咲いたというのは見事でした。
「う~ん、フォラヤンは何ていうのかトータルファイターなんです。俺は彼にフィニッシュされているけど、フォラヤンはフィニッシャーではないんです。ラカイ勢はONEの裁定基準でどうすれば勝てるのかをよく研究していますよ。そのなかで、彼らを後押しする空気もある」
──フィリピン押しがあるというのは、それはベリンゴン✖ビビアーノ戦からも感じられました。
「ニアフィニッシュ論として、そうでしたよね。ただし、だからといって組技が全く評価されないのかといえば、そうではない」
──こうなるとマストでなくても、ラウンド事の得点集計の方が判断がつきやすいかと思います。一度のダメージと、コントロールした時間、その対比が15分や25分だと本当に判断がつかなくります。
「それをいえばショーン・シャーク✖エルミス・フランカ戦(※2007年7月7日)なんて、勝敗が逆になりますからね」
──今日は随分と昔の試合が出てきますね(笑)。
「あれはヒザ蹴りでシャークが2度ダウンをしたけど、ずっと抑え続けて勝った試合です。50-45がついていますからね」
──確かにONEと真逆ですね。米国は2017年からの規定でインパクト重視とされ、そのインパクトのなかにはダメージだけでなく試合の流れを決めるような攻撃もインパクトとされています。
「テイクダウンにしても、勝負の流れを決定づけるような攻撃は重視されるっていうことですね」
──ダメージより、明確かと思います。判断基準として。ダメージは受けた本人にしか分からないことを判断するわけなので。
「まぁ、判定論争はずっと続きますよ。だから判定負けした者が報われるし、楽しいんですよね。そのONEのシンガポール大会だと、クリスチャン・リーが抜けていましたね。
翌日にイヴォルブに柔術しに遊びに行ったら、翌週のジャカルタ大会に出場するアンジェラ・リーの旦那さん……ブルーノ・プッチと練習していて。『凄かったね』なんていう話はしたんすが、あの右を当ててからの動き、僕はダッキングに見えたんです」
──左の関節蹴りから、右オーバーハンドを当ててダブルレッグに行った一連の動きですか。
「あの関節蹴りからのパンチって、ずっと練習しているんですよね。足が伸びて、パンチを返せなくなるから理にかなった動きで。その右を当ててからのクリスチャンの動きは、ダックに見えたんです。でも、ダブルレッグだった……そもそも、あの流れって攻防がないんですよね」
──ハイ、対戦相手は付け入るスキがないです。
「俺たちの基本概念である構え合ったところからのスタートという概念が、20代の子にはない。凄い遠いところから、一旦停止もなくてバシッと入る。そこには攻防が生まれない。
MMAって発想が自由なモノじゃないですか。でも、僕自身の発想は凝り固まっていると思いました。あれがダブルレッグでなく、ダッキングに見えた……これは『イカン』と。そもそも、ああいう攻防のないダン・ダン・ダダダンっていうクリスチャンの攻撃は、パパがミットを持っている打ち込みからきていて、それも直線移動でやっているんです。
あれが彼らのファイティング・システムで、あの動きは理屈があって……しかも、ストリートファイト理論なんですよね。そのクリスチャンもパパのケンさんも、スープレックスで反則負けはフ〇ックだっていっていましたよ(笑)」