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【Special】月刊、青木真也のこの一番:11月─その壱─ベリンゴン×ビビアーノ「キャッチの重さ」

ONE82【写真】青木にとっては他人事ではない判定基準 (C)MMAPLAET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ11月の一番、第一弾は9日に行われたONE81からケビン・ベリンゴン×ビビアーノ・フェルナンデスケビン・ベリンゴン×ビビアーノ・フェルナンデスの一戦を語らおう。


──11月の青木真也が選ぶ、この一番。まず1試合目はどの試合になるでしょうか。

「判定の話から入ってしまいますが、ベリンゴンとビビアーノですね。ニアフィニッシュを一番に置いているけど、解釈が分かれる。スプリット判定というのは、どっちが勝っていてもおかしくないという試合だったということが如実に表れていると思います」

──若松佑弥✖ダニー・キンガド、内藤のび太✖ジョシュア・パシア戦後、特にONEの判定基準が取りざたされています。そして、この試合前にはニアKO&ニアフィニッシュ>ダメージ>有効な打撃のコンビネーション&グラウンドでのポジショニング>テイクダウンの攻撃&防御>アグレッシブと、判定基準が明確になりました。そうなると若松選手は初回に奪ったダウンが、奪われたバックマウント& RNCによって相殺された。そして、テイクダウンと最終回のバックマウントでキンガドの勝利だという見方が成り立ちました。

「うん、ただビビアーノの方はどうなんでしょうね。ニアフィニッシュという概念でいうと、ビビアーノじゃないのかと思うわけですよ。彼が喫したダウンはそのあとにすぐにリカバリーして立ち上がっている。対するキャッチの重さというのが、どうなんだろうと思ったりはしますよね」

──北米ユニファイドだと完全にビビアーノが判定勝ちしていたと思います。

「ハイ、そうでしょね。ただし、ONEだったらどうなるのかという目でみると、ベリンゴンだろうなという見方が成り立つんです」

──ONE基準ならという想いがあると。実はこの試合、あとから映像を見て判定基準を考慮しつつ再考してみると、ONEの裁定基準でもビビアーノではないのか……と。というのが、実はabema TVのスタッフと6人ほどで映像を見直して思った次第なんです。

「ニアフィニッシュという概念でいうと、あの腕十字ですよね。うん、だからこそ……そこが難しいところです。打撃に関しても、パウンドのダメージがビビアーノにそこまであったのかも疑問ですしね」

──腕十字を返された後ですね。

「ハイ。だから、あの試合はPRIDE移行、ずっと続いていたキックのダメージとパンチのダメージをどう判断するのか……トータルジャッジの問題点が蒸し返された案件です。

スタンドの打撃においても、パンチはビビアーノの方が当たっていたので」

──そしてテイクダウンもあり、マウントやバックマウントもあった。

「ベリンゴンはロー、起き上がられたダウン、腕十字を返してからパウンド、それと後回し蹴り……。ローとパンチという部分だけでも意見が分かれる。マルコ・ロウロ✖マモルの試合です。分かりますよね?」

──いや、正直なところ思い出せないです(苦笑)。

「アハハハ。あの時から、判定論争は変わっていない」

──ローとパンチ、どちらを取るのか。そのなかで後回し蹴りは客の反応がよくて、攻勢となるのか。

「1Rだけですもんね、当たっていたのは。判定論争では魔娑斗選手が近い距離でアッパーを打って、頭が揺れた相手の汗が飛ぶことで、効いているように見える。そういうことをKrushの選手が考え始めたというのを思い出しましたね。

結局、判定というのはもめ続ける。だから、あのスプリットは合点が行きました」

──う~ん、それでもあの試合はビビアーノではないのか……と。

「どっちが勝ちとかっていう話になると、僕もポジションがあるから歯切れが悪くなってしまうんですが……(苦笑)」

──アハハハハ。

「本当に曖昧。あと肌感覚として、僕はシンガポールにいたけど、あの試合はホテルに戻って見たんです」

──えぇ? そうなのですか??

「だってあんなに長い大会は会場で見続けられないですよ(笑)」

──ダハハハ。

「でも会場で見た人はベリンゴンと言っているし、ONEのフィリピン人ファイター押しの雰囲気も見て、結果に関してはまぁ、そうだよねって。

ジャッジは何もないところで見ているということじゃないから。やっぱりあの空気は影響する……からこそっていうのはありますからね」

──あの大会ではミッシェル・ニコリニがテファニー・テオに判定負けした。アレもありえますか??

「ニアフィニッシュでしょってことですよね? 僕、あの試合後にすぐに高島さんに連絡したじゃないか? 『ニアフィニッシュは?』って。相手はローとジャブだけですよ」

──つまりグラップラーは疲れようが、ダメージを受けようが前に出続ける必要があり、ストライカーは距離を取って当てれば良いのかとなります。

「あれだけ倒して、ポジションを取って、フィニッシュを狙っても負ける。だから、アレで勝てると皆がアウトボクシングばかりするようになり試合が詰まらなくなる。だったら、またグラップリングが評価されるようになるんじゃないかって思うんです」

<この項、続く>

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