【ONE171】MMA引退試合=ベリンゴン戦前のビビアーノ・フェルナンデス「ツノさん、コバヤシさんが…」
【写真】小林さん、20年以上も前にいただいた名刺を海外取材中で確認できず、フルネームを掲載できないことをお詫び申し上げます(C)MMAPLANET
20日(木・現地時間)にカタールはルサイルのルサイル・スポーツアリーナで開催されるONE171「Qatar」で、ビビアーノ・フェルナンデスが引退試合を戦う。
Text by Manabu Takashima
2003年にムンジアル黒帯を初めて制し、翌年にプロMMAにデビューし、2006年までは二足の草鞋を履いていた。この間にプロ柔術で来日し、2007年にHERO’Sで故2009年からはDREAMが主戦場となった。
その後ONEと契約も、常に日本への想いを口にしていたビビアーノが、ついに引退の時を迎える。対戦相手はONEバンタム級世界戦で4度の対戦があるケビン・ベリンゴンだ。ビビアーノ・フェルナンデスの現役MMAファイター最後のインタビューを万感の思いを込めてお送りしたい。
MMAは全てをやり尽くした。これ以上、自己証明する必要はないんだ
――ビビアーノ、今回が引退試合だと発表されました。プロ格闘家なら誰にでも訪れる時がやってきたわけですが、試合を前にしてどのような気持ちですか。
「MMAからの引退だ。ただし、柔術家人生が終わることはない。今の僕にはファイターとは違う、責任がある。子供がいて、多くの生徒がいる。これからは自分の勝利のためではなくて、愛する人々のために自分をプッシュしていきたい。
もう柔術でもMMAでもやるべきことはやり尽くした。ONEの世界戦で11度も勝利した。DREAMでバンタム級とフェザー級のチャンピオンになった。ムンジアルの黒帯で3度優勝した。これ以上、何を望むことがある? MMAは全てをやり尽くした。これ以上、自己証明する必要はないんだ。
そして、これだけは絶対に話させてほしい。僕は日本を愛している。キャリアの序盤、日本でツノ(津野公正)さん、コバヤシさんが僕を助けてくれた。彼らがいたから、僕は日本で試合ができた。そして、君だ。どれだけ僕のインタビューをして、僕の声を日本の人達に伝えてくれた? バンクーバーまでやってきて、僕の話を聞いてくれたね。僕がいかに日本に感謝し、日本の皆を愛しているのかを伝えてくれた」
――ビビ、泣かせにかかっていますよね(笑)。
「そんなことはないよ(笑)。キャリアの最初から、そして今日……最後まで、僕の声を皆に届けてくれる。本当に感謝している」
――もうインタビューの締めのようになってしまいます(笑)。やり切ったというビビアーノの言葉は、納得するしかないです。もう試合をする必要はない。でも、身を引くことを世界中に伝えるために最後の試合に挑むのでしょうか。
「イエス。その通りだ。この試合を通してONEへの感謝、チャトリへの感謝、世界中で僕のことをずっと応援してくれた皆に感謝の意を表したい。『僕の子供と写真を撮ってくれ』と言ってくれるファンがどれだけいるか。ずっと僕のことを応援してくれた彼らが、もう父親になっている。
そんな姿を見ると、本当に嬉しいんだ。僕をサポートしてくれた皆が、人生をまっすぐ生きている。これまで戦ってきて良かったと思える瞬間なんだよ」
――引退試合の相手はケビン・ベリンゴンです。
色々なストーリーがあったケビンだから、最後に手を合わせたかったのですか。
「ケビンはフィリピンの人気者だ。僕とケビンがフィリピンでONE人気を確立させた。フィリピンに行くと、本当に皆が僕のことを応援してくれる。空港にいると、誰もが写真を撮ろうと言ってくれる。
何より彼と戦いたいと思ったのは、僕らの試合は良い試合になると思ったからだ。そしてケビンも応じてくれた。彼は強い。そして素早い。パンチを出しては、動く。その繰り返しを凄いスピードでやってのける。そういう相手とファイトしたいから、彼と試合をする。そして僕も強いパンチを打ち、強いムエタイ、レスリング、柔術を見せることができる。
ケビンがパンチを出して、移動しても僕は捕まえる。それからテイクダウンだ。とにかく最後の試合だ、ベストを尽くすよ。
引退するけど、僕の体調は完璧だ。精神的にも、全く問題なく試合に臨むことができる。数カ月前にピークがくるぐらい追い込んで、コーチからスローダウンを命じられた。一度、休んで。またプッシュして、最高の調子でやってきた。
以前はピークに持ってくると、体を壊すということが何度もあった。だから、そこを考えて調整してきたんだ。確かに2年3カ月、MMAの試合には出ていない。でも去年はパン柔術に出場して、1日で5試合を戦って優勝している(マスター3)。ユライア・フェイバーともADXCで試合をした。ずっとコンペティションに向けて、集中してきた。競技モードでい続けてきたんだ」
自分で、自分の道を歩けるようになった。結果、僕の人生を特別なモノにしてくれたんだ
――なるほどです。本来は試合後に聞くべきことかもしれないですが、ここまでMMAを戦ってきて最高の思い出とは?
「DREAMで2階級を制し、ONEに迎え入れられてチャンピオンになれたことだ。日本での戦い、ONEでのファイトが最高の思い出だよ。日本での思い出は尽きない。本当に皆が良くしてくれて、日本で僕はMMAのキャリアを積めるようになった」
――2012年にONEとサインをした時、UFCでその雄姿が見たいという気持ちは正直ありましたが、ビビアーノの人生にとってONEとの契約が正しかったといえそうですね。
「僕は受けた恩に対して、忠誠心を持ち続ける。チャトリがシンヤ・アオキのコーナーで日本を訪れた時、初めて僕らは話した。あの時、チャトリと一緒にONEのバンタム級を大きくしたいと思った。そして、やり遂げたと思っている。ONEのバンタム級は僕が創った。ONEが今のように大きな組織なる可能性があると、あの時から分かっていた。UFCに肩を並べる存在になるだろうってね」
――一つのチャプターが終わります。これから人生はどのように生きたいと思っていますか。
「全力でフラッシュ・アカデミーを大きくしていきたい。僕の経験、人脈を生かして最高のアカデミーにする。柔術を強くするだけでなく、柔術を通して人として良い人生を歩めるように皆と向き合っていきたい。そのために柔術は存在していると思っている」
――競技者として最高の選手を育てるという想いも持っているのでしょうか。
「もちろんだ。既に青帯と紫帯で世界チャンピオンになった生徒がいる。この1年でアカデミーは凄く成長した。リョート・マチダも助けてくれている。皆のサポートがあって、アカデミーは順調だよ」
――競技柔術には出場し続ける予定ですか。
「もちろん。死ぬまで続ける。柔術はフィジカルの争いだけでない。頭を使い、気持ちを強く保ち、経験が生きるメンタルゲームでもあるからね。だから柔術はここまで発展したんだ。
柔術が僕の人生を変えてくれた。柔術こそが、僕の人生だ。タバコを吸うことも、アルコールを飲むこともなく、パーティーに出かけることなく柔術に取り組んできた。自分を律して、社会を生き抜いてきた。色々な犠牲を支払って、柔術で生きてきたんだ。
ブラジルでの様々な経験が、バンクーバーでの生活を支えてくれた。妻と子供たちも僕の人生を変えてくれた。7歳の時に母が亡くなってから、僕は自分の力で人生を切り開いてきた。それは神様が僕に与えてくれた試練だった。結果、僕は自分を信じることができ、自分で自分の尻を叩くことができるようになった。自分で、自分の道を歩けるようになった。結果、僕の人生を特別なモノにしてくれたんだ。
常に自分を成長させたい。そのためにトライし続ける。神様が、僕をそういう人間になるようにしてくれた」
――やはり試合前から感傷的になってしまいそうです。
「ありがとう。僕の想いを共有してくれて」
――ただ、試合前のインタビューらしく締めさせてください。カタールで今週の木曜日、どのような姿を皆に見せたいと思っていますか。
「試合の終わり方は2つある。サブミットするか、KOするか。ファイトでやるべきことは、この2つだと思って戦ってきた。寝技で仕留めようとする余り、スタミナを切らすこともあった。でも、それが僕の戦いだ。最後まで、ビビアーノ・フェルナンデスでありたい。
そして最後にやはり言わせてくれないか。僕は日本のファンを愛している。日本という国があって、僕は柔術に出会うことができた。また日本を訪れるだろう。IBJJFの国際大会の時にね。そしてマイ・フレンド、また会おう。20年間、ありがとう」
■視聴方法(予定)
2月20日(木・日本時間)
午後11時45分~U-NEXT
■ONE171対戦カード
<ONE世界ストロー級(※56.7キロ)王座統一戦/5分5R>
[正規王者] ジョシュア・パシオ(フィリピン)
[暫定王者] ジャレッド・ブルックス(米国)
<ONEキックボクシング世界フライ級選手権試合/3分5R>
[王者] ジョナサン・ハガティー(英国)
[挑戦者] ウェイ・ルイ(中国)
<ウェルター級(※83.9キロ)/5分3R>
ロベルト・ソルディッチ(クロアチア)
ザイード・フセイン・アサラナリエフ(トルコ)
<キック・バンタム級/3分3R>
イリアス・エナッシ(オランダ)
ブレイク・クーパー(米国)
<ミドル級(※93.0キロ)/5分3R>
シャミル・エンドラン(トルコ)
オンラ・ンサン(ミャンマー)
<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
シャミル・ガザノフ(ロシア)
マーチン・ウェン(豪州)
<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
ビビアーノ・フェルナンデス(ブラジル)
ケビン・ベリンゴン(フィリピン)
<ヘビー級(※102.01キロ)/5分3R>
マウロ・チリリ(イタリア)
キリツ・グリシェンコ(ベラルーシ)
<ムエタイ・バンタム級/5分3R>
ジェイク・ビーコック(カナダ)
鈴木真治(日本)
<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
<女子アトム級(※52.2キロ)/5分3R>
三浦彩佳(日本)
リトゥ・フォーガット(インド)
<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
ケイド・ルオトロ(米国)
ニコラス・ビグナ(アルゼンチン)
<サブミッショングラップリング無差別級/10分1R>
ザイード・アルカシリ(UAE)
モハマド・アブラハム(ヨルダン)
<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
アブドゥロ・コツハエフ(タジキスタン)
ウィリアム・ポールス(カナダ)
<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
フセイン・サレム(イラク)
ヴァルテル・コグリアンドロ(イタリア)