いよいよ本日、ONE記者会見に向けて【Gray-hairchives】─14─Apr 6th 2013 Shinya Aoki
【写真】今と共通している意見、今とは違う考え。本音の積み重ねで今の言葉がある (C)MMAPLANET
23日(木)、東京都新宿区パークハイアット東京で来年3月31日のONE日本大会に向けての記者会見が開催される。
MMAPLANETでは同会見まで、ONEの歴史を選手か会計者のインタビューを通して振り返ってみたい。Gray-hairchives─1995年1月にスタートを切った記者生活を、時事に合わせて振り返る──第14弾はゴング格闘技252号より、2013年4月5日に開催されたONE08で朴光哲を破り、ONE世界ライト級王座を獲得した青木真也のインタビューを再録したい。
技術変遷、練習環境、日本への憂い、そしてUFCとONE。AOKI AWARDの原点ともいえるインタビューだった。
――昨夜、朴光哲選手を破りONE世界ライト級王座を獲得した青木真也選手です。試合前は他の試合と同じで、特別な試合ではないというコメントをしていましたが、イヴォルブの地元シンガポールでONEのベルトを巻いたという結果も、特別なものではないということでしょうか。
「他の試合と同じで特別ではないという言い方をしたのは、誰かを立てると他の人を貶めることになるからなんです。例えば北岡(悟)が一番強かったというと、じゃあ二番は誰なんだと。だから、敢えてそういうことを言いたくないんですよ。本当は性格が悪いようなことをいうと、コイツが一番強かっただとか、自分のなかではあるかもしれないです。いや、正直ありますよ。コイツが一番強かった、怖かったというのは。でも、それを言っちゃうと一番、二番が決まっちゃうから言っちゃダメなんじゃないかという感じですよね(笑)」
――次に戦う相手が控えているのに、それ以前の対戦相手と比較してもしょうがないということですか。
「40戦したなかで、40番目が決まってしまうから、ソレって気分の良い話じゃないだろうし。でも、朴さんとの試合は周りが『勝って当たり前』のようなこと言うから怖かったですよ。これはやったことがある人間にしか分からないっていう言い方はしたくないんですけど、まぁ言っちゃうと僕からすると厳しい試合でした。神経質になりやすい試合だったんです」
――試合前に朴選手の話を聞いた時にも、負けられないという神経になるのは青木選手の方じゃないかという話題になりました。
「それを分かっているから、朴さんは怖いですよ。朴さんって、凄く頭の良い人だと思うんです。何て言ったらいいのかな……。僕と北岡の言い方でいえば、わきまえているということで。ゾロ(ソロバベル・モレイラ)と戦ったら、自分の方が分が悪いことをわきまえた上で作戦を立てる。『俺は一発当てるぞ』っていうファイターじゃない。だから怖いですよね」
――その朴戦ですが、1Rに寝技の展開になっても朴選手が粘りを見せたのか。あるいは青木選手が5R制ということも考え、ダースの時も特にフィニッシュにこだわらなかったのか。いずれにせよ、練習の成果を発揮し1Rを持ちこたえた朴選手の頑張りが評価されるラウンドとなりました。
「最悪、取られなければ良いよっていう戦略を朴さんは立ててきて、取られさえしなければ25分間のなかでワンダウン取れば勝ちでしょ、みたいな。そういう風に戦ってくることもあると予想していました。だから、そういう風にさせないためにとにかく削って、朴さんがミスをしないといけなくなる状況、自爆に向かう状況を作ろうというのが僕の作戦でした」
――残り10秒になると、腕十字から蹴りに移行したのもそういう作戦があったからなのですね。パウンドとエルボー、試合後に話を聞いた朴選手は『痛かった』と言っていました。
「かもしれないですねぇ。技術的なことなんですけど……、イヴォルブにタレック・サフィジーヌが来たんですよ」
――最後のストライクフォース世界ウェルター級王者のサフィジーヌですか。
「そうです。チャトリが呼んでくれて。彼の動きを真似て、対角線上にある腕を取っているんです。最後の展開、バックハーフの時もそうなんですが、左手で朴さんの右手首を掴んでいるんです。そうやって殴る。僕は右手で殴って、右手で絞めるから左手で朴さんの右手を持っていたんですよ」
――その新しい戦い方を誌面で紹介してしまっても良いのですか。
「全然、問題ないですよ。アレ、試合を見ると分かる奴には分かるし。試合後にも、岸本(泰昭)から『凄くパンチが当たっていましたね』って連絡がきたから、『いつもと違うこと一つやっているから』ってヒントを与えたんです」
――その対角線の腕取りをサフィジーヌから習ったということなのですか。
「もう、絶望を味わい続ける日々でした(笑)。試合の1カ月ぐらい前からヴァーリトゥード・スパーリングの相手がタレックと、ジェイクなんです」
――ジェイクというのは、ライトヘビー級のファイターでNCAAを制したジェイク・バトラーですね。
「デカいでしょ? それとゾロですよ。だから、もう毎日が絶望なんですよ。タレックなんて1階級上のチャンピオンで、彼に殴られるとダメージがなくても、『死んじゃうんじゃないか』って思って。そんな練習のなかで、こういう風に当てるんだっていうのが分かって来たんです(笑)。これがMMAの殴り方なんだなって」
――日本の練習で青木選手が追い込まれたり、絶望を感じることはありましたか。
「僕、2カ月シンガポールに居たんですけど、3回泣いているんですよ……。アタチャイ(・フェアテックス)に泣かされて(笑)。ミット打ちさんざんやって疲れている時に、16オンスをつけてスパーをするんですけど、向こうは優しさをもってやってくれるのに当然、圧倒されるんです。顔に来るぞ来るぞって見せて、ボディを打たれたりだとか、そういう風に15分間もて遊ばれ続けると、『俺、何やってるの?』って感じてきて。苦しくて泣くんじゃないんです」
――悔しいからですか。
「情けなくて。ヘッドギアを付けているから、彼らは泣いていることに気付いていないだろうけど、もう『俺、どうなんだよ』って感じで。タレックとかとやっていてもボコボコにされるし、ジェイクにもやられてばかりで」
――ジェイク・バトラーは体格が違いすぎますからね。それはしょうがないのではないですか。
「技術でない部分でやられてしまうんですよ。『なんで、俺の方が上手いのにやれるの?』みたいな。で、練習後に家に戻るとUFCランキングの7位ぐらいにタレックが入っている。それが心の支えになっているようなもんでした(笑)。だから、今回の試合に関していうと、絶対に負けられない状況だったから、自分のなかでは追い込んで2カ月やり切れたことの方が、試合で勝ったこと以上に評価しています」
――その試合なのですが、朴選手が初回のピンチを凌いだことで、2Rを迎えるに当たり青木選手に焦りが生じるということはなかったようですね。
「僕、関節技を取ろうとしていないですよ。一本を取るファイターだと思ってくれるのはありがたいことですが、それは買い被っています。僕がサブミッションを極めるのは、相手が自爆したときですから(笑)。ホント、寂しい言葉になっちゃいますけどね。
だから、日沖(発)君と同じです。相手が自爆すれば取るけど、しなければそのままのポジションにいる。僕にとって1Rはいつも以上にサブミッションを仕掛けたラウンドだったんです。それができたのも、追い込み練習のおかげでスタミナに関しても凄く自信があったからで。1Rを終えたときも、試合が終わったときも息が切れなかったんです」
――相手がミスをしたときにサブミッションを極めるということですが、ルポン戦では自ら流れを作って三角を極めたように見えました。
「アレを教えてくれたのは、(レアンドロ・)イッサなんです。だから、イヴォルブの環境ってムエタイのスペシャリストがいて、柔術のスペシャリスト、ジェイクのようなレスラーというように、トータルパッケージが強い人間よりも、パーツが強い人間が揃っているんですよね。そんなMMAとしては独特な環境でやっているから、練習ではやられ続ける(笑)」
――パーツとパーツを自分のモノにコーディネイトできるファイターが、グンと力をつけることができそうですね。下手をすると、自分でまとめ上げられないファイターは……。
「終わっていきます。一つひとつの練習についても、そういう練習なんだからって、伸ばす部分があるんだと割り切って取り組んでいます」
――学んだパーツを取り入れたトータルパッケージで強さを実感できる練習というものは存在しているのですか。
「正直、2カ月いて『俺、強くなっている』という感覚はなかったです。MMAスパーリングといっても(手帳にメモった練習内容を確認して)、16オンスのグローブをつけて5分3Rを元立ち、MMAグローブ装着で5分2Rで当たりを2か3、次に元立ち側に回って2Rやるんです。元立ちのときは、威勢のよいタレックとか、ジェイクが来るわけですよ。これで合計7Rを1時間半の午前中のトレーニングにやってしまう」
――それは想像を絶するハードさですね。
「で、午後はランニング30分、ムエタイのミットを5分5Rやって、スパーリングを10分やってからサーキット」
――それが青木選手にとって、イヴォルブでのルーティン・トレーニングということなのですか。
「試合前の平均メニューですね(苦笑)。だから北岡さんが痩せていったっていう、の分かりますよね?」
――それだけ練習すると、本当に休息が大切になってきますね。
「もう、自主的にすぐに寝るようになります。練習の前後に糖質をまとめて摂るようになるし、腹いっぱいなんて食べると練習に影響が出てしまうから、無茶な量は食べなくなります」
――それだけの練習をして、睡眠だけで疲労回復は可能になるのですか。
「そこにイヴォルブの練習のミソがあります。追い込みの週でもハードなトレーニングが続くと、抜ける練習時間が用意されているんです。月曜と火曜をやり込むと、水曜の午前中のトレーニングは軽めにやって、午後はガッツリやるとか。朝にガッツリやると、午後はノーギで軽くするとか、打ち込みしかやらないだとか」
――その練習をバトラー、サフィジーヌ、ゾロと繰り返すというわけですね。
「ただ、もう一つイヴォルブ・マジックがあります。練習量は多いですけど、スパーリングを徹底してやるのは、週に一度だけになっています。ムエタイのスパーはアタチャイが相手だったりして、ダメージやケガの恐れがない。ヒース・シムスが練習にしっかりと目をやっていて、動きが落ちたりとかすると、『お前は、ここは少し休め。練習をやめておけ』なんて言ってくる。あまり日本人の思考にはない指示もあります」
――なるほど。それはヘッドコーチというトレーニング全体を統べるポジションを持つ人間がいる利点ですね。
「そうなんですよ。日本と違うところといえば、日本では試合の2週間前になるとクールダウンで、練習を減らしてきたんですが、イヴォルブではスパーの数は減らすけど、ムエタイの練習を変わりなくやるんです。スタミナに関係してくるトレーニングは続けるんですよ。最後の週の月曜日まで、5分5R蹴らされています(笑)」
――心肺機能は高めたままで試合を迎えるということなんですね。
「習慣になっているから、疲れも残らない程度で収まっているんです。他でもミット打ちだけで、スパーはカットする確率が高くなるのでやらないだとか、色々細かく管理されています。イヴォルブの練習も以前はもっと柔術よりだったのが、ヒースが来てからよりバランスが良くなっています。スパーも立ちレスリングに変わりました。寝た状態でのスパーリングは週に2度だけ。ドリルも朝は亀からで、午後のノーギはサイドからとか」
――シチュエーション・スパーになっていると。しかし、練習で泣いたと言われていた青木選手ですが、練習を振り返る時の表情は最高に楽しそうですよ。
「ホント、面白いですよ。高島さんはムエタイ・マニアじゃないから、分からないかもしれないですけど、イヴォルブってシットヨートン系なんですけど、セーンヒラン・ルークバンヤイとか、ヨードブラガオ・ルークバンヤイっていうルークバンヤイ系のタイ人も来ているんです。ルークバンヤイってボクシングもできて、2007年にムエタイのMVPジムに輝いているところなんです」
――ブラジリアン柔術でいえば、グレイシー・アカデミーのインストラクターとアトスのインストラクターが同時にいて、指導を受けられるということですか。
「そう、そういう感じなんです(笑)。これができちゃっているのが、イヴォルブの凄いところ。シットヨートンとルークバンヤイではミットの持ち方も全然違うんです」
――青木選手の格闘ジャンキー度が伝わってくる話ですね(笑)。
「本当に凄いところだから(笑)」
――強くなるために没頭する集中力、ここは青木選手はやはり他の多くの選手とは違う特別なモノがあります。そして、過去に拘らない。常に日本のMMAの代表という立場を取り、そこにそった言動をしていても強くなるためには……。
「そこをパッと出ちゃいますから」
――そう。そこなんです。強くなるためには、どんな後ろ指さされようとも気にならない。多くの人が気にしてしまうことを気にしない。イヴォルブで練習し、ここまでチームとしてやり込んだことが無いという発言などもそうですが、過去の人間関係は斟酌しない。現状に没頭し、その良さを気にすることなく言葉にできる。
「チームという部分では、僕のなかですみ分けができていて、僕とか八隅さん、北岡さんってあくまでも秩序や統制があって集まっているわけじゃなかったですから」
――一匹狼の集まりということですね。
「それは日本のMMAのシステム的な問題なんです。今、シンガポールにONEがあって、イヴォルブがあるということを考えると、ファイターが強くなるためには、社会、文化、経済の話に結局は行きついてしまう。日本のソコの部分を変えるには、政治家にならないといけなくなる。
僕は政治家にはなれないから、コツコツと格闘技をやるしかない。よく米国のメガジムって言いますが、日本でメガジムを作るのは無理じゃないですか。米国のMMAに関係している人間も、日本のように終身雇用制でなく、フリーランスの契約みたいに働いている。それが社会システムの違い。そこで彼らと競い合うことはできない」
――そういう風に言い切れてしまうこと。日本を切って、シンガポールに拠点を作ってしまい「最高」と言える点が、青木選手らしさであり強味、そして特異性だと思います。
「最高というか、僕が言いたいのはこれからの若い選手はどうするのかってことなんです。僕らはある種、自分勝手な言い方をするとPRIDEがあって、名前を世界に広めてもらえた。じゃあ、今……、山上(幹臣)選手や久米(鷹介)選手とか、どうやってUFCへ向かっていくのか。ステップアップのようなマッチメイクが国内にあるのかって話になってくるじゃないですか」
――そこでアジアに目をやる必要が記者としても出てきたと思いますし、選手も同じだと思います。4月にONEとRoad FC、そしてLegend FCが開催されますが、ラインナップ的にはRoad FCがONEを凌駕してくるかもしれない。特にアンダーカードを見ていると、韓国勢の成長が怖いですよ。
「ヤバいですよね。ONEはややジャパニーズMMA寄りなんです。最初にバーンとやって、ちょっと締めてきたって感じはあります。切るべきところを切る、だからこそONEの力がこれから試されるんじゃないかなって。それも怖いです。そんななかで日本の若い選手は黙っていて、ジッとしていてもキャリアアップはできなくなってきた」
――国内では、懸命に努力している。言い方を変えると現実に抗い、現実にあがいている選手も多い。現状、将来、過去をはかりにかけて、プロモーターとやりあわないといけない時代になっています。名前のある選手こそそうですし、青木選手の盟友、北岡選手もその一人でしょう。
「コレ、書いちゃって良いですけど。北岡さん本人にも言っていることだけど、若さの漲りでごまかしてきた、そこのツケが回ってきているから、今、細かいことを取り戻すという意味でもやっておかないと。もう、貯金の切り崩しになってしまうって」
――青木選手は日本人グラップラー型MMAファイターとして、非常に自分のスタイルに適合したフィジカルの持ち主だと思うんです。その青木選手は、若い頃にイケイケでやって来た部分はなかったのですか。
「僕が助かったと思っているのは、ちゃんと柔術をやっていて、今もムエタイをやっていることですね。MMAだから、そこは良いでしょって思われそうな部分を、若い頃にやってきていた。基礎をやってきたからアジャストもできる。イヴォルブの柔術が素晴らしいと思うのは、本当にベーシックを教え込むんです」
――ベースがあるからベリンボロも50/50も生かされる。
「そう。こないだ技術本を出させてもらったんですけど、あれって僕のなかでベストなんです。自分が使っているなかでベストのテクニック。それでも『こんな基本的なことしか載っていないんですね』みたいなコトを言われることがあって……。『アレッ』って(笑)。でも僕、このパスガードは実戦で使っているものなんですけどって。
ボディビルダーも週末ビルダーの人たちは、流行りモノのサプリメントを飲んで、毎日やっている人は基本を大切にしているそうです。そういうことなんでしょうね。下積みがあるかどうかって違いますよね。だから、勝負はここからですよね」
――下積みがある青木選手が、これからより強くなるために、これだけ充実の日々を送っています。では、強くなった先の話をさせてください。
「強くなっているのかどうか、実感はないですけどね(笑)。楽しいだけで。まとまりがあるって。チーム全員でアップして、チーム全員で『行くぞっ!』ってケージに向かう。だから、イヴォルブで練習しているとONEに出たくなるんです」
――ONE世界ライト級チャンピオンになりましたが、今後、王座を賭けて戦いたい相手は青木選手のなかでは存在しているのでしょうか。それとも、用意されたファイターと戦うということになりますか。
「戦いたいっていうよりも、練習が凄く充実しているから、如何にここでの練習を上手くやっていくかっていう気持ちの方が強いですね」
――試合に出るための練習ですし、どのような相手と戦っていくかで、練習がいかに結実するかということになってくると思うのですが。
「意味のない相手と戦っても、意味がないということですよね」
――意味がないとまでは思わないですが、実名を出すと青木選手の練習の成果を見る機会が、ルポンよりもジェイコブ・ヴォルクマンの方が楽しみだなぁと(笑)。
「分かります(笑)。それも分かります」
――UFCでリリース組が増えてくると、ONEで青木選手が元UFCファイターと戦う姿が見たいと私でなくても、ファンも思っているでしょうし。そのチャンスがONEで戦っていて、巡ってくるのかが気になります。
「対戦相手という部分は、マネージメントもチャトリに任せているのが現状です。だから、次の試合もチャトリが6月のメタモリス柔術の話を持ってきてくれて」
――エッ、あのポイントなしのプロ柔術のメタモリスですか?
「ハイ。『MMAかメタモリスか、どっちをやりたい?』って聞かれました。『5月末のONEにねじ込むこともできるけど、どっちが良いか先に僕の意見を聞きたい』って」
――で、青木選手の答はメタモリスだったわけですか。
「良い経験になるから、ノーギのテクニックで勝ち負け抜きに考えても良いなら、メタモリスで大物に触れてみたいって答えました。できるだけ強いヤツとやらせてほしいと。チャトリも凄く良い経験だから、メタモリスはやるべきだって言ってくれて」
――そして、対戦相手の方は?
「クロン・グレイシーです」
――!!! それは本当に見たい試合です。メタモリスの第1回大会はすべて道衣着用の試合でしたが、クロン戦はノーギで行なわれるということですか。
「それはまだ分からないです。でもクロンと戦えるなら、どっちでも良いです」
――グレイシーと柔術で戦うというのは、本当に魅力的なオファーですね。
「グレイシーと戦うということは、誤解されるかもしれないけど、勝ち負けじゃない」
――グレイシーと戦う、そこに勝ち負け以上のものがあるのは自分でも共感できます。ただ、同時に青木選手はクロンと戦うことで勝ち負け以上の何を求めているのですか。
「自分がどこまで本物を知っているか。例えば、本当に最高のコーヒーを飲んだとしても、ずっとインスタントのコーヒーしか飲んでこなかったら、その味なんて分からないじゃないですか。あっ、これはあのコーヒーとは違うみたいな――、そんな戦いは絶対に良い経験になる」
――青木選手、申し訳ありません。やはり青木選手に話を伺うと、最終的にはこの話題になってしまうのですが……。本物を知りたい、そして強くなるために努力を続けている青木選手なのに、なぜMMAでは……。
「UFCじゃないのかってことですよね(笑)」
――その通りです。
「それは凄く分かっています。わきまえているっていう話を最初にしたじゃないですか。僕自身、わきまえることができています。今、UFCに行ってもトップには勝てない、正直。ベン・ヘンダーソンに勝てるか――。ギルバート・メレンデスに勝てるか――。エディ・アルバレスに勝てるのか。正直、『ハイ』って言えないですよ」
――青木選手は確かに「今」、UFCに行っても勝てないと言われましたね。
「だから、良い環境で練習することが、僕にとって凄く重要なんです。例えば今、UFCに行って、死ぬか生きるかっていう状況で戦っても現役生活は3年しか続けられないかもしれない。それをこの恵まれた環境で練習をし続け、家族を養えるファイトマネーを手にしながら実力をつけていく。そうやって完成度が100の状態でUFCに行けたなら、5年間UFCで活躍できるかもしれない。この2つのコトを考えると、どちらの方がベターなのか――。そういう考えで、僕はいるんです」
――仮にですが、今もUFCで5年間活躍できる自信があれば?
「行きます。チャンピオンになれるか、なれないかだから。今の僕にそこまでの自信も、自覚もない。それでもUFCで戦えるチャンスを逃しているのは格好悪いと思われるかもしれないですけどね」
――いやUFCのトップ戦線の戦いを見ると、慎重になるのは理解できます。そして、常に青木選手は生活の面でもベターの状況を選択している。
「ちょっとUFCに食いついて、2、3戦でUFCでのキャリアが終わってしまうことは、僕にとっては意味がないんです。やるんだったら、トップ戦線に絡まないといけない。ウィル・ブルックスじゃないけど、強い奴はいくらでもいる。こないだWSOFでJZ・カバウカンチに勝ったジャスティン・ゲイジーとか。イヴォルブにいるエディ・アンだって、全然大したことないって思っていたら、打撃めちゃくちゃ凄いですからね」
――言い換えるとそういう選手たちでなくトップに絡むための今、イヴォルブであり、ONEであると。
「意地になってUFCに行かないなんて言っているわけじゃないし、チャトリともUFCについては話をしますよ」
――チャトリは日頃から、ベストの青木真也になった時にUFCで戦わせると口にしていましたよね。
「僕自身、『行くな』と言われた何年間を過ごしてきました。まぁ、それはもうどうでも良くなっている部分でもあるんですけど、UFCでトップになる実力に達していない気持ちもあるので、全てチャトリにまかせてあります」
――青木選手の進歩と現状のUFCファイター、そして青木選手が口にしたゲイジーのような上を目指すファイターの進歩の度合い、そこが勝負になってきますね。
「怖いのは若くて頑丈な奴。僕らみたいなもう40戦戦ってきた人間は、そういう連中と頑丈さを争っても勝てない。それこそゲイジーのようなキャリア8戦ぐらいで、フレッシュな人間と戦っても。そうなると、もう少し技術的な部分を磨いて、ホントにマイク・パイルみたいな渋さを持たないとダメですよね(笑)」
――進歩の競走で遅れだし、もうこのタイミングしかないという状況が訪れる可能性もゼロとは言えないですしね。
「仮にそういう状況に陥ったとしても、僕自身、40歳まで現役をやろうと思っています。そのなかで35歳ぐらいが一番強い時期だろうなと予想もしているんです。ただし、MMAの進歩に取り残されるような状況になるのなら、そこまでの一番良い時期にUFCへ行く選択をすることは有りだと思っています。そんな時が訪れても、訪れなくて順調に強くなっていけても、格闘技の気持ちというようなものを持ち続けていたいんです」
――格闘技の気持ちとは?
「サブミットする。テイクダウンする。ノックアウトする。そういう気持ちを持ち続けていたい。決着させる格闘技をやり続けたいんですよ。デミアン・マイアやジェイク・シールズみたいに」
――記者として取材活動をしてきて自分が知っている限り、岡見勇信選手、日沖発選手、そして青木真也選手ほど強くなることに純粋に努力している選手はいないのではないかと思っています。そんなことない――と声を挙げてくる選手が多いことを願っていますが。
「フフフ。全く話が飛んでしまいけど、僕と朴さんの試合を『見たくない試合やな』って言ってくれたけど、僕は中村大介と北岡悟の試合は、それ以上に見たくない試合です。誰が得しますか? この試合で」
――……。
「大晦日にウィル・ブルックスに負けた北岡さんが都落ちして中村大介とタイトルマッチ。勝って中村が得ですか? 得っていう言い方スイマセン、良くないですよね。でも、北岡さんが勝ってDEEPのチャンピオンになって得るものがありますか?」
――ある程度の名前のある日本人同士になると、凌ぎ合いがなくなってくる。海外で戦うために傷つきたくない選手も出てくるでしょう。だからこそ、国内の格闘技が盛り上がるには、シビアな凌ぎ合いが必要だと自分は思っています。
「それが必要になってくる。その姿勢を誇示するというのも分かります。でも、DEEPの立ち位置とかも切ないなって。もちろん、僕は北岡さんに勝って欲しいですよ」
――仕事を与えてくれる人のために頑張りたいと思うのは、人間の良さです。と、同時に切なさ、哀しさでもあると自分もこの歳になって感じることはあります。
「切ないですよね。北岡さんに勝ってほしいし、負けると切ない。でも、中村大介がここで負けると、何してんの?という切なさもある」
――そうやってシビアで、切ない試合で勝って生き残ってくのが格闘技本来の有り方だという感じもしますし。ONEでもイッサがサーデュラエフに負けていると、もう終わっていたかもしれない。それと同じですよね。
「そうですね。イッサは本当に頑張っていたんです。足が蹴れなくなっても、練習を休まなかったし。あんなに不器用でも、本当によく練習をする」
――それでも負ければ終わり。格闘技とはそういうものなのではと……。いずれにせよ、青木選手の次の実戦がメタモリスになるとすればMMAの試合は夏ごろ、あるいは夏過ぎまでないということでしょうか。
「まずはクロン・グレイシー戦を頑張りたいなと思います。その次は、今はまだ分からないですけど、またメタモリス用のキャンプで、シンガポールに戻って来たいですね。今、チェックマットの黒帯ブルーノ・プッチが、ADCCのトライアルに出るから一緒にやろうって練習してくれていて。5月に30歳になるんですけど、こんなに格闘技が楽しくなるなんて思っていなかったです」
――そうですか、青木選手も30歳。キャリアは40戦を迎えた。今後は体のケアも重要になってきますね。
「そこも凄く気を付けています。トレーニング自体を増やしつつ、大切なのは格闘技という部分もありますし」
――またしつこくMMAの試合について伺いますが(笑)、ONEライト級戦線では5月にエドゥアルド・フォラヤンがカメル・シャロルスと戦います。
「ちょっとねぇ、そことはないですよね」
――2月のインドネシア大会ではヴィシール・コロッサに勝ったローウェン・タイタネスが、URCCでフォラヤンに勝っている。現状勢力を考えると、ONE内の対戦相手はこの辺りぐらいでしょうか。
「う~ん、そこには……ですよね」
――となると、やはり北米から選手を引っ張ってきてほしいということになる?
「ゲイジーとか、若い奴とやってみたいですね。できないことかもしれないですけど、下から伸びてきた勢いのある選手と戦ってみたいんです」
――個人的にはUFCで勝ち越しているのにリリースされたポール・サスとか、見てみたいですね。
「UFCリリース組でいえば、ジェイコブ・ヴォルクマンは……アントニオ・マッキーとやってスプリット判定勝ちですよね。うん。日本の若手とされる子たち――本当に僕のことを『この野郎』と思っている――『なんだよ、アイツ。全然UFCに行かねぇでユルい奴とやって、いい金貰ってんだ』って言っているような子に噛みついてきて欲しいですよね。そういう気持ちを常に持っていて欲しい。ISAO君とか、ね」
――日本の70キロ、青木選手が言われているようにどれだけ下からの突き上げがあるのか。そこも将来的に心配な要素です。
「まぁ、65キロもそうですけどね。だから、僕がフェザー級に落とすかもっていう話が出たというのは、チャトリが言うには『UFCで戦う時にフェザー級でどうなんだって?』っていうことだったんです。UFCのライト級でお前、一番になれるのかって尋ねられると、正直なところ『いやぁ』って首を捻ってしまう。
だからって、ならジョゼ・アルドなら勝てるということじゃないですよ。サイズとか含めて、可能性があるのはどっちだという話になったときに、『いやぁ』となって、落とせないこともないから、勝負する時はソレもあるかもしれないって言ったら、ああいう風にモノゴトが伝わってしまったわけなんですよ(笑)」
――青木選手のパフォーマンスがフェザー級でライト級以上になるのか。そして対戦相手との力と相対的に見てどうなるのか。そこを見究めないといけないですね。
「ケニー・フロリアンのこともあるしね。それでも乾坤一擲、彼もフェザー級に賭けたわけですから。その乾坤一擲、勝負を賭けるという部分を損得勘定なしで、僕も視野にいれている。自分もまだ勝負師なんだって思いますね(笑)」
――照れ笑いは必要ないですよ。
「ハイ、勝負したいってことなんです。本当にフェザー級で戦うならって考えますし、日沖君が厳しい戦いをしているのを見ると、どうなの?って考えにもなる。そうやってチャトリとも話していると、『ベンソン・ヘンダーソンに勝てるのか。あんなデカい奴に』って尋ねられたんです」
――そこを勝てるようにするために今、イヴォルブで積んでいるのではないのですか。
「ここでいう『勝てるのか』っていうのは、10回戦って3回勝てるかもっていうんじゃなくて、物質としての凄さとして……。僕の力量は80で、ベン・ヘンダーソンは70ですっていうような。難しいことなんですけど、分かってもらえますか? 記事にし辛いですよね。物質として、密度というか」
――う~ん、存在感としての強さということでしょうか。
「そうそう。そういうことです」
――いつまでもBJ・ペンって強いと思ってもらえる。そういうことですよね。青木とベン・ヘン、どっちが強いという問いに、即「青木」と感覚で選んでもらえるような。
「朴さんとの試合を振り返ると、ここまでワンサイドになると思っていなくて。それはイヴォルブで毎日、やられ続けていたから。で、試合をして嬉しかったのが、やられ続けていたけど俺、伸びているって確認できたことで」
――朴選手は「当たろうが、当たるまいが一発を見せておくべきだったのかも」と言っていました。
「一発、博打を賭けるってことですよね」
――一発を見せることで、青木戦のその後の動きに影響を出したいということでしたが、ここまで青木選手の話を聞いていると、一発貰わない限り、その後に影響はあまり出ないほど、しっかりと積んできたものがありそうですね。
「イヴォルブに来て、僕が一番伸びている部分はムエタイではなく、テイクダウンですから。あれだけムエタイをやらされている成果なんですけど。どこかで書いていましたけど、テイクダウンはパンチの間合いに入ると可能になるって。それができるようになったんです」
――メレンデスのようなファイターに対しても、そこまで打撃でセットアップできれば。今の青木選手なら、自分の形で組みつくことができたかもしれない?
「情けない……、本当に恥ずかしい話なんですけど、あの時は世間知らずだったし、世界を知らなかった。『井の中の蛙』って自分で言っていましたけど、その部分を本当に分かっていなくて口にしていたんです。全く知らなかったですもん。『WHY?』みたいな感じで。だから、もっと早く長南亮に出会っていれば、もっと早くイヴォルブに出会っていれば――と正直、思わないことはないですけど。でも、早く出会っていたら、それが言えるようになる僕が必要だった、それ以前の出会いがなかったかもしれない」
――それは誰にも分からないことですよね。
「そうなんです。それに30歳前に出会えているんで。一生出会えなかったかもしれないのに、出会えている。僕は良かったと思います。チケット売りで試合を組んでもらうとか、そういうことがなくて。そんなことばかりで、日本の格闘技がユルくなっている」
――おぉ、言いますねぇ(笑)。
「今だったら、俺、言えますよ。チケットで試合を組むから、引退もない。負けているけど、チケット売るから使っちゃう。僕はプロモーターじゃないから言えるんですけど。難しいですよね。それすら分かっていなくて、ガムシャラに戦っていれば幸せかもしれないですけど、以前の僕はソレが見える立場だったから切なかった」
――今はそういうプロモーションの背景を考えることなく練習し、試合に出ることができるという部分で、楽ですか。
「楽だし、格闘技の嫌なところと関わらなくて良いから」
――全てが良し悪しで、その嫌な部分があって青木選手の環境があったことも確かでしょう。
「立ち位置なんですよね……。今は楽って言いながらも、昔は青かったと思うこと、昔は楽だったと思うことも同時にあります。定期的に試合があったことに対して、良かったと振り返ることもできます。強くなるってことだけを考えていた時、2006年なんて7試合もやっているんですよ。試し切りする時って必要で、それがあるのは良かった。今は良いものを創り上げて試合をしたい。なんで僕がDREAMと一体化していたかというと、自信がなかったから。『俺、自分の実力だけでやっていけねぇじゃん』って思う部分があった」
――その「やっていけない」というのは「暮らしていけない」ということですか。
「生活も含め、プロテクトされないと試合も組まれないっていう恐れを持っていました。今だから言えるコトで、当時は『実力でやっていける』って、インタビューとかでも言っていましたけど(苦笑)。最初にJZと戦った時とか、何とかしても無理難題を受けてでもやっていかないと、居場所がなくなるって恐れていました。だから長島(☆自演乙雄一郎)との試合もやったし。そうしないといけないっていう、最初に感じた恐怖をずっと引きずっていました」
――そんな状況で、そのルールで戦うことが何になる――なんて取材で尋ねられても、思っていることも口にできないですね。
「まぁ、自分で引き金を引いてしまうということになりますよね。団体の象徴という部分もあったし、その座を自分で欲していたから、そこにいたというのもありますし。実力がついてきて、自分に自信がついてきたからこそ、関係が以前のようでなくなったというのはあるのかもしれないですね」
――ジョン・ジョーンズのように試合を断って、イベントがキャンセルになるなんてこと、普通はできないですからね。
「アレも立ち位置の問題ですよね。なんといっても、ジョン・ジョーンズは強いですから。僕はDREAMが始まった2008年から、桜庭(和志)さんになりたいって思っていた時期があったんです。桜庭さんはトーナメントに出たくなければ、『出たくない』って言える。TV局にも『嫌だ』って言えちゃうんです」
――桜庭選手は「ノー」と言えるだけのモノを自分で築きあげていたのですね。
「僕にはそこまでの自信がなかった」
――今は自信がありますか。
「なくても、そういうことを考えなくてよくなりました。変な恐怖感とかはなくて、ダメなモノはダメと分かるようになりました。無理なモノは無理って。なんだろうな……、色んな生き方があっても良いと思うし。昔は道場なんかやりたくないって思っていたけど、いつか道場を持ってみたいと思うようになったり。
植松(直哉)さんのフェイスブックとかで、その日の指導を振り返っているのを読んで、羨ましいと思うようになったんです。宇野(薫)さんが常に良いコンディションを保っているのを見て、こういう生き方、こういう価値観を持つことも格好良いなって思えるようにもなったり。人間って。だんだん変わってきますよね(笑)」
――変わらない人がダメだということは全くないですが、人間が変わるのは当然だと思います。以前は自分と同じ考えでないと、一緒にいられなかったのが、そうでない人の生き方も賛同できるなど、それも人間の変化だと思います。
「以前はギリギリで、許容範囲が小さかったかもしれないです。北岡さんとも話すんですけど、結局は好き嫌いですよね。良い悪いじゃなくて、何が好きなのか。宇野さんのような生き方なのか。郷野(聡寛)さんのような生き方なのか。(佐藤)ルミナさんのような生き方なのか。良し悪しでなく、好き嫌いで良いじゃないかって。
で、誰が誰を好きなのかも、それぞれで個人の自由だって思えるようになったし。『どうしても、UFCで戦いたい』っていう若い連中、どうしても行きたいなら今、出場させてもらっているイベントの意に逆らっても行くぐらいの気持ちじゃないとダメですよ。そこで踏みとどまっている時点で、僕からすればUFCはないです。それぐらいの情熱がないと」
――こうやって久しぶりに青木選手の話を伺うと、上から目線になってすみませんが、人間として幅が広がったように感じました。それと雑誌のインタビューでも、言えることが増えましたね(笑)。
「本当に(笑)」
――こんなに読者に失礼な話はないのですが、以前は活字にできない部分での方が、私は青木選手と楽しく話ができると常に思っていました。
「なんかねぇ、ソレはねぇ……。エディ・アルバレスに勝った時、その直後のインタビューでBJ・ペンの名前を出すと、ちょっとなぁっていう反応があって。何なんだろうなって思ったことがありましたね」
――私はあの時は、原稿チェックでBJの下りは削除されるので、デザインをやり直すことになるデザイナーさんに申し訳ないと思っていました。でも、雑誌ができたらBJに対する青木選手の言葉が残っていたので実は驚いたんです。
「そこらへんはもう、今は自由に言えるになりました」
――結果的に、それほど削られるということなかったのですが。でも、やはりある種の抑制作用があったのも事実です。
「本当の部分で自分って、なかなか伝わっていないですよね。未だに柔術の練習で僕はイッサ達にボコられているんですけどね。そういうのを伝えてもらっていない(笑)」
――では、次回はイヴォルブでの青木選手の練習を取材できるように努力します。
「メッチャ、面白いのでぜひ来てください。『ムエタイの練習で一番ヒィヒィ言っているのに、お前は全く試合で使わない』ってタイ人に笑われていますから。色んな科学的なトレーニングをする人も多いですけど、ミット打ちが一番体力がつくと思います。体幹もそうだし。イヴォルブはチャトリが真面目な人だから、真面目じゃないタイ人は居つくことができない」
――蒸し暑くて体調が悪くなってしまいそうなシンガポールですが、真面目なタイ人とヒィヒィ言う青木選手をまた尋ねたいと思います。
「暑いのは3月と4月だけだから(笑)。メタモリスのためにこっちに来て練習したいと思っています。それに舐めているわけじゃなくて、グラップリングの競技特性としてメタモリスの1カ月半後にMMAの試合には出ることも可能なので、そのまま2、3カ月、こっちで練習したいと思っています。
だから、ぜひジムの方に来てください。メタモリスの前もミットを蹴っているので。格闘技の本質として、ぶっ倒す、ぶん投げるって部分はMMAもムエタイも、柔術も変わりない。だから、もうちょっとゴン格もMMAばっかじゃなくて、ムエタイの特集とか、試合とか載っけてくださいよ」
――その意見もしっかりと書いておきますので、編集部の原稿チェックで削られないことを願っています(笑)。今日は帰国当日の忙しいところ、ありがとうございました。
「こちらこそ、ありがとうございました。僕のセコンドがアタチャイだったことで、もっと騒いでくださいね(笑)」