【Quintet 02】エディ・ブラボーに聞いた柔術とMMA「エオキの言う通りだな」
【写真】一躍名前が挙がる2日前のPJ・バーチ、ジオ・マルチネス、エディ、リッチー・ブギーマン・マルチネス、アミール・アラム、アダム・サックノフ(C) MMAPLANET
16日(月・祝)に東京都大田区の大田区総合体育館で開催されたQUINTET02で、エディ・ブラボー率いる10thPlanet Jiu-Jitsu勢が見事に優勝を果たした。
MMAPLANETではクインテットに関して、大会2日前にエディにインタビューを行い、その意気込みを語ってもらった。
その一方で、蒸し返すつもりはないが、エディだからこそ聞きたいことがあった、─それが柔術とMMAの関係性だ。昨年のMMAが戦えない人間が柔術を戦うという青木真也発言──に対し、エディは我々とは全く違うチャンネルで語り始めた。それこそエディ・ブラボーという柔術家のアイデンティティが日本の柔術家と全く異なる証でもあった。
──ラバーガードはMMAで柔術家が勝利するためにエディが創造した技術でもあります。そのエディだからこそ、一つ伺いたいことがあります。
「そうだ!! ラバーガードはパンチを受けず身を守りながら反撃に移ることできるガードポジションだ。で、聞きたいことというのは?」
──昨年のこの時期に青木真也選手が、柔術はMMAができない人間が戦うものだという趣旨の発言をして、日本の柔術界で論議の的になりました。
「誰がそんなことを? シンヤ・エオキが言ったのか?」
──ハイ。打撃ができないから柔術をするんだろうと。業界を盛り上げるために言葉ではあったのですか。
「ハハハ。それは、エオキの言う通りだな」
──えっ!!
「多くの連中がそうだろう」
──エディもMMAを戦っていませんが……。
「柔術をやっていくうえで、俺はムエタイがどうであろうが構わない。ムエタイはベストだ、打撃では。ムエタイにテコンドーを混ぜるのがベストだろう。それは分かっている。テイクダウンだとレスリングがベストだ。
ただ、俺は柔術のことしか考えていない。だからコンバット柔術を始めたんだ。それがEBIの次のフェーズだ」
──掌底打撃ありの柔術マッチですね。
「ピュア・コンバット柔術こそが、柔術の本来の姿だ。次のEBIは全てコンバット柔術ルールで開催される。16人のトーナメントだ。打撃があっても柔術はできる。俺にとって柔術とは打撃ありなんだ」──MMA云々ではなく、打撃のある柔術こそが柔術だと?
「10thPlanet柔術のなかにはMMAを戦っている者もいる。ただし、MMAはストライカーのための戦いだ。1Rが5分というタイム自体が打撃系格闘家のためにある。スタンドから始まるのはしょうがない。ただし、テイクダウンで上を取った状態でラウンドが終わったら、2Rはグランドから試合が始まるべきだろう。
そして、寝技を避けるのではなく寝技を戦え。寝技を戦わない連中は逃げていることにならない。柔術を戦いたくないヤツはホールドだけしていれば、レフェリーが助けてくれる」
──立ち技ではクリンチにいくと逃げで、寝技はそうでないと。
「ルールがそうした。MMAはキックボクシングに少し柔術が加わったスポーツなんだ」
──……。
「俺は柔術のことしか考えていない。キックボクシングのことは気にしていないんだ。キックのことは尊重している。キックボクサーになりたかったぐらいだからな。でも、今の俺はキックボクシングはどうでもいいんだ。コンバット柔術とサブ・オンリーしか興味はない。それが柔術を究めることになる。
本音を言えばUFCですら、興味は減り続けている。UFCでは素晴らしい柔術家たちが戦っている。でも、UFCは柔術家に適していない。俺はグラップリングが見たいんだ。今のUFCではグラップリングが見られない。
キックボクシングが好きな連中は、グラップリングを見ないだろう? それと一緒だ。俺はキックボクシングは見ない。ただ柔術が好きなんだ。UFCのビッグマッチは見るけど、特に興味があってということでもないんだ、もう」
──そこまでなのですね……。
「なぜなら、ルールで柔術をMMAから締め出したからだ」
──そのMMAルールで柔術の技術で勝つというシーンに惹かれます。
「簡単じゃない。UFCで戦うには高度なキックボクシングと高度なレスリングが必要になってくる。アニマル……モンスターになる必要がある。ごく僅かな人間しかMMAは戦えない。
ジョージ・ソティロパロスのガードワークは素晴らしかった。歴代のライト級ファイターでもトップだ。でも、その素晴らしい技術をルールと裁定基準がスポイルしたんだ。
あれだけレスリングだらけになると、柔術は必要ない。ベストガード・ファイターがレスリングをしないといけないのだから。その結果、UFCで戦うと決めている時点で、柔術を究めることとは溝ができる。そういうメンタルでないと、UFCでは戦えない。その点、コンバット柔術はキックボクシングでも、レスリングでもない。ピュア柔術だ」
──ガードからコントロールが評価されても、変わらないでしょうか。
「評価されていないから、言ってもしょうがない。あれだけ進化した打撃とテイクダウンディフェンスによって、柔術家は柔術を戦えない。デミアン・マイアが柔術を戦えない。そういうスポーツだ。そしてレスラーはテイクダウンディフェンスに徹し、ジャブを出していれば勝てる。
MMAは引き込みという素晴らしい寝技への入り口を否定したスポーツなんだ。引き込みの有効性を理解し、相手を倒さなくても寝技に持ち込める有効なツールという理解がない限り、ガードを取って下から攻める練習をするMMAファイターは現れない。
良い柔術が必要なくなったMMAは、2人のキックボクサーが戦うスポーツになった。そしてフランシス・ガヌー✖デリック・ルイスみたいな試合が生まれるんだ。柔術のエンターテインメント性を排除したから、あんな試合が起こってしまう。
日本だってPRIDEもなくなり、DREAMもなくなりMMAの興味は薄れているだろう?」
──う~ん、それはMMAで柔術が軽視されているからとは別問題だと思います。
「そうか(笑)。とにかくMMAはもっと公平にならないといけない。そういうことだ。そしてコンバット柔術こそ、柔術なんだ」