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【WJJC2018】ルースター級、芝本幸司─02─「優勝を目指すとか、今回はそういうのはない」

Koji Shibamoto【写真】ブラジリアン柔術だけでなく、生きる上でシンクロしてくると思われる芝本の話だった(C) MMAPLANET

30日(水・現地時間)から6月3日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチで開催されるブラジリアン柔術世界選手権=ムンジアルの黒帯ルースター級に出場する芝本幸司インタビュー後編。

ヨーロピアンは3位、そしてパン柔術は準優勝で気付いた落とし穴──芝本は「世界大会優勝は考えていない」と断言した。

<芝本幸司インタビューPart.01はコチラから>


──17名の参加ということは、2選手だけが土曜日に2試合戦う準備が必要になってくるわけですね。

「そういうことになります。どうなるか分からないのですが、ランキングでトーナメント枠を決めていく限り、そこには入らないはずです」

──改めて、今回のムンジアルで目指すところを教えていただけますか。

「優勝を目指すとか、今回はそういうのはないです」

──えっ、どういうことでしょうか。

「それがヨーロピアンとパンを踏まえての心境です。パン選手権が終わってから、あの大会について自分は優勝できなかったことを落ち込んでいたんです。

橋本選手に負けていたことは納得しています。競った試合ができる相手なので、勝ったり負けたりという感じになり、彼のお陰で自分も強くなれています。そこは納得しているんです」

──それはブルーノとカイオが出ない大会では優勝をしていないとムンジアル優勝とはいえないということでしょうか。

「いえ、そういうことではないです。私はアジアとヨーロピアンは優勝していますが、パン選手権は取っていないんです。競技者として振り返った時にパン王者になったことがあるかどうか──という点では、決勝まで進んだので今回が最もパン王者に近づいたことになります。そこを落としたことに落ち込んでいました。

でも、それが負けた理由だと気付いたんです。大会の結果にフォーカスしてしまって、対戦相手にフォーカスできていなかったということだったのです」

──あぁ……。

「格闘技だから相手と戦うモノなのに、相手との勝負よりも自分がパン選手権で優勝したいという……コントロールできないところに気持ちが向いてしまっていました。

相手が何らかの事情で不戦勝になり、優勝をしてもパン王者になるわけじゃないですか。タイトルが欲しいということで、そういうところを目指しているのと近かったのかと。勝負に行っていなかったです。

パンがそうであれば、ヨーロピアンもそうだったんです。アジアで優勝して、ヨーロピアンにはカイオもブルーノも出ていない。これは確実にヨーロピアンで優勝するぞ、と。対戦相手がどうこうでなく、ヨーロピアン優勝にフォーカスしていた。つまり試合に集中できていなかったのだと感じています。

この2つの負けを生かすには、世界選手権を取るのに勝ち進みやすいトーナメント枠だったらなとか、そういうことを考えている時点で勝てないと思っています」

──う~ん、そこまで……なのですね。ワンマッチで何週間も前に対戦が決まっているのとは違い、ギリギリのタイミングでトーナメント枠が出て来る大会ですが、本当に集中のしどころというのが難しいですね。

「全員と試合する気持ちを創っています。個別に対戦相手を研究するのは、当たらない相手が大半なので無理がありますし。なので目の前の相手に勝つために、その瞬間、瞬間にどれだけ集中できるのか。自分のパフォーマンスを発揮できるかということを今回は目標にしたいです」

──つまりは一つ、一つという心境になったと。

「世界選手権で優勝したいからこそ、世界選手権の優勝を狙わないという心境なんです」

──本当に深いです。

「優勝したいという気落ちが念頭にあると、失敗を恐れて挑戦できない自分がいます。無難に戦う自分がいるから、結果がアドバン1つの差になってしまうんです。このまま行けば勝てるとか、これ1つを大事にしようとか。どうしても躊躇が生まれてしまう。それは失敗を恐れている自分がいるから。

もう正直、何度目なんだっていうぐらいの世界挑戦なので今さら、ここで失敗したらなんて考えてもしょうがない。これまで通り、何度でも挑戦すれば良いんです。だから失敗を恐れず、全力で1試合、1試合を戦う。それができた暁には結果がついてくる──そんなイメージです」

──押忍。同じトーナメントで澤田伸大選手がトライフォースから出場します。同じ階級に後輩がいることはどのように考えていますか。

「対戦相手としては、決勝までは絶対に当たらない唯一の相手です。戦うことになればお互いにとって最高の結果です。澤田は私が一番練習している柔術家です。仲間という言葉では言い表せない関係です。だからといってチームメイトとして、一緒に頑張ろうというのではなく、彼は彼、僕は僕と互いがベストを尽くし、決勝で戦いたいですね」

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