【2017~2018】青井人─02─「ローで骨が折れるんや」&「足関節は極まらなくても殴られない」
【写真】本人や陣営だけでなく、高橋遼伍戦を見た誰もがあの敗北をネガティブに捉えることはないのではないだろうか。これはある意味、凄いことだ (C) MMAPLANET
9人のファイター達が語る2017年と2018年、青井人の足跡と一里塚─第2弾。
ベテラン2人を下し、10月15日に環太平洋フェザー級チャンピオン高橋遼伍に挑んだ青井は、序盤に王者のローキックで左足の脛──腓骨を骨折していた。
その状態であれだけの試合をし、ケージのなかで痛そうな素振は一切みせなかった青井と、高橋の間で試合後にかわされた会話とは──。
アイポークで目を負傷した阿部大治もそうだが、今回のインタビューで青井も一つの試合、一つのラウンド、一瞬に人生が懸っていることを教えてくれた。
<青井人インタビューPart.01はコチラから>
──高橋選手のローキックの破壊力は誰も知っているところですが、試合で防ぐことができた対戦相手はいません。
「ローは強いというのはあったので貰わないのが一番ですが、どうしても貰ってしまいます。なので、少しでも衝撃に慣れるための対策はしていました。でも、思っていた以上に重かったです」
──ローに右を合わせようとしていたかと思われます。
「そうですね。ローにパンチは合わせようとしていました」
──そして、結論として左足の腓骨が折れました。試合中は足が折れたという自覚はあったのでしょうか。
「1Rから2Rのインターバルでコーナーに戻る時に、ヒザがコキコキ鳴っていて『なんかおかしいなぁ』とは感じていました。
結構ダメージがあるんかなと思いつつ、高橋選手の前の対戦相手(※アーノルド・クエロ)みたいにローキックでレフェリーストップなんて僕のなかでは一番ダサいし、お客さんに『アイツのローキック、やっぱり強いんや』と思われるのは嫌なので。
とりあえず倒したろうという気持ちで戦っていました。もう、どうなってもエェわみたいな感じでしたね」
──つまりは痛かったということですよね。
「インターバル中は痛かったです。でも試合中は蹴られても、耐えられるんです」
──う~ん、なんともはや……。
「これぐらいなら耐えられる。3Rなら持つし、倒しに行けばエェわ──という想いで戦っていました」
──結果的に骨折していたことを知った時は、どのような気持ちになりましたか。
「凄いなぁって(笑)。ローキックで骨が折れるんや、みたいな。ただ、試合が終わった時点でかなり足は痛かったです」
──それはそうだと思います。
「でも、お客さんの前で足を引きずるのが嫌なので、バックステージまで我慢しようと思っていたけど、めっちゃ痛くて……。勝利者コールの時もホンマに痛いから、さっさと戻りたかったです。
お客さんの前では痛さを見せずにいようとだけしていて、裏に戻ってからはもう痛みで立てなかったです。パンパンに腫れあがってタクシーで病院に行きました」
──本当にどれだけ気が強いというのか、精神力があるのか。その気持ちがあるから戦えるのでしょうね。自分なんて小指が折れただけでも痛くて痛くてしょうがなかったですよ。
「痛いのは痛かったですよ、めっちゃくちゃ(笑)」
──当然です(笑)。試合結果としては判定負けになりましたが、そこは納得していましたか。
「ローキックもそうだし、寝技でも僕が下になっていたので負けたと思っていました。慎重に行き過ぎましたね。上になった時も殴って立たれるより、極めなアカンっていう変な焦りがありました。慎重になり過ぎて逆に立たれてしまいましたね。
テイクダウンに関しては、一緒に練習している人から凄く強いと聞いていたのですが……それほどではなかったです。まぁ、それで下になっているんやからホンマはこんなこと言ったらダメなんですけど(苦笑)」
──格闘技として下になっても殴られなければ、そしてガードでコントロールができていれば構わないと思うのですが、今のMMAのポイントや印象では下になるのは避けないといけない。
「僕は下になっても構わないと思って戦っています。下からでも極めることができるので。極めたらエェと思っています」
──おぉ、頼もしい。MMAPLANETの月刊・青木のコーナーで青木真也選手がサドルポジションから足関節の攻防を繰り広げたことを絶賛していました。
「僕、足関節が好きなんです。青木さんがそう言ってくれていると皆に教えてもらって、自分の試合映像も見てみたんです」
──青木選手がいうところのダナハー流というか、ゲイリー・トノン&エディ・カミングス流だと、あの四の字フックのサドルロックからインヴァーテッド・ヒール……内ヒールへ行く前にはロックしていない方の足を掴んでフェイクをかけるようですね。
「それも聞いて、どうやって掛けるんかなって映像を確認したんです(笑)」
──やはり研究熱心ですね。ではダナハー流の足関節なども研究しているのですか。
「していないです(笑)。感覚というか、サドルロックというのも練習をしていて、あの足の掛け方なら入りやすいなと思って取った感じで。自分の中で足関節は極まらなくても殴られる技ではなかったので……」
──新世代過ぎる、凄すぎますね。確かに失敗して終わりという仕掛けではなかったです。
「ハハハハ。極めていないから偉そうにいえないですけどね」
──実はあのタイトル戦に関して、中蔵さんが試合前に『勝ち負けは正直、分からないです。でも負けても、将来に役立つ試合に絶対になるはずです』と言われていたのです、怖い顔しながら。試合前から言っているのが、慧眼の持ち主だと思いました。
「本当に自信にはなりました。あれだけ強い武器を持っていて、外国人選手にも勝っている。寝技もできる絶対に強いチャンピオンと試合をして、ボコボコにされることはなかった。向こうの方が上だったのですが、自信になりました。
悔しさもチョットありましたけど、それよりも『次は絶対に勝ったるから』と思いました。実は高橋選手がベルトを持って控室まで来てくれて、『ありがとう。東京に来ることがあったら、一緒に練習しよう』って言ってくれたんです」
──良い話ですねぇ。
「そうなんでしょうけど、僕は何やコイツって思って(笑)。『次は絶対に勝ちます。宜しくお願いします』って答えたんです」
──20歳とはいえ、大人気ない(苦笑)。でも、若さがあって良いと思います。
「ベルトを持ってこられたから、どうしても『次、見とけよっていう気持ちになってしまって(苦笑)」
──足がとてつもなく痛かったのに……。
「本当に痛かったです(笑)」
──世間でいう負けず嫌いの範疇に収まらない、負けず嫌いですね(笑)。
「本当に……。負けず嫌いなのに、怖がりで」
<この項、続く>