【GRANDSLAM06】22カ月振りの勝利、田中路教─01─「負けるとチームも僕も終わりだと思っていた」
【写真】試合後の控室では安堵と喜びに満ちた田中陣営だった。常に一生懸命のユーチャクのことは大目に見てやってください(C)MMAPLANET
29日(日)、東京都新宿区のGENスポーツパレスで開催されたGRANDSLAM06のメインで、田中路教がホジェリオ・ボントリンから一本勝ちを収め、約1年11カ月振りに勝利の美酒に酔った。
ハファエル・シウバの負傷欠場で、1階級下とはいえさらに危険度が増したと思われたボントリン戦で、格の違いと表現しても良い勝ち方をした田中。この試合までの苦悩と、仲間への想い、そしてこれからについて田中に尋ねた。
──試合後は「ありがとう」を連呼していました。
「試合までは本当に色々とあって……、良い子振るの嫌ですけど今回は回りの人たちに感謝の気持ちしかないです。回りの人間が本当に僕を支えてくれて……。連敗中だし、嫌なこともたくさんあって、かなり落ち込んだりもしました。試合まで凄く不安が膨らんでしまっていました。
そんななか、皆の前で戦うということはプラスになる一方で、どうしてもプレッシャーになってもいたのですが、それでも、その時々でたくさんの人が僕の手を引っ張ってくれ、背中を押してくれました。
その度に感謝の気持ちが沸き上がって来て、絶対に負けるかと精神的にも良い状態で試合に臨むことができたんです。チームができて、僕にとって初めて仲間ができたと思っています。
僕はそれまで、ずっと1人ぼっちでした。グランドスラムに所属していた時にジムの仲間は存在したのですが、どこか僕は孤独で。その孤独感が僕の強さになっていたと思います。
でも、今はこうやって(中村)優作と(石原)夜叉坊という一緒のところを目指すことができる仲間ができて……」
──とはいっても、田中選手はUFC JAPANの石原選手のセコンドに就かない。石原選手は中村選手の修斗の試合の翌日に米国に戻ってしまう。
「いや、違うんですよ(笑)。こうやって頼ることができる人間ができたことで、自分の気持ちが弱くなってしまって。だから今は距離を取らないといけないと思っていたんです。そのせいで、修斗の試合前の優作に何もサポートできなくて……。だから、優作が負けた時はめちゃくちゃ落ち込んでしまって……」
──煽り映像の涙、UFC云々でなく中村選手のことを考えての涙のように感じました。
「あ……アレは撮影が優作の負けた次の日だったので、ちょっと感情的になってしまうことが多くて。優作が負けて、病院に行って……家に戻ったのが深夜1時ぐらいだったのですが、それから朝までほとんど眠ることができなかったです。
優作に関しては申し訳ない気持ちでいっぱいです。それがあってなお、今日の試合は何を犠牲にして勝たないといけなかった。なので……こうやって勝てたのでチーム・アルファメール・ジャパンを立て直さないといけないです」
──それも今日の試合で勝つことができたので、口にできることですよね。
「いや、本当にその通りです。負けていたら、チームも僕も終わりだった。負けたら終わり、その覚悟でやっていました」
──UFCという大舞台、大会場を経験してなおですが、今日の会場の雰囲気は最高だったのではないですか。
「有り難いです。入場式の時に、ファンの皆さんが僕を迎え入れてくれた時の雰囲気は……。僕は一度落ちた人間です。その落ちた人間を皆が受け入れてくれて、そういう仲間が僕の回りにはたくさんいてくれる。そんな会場の空気が本当に力を与えてくれました」
──強豪ボントリンを相手に1Rのテイクダウン後にギロチンと腕十字を防いでから削り、2Rで相手の表情が変わり、最終回で心が折れかかっているように見えました。
「圧力はありました。ただ、僕も前回の負けから圧力を掛ける練習をしてきて、引くことはなかったです。KRAZYBEEでも、ずっとそういう練習をさせてもらってきたので。そこが2月の試合との違いかと思います。気持ちの面で前に出ることができて、やっと少しだけ以前の自分に戻ることができました」──高橋遼伍選手の指示がまた素晴らしかったです。
「遼伍さんとはKRAZYBEEのプロ練習以外にも毎週月曜に一緒に練習させてもらって、凄く信頼しています。今回は優作と一緒にずっと練習できていたわけではなくて、逆に遼伍さんとは週に3度は練習していました。なので、ケージサイドの席のチケットを渡して、一番近くで見てもらい、指示を送ってもらうようにしていたんです(笑)」
<この項、続く>