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【ONE】青木真也<02>「頑張ってきた者が輝けるというコンセプト、それがDREAMだった」

Shinya Aoki【写真】青木の返答は常に明快。それでも禅問答に聞こえるはなぜか? (C)MMAPLANET

青木真也ロングインタビュー第2弾。12月29日のRIZINを観戦した青木が、そこで感じた自分の立ち位置とは。そして31日の魔裟斗×五味隆典、クロン・グレイシー×川尻達也戦に視聴し、彼が感じたこととは。

今や日本MMA界の孤高の存在、いや日本MMA界の住人とは言えなくなってきている青木真也の言葉を引き続けお届けしたい。

<青木真也インタビューPart.01はコチラから>


──大晦日ではなく29日に観戦されたわけですね。

「自分があそこの場で戦いたいという気持ちだとか、あの場で戦っていないことへの嫉妬という感情がわかなかったんです」

──どの試合からも響くものがなかった? 北岡選手の勝利を見ても……ですか。

「正直、全くなかったです。北岡さんの試合は他の選手とは違う感情で見ています。ただし、北岡さんの試合を見ても、出たいという気持ちにはならなかった。僕の仕事はここにないって──。そりゃ、良い条件を貰ったらやりますよ。でも、条件が下がってまで戦いたくない。

それはもう──無理だし。本気で出たいと思わなかった。試合を見て熱くなるとか、そういう感情はどの大会を観戦しても起きないです。逆にTBSの魔裟斗×五味は凄いと思った」

──!! それはどういう部分で、ですか。

「器が違うって思ったんです。昔の名前でやっていますよ。でもプロ格闘技として、仕事ができている。五味選手も凄いなって。とりあえずは形にしているし」

──……。

「見てないですね?」

──……ハイ(苦笑)。

「とりあえず、魔裟斗選手も五味選手も形にしている。大したものです。一昨年より、去年の年末の方がTBSは良かった。魔裟斗は器が違う」

──スパーリングだという声も少なくなかったですが。

「う~ん、俺はケーフェイとされることにネガティブな感情はないから。そういう解釈にはならないし、高島さんと違ってTBSも見たし。

もし、五味選手のコンディションが悪くてすぐに寝るようなことになったらっていう危惧はあったんです。逆に『この野郎』っていう感情を持つようなことがあれば面白いだろうなって思っていて。

で、始まったら攻防になっていた。互いに『この野郎』っていう気持ちもあったし。これは見るモノとしては良いんじゃないかと」

──う~ん、そこは一理あるとしてもガキじみた意見を言うと、シッティチャイやペトロシアンにはまるで敵わない2人が戦っているわけですよね?

「それは……頂点見ちゃうとRIZINだって全然敵わないじゃないですか!! UFCと比べて見ていないですよね?」

──UFCのヒエラルキーと通じるMMA界に生きる選手の試合が、仕事して自分の担当だとは思っています。

「僕はそういう風にRIZINとか見ていないから。和田君が入場してきた──何とか人生をここで切り開きたいと思っている、そんな良い顔をしているなって風に思いながら見ていました。

きっと、アレでしょ? この間、頑張ってきた選手に頑張ってほしいという気持ちですよね?」

──まさにその通りですね。

「コレをやってきた人間……頑張ってきた者が輝けるというコンセプト、それがDREAMだったんです。そこでどうなったかも、僕は見てきているので。だから、そういう風に選手を見ても、イベントは違う方向を向いている。選手、イベント、どっちの主張もどっちもどっちだから」

──どちらも理解できるということですね。DREAMの時は冬になりかけで、記者としては春や夏のUFCを知ってもらう時期でした。今はUFCが主として定着した。そして、時代は厳冬にある。

「そこを真剣に話そうと思っても、ほとんどが真剣に話す気がなくて、聞く耳を持たないんですよ。今の格闘技界は……」

──技術的には見ておきたいという試合も、あるのではないですか。

「クロン・グレイシーと川尻選手の試合はTVで見ました。いくつか興味深い点もありましたよ。でも、自分とは地続きじゃない感覚ができてしまって。これは試合を見て感じたことですけど、そういう地続きじゃない感ができてしまったことは、相当大きいですよね。

地続きでない感覚を持っている格闘家は多いと思いますよ。特にこの間、MMAを頑張ってきた連中は。でも、これを泳いで出ていかないといけない選手がいる。そして、僕はそうする必要がない」

──青木選手の現状として、その土地はどこに通じているのでしょうか。

「僕は……今はONEでたまに試合をする。僕とONEの関係が続く限り、他と地続きにはなりえない。それももう、皆分かっている。だって徳留(一樹)や久米(鷹介)から、僕の名前は出てこない。

彼らが今戦っていることは、僕と地続きじゃない。彼らの口から五味選手の名前が出てこないのと同じですよね。この状態を僕は『上がり』って表現しているんです」

──上がりですか。

「五味選手はもっと早い段階で上がっています。青木真也も一昨年ぐらいで上がりました、ね。上がったんです。それは達観でなく、日本人選手が誰も藤田和之と戦いたいと言わないのと同じです。そういう上がってしまった感はあります」

──徳留選手、久米選手の名前が挙がったのですが、彼からするとUFCこそ目標で、青木戦にMMAを続ける価値を見出していないということでもあります。

「それで良いと思います。やりたいことをやれば良いし。ただし、ONEに負けない条件をパンクラスが支払ってくれれば徳留とも久米ともやりますよ。それはRIZINでも、そう。格闘家としてそういう気持ちはあります。ちゃんと条件を揃えてくれるなら、誰とだって戦いますよ。

なんて言ったら良いのかなぁ……怖いモノないっスよ。怖いモノがない、ある種。だから用意された試合を戦って勝つだけ」

この項、続く

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