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【UFC202】ガーブラント戦が決まった水垣偉弥<01> 「ブラジルでアルメイダ、シカゴでジミー・リベラ」

Takeya Mizugaki【写真】昨年9月の勝利から11カ月も試合間隔が空いてしまったことに関しても、水垣は淡々とその胸中を語った(C)MMAPLANET

8月20日(土・現地時間)にネバダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで開催されるUFC202「Diaz vs McGregor2」でコディー・ガーブラントと戦うことが、ほぼ決定している(※オフィシャル発表は現時点でなされていない)水垣偉弥。

MMAPLANETでは21日(火)に都内で行われた──ひかりTVのUFC中継の収録を行なった水垣をキャッチ。昨年9月から11カ月もインターバルが空いた経緯、3月に父親になった心境、そしてガーブラント戦に対する意気込みを尋ねた。

WEC時代から数えると、この試合で水垣はズッファが主催する大会で18試合目を迎え、岡見勇信に並ぶ日本人選手最多出場となる水垣から、言葉静かながら並々ならぬ決意、覚悟が聞かれた。

──11カ月振りの試合がコディー・ガーブランドに決まりました。しかし、昨年9月の日本大会でジョージ・ループに勝ってから、この試合が決まるまで長かったですね。

「本当なら去年、もう1試合ぐらいやりたかったぐらいなんですけどね。2月にトーマス・アルメイダの相手がケガをして、やらないかっていう話が来て。まぁ僕は断る必要は全くなかったのですが、アルメイダの方がケガあったみたいで、そのタイミングでは実現しなかったんです。

でも4月のどこかのタイミングで組んでもらえそうな感じだったので、そのままアルメイダの返答を待つような形で」

──川尻選手がデニス・ベルムデスと戦った出場した2月のピッツバーク大会の頃には自分たちの耳にも入ってきていました。それが4月になるかもしれないということで、わざとらしくゴング格闘技の企画としてストラッグルの鈴木秀明さんのところを訪ね、バンタム級UFCファイターの解説をしてもらいつつ、アルメイダ対策を授けてもらったこともありました……。

「そうです。そうそう。アルメイダ、ジミー・リベラ、そしてハファエル・アスンソンを分析してもらうということで、アルメイダ対策を授けてもらって(笑)。でも、4月の大会でも結局組まれなくて……」

──4月は水垣選手に赤ちゃんが生まれる予定だった月ですよね。

「ハイ、4月18日が予定日だったのですが、早産で3月18日に生まれました」

──それでも4月に戦うことは問題なかったですか。

「出産予定日とモロに重なるような日程も来ていたんですが、そこは家内にも『ゴメンね』って」

──おぉ。

「やっぱり仕事は仕事で、ちゃんと役目を果たしたいですし。家内も『行きなさい』と。お金を稼がないといけないですからね(笑)。ホント、僕の方ではブラジル大会でなければ、どこでも良いですっていう話をさせてもらっていたのに、結局のところ5月14日のブラジルで──っていう話になって(苦笑)」

──ピンポイントで嫌なところに来た、と(笑)。

「いやぁ、『ブラジルは行きません。他のところなら、やりますよ』って。ブラジルは最初から嫌だと伝えていましたから」

──アルメイダと戦うよりも、ブラジルで戦うことを避けたかったということですか。UFCにノーというのは、なかなか勇気のいることではないですか。

「でも、ブラジルだけは避けたかったです。まずは遠い、ブラジルでのブラジル人は異常に強いですし。でも、正直なところ全然、試合が決まらないから八景の渡辺会長にも相談して『ブラジルで戦っちゃって良いですか』って尋ねたんです。

でも会長は『水垣君が直感で、最初にブラジルは嫌だと思っていたのだから、そこは通しなさい。ブラジルで戦ってはいけない』と言ってくれたんです。それでUFCがどういう風に思うか気にならないことはなかったですが、ある程度は自分の意志を通して交渉しないと、ただ使い勝手の良い選手になってしまいますからね。

でも、僕がそうやっている間にUFCの方では5月29日にアルメイダとガーブラントをメインに持ってくることを決めていたみたいで(苦笑)。僕がノーって返事をしたのと殆ど同じタイミングでガープラント×アルメイダが発表されました。あそこでアルメイダとブラジルでやるっていっても、もうガーブラントに取られていたんじゃないですかね」

──軽んじられていますね(苦笑)。

「まぁ、アメリカでアルメイダと戦うなら全く問題なかったですけど……メインに組むってことは僕の出番じゃないことも理解しています。アルメイダでなく、ガーブランドがあってのメインなので。

UFCで戦うということは、日本にやってくる外国人選手と同じつもりで向こうに行っているので。そういうことはあまり気にせずに試合でアピールして、チャンスが来るのを待つという姿勢でいます。だから試合が組まれなことが一番きついですね」

──この間に円高も進みました。

「もっと日本円に両替しておけば良かったです。1ドルで20円変わるのは大きいですね。それでも1ドル120円の時に、大半は日本円にしていて良かったです(笑)」

──ではお子さんが生まれたことでMMAという仕事に対して向き合い方に変化は生じましたか。

「そこは変わらないです。子供ができても、そのまえも仕事、試合に対する姿勢は変わらない。子供が生まれて変わるモノではないというつもりであります。

人間としては、自分が一番だったのに──自分より大切なモノができたっていう感覚はあります。ただし、自分を大切にしたいという気持ちでいますし、父親になったから格闘技と向かい合う気持ちが変わったという風には……したくない。それは……子供がいるからとか、家族があるっていうことを引退理由にしたくないからなんです」

──なるほど。あくまでも戦っているのは水垣選手個人の生き方でだと。

「そうですね。子供を言い訳にしたくない。子供って、本当にこれまでに存在した何よりも特別だというのは分かります。凄く可愛いし。だからといって格闘技に向かうモチベーションに影響を及ぼす存在にしたくないんです。冷たい人間なんですかね?」

──いえ、お子さんの話をするときの笑顔を見ると、どれだけ大切にしているのか伝わってきます。子供ができてRNCが上手くなるわけじゃないですし……。そのように父親になった水垣選手はアルメイダでなく、ガーブラントと戦うことになるわけですね。

「いえ、ガーブラントと戦うことが決まったのは、ほんとにここ2日ほどの話で。ブラジルは嫌だけど、とにかく試合をしたいと伝えていた時に6月にジミー・リベラと戦うという話がありました」

──ジミー・リベラ……嫌な相手ではあります。簡単じゃない。でも、ここで『ノー』はないですよね?

「もちろん、やるって即答しました。最初は5月の終わりっていう話だったかな……。それが6月になって、7月に。7月のシカゴかという話もあったのが、それも無理になり、8月の20日か27日にという風に聞かされていました。早く正式決定してほしいと思っていたところ、一昨日にマネージャーから『コディー・ガーブラントに代わりました。やりますか?』って連絡が来たんです」

<この項、続く>


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