【WJJC2016】遂にコブリーニャ越えを果たす新鋭登場も、ハファ・メンデスが6度目のフェザー級世界王者に
【写真】6度目のフェザー級世界王座獲得。大台10度獲得の現実味がありまくるハファエル・メンデス(C)MMAPLANET
2日(木・現地時間)から5日(日・現地時間)にかけて、米国カリフォルニア州ロングビーチのカリフォルニア大ロングビーチ校内ピラミッドにて、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権が行われた。レビュー第4弾となる今回は、ハファエル・メンデスとコブリーニャことフーベン・シャーレスの二強の間に、ついに割って入る若手が現れたフェザー級の模様を紹介したい。
<フェザー級準決勝/10分1R>
マーシオ・アンドレ(ブラジル)
Def. by 7-6
フーベン・シャーレス(ブラジル)
上からの力強いプレッシャーを駆使し、今年のヨーロピアン、アブダビプロの両大会にてパウロ・ミヤオを下して優勝したアンドレは、この階級に長年君臨する二大巨頭=ハファエル・メンデスとコブリーニャことフーベン・シャーレスの一角を崩す若手の最右翼と見られていた。今年が黒帯世界大会2度目の挑戦となるこの若者は、準々決勝でモダン柔術の始祖というべきベテランのブルーノ・フラザトをパスガードで抑え込み、期待通り準決勝のコブリーニャ戦に駒を進めてみせた。
試合開始。前の試合で大きく顔面をカットしたコブリーニャは、包帯を頭に巻き付けてこの試合に臨んでいる。まず先に引き込んだコブリーニャは、強烈なグリップでアンドレの左手首のギを掴んでのオープンガードを作る。
ここを切ろうと苦闘するアンドレは、やがて業を煮やしたようにこのグリップの内側に差し込む形で左足をステップイン。そこでコブリーニャはすかさずグリップを離すと、その左足を抱えて後ろに崩してスイープに成功。2点獲得に成功した。
アンドレもすかさず左でスパイダー、右でコブリーニャの足首のパンツを掴んで形を作ると、前に崩してスイープのお返し。同点に追い付いてみせた。なお、返される寸前にコブリーニャは道着に指が引っかけたらしくアピールしており、こちらにはやや気の毒なタイミングでもあった。
その後スパイダーを作ったコブリーニャに対し、アンドレは立って足の付け根をストンプしながら足のフックを切ると、次の瞬間横に回ってのパス狙い。コブリーニャは懸命にアンドレのパンツを掴んでそれを阻止しようとするが、アンドレは強烈なプレッシャーをかけながらコブリーニャの体をまたいで逆側へ! 上四方の体勢から胸と胸を合わせて抑え込み、なんと難攻不落のコブリーニャのガードのパスに成功してみせたのだった。アンドレが5-2でリードすることとなったが、この攻防でコブリーニャの額の包帯の下の傷が開いて大量出血。しばらく試合は中断された。
再開後、コブリーニャは迅速のシッティングからアンドレの片足を抱えてシングルレッグに移行するが、強靭な足腰を持つアンドレはバランスを保つ。ならばとコブリーニャが再び下から仕掛けようとすると、アンドレはさほど抵抗せずに下を許すが、同時にコブリーニャの右足を抱えることに成功。すぐに後ろに倒して7-4と突き放してみせる。
コブリーニャは下からマーシオの右腕をたぐって伸ばしかけると、嫌がったアンドレの勢いを用いて右足を捕まえながら立ち上がってのシングルレッグへ。アンドレは片足立ちからスイッチを狙うが、コブリーニャが倒し切って再び1点差に迫った。
さらにアンドレを片足担ぎからスタックしたコブリーニャは、横に回ってのパス狙い。あわや抑え込むか、と思われた所でアンドレがうつ伏せになって難を逃れたが、コブリーニャはその上に乗って、背後からたすきがけのグリップを作る。残り2分半のところで、コブリーニャが逆転に向け最大のチャンスを得た。
そこからコブリーニャはギチョークのプレッシャーを与えつつ両足フックを狙うが、アンドレも許さない。ならばとばかりにコブリーニャはたすきがけを維持したままアンドレの背中を付けさせてガードパスを主張するが、レフェリーはこれも認めず。残り1分を切ったところでコブリーニャは再び両足フック狙いから、最後は腕十字を狙うが、アンドレは強固に両手でグリップして時間切れまで守り切る。 一進一退の攻防を7-6で制したアンドレが、コブリーニャ越えを果たした。
フラザト戦のパスガードに続き、世界屈指の強力さを誇るコブリーニャのガードを攻略してみせたアンドレ。その技の切れとプレッシャーは見事の一言だ。対するコブリーニャも、前の試合での負傷や指がひっかかるハプニングなどの不運に見舞われつつ、盛り返して終盤はアンドレを防戦一方に追い込んでみせた底力はさすが。まだまだ健在を示したレジェンドの戦いをこれからも見たいものだ。
<フェザー級決勝/10分1R>
ハフェル・メンデス(ブラジル)
Def. by 8-8 アドバンテージ 2-1
マーシオ・アンドレ(ブラジル)
コブリーニャ越えを果たしたアンドレを決勝で待ち受けていたのが、この階級無敵を誇る怪物ハファエル・メンデス。準決勝では、昨年のパン大会でアンドレをループチョークで絞め落としたケイシーニョことオズワウド・モイジーニョと対戦。上からのベリンボロに行く流れからあっという間に三角をロック。そのまま腕を伸ばして完勝して決勝に進出している。
試合開始後引き込む両者だが、アンドレはすぐに上を選択してアドバンテージを先制する。するとメンデスはベリンボロ狙いから戻って来て、あっという間にアンドレの右足を引き出すと50/50を作ってみせた。ここからしばらくシーソーで上下が入れ替わりポイント4-2でリードするメンデスは、アンドレの尻を掴むと前にダイブしてのバック狙いへ! しかしうまく動いて逃れたアンドレは、そのまま上になって同点に追いついた。
50/50の下から揺さぶり続けるメンデスは、お互い背中を付けた状態から、絡んだ足を引き抜きつつ上になって6点目。50/50が解除されたのを見て、場内からは歓声があがった。この後アンドレはラッソーで揺さぶった後、それを解除しながら後ろに崩すと、それに対応してメンデスが左片膝立ちとなったところでそこを蹴ってのスイープ!!
バランスを崩されながらも粘るメンデスだが、アンドレは見事に倒し切って6-6。残り半分のところでアドバンテージで一つリードした。下になったメンデスは、伝家の宝刀のベリンボロから上を取って8-6に。その時アンドレに右足を抱えられるも、左足を大きくアンドレの頭の方にステップして上四方に回って解除すると、ガードに戻して来るアンドレに飛び込んでの上からのベリンボロ。尻に手をかけられたアンドレだが、背中を付けてディフェンスして50/50の体勢を作った。
残り2分。一度は上になったアンドレだが、メンデスは50/50下からのベリンボロ狙いへ。それをアンドレはヒザ十字でカウンターしようとするが、それを凌いだメンデスはアンドレの尻出しに成功。そのまま背後に付くことで、ポイントを8-8にするとともにアドバンテージでも追い付いてみせた。
残り1分の時点でマーシオの背中に付いてシングルフックを入れたメンデスは、さらにチョーク狙い。そのまま攻め続けながら試合が終了。ポイントが同点のままでもメンデス有利は動かない状況だったが、最後に正式にアドバンテージが追加されてメンデスの3連覇が決まった。歓喜のメンデスは、客席で喜ぶAOJアカデミーの子供達に向かって6本の指を突き立て、6度目の優勝を祝った。
スクランブルの強さを持ち、メンデスからも綺麗なスイープを取りきれるアンドレの大健闘で接戦となったが、最後はこの一昨年、昨年とコブリーニャを下したメンデスの必殺技=50/50からのバック取りが炸裂。50/50によって攻防を退屈なものとしたという評判もあるメンデスだが、この決勝では50/50を解除してのスイープも見せており、この体勢からのバリエーションでも頭一つ抜けている。
それにしても黒帯として2度目の世界大会挑戦にして、フラザトとコブリーニャからパスガードを奪って勝利しただけでなく、絶対王者メンデスに奥の手を出させるところまで迫ったアンドレ。来年はどこまで怪物の牙城に迫れるのか、俄然楽しみになってくる活躍ぶりだった。
■リザルト
【フェザー級】
優勝 ハファエル・メンデス(ブラジル)
準優勝 マーシオ・アンドレ(ブラジル)
3位 フーべン・シャーレス(ブラジル)
3位 オズワウド・モイジーニョ(ブラジル)