【PJJC2017】残り23秒の敗北、岩崎正寛が得たモノ。ライトはレプリが制し、フェザーはコブリーニャが優勝
16日から19日にかけて、カリフォルニア州アーヴァインのブレン・イベントセンターにてIBJJF主催のブラジリアン柔術パン選手権が行われた。世界選手権の前哨戦として、多くの強豪が顔を揃えた同大会。レビュー第2回は、アダルト黒帯の部におけるフェザー、ライトの2階級の模様をお届けしたい。
【フェザー級】
世界を4度制覇したレジェンド、フーベン・シャーレスことコブリーニャが順当に決勝進出。激戦が予想されたもう一つのブロックでは、有力候補のジャンニ・グリッポが初戦でチーム・ロイド・アーヴィン所属の米国の新鋭シェーン・ヒル・テイラーにレフェリー判定で敗れる波乱が起こった。しかし、このヒル・テイラーは準決勝でケイシーニョことオズワウド・モイジーニョに足関節で反則負け。コブリーニャとモイジーニョが決勝で合間見えることとなった。
<フェザー級決勝/10分1R>
フーベンス・シャーレス(ブラジル)
Def. by 9-2
オズワウド・モイジーニョ(ブラジル)
先に座ったコブリーニャは、デラヒーバフックからモイジーニョのズボンの足首部分と襟を掴み強烈に引いて前に崩すと、そのまま立ち上がって倒して先制点。さらにニースライド・パスを狙うが、モイジーニョもスクランブルで立ち上がる。
再び引き込んだコブリーニャは、再び足首と襟を掴んで立ち上がるスイープで4点目。下になったモイジーニョがオモプラッタを狙うと、その腕を抜きながらサイドに回って7-0とリードを広げる。その後モイジーニョはスクランブルして立ち上がることに成功したが、コブリーニャはまたしても引き込んでから上になって9点目。モイジーニョも上を取り返すが、ズボンの足首の部分を掴んだコブリーニャの強烈なグリップの前に展開を作れず。結局9-2の大差でレジェンドが貫禄の勝利を見せた。
ヨーロピアンに次いで今年国際大会2連覇を果たしたコブリーニャ。この試合での強靭なグリップと強靭かつ柔軟な足腰を用いたスイープ、そしてパスを見る限り、力は衰えているどころか増しているかのようにすら思える。世界柔術での復活劇はあるだろうか。
【ライト級】
<ライト級一回戦/10分1R>
マーカス・ウィルソン(米国)
Def. by 足首固め
岩崎正寛(日本)
試合後すぐにテイクダウンを狙った岩崎は、そのまま引き込んで得意のディープハーフを作る。さらに相手のラペルを引き出して掴むと、強力なブリッジで返す得意のパターンで2点先制。上からでベースを作った岩崎は、ウィルソンの仕掛けるスパイダーやシッティングガードからの仕掛けを潰しては低くプレッシャーをかけてゆく。
やがて岩崎はウィルソンの足を一本超え、ハーフ上で胸を合わせてアドバンテージを取ると、そのまま片足担ぎに移行してパスに成功。5-0とリードを広げてみせた。
試合がスタンドに戻ると、再びテイクダウン狙いから引き込んでディープハーフを作った岩崎。今度はブリッジから勢い良く後方にヘッドスプリングをするかのようなアクロバティックな動きで上になり、7-0に。さらに相手の三角狙いに乗じて頭を抜いて、バックに回りかけるなど岩崎は優勢に試合を進めていった。
残り1分。一発逆転を狙うしかないウィルソンはバタフライで岩崎を浮かせて空間を作ると、その足を取って足首固め狙い、さらに腹這いになって膝十字を狙うが、岩崎は腰を遠ざけて対処。ここで上になったウィルソンに対し、岩崎は再びディープハーフの体勢に。2点は返されたものの、これで一安心……と思いきや、ここでウィルソンが最後の望みを賭けての足狙いに。まずは下の足を狙うと見せかけてから上の足を取って絞り上げると、たまらず岩崎がタップ!
試合を終始リードしていたにもかかわらず、終了まで23秒のところでまさかの一本負けを喫してしまった岩崎。足を連続して狙われて集中力が切れたのか。あるいは、圧巻のスイープとパスを通して身体能力の差を見せつけたことで、心のどこかで油断が生じたか。
いずれにせよ──、ポジショニングを軸とした柔術の地力では遅れを取っていたウィルソンが、勝利への執念という点で岩崎を上回っていたことは否めない。フィジカル強化に励み、世界レベルのスイープとトップゲームを作りあげた岩崎が、パンでの敗北を糧にムンジアルに生かしてもらいたい。
<ライト級決勝/10分1R>
ルーカス・レプリ(ブラジル)
Def. by 2-0
マーシオ・アンドレ(ブラジル)
予想通りに勝ち進んだ両者による、注目の一戦が実現。強烈無比なパスガードを武器とする両者だけに、お互いすぐには下にならず、スタンドで腰を引いて袖と襟を取り合った状態からの「BJJ柔道」とでも呼びたくなる攻防が続く。レプリがヒザ付き背負い、カラードラッグ、ズボンの足首部分を掴んでのアンクルピック狙いを見せれば、アンドレも足を飛ばすが決め手とならず、試合時間の半分が経過した時点で両者にマイナスアドバンテージが宣告された。
その後、ついに引き込みを仕掛けたのはレプリの方。大きくステップオーバーしてパスを狙ったアンドレの右足を肩で抱えることに成功すると、逃げようとするアンドレを煽って立ってみせるが、一度は崩れたアンドレもすぐに立つ。ここでレプリにアドバンテージが入った。
試合は再びスタンドに戻り、アンドレの襟を掴んだレプリは頭を下げてのレベルチェンジで右足を抱えてのシングルレッグへ。アンドレが片足で堪えると、そのヒザ裏からアンドレの帯を持ってグリップを強化。そのまま揺さぶって倒し2点を先制してみせる。
さらにレプリは必殺のニースライド・パスを狙って右ヒザを立てる。懸命に距離を取りながらラッソーを作ろうと試みるアンドレ。そこでレプリはヒジを巧みに使って封じると、アンドレの両ヒザ裏に体重をかけてスタック──これで勝負あり。アンドレの動きを封じた2-0で試合を終えた。
突出したパスガードの使い手のレプリだが、強力なトップゲームを誇るアンドレ相手に、引き込んでからのガードワークと豊富な立ち技で得点を稼いでの勝利。どの局面においても隙のない絶対王者ぶりを見せつけた。
■リザルト
【フェザー級】
優勝 フーベン・シャーレス(ブラジル)
準優勝 オズワウド・モイジーニョ(ブラジル)
3位 ヴィクトー・ジェノベシ(ブラジル)
3位 シェーン・ヒル・テイラー(米国)
【ライト級】
優勝 ルーカス・レプリ(ブラジル)
準優勝 マーシオ・アンドレ(ブラジル)
3位 マイケル・リエラ・ジュニア(米国)
3位 ヘナート・カヌート(ブラジル)