【Special】「今をいきよ」──CARPE DIEMブラジリアン柔術・石川祐樹のWay of the Jiu-Jitsu<03>
【写真】ファッショナブルでならず者、そして独立精神旺盛な(?)スタッフ達と (C)CARPE DIEM
Carpe Diem(カルペディエム)ブラジリアン柔術を率いる石川祐樹インタビュー第3弾。
独自の柔術道、あるいは柔術学を持つ石川はカルペディエムを青山、三田、広尾に開いた。そのビジネス感覚の根底にはファッショナブルでならず者という理想像がある。
<石川祐樹インタビューPart.01はコチラから>
<石川祐樹インタビューPart.02はコチラから>
──石川さんの原体験があって、柔術道場を国際交流の場、カルチャーの発信地にしていきたいと。
「日本に来る外国人って、御幣があるかもしれないですが女の子と遊んでばっかりっていうイメージがあるじゃないですか(笑)」
――批判を承知で……その感は拭えないです(笑)。
「米国人男性からすると、日本の男はアイドル好きだったり、ゲームをして遊んでいたりしていて子供だと思われているんですよ。彼らはマッチョだから。でも、ここに来てみろって。男らしいヤツ、いっぱいいるぞって。そういう部分も見せたいんです。そういう部分でも最初にいた道場のならず者集団っていうコアを失いたくない。これは凄く強く思っていることですね」
――フェッショナブルでならず者、良いトコどりですね(笑)。
「ならず者って言葉の響きが気に入っているだけかもしれないですけど(笑)。そこがコアにあることが格好良いんじゃにかなって。別に犯罪を犯せって言っているんじゃないですよ。ただ、世の中にはメインストリームから離れた連中がたくさんいる。メインストリームでなくても、良い文化は生まれてくる。だから部活動にする気はない。ブラジリアン柔術の五輪スポーツ化なんてまっぴらゴメン。僕は反対なんです」
──五輪はカルチャーでなく、ビジネスの権化ともいえますからね。そこが価値観の全てになるような。
「と同時に、皆のための柔術っていう謳い文句が完成されてしまいます。五輪スポーツになった時、それは僕の好きな柔術でなくなる。ここは本当に感性であって、言葉に上手くできないのですが管理された……皆のための柔術というのではない……。誰のためにも存在する柔術ではなく、柔術をスペシャルに感じる者のための柔術というのか。赤字、黒字でいえば、赤字を垂れ流して追及する根性の持ち主が頑張るモノ。
柔術は万人ができるモノじゃない。だからホームページにも安全な格闘技です──とは謳っていない。大怪我をすることもあるし、仕事に支障が出るようになってしまった人もいる。そのことを入会希望者には、きちんと伝えています。道場に来る時には、ちょっとしたドキドキ感を持ってきてほしいです。フラワーアレンジメント・スクールに来るような気持で、道場に入ってきてほしくない」
──でも、楽しいということですよね。
「柔術が好きな人間は、そういう気持ちがあって道場にきても、皆とお喋りして楽しい時を過ごしています。そもそもウチは礼がないんです」
──礼がない?
「開始と終了の挨拶ですね。黙想もない。最後も握手でなく、拍手で終わり。始めと終わりをしっかりと設けると、遅れた人が練習に入りづらいじゃないですか。時間通りに始まり、時間通りに終わるんですけど、ラフな形で始まりラフな形で終わります。練習の途中で道着を脱いでも構わないですし、タトゥーもOKです。
ただし、僕には僕のキレどころが存在します(笑)。『石川先生、コレはOKなのに、こっちはなんでダメなんだ』って。それは皆、僕に合わせるしかないです。フェイスブックに書きたくないことも書いているので、だいたいが分かってくれていると思います。一番大切な礼儀、それはスパーリングの時のマナーです。
黙想とか握手とか誰でもできます。だから深々とお辞儀をしたあとで反則をする人間もいます(苦笑)。それだと黙想とか、互いに礼とか意味はないですよ。スパーリングは最も人間性が出るものなので。国民性や文化といえるんじゃないでしょうか。だから普段どれだけ良いことを言っていても、人間性が出てばれてしまいます」
──それは分かります。技術練習なのに技を掛けさせない人とか。体重差や技量に違いがあってもバリバリと極める人だとか……。
「だから帯が上の人間ほど、相手の為になるスパーを心掛けてほしいと言っています。スパーリングで切れまくる人とか、カルペディエムにはいないです。と同時に、そういう人の方が試合で強いという部分もあります。
でも、そんな人間は好きじゃない。レッスンは力のない人に合わせる。試合に出ることを推奨することもないです。出たい人は勧めなくても出ますよ。逆にいえば、出たい大会は何でも出てもらって良いです」
──ではカルペディエムにはコンペティション練習もないということですか。
「ないです。若くてコンペティションに勝ち上がれそうな人はスタッフのような感じになっています。そして、強い人間には柔術の道場を持ちたいというぐらいの気概を持ってほしいんです。僕が人を雇う時の基準がそこです。将来、自分の道場を持ちたいかどうか。その気持ちを持っている者しか雇用していないです」
──それはカルペディエムの支部を出すということですか。
「カルペディエムでも、そうでなくても何でも良いです。独立を認めないと、自己否定になっちゃいますから(笑)。僕のことを自分のやり方と違うと感じて然りです。ここでスタッフとして働くメリットとデメリットが生じるもの当然だし。その時にメリットが多い道場にしたいと思っています。
掃除とか洗濯にうるさいですしね。会員さんへの口のきき方とかも。でも、道場をいずれ持ちたいと思っている人間には全てが意味のあることです。ただ強くなるために柔術をやるような者はいらない。強くなって、将来どうするのってことだし」
──青山、広尾、三田という場所に道場を開いた。この点についての石川さんのビジネス的な勝算とは?
「そうですね。利益だけ考えるとベッドタウンに出すのが一番だと思います。家賃が15万から20万円ぐらいまでで生徒さんが80人ほど集まる──それが一番です。都心に道場を出しても、それだけ会費を高くするわけにはいかないですから。家賃は10倍ぐらい払っても、会費は10倍にはできない」
──利益を出すには工夫が必要になってきます。
「でも、回収できるんです。アパレルを創ったり、スポンサーさんもこの街に道場があるということで協力していただけます。あッ、あとは道着を置いて帰ることができます(笑)。月に1万5000円で練習が終わって道着を置いておけば、洗濯してロッカーに用意しておきます。
これが好評で。ロッカーは24個全てが埋まってしまったので、新たに12個追加したんです。それで月に50万円になります。この1万5000円という額に関しても『毎日来て、毎日洗濯してらって1万5000円って安いですね』って言ってもらえます」
──それも語弊を恐れずにいうなら、お土地柄かと。でも一人暮らしをしていて、練習後に毎回洗濯するなら、それぐらいのお金出したくなる気持ちも分かります。会社に道着を持っていくわけにはいかない人もいますしね。
「そうなんですよね。あのシステムは麻薬と言われています。一度知ると手放すことができないって(笑)。そういう収入もありますし、スポーツマッサージ・ルームも創りました。あとウチの連中にはプライベート・レッスンで15万円稼いでいる者もいます」