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【Special】「今をいきよ」──CARPE DIEMブラジリアン柔術・石川祐樹のWay of the Jiu-Jitsu<02>

Carpe Diem【写真】楽し気なトーマス・ミーツのクラスも、実はならず者のエッセンシャルの賜物(C)CARPE DIEM

Carpe Diem(カルペディエム)ブラジリアン柔術を率いる石川祐樹インタビュー第2弾。

その独特の柔術感は賛否両論。今回も石川が初めて柔術に接したアリゾナ時代を振り返ってもらった。ならず者集団の空気を残す──それは個性と表現して良い、カルペディエムのルールといえる。

<石川祐樹インタビューPart.01はコチラから>

──『人生を豊かにするツールである柔術』、それは石川さんが米国で柔術を習い始めたころに養われた精神的支柱なのでしょうか。

「それはあると思います。生活のなかにある柔術。僕はアリゾナ州のテンピという街で、ローランド・サリアという自分で黒帯になったという凄く評判の悪い先生の下で柔術を始めました。本当に最悪の人なんです」

──ハハハハ。

「でも、何か面白かったんです。道場に色んな奴がいて。そいつら、みな柔術LOVEがある。MMA──バーリトゥード的というか荒っぽいところでした。アリゾナの柔術といえば、メガトン・ディアスですが、そりゃあ腕に覚えのあるという逸話が僕の道場にも伝わってきていました。だから会場で初めてメガトンを見た時、勝手にメジオ級ぐらいの人を想像していたからプルーマ級で小さくて驚きました。

恐怖で偶像を創り上げていたんです(笑)。僕の通っていた道場も喧嘩とか多かったし、荒っぽかったです。道場のガラスが全部割られていたりだとか、トーナメント会場で椅子を投げ合い、それが女性に当たったりだとか。会場で逮捕されている人間もいましたよ。ならず者が習う、それが柔術という感じでした。でも、マーク・ケアーも来ていましたね」

──おお、懐かしい(笑)。

「リコ・ロドリゲス、ダン・ヘンダーソン、ドン・フライもいました。渋いとろでいえばヒース・シムズとか」

──おお、今やイヴォルブMMAのヘッドコーチですからね。MMAと近い柔術アカデミーだったのですね。

「ハイ。1998年とかだから、荒くれ者が多くて(笑)」

──カルチャーとしての柔術が荒くれ者だった?

「だからカルペディエムなんです。柔術道場はキッチリとしたカリキュラムを組み、稽古を受けた回数、年数などでシステマチックに昇格していく面があると思います。昔の空手のように技を見て認定するような感じで。でも、そちらの方が色々と道場のことを把握しやすいんですよね。だから決して間違っていないと思います。集客を考えると昇格方法が明確に存在するほうが正しいですし」

──グレイシー・アカデミーやバッハのオンライン・カリキュラムのように。

「そうです。でも、僕はどうやったら昇格するか尋ねられても答えられない(苦笑)。『青帯になるには、青帯の人と互角になれば』ぐらいで。『技っていくつあるんですか?』って尋ねられると、『1カ月やってみて』って言います。だって、1カ月柔術をやってもらえれば、その質問に全く意味がないことを分かってもらえるはずだから。逆に『あの先生、全くでデキていない』って思われているかもしれないですが(笑)。

カリキュラムって、やっぱりトップダウンで上から下に通達が行きます。ああいうのをジムがしっかりと守るのも日本風だと思います。柔術を始めたばかりの人は、技ってどういうものか、その精度をチェックしていきたいというのは分かりますけどね」

――その方が安心でき、練習して成長を感じやすいでしょうね。

「最初は技をコピーできれば強くなれると思うものですからね。そうすると、やっぱりガードからの仕掛け1、ガードからの仕掛け2っていう風にカリキュラムがあったほうが分かりやすい。それを履修したら、ストライプがもらえるように。

でも、技をコピーできるようになっても弱いヤツは弱いんだよって(笑)。何でも一通りできなくても、一つ突出していて強い人間だっている。それが柔術。僕はどんな形だろうが、強くなる方法を認めていたい」

――それだけ生徒さんの個性を見抜くのは大変な作業にもなりますね。

「だからカリキュラムがあったほうが、指導もしやすいです」

――石川さんは違う?

「僕はそのクラスにやってきた生徒さんの顔を見て、その日に何を指導すれば彼らのためになるのか。最大公約数となる技術指導をしているつもりです。ただ、受けた人によっては『またデラヒーバかよ』とか思うこともあるでしょうね(笑)。

その部分について、カリキュラム化するべきじゃないのかと悩んでいます。そうなると指導者もみな、同じモノを教えることになる。でも、僕と橋本は全く違う柔術をします。真逆といっても良いぐらいです」

――指導者の体格も持っている技術も、そして技量も違うと。

「だからカルペディエムは、言い方は悪いですけど、スタッフは放し飼いなんです。その代り、トーナメントで結果を残さないと説得力はないですよ。だからスタッフには大会でポディウムに上らないと、話を聞いてもらえないよと伝えています。

つまりは『テメェで頑張れ』ってことです。そこだけです。そうすると、表彰台に立った人間は『これ、こないだのトーナメントで使った技です』って説明ができる。これ以上、説得力のある説明はない。そして教わっている人も、どれだけ楽しいか。

僕は道場のトップだから、それだけで何となく尊敬してもらえる(笑)。だからトーナメントに出ていなくて、メソディカルに指導していても納得してもらえるという面はあります。でも、スタッフの現役柔術家は違う。彼らは自由に好きな技を指導して良いように言っているし、だからこそ現役として結果を残す重要性を説いています」

――その自由な指導のなかに石川さんとして、ここだけは守ってほしいというものはありませんか。

「目だけは効かせてほしいと言っています。ケガをしていて、下ができない人がいるかもしれない。少人数なのに体重差が大きい場合、しっかりと目を効かせて、彼らにあった指導をしろよ、と」

――臨機応変に、と。そこがまた日本人には実は難しい部分かもしれない。

「そう適当にって取られるかもしれない。出たとこ勝負だから入門したての人は戸惑うかもしれないです。手引きもないのに旅に出るのかって。スパーリングだって『何やってもい良いよ。相手は命を守る術はあるから』って(笑)。僕がそうやって柔術を学んできたので、非効率なようで一番効率的だと信じています」

――スタッフ、インストラクターが自由に指導するということは、その石川さんの考えを理解したうえで、なのでしょうか。石川さんと違った考えの持ち主が、違った指導をすることがあるかもしれません。

「技に関しては何も言わないです。僕と違うやり方でも。だから生徒さんにも『これは僕のやり方で、××は違いますよ』とも言っています。ただ、安全面に関してだとか、気風というか規範という部分での生徒さんとの接し方については、同じようになるよう口を酸っぱくして言っています。安全を軽んじるような人には、ジムを辞めてもらっても仕方ないから、徹底的に正せって。

そういうことは1週間に1度ほど集まって、飯でも食いながら話して共有しています。フルタイム・スタッフの間では共通認識を持てていますね」

――そのフルタイム・スタッフのなかにトーマス・ミーツという外国人がいるのもカルペディエムらしさでは?

「彼はフランス人で、どこにでもいる青帯になりたての生徒でした。凄く性格が良くて。英語の先生をしていたけど、ビザが更新されないと困っていて。フランスに帰るしかないって言っていて、僕は彼の人間性が好きだったから、この国際化と言われるご時世だし、1人ぐらい雇ってみようかなって(笑)。そうしたら、そこからの伸び率は半端なかったです」

――それは感謝の表れじゃないでしょうか。

【写真】石川は米国だけでなく、ブラジルのアカデミーの空気も知る(C)YUKI ISHIKA

【写真】石川は米国だけでなく、ブラジルのアカデミーの空気も知る(C)YUKI ISHIKA

「青帯で雇って、今は紫になりアジアでも準優勝しましたしね。本当に良いヤツで、外国人の練習生とのコミュニケーションでも力を発揮してくれていますからね」

――石川さんとすれば、やはり米国の最初の道場に日本人として飛び込んだ、その時の経験が大きくてカルペディエムをインターナショナルなコミュニケーションの場にしたい。そういうことでしょうか。

「それは大きいです。米国の大学に行って、こんなに相手にされないんだって痛感させられました。日本に来ている米国人は日本が好きで来ている。でも、米国にいる米国人は日本に興味なんてなくて、誰にも相手にされなくて寂しい想いをしました。でも、柔術の道場に通いだしたら2日で仲間ができた。僕と同じような外国人が日本にもいるかもしれないし、カルペディエムをそういう場所にしたいです」

<この項、続く>

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