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【Special】「スマッシング・マシーン」の試写会に参加させてもらって、28年前を思い出しました

【写真】灼熱のアリゾナの太陽の下、ソフトでホットな2人でした。自宅にはサボテンもありました(C)MMAPLANET

先日、5月15日公開の「スマッシング・マシーン」の試写会に参加させていただいた。MMAファンであれば、この映画がマーク・ケアーを題材としPRIDEが多くの舞台となっていることはご存じだろう。
Text by Manabu Takashima

ザ・ロックことドゥエイン・ジョンソンが、マーク・ケアー役を演じ「The Smashing Machine(原題)」が制作されると知ったのは、2023年の年の瀬だった。情報源はスーパーヒーロー映画&ドラマの動向を知るために、毎日のようチェックしている某サイトだ。

その時点で相当興味を持っていたが、制作がA24と知り映画の質も期待できると思った。サブスク時代の恩恵を受け(※月々の支払はバカにならないが)映画館に足を運ぶのは娘たちとマーベル映画鑑賞程度だった自分が、なぜか大きなスクリーンで視たいと思った「ミナリ」がA24の創った映画だった。

「アイアンクロー」は余りにも多忙な時期に封切りとなり、見逃すという痛恨(U-NEXTで視聴)も、去年は「We Live in Time」を鑑賞し家内に苦笑いされるほど、涙が止まらなかった……。自分にとって、A24の映画には外れがない。

もちろん映画を専門家のように語ることなんて絶対にできないが、A24が創ったマーク・ケアーの伝記映画は視ないわけにいかないと思っていたので米国公開の日程が決まっても、国内での公開日が未定なことにやきもきもした。そんななか国内での公開日が決まり、MMA記者をしているというだけで試写会の誘いをRIZINにしてもらった次第だ。ありがとうございます。

映画の導入部分、ケアーのMMAデビュー戦となったWorld Vale Tudo Championshipの再現性がえげつなく、一気にスクリーンに引き込まれた。

そんな冒頭から半年後のUFCデビューまで映画で振られることもない期間、記者生活3年目の自分はマーク・ケアーをアリゾナで取材をしている。エンセン井上のUFCデビュー戦があったジョージアから大西洋を越え、オランダ・キック界を席巻していたWPKLでモハメド・オワリ、ラモン・デッカーらの試合を撮影。パリでゴールデントロフィーの選手をインタビューして、K-1スイス大会へ。

大西洋を逆方向に渡ると、約2カ月後にUFCで戦うモーリス・スミスとマーク・コールマンの所(前者がワシンゴン、後者がオハイオ)を回った。その後、アリゾナへ。アリゾナ後はテキサス州アマリロで、ドン・フライの掌底ファイトをUSWで見た。1997年5月30日のUFCから、6月20日のUSWF――これが同意は今も得られていないが、この年の2月に結婚した我々夫婦の新婚旅行だ。

もう四半世紀以上も昔、今では考えられないほど大らかな時代だった。コールマンからケアーの電話番号を教えてもらい、本人に直接アポを取って取材の日取りが決まった。そして「レンタカーするので、取材しやすいホテルを教えて欲しい」とケアーに尋ねた。

「レンタカーなんて必要ないよ。僕が2人をピックする。2日間だろう? ホテルも勿体ない。僕の家に泊まれば良いから」

そんなケアーの言葉に甘え自分と家内は彼の家にお世話になり、フィジカル・トレ、柔道トレ、ミット打ちなどMMA四戦目に向かう様子を取材させてもらった。もちろんガールフレンドのドーンとも、練習時間以外を共にした。エンジェルヘアーという、そうめんのような細いパスタがあることを教えてくれたのはドーンだ。

彼女はそれはそれは甘い空気の人で、全ての言葉が猫撫で声に聞こえた(笑)。そして、(2人揃って抜群に)ソフトで優しかった。そんなこともあってマーク・ケアーはちょっとした思い出のファイターで、伝記映画を視ないわけにはいかなかった。

ネタバレ厳禁は承知だが、一つだけ許して欲しい。ドーンが猫をあやすシーン。エミリー・ブラントの演技には本当に驚かされた。試写会会場で声が漏れそうになるほど、ドーンそのもの。

HCK、ハワード・コンバット・キモノ。Hunter――ハンター。フルコンタクト・ファイター、ビバリーヒルズ柔術、当時のファイトシーンの再現性も涙……いや、ヤバいクオリティの高さで大笑いしたくなる。バス・ルッテンだけでなく、こそっと本人役で出演している当時の顔。往年のMMAファイターも、選手やトレーナー役で出てくるので「ニヤリ」が止まらなかった。

残念ながら映画の中で見られたミスター・サカキバラは、現RIZIN榊原信行CEO本人ではなかったが、「〇〇〇さんが自分役なんて光栄です。ドゥエイン・ジョンソンはマーク・ケアーと見間違うぐらいの雰囲気を出しているのは凄い。PRIDE世代の人達は、ノスタルジックに浸れると思います」とRIZIN52の会見後に「スマッシング・マシーン」の感想を記者に漏らしていた。

あの時代があるから、今がある。当時のファンも今のファンもMMAの歴史、その一部に触れられるはず。個人的には――エンドロールの実写、特にドーンの写真には感極まりそうに。そんな2時間と3分間だった。


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