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【WJJC 2015】世界柔術決勝リポート<05>ヘビー級Part.01、キーナン敗れ。レイチの妙技炸裂

Heavy Q-final 01【写真】黒帯を巻いて以来、世界大会になるとインパクトを残せないキーナンは、今年も階級別で表彰台を逃した(C)MMAPLANET

5月28日(木・現地時間)より31日(日・同)にて、カリフォルニア州ロングビーチのカリフォルニア州立大ロングビーチ校内ピラミッドで、IBJJF主催World Jiu-Jitsu Championship=世界柔術選手権が行われた。今年の競技柔術世界一を決めるこの大会、第5回となる今回はフィジカル、モダン、クラシック+進化系、そして小よく大を制すといった柔術の持つ魅力を余すところなく垣間見らえたヘビー級の模様、まずは前編として準々決勝と準決勝から1試合ずつ、計2試合の模様をお届けしたい。

Heavy Q-final 02<ヘビー級準々決勝/10分1R>
ティム・スプリッグス(米国/ロイド・アーヴィン)
Def. by 2-0
キーナン・コーネリアス(米国/アトス)

前日の無差別でも戦った米国若手重量級ホープの対戦が、再び実現。無差別級ではバックを奪って勝利していることもあり、余裕を持ってガードからの攻撃を仕掛けるコーネリアスと、極度に腰を引いて、ひたすらコーネリアスの攻撃を潰すスプリッグスという攻防が続く。

しかし、戦いも後半に入るとコーネリアスの引き込みに合わせてスプリッグスが足を飛ばし、これがテイクダウンに判断される。まさかの2点失点で慌ててガードから攻撃に出るコーネリアスだが、スプリッグスはそれまでの戦いと同様に腰を引いてワームガード等の仕掛けを許さない。ばかりか、さらに強力なベースを用いて試合終了まで守りきることに成功。試合時間のほとんどで攻撃していたコーネリアスだが、一瞬の隙を突かれての敗退となってしまった。

勝って絶叫するスプリッグスには場内から大きなブーイングが。これはスプリッグスがこの試合できわめて消極的な戦い方をしてまんまと勝ちを拾ってみせたからだけではなく、女性暴行疑惑で悪名高いロイド・アーヴィン門下生であり、会場全体を敵に回していたことが大きい影響していた。ルール内で戦っていたスプリックグスには気の毒ではあった。

Heavy Semi-final 01<ヘビー級準決勝/10分1R>
ルーカス・レイチ(ブラジル/チェッキマット)
Def. レフェリー判定
ティム・スプリッグス(米国/ロイド・アーヴィン)

大きな選手を相手に、ハーフガードで潜ることを得意とし、重量級での試合出場を常とするベテランのレイチ。その入場シーンでは大歓声が送られた。

Heavy Semi-final 02対して、スプリッグスの名前が呼ばれるとブーイングが沸き起こる。試合は予想通りレイチの引き込みからスタートが切られた。スプリッグスは固められる前にパワフルな動きで左右に振ってのパス狙い。煽られたレイチが背中を向けたところでバックに付きかける。しかし、レイチはなんとか体勢を戻し、ニアマウントの状態を経てハーフまで持ち込んでみせた。それでもスプリッグスは胸を合わせてレイチに背中をつけさせ、首を固めて優位な体勢をキープ。ここまでの攻撃でスプリッグスにアドバンテージが入った。

ハーフガードの上からパスを決めるパターンを持つスプリッグスと、ハーフガードからのスイープを十八番とするベテランのレイチによる、お互いの体勢での熾烈なポジションの争い。ここで競り勝ったレイチは脇を差して体勢を横に向けることに成功。そのままスプリッグスの片足を両足で搦めながら、タックルに移行する十八番のスイープ狙い。ただし、レスリング仕込みのバランスを誇るスプリッグスは、ウィザーで対抗して崩れない。

Heavy Semi-final 03ならばとレイチは自分の背を付けながら逆方向に回転するスイープを仕掛けるが、スプリッグスはこれも堪えてもとの体勢に。このハーフにおけるアンダーフック対オーバーフック、エディ・ブラボーのいうところの「ドッグファイト」の攻防が延々と続くことに。

残り2分の時点で両者が場外際にもつれると、ここでレフェリーはスタンド再開を命じるとともに、レイチにこれまでの攻撃の蓄積によるアドバンテージを与えた。点数こそ同点となったものの、レイチはもう一度ハーフを最初から作らねばらないことに。逆にいえばスプリッグスとしては、再びレイチの引き込み際に攻撃してアドバンテージを奪うチャンスが生まれたこととなる。

スタンドからグラウンドに移行する一瞬の攻防が勝負の分かれ目となったこの場面で、レイチはまずタックルを仕掛け、スプリッグスが反応した所でクローズドに引き込み。さらにハーフに移行し、相手にポイントを与えず得意の体勢に持ち込むことに成功した。それでもスプリッグスもレイチに脇を差すことは許さず、前腕でレイチの顔を圧迫して背中を付けさせようとするなかで試合終了。

最初と最後に優勢に立ったのはスプリッグス、中盤に攻撃を仕掛けたのはレイチというこの試合の判定は、レイチに。若くパワフルなレスラーにしてロイド・アーヴィン門下の「悪役」を大ベテランが制したことで、場内は大歓声に包まれた。人気不人気はともかくとしても、(メタモリスにおけるエディ・ブラボー対ホイラー・グレイシーの名勝負でも見られた)ハーフガードにおける上と下、オーバーフックとアンダーフックをめぐる二人の攻防には、組み技格闘技ならではのスリルが詰まっていた。

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