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【UFC】ドラッグ問題に一歩踏み込み決意表明。ランダムテストを第三機関に委託、出場停止は最短2年に?

2015.02.19

UFC【写真】今年に入って薬物使用で問題なった大物ファイターが続出し、UFCが手を打ち始めた(C)NAOKI FUKUDA / WOWOW

今回の会見ではマリファナの常習犯であるニック・ディアスに関するコメントは聞かれなかった。
18日(水・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのレッドロックカジノ・リゾートのパビリオン・ボールルームでロレンゾ・ファティータ、ダナ・ホワイト、ローレンス・エプスティンが出席し、ドラッグ問題に関する記者会見が開かれた。

冒頭のファティータの挨拶に続き、ダナが最近の頻発したドラッグ問題について言及。ジョン・ジョーンズはコンペティション外のドラッグテストで、薬物反応が出たが、試合後の検査では「パフォーマンス・ドラッグ、レクリエーション・ドラッグともに陰性だった」と話し、続いて今回の騒ぎの一番の要因となったアンデウソン・シウバに関しては、以下のようなコトの経緯を説明した。

アンデウソンがランダムのドラッグテストを受けたのが1月9日で、その結果が陽性だったことをネヴァダ州アスレチック・コミッションが把握し、UFCが知らされたのは2月3日になってから。1月31日の試合前までに、この事実が耳に入って来なかったことを強い口調で話したダナは、アンデウソンに関しては大会後のテストでも陽性だったと話を締め括った。

続いてヘクター・ロンバードが4月25日のモントリオール大会のセミでローリー・マクドナルド戦に出場できなくなった件は、1月3日の試合後にテストがあり、1月13日には陽性だったという知らせを受けた。よって、出場停止とした。ロンバードの出場停止に関し、リリースしなかったという意見に対しては、「我々はドラッグテストの結果をリリースしたことはない。コミッションが発表するもので、これまでもそのような発表をしたことはない」と強調。「ローリー・マクドナルドは7月11日にロビー・ローラーに挑戦する」と発言し、デスクをドンと叩いて周囲を見やった。

ダナからバトンを受けたファティータとエスプティンは、過去2年でUFCはドラッグテストに50万ドル以上を費やしてきたことや、45カ国のファイターと契約しており、一都市に選手が集まっているNFLなどより、テストを完全に実施することが難しいという状況を説明。その上で7月より、コミッションに委ねてきたランダム検査を第三者機関に依頼し、契約全選手と行うことを言明。さらにコミッションのペナルティ期間が初犯で半年や9カ月なのに対し、2年から4年になることを支持するという発言もあった。

ダナからも会見途中に試合前、試合後に関わらず陽性になったファイターはカットするという発言もあったが、アンデウソンら現時点でペナルティを受けている選手に対する処遇はまだ決定していないようであった。

ともあれクスリが蔓延し、使わない選手がバカを見るという状況に一歩踏み込んだUFC。今後、ドラッグテストに必要な出費は莫大なモノになるようだが、遂行能力があるのもまた業界のリーダーたる所以だろう。

ドラッグテストを第三者機関を雇い、自ら行う。つまりライセンスを発行するコミッションの判断とは別次元で契約を解除される選手が出てくることもありえる。そして、その選手は試合出場がなくなり、アスレチック・コミッションにライセンスを剥奪されることはない。第三者機関による、検査結果がコミッションのライセンスと連動しなければ、UFCをカットされた選手は他のプロモーションと契約し、試合を続けることが可能になる──という状況を生み出さないだろうか。

スポーツとして一団体が、業界全般をクリーンにするのはUFCといえども、難しい。RFAやレガシーなど、UFCあっての中堅プロモーションでは、UFCをカットされライセンスを持つファイターと契約しないという判断をする、つまりUFCに同調することは大いにあり得るだろう。では、目下のところ唯一UFCとライバル関係にあるプロモーションといっても過言でないBellatorはどのように出るのか。今もネイティブアメリカン・リザベーションにあるカジノでイベントを行うことが多いベラトール、法規上インディアン・リザベーションはアスレチック・コミッションの管轄下にすら置かれておらず、本来であればサンクションを受ける必要もない。

UFC世界王者がベルトを剥奪され契約解除、ライセンスを保持している場合は、ベラトールが試合機会を与えることは可能になってくる。加えてUFCで戦えない選手を、UFC以上の待遇で迎え入れる必要もない。ライバル団体の動向を性悪説で捉えると、そんな最悪のストーリーさえ考えられる。ドラッグ追放を主張することは簡単だ。しかし、UFCは自らの資本を投じて、撲滅に働くという。これはある意味、業界全体の十字架を背負った勇気ある行為といえる。

UFCの行動に対し、他プロモーションがどのような判断をするか。また、風邪薬など知識不足で禁止薬物を摂取してしまった場合も、故意にパフォーマンス向上禁止薬物を摂るケースと同様の重い裁きを受けることとなるのか。何れにせよ、ランダムテストの実施により、禁止薬物利用が減ること──は、選手の倫理観に掛かってくる。ここは今と変わりない。禁止薬物でなくとも、パフォーマンス向上効果を求め、摂取できるサプリメントは、いくらでも存在する。先に挙げた認識不足という点でも、今後は選手や陣営が学習し、解消していかなければならない。UFCは業界の暗部にメスを入れる気概を見せた。あとはファイター次第だ。

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