【RFC21】王座決定戦敗北、翌朝の春日井健士「バカたれです。昨夜の自分を殴り飛ばしたい」
【写真】強い気持ちをもってケージに足を踏み入れた春日井だったが、思わぬ試合展開が待っていた(C)MMAPLANET
1日、ソウルのチャンチュン体育館で開催されたROAD FC21。そのセミファイナルでソン・ミンジョンとRFC暫定フライ級王座決定戦を戦い、延長判定負けを喫した春日井健士。
3週間の準備期間で、魂のファイトを見せてくれた春日井だが、試合翌日に『心が折れた』、『自分に負けた』という無念の言葉を発した。試合の翌朝に行ったインタビューをここで紹介したい。
──激闘から一夜過ぎました。改めて今の心境を教えてください。
「完敗でした。反省点だらけです。ただ、酸欠になるまで戦ったので、悔しいという気持ちはないです。ただただ情けないだけで」
──1R、バックマウントからRNCという流れになった時、『行ける、勝てる』という想いと、『ここを凌がれると……』と気持ちが写真を撮っていてもありました。
「1Rは作戦通り、手数が出ていました。セコンドの祖根(寿麻)君からも、バックを取ればチョークを極めることができると言ってもらえていて、僕自身も『これで終われる。1 Rで終わらせることができる』と安心した部分もありました。そこでいつもしないような細かいミスを幾つかしてしまって。油断、安心してしまっていたんでしょうね。
チャンピオンになれるという気持ちが一瞬、頭を過ぎったんです。で、あそこを凌がれて下になってしまった時には逆に『やってしまった……』という想いと同時に、腕の疲れを感じました。無駄な体力を使ってしまったと思いました」
──極め切ることができず、逆に精神的な圧迫が強くなったような形ですか。
「ハイ、2Rと3R、この体力で持つのかというのはありました。疲れがドッと出てしまっていたので」
──2R以降、テイクダウンを相当数、奪われてしまいました。
「2Rも3Rも僕の負けパターンでした。四つ組みには自信はあったのですが、自分の組手でない形で勝負を仕掛けてしまい、スタミナを使ったというのもあります。ソン・ミンジョン選手の四つでの防御能力は、想像以上でした。力を使わずにディフェンスしていたんですよね。それなのに僕の方はムキになって力を使いすぎていました」
──3Rが終了した時点で、判定はどのようになると思っていましたか。
「僕の負けだと思っていました。心も完全に折れていました。祖根君は『もう1Rあるから』と言ってくれたのですが、僕自身は『もういい』って思っちゃって。ソン・ミンジョン選手の方が僕より心が強かったです」
──延長戦に入ったこと自体は、1Rを取れば15分間で本来は負けていた試合をひっくり返すことができるという幸運な展開でしたが。
「延長に向かう時点で、『これは動けるか』という気持ちになっていました。もう気持ちが完全に切れていました。腕がパンパンで上がらない状態で。実際、ソン・ミンジョン選手も疲れていたのに、打撃ももうアマチュアみたいな打ち方になってしまって。最大の敵は自分だったのに、自分に負けました。
相手の技術云々でなく、自分が『もういいや。これだけやったら十分でしょう』って思ってしまって……。自分の弱い部分が出てしまいました。今、思えば本当にクソッタレって思えるんですけど、試合中は早く楽になりたいっていう気持ちになってしまっていました」
──それが本当だとしても、そこまで正直に話してくれる選手も珍しいと思います。ただ、色んなことがあって続けられたMMA。厳しい言い方をすると、春日井選手はそこだけは他の選手に負けてはいけない部分だったのに、それでもそういう風になってしまう。格闘技って怖いですね。
「なんで、あんな気持ちになってしまったのか、自分でも分からないんです……。色々なことがあって、苦しい思いもしたし、しんどい練習もやってきました。たくさんの人に迷惑を掛けて、それでも続けたかった格闘技……ベルトを獲ることで、迷惑を掛けてしまった人に少しでも恩返しができたかもしれないのに……、それなのに『ベルトはもういいやッ』っていう気持ちが芽生えてしまった。
本当に今にして思えば、『バカたれ』です。昨夜の自分を殴り飛ばしたいです。でも、ケージのなかでの僕は……自分に負けたし、ソン・ミンジョン選手の方がベルトに掛ける気持ちが強かった。
ソン・ミンジョン選手は試合中に大きな声を出して、叫んでいたんです。僕も叫び返しました。でも、そんなの格好だけで声を出して、ソン・ミンジョン選手のように気持ちは籠っていなかった。叫びながら殴って来たソン・ミンジョン選手のことを、本当に気持ちの強い選手だって戦っている最中なのに思ってしまいました」
──それでも最後はバックに回り、落とされながら腕十字も仕掛けました。最後の意地を見せることはできたのではないですか。
「あの時は祖根君の『あと30秒だぞ』という声が聞こえて。とにかく体を動かさなきゃって思っただけで、意識して技を仕掛けていたわけではないです。ただ、あの時にこの試合に向けてやってきた厳しい練習を、まるで走馬灯のように思い出したんです。このまま終わって良いのかって勝手に体を動きました。ただ、最後の腕十字はどれだけ力を使っても極まらないというのは分かっていました。攻めているぞっていう形を見せるだけの悪あがきでした」