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【European Open】フェザー級岩崎が健闘も……。充実のガルバォンが完全制覇

European Open 2014【写真】ミッドヘビー級と無差別級を制したアンドレ・ガルバォン。黒帯になり10年、結果を残す柔術家として輝き続けている(C)IBJJF

21日(水・現地時間)から25日(日・同)にかけて、ポルトガルの首都リスボンはパピリャオン・ド・コンプレッソ・デスポルチーボ・ムニシパル・ド・サカウ・ヴィストソで、IBJJF主催のヨーロピアン・オープン柔術選手権が開催された。今回は、アダルト男子黒帯フェザー級以上における注目選手たちの活躍と、無差別級の模様をお伝えする。

【フェザー級】
Marcio Andre vs Gianni Grippo日本の岩崎正寛(カルペディウム)は初戦、フィンランドのツォーマス・タミレートに8-0で勝利。準々決勝では去年の茶帯世界王者のマーシオ・アンドレ(ノヴァ・ウニオン)と対戦、互角の攻防を繰り広げたものの、レフェリングに問題が生じた結果、惜しくもそのレフェリー判定で惜敗した。

アンドレはその後も勝ち上がり、決勝は米国のジャンニ・グリッポ(アリアンシ)と新世代対決に。グリッポの仕掛けるワームガードからのベリンボロを、何度も一緒に回転して凌ぐなど見せ場を作ったアンドレは、その後もパンツを下ろされ尻を出されながらもワーム・ベリンボロを防ぎ続けてアドバンテージ差で勝利、念願の優勝を手に入れた。

ハファエル・メンデスやコブリーニャといった超強豪の参戦こそなかった今年のヨーロピアンのフェザー級。日本の若手黒帯を代表する存在の岩崎は不可解なレフェリングがあったとはいえ、世界的注目を浴びる新世代の旗手と五分の闘いを演じたことは特筆に値するだろう。

【ライト級】
Michael Langhi優勝候補のマイケル・ランギ(アリアンシ)が順当に勝ち上がり、決勝でガブリエル・ロウロ(チェッキマット)と激突。引き込みに合わせたテイクダウンで2点を先制されたものの、十八番のスパイダーから足を絡めて前に倒して同点追い付く。その後は両足担ぎの形で上からプレッシャーをかける場面を多く作り、試合を優勢に進め試合終了。ランギがレフェリー判定をモノにしライト級を制した。

【ミドル級】

去年の世界柔術準優勝のJT・トレス(アトス)は、準決勝でジェイミー・カヌートと対戦。13年のパン大会にてベンソン・ヘンダーソンを倒し、この階級茶帯の部を制した実績を持つ新進気鋭のカヌート(GFチーム)を4-0で下した。もう一方のブロックでは、トレスのチームメイトのダヴィ・ハモスが活躍。準々決勝にて、去年のコパ・ポジオライト級GPでドゥリーニョコことジルベルト・バーンズから金星を挙げて世界を驚かせたヴィクトー・シルベイロを2-0で下すなどして決勝に進出。結局決勝はアトス勢二人がクローズアウトしたのだった。

【ミディアムヘビー級】
Andre Galvao大本命、アトス総師のアンドレ・ガルバォンは一本勝ちを重ねて順当に決勝に進出、去年のアブダビ・ワールドプロで3位入賞の実績を持つヘナート・カルドッソ(チェッキマット)と優勝を争った。カルドッソが何度も仕掛けるトルネード・スイープを、重い腰と見事なボディバランスを利して凌いだガルバォンは、低く体重を掛けて足を超えてパスを仕掛け、逃げようとしたカルドッソからバックを奪取。終了寸前に仕掛けた腕十字こそ防がれたものの、4-0で完勝してこの階級を制した。

【無差別級】

ここでも重量級の強豪たちを倒して勝ち上がった本命ガルバォンは、決勝で最重量級のイゴール・シウバ(GFチーム)と対戦。巨体にして軽量級並のスピードと身の軽さを誇るシウバは、開始早々引き込んだガルバォンに素早くアキレス腱固めを仕掛けてあわやの場面を作ってみせる。次はガードに跳び付いたシウバは、ガルバォンの手と足の裾をコントロールしてのスイープで先制。さらにガルバォンのスイープをかわすと逆にその足を裁いてパスガード寸前まで持ち込んでみせた。

最初はシウバの怒濤の攻撃の前に受けに回る場面が多かったガルバォンも、ハーフガードで作り直して反撃開始。スイープでシウバの巨体を浮かせると、そこからベリンボロのように下に滑り込んでシウバのバックを狙い、上を取って同点に。さらに両足担ぎでシウバの巨体を持ち上げて体重を預けると、あっさりパスを決めて逆転してみせた。この流れでシウバは肋骨を負傷したらしく、試合はしばし中断される。やがてガルバォンがサイドを取った体勢から再開されたものの、結局シウバはすぐに続行不可能に。3階級上の相手をねじ伏せる力と技術を見せつけたガルバォンが、貫禄の2階級制覇を達成した。

それにしても今大会実に9試合を戦い、その全てを完勝してのけたガルバォン。長年柔術界の頂点に君臨していながら、気力、体力、技術、どれを取っても今まで以上の充実ぶりを見せているのだからまさに恐るべし。なにかと批判の多い競技柔術だが、その道を極めることで至高に到ることができるということを、ガルバォンは戦う姿勢をもって伝えてくれているようだ。

■ヨーロピアン・オープン2014 結果

【ルースター級】
優勝 カイオ・テハ(ブラザCTA)
準優勝 ニコラ・ギャラール(トゥーロンJJB)
3位 アンドレア・ベルデマーレ(サイクロン) 芝本幸司(トライフォース)

【ライトフェザー級】
優勝 ジョアオ・ミヤオ(シセロ・コスタ)
準優勝 パウロ・ミヤオ(シセロ・コスタ)
3位 シモーネ・フランチェスキーニ(サイクロン) トーマス・リスボア(アリアンシ)

【フェザー級】
優勝 マーシオ・アンドレ(ノヴァウニオン)
準優勝 ジャンニ・グリッポ(アリアンシ)
3位 ガブリエル・オリヴェイラ(ズィニス) キム・テハ(ブラザCTA)

【ライト級】
優勝 マイケル・ランギ(アリアンシ)
準優勝 ガブリエル・ロウロ(チェッキマット)
3位 ハファエル・ペレイラ(ゴード) サンドロ・ヴィレイラ(チェッキマット)

【ミドル級】
優勝 JT・トレス(アトス)
準優勝 ダヴィ・ハモス(アトス)
3位 ジェイミー・カヌート(GFチーム) フランシスコ・イトゥラーデ(アリアンシ)

【ミディアムヘビー級】
優勝 アンドレ・ガルバォン(アトス)
準優勝 ヘナート・カルドッソ(チェッキマット)
3位 ホドリゴ・ファジャウド(グレイシー・バッハ) マックス・カルバーリョ(グレイシー・バッハ)

【ヘビー級】
優勝 アーバース・サントス(ロイド・アーヴィン)
準優勝 パウロ・ジャーディム(チェッキマット)
3位 ヴィトー・トレド(アトス) アントニオ・アントニオーリ(アトス)

【スーパーヘビー級】
優勝 ルシオ・ロドリゲス(グレイシー・バッハ)
準優勝 クリストファー・ボウ(グレイシー・バッハ)
3位 カリーム・カリファ(アリアンシ) フィリッピ・ブエノ(アリアンシ)

【ウルトラヘビー級】
優勝 ヒカルド・エヴァンゲリスタ(GFチーム)
準優勝 イゴール・シウバ(GFチーム)
3位 ガブリエル・ルーカス(チェッキマット) ホセ・ジュニオール(UAE JJ)

【無差別級】
優勝 アンドレ・ガルバォン(アトス)
準優勝 イゴール・シウバ(GFチーム)
3位 パウロ・ジャーディム(チェッキマット) ルシオ・ロドリゲス(グレイシー・バッハ)

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