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【Interview】鈴木信達 「100分の1を実現させます」

Nobutatsu Suzuki

【写真】100分の1、されど絶対の『1』を持つ鈴木。アスクレン戦の実現はOFCの大会開催実績から考えて、10月頃になるか(C)MMAPLANET

OFC世界ウェルター級チャンピオン鈴木信達インタビュー第3弾。3月14日(金・現地時間)に絶対的に不利と見られたブロック・ラーソンを倒し、OFCのベルトを巻いた鈴木の前に立ちはだかり――そうなベン・アスクレンという壁。

ベン・アスクレン戦を見越した会話のなかで、鈴木信達というファイターの現状、そしてファイターとしての理念、矜持が伝わってきた。
〈鈴木信達インタビューPart.01はコチラから〉
〈鈴木信達インタビューPart.02 はコチラから〉

――ブロック・ラーソン戦で1-9の戦いをひっくり返した鈴木選手。その1の強さを見せてくれたので、ひょっとすると1-99かも知れないベン・アスクレン戦も、その『1』への期待度が以前と違ってきます。

「ハハハハ。1-99というのは周囲からも言われています。ホント、セコンドからもフィル・バローニの時は2-8だった。ラーソンの時は1-9だった。アスクレンは1-100、いや0-100なんじゃないかって言われているんです(笑)。それは自分も分かっています」

――同じ1でも1-9よりも1-99の方が楽しみです。

「そう言ってもらえると、嬉しいです。今はワクワクするカードがないと言われているなかで、日本人がワクワクする試合を組まれ、少しでも『この人はやってくれるんじゃないか』と思ってもらえるなかで戦うことはモチベーションになります。『ゼロ』ではないんです。その1が来れば、100パーセントに勝てるので。そうすれば自分も勝てると考えています……けど、本当のことをいえばやっぱりやりたくないですけどね(笑)」

――ハハハハ。

「本当に彼は格闘家としても一流ですし、アスリートとしても一流です。五輪に出ているわけですからね。その努力は僕の理解の範疇を越えているでしょうし」

――アスクレンをインタビューしたときに、本当にスマートという印象を持ちました。

「本当に考えているんでしょうね。自分とベン・アスクレン選手を比較すると失礼な話になりますが、高校からレスリングを始めて全国に2位になっている方とバローニ戦の前に指導してもらったんです。そういう選手って努力もそうなんですけど、凄く考えていたんです。戦略が合理的で頭が良いと思いました。その選手と同じ階級で戦うことを想像すると、脅威を感じました。『俺は手も足も出ないんじゃないか』と思ったのですが、ベン・アスクレン選手はその世界レベルにいるわけですから怖いです。

勝負に徹し、狡猾さも持ち合わせているでしょうし。それが当たり前の世界なので。コンディションも最高のモノに仕上げ、試合も自分が思い描いた最高のプランを通してくると思います。本当に凄い選手です。そういう選手と戦えるところまで来たと思えば嬉しい……のですが、やっぱりやりたくない(苦笑)」

――行き着くところは、そこだと(笑)。鈴木選手にグラウンドやレスリングでアスクレンに対抗して欲しいなどと決して思わないのですが、効かせた時の追い打ちのパウンドは、その時のために武器に加えて欲しいです。

「そうですね。今回(ラーソン戦)、思いました。パウンドは必要だって(笑)。何度かその態勢になって、そこでパウンドで勝てれば楽ですよね。でも、僕は『やべぇ、俺、パウンドの練習してねぇわ』って……笑い話になってしまいますが。太鼓の達人たいこだドンにしか見えなかったですね(笑)。壁レス、ケージを使ったレスリングの練習はしたのですが、パウンドはやっていなかった」

――壁レスはどこで練習されているのですか。

「組技の練習はリバーサルジム東京スタンドアウトと、三田にあるキン肉ハウスでCARPE DIEM(※カルペディエム)ブラジリアン柔術の岩崎正寛さんに指導を受けているのですが、仕事をやりながらなので、なかなか時間が取れないんです。そこで習った技術を一人でイメージして、反復練習することが多いです。

パウンドも最初にしっかりと教えてもらって、自分のなかでイメージして形にしていくことになると思います。元々、僕はトッププロ選手と練習しているわけでなく、ほとんどアマチュアの選手と練習したり、一人でやっていることが多いんです。バローニ戦もラーソン戦も実際のところ、対人練習はそれほどやっていませんでした。イメージ練習がメインで。基礎的なことを習い、自分で応用するという風に」

――ベルトを巻いたことを機に、プロ練習に参加するという気持ちもない?

「いえ、できれば参加したいです。やはり仕事の兼ね合いがありますので、時間が出来た時にフラッとジムに寄っても、そこに誰がいてくれるかといえば、そういう風にはなりません。やっぱり早朝だったり、夜だったりするので。何とか融通は利かせているのですが、仕事柄、時間を特定できない。だから優先順位としてフィジカル……走り込みですね。フィジカルなら、一人でも自分を追い込むことができます。外国人選手と戦うときフィジカルで劣ってしまうと話にならないです。走りとウェイトをやり、次に技術練習、最後がスパーリングと順位づけています」

――なるほど。それが鈴木選手の現状のなかで生まれた真理なのですね。ところで、次の試合はいつ頃だと考えていますか。

「夏、秋口で構わないです。以前から、毎回復帰戦と揶揄されるほど試合間隔が空いていたのですが、年齢も年齢ですし、ある程度は短いスパンをこなしていかないと、体もついてこないです。選手生命も考えて早い段階でやらざるを得ないと思います。なので今は、それぐらいの時期を考えています」

――では夏から秋口に掛けての試合、楽しみにしています。

「僕の試合は丁半博打なので、見てくださる方もある程度は楽しんでもらえると思います。なので、自分の方からも『楽しみにしてください』としか言えないです(笑)」

――倒すという目的を果たすまでの、プロセスに期待しています。

「ありがとうございます。自分は不透明なファイターです。OFCの方にも、こんな不透明な自分を使ってもらい、チャンスまで与えたもらったことを感謝しています。なので記者の方にそういう風に言っていただけると、単純に嬉しいです。100分の1を実現させますので、期待してください」

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