【Lemino Shooto10】2連勝中のパンクラシスト砂辺光久、大竹陽と対戦「ヒリヒリした試合ができる」
【写真】砂辺光久が砂辺光久であるために――修斗のケージでもパンクラシストとして戦い続ける(C)SHOJIRO KAMEIKE
8日(日)に沖縄県糸満市のシャボン玉石けん くくる糸満で開催されるLemino Shooto10で、砂辺光久が大竹陽と対戦する。
Text by Shojiro Kameike
昨年10月のLemino修斗沖縄大会で、元パンクラス王者の砂辺が修斗初参戦。福島祐貴をRNCで下し、2018年4月の室伏シンヤ戦以来7年半ぶりの勝利を掴んだ。続く今年4月の梅筋毒一郎戦も判定勝ちを収めて2連勝。そんな砂辺に、改めて修斗のケージで見せつけた「砂辺光久らしさ」について訊いた(※取材は10月29日に行われた)。
ただ『画になるなぁ。ここを撮ってよ』と思って
――昨年からLemino修斗に参戦して2戦2勝という結果もそうですが、やはりパンクラスはもちろんRIZINでも、そしてLemino修斗でも「砂辺光久は砂辺光久なのだ」と思いました。
「えぇ~、それは嬉しいですね」
――砂辺選手としては、戦う舞台が違っていても意識することは同じなのでしょうか。
「自分としてはRIZINや修斗とかは関係なく、僕が憧れたものがパンクラシストであり、パンクラシストを見て育ってきました。だから『競技として終わりたくないな』という気持ちが強いんですよ」
――というと?
「僕はパンクラスでプロとして勝ち続けること、お客さんに魅せ続ける姿を見てきたので、自分もそうありたいと思った姿を試合で体現する。自分にはパンクラシストの血が入っていると思っているんですよね。だから、ただ『勝ったから良かった。負けたからダメだった』ではなく、その中で何を魅せるのかを考えて試合をしています」
――Lemino修斗の2試合で、パンクラシストとしての自分を見せることができたと考えていますか。
「う~ん……見せられたこともあるし、見せられなかったポイントもあるって感じですね。
福島戦は、スタンドバックを取った時に投げましたよね。あの展開で投げることは、現代MMAじゃないと思います。でもそれが、僕が見てきたパンクラスであって。次の梅筋戦も1R目、ダウンを取ってマウントからボコボコにしたあと、仁王立ちで相手を見下ろしたりとか」
――あの仁王立ち試合を速報している側としても、ゾクゾクしました。
「あれは単なる思いつきだったんですよ。『初回で仕留められなかったか』と思いながらパッと立ち上がった時、梅筋選手が僕に対してビビッている表情で。『ここで睨みつけたら最高の画になる』と考えて実行しました。……何でしょうね? そういうことは誰かに習ったわけじゃないんです。僕が今までパンクラスで見てきたなかでも、同じことをやった選手がいるわけでもないんですけど。ただ『画になるなぁ。ここを撮ってよ』と思って。
昔から練習仲間にも『砂辺さんの入場って良いですよね!』と言ってもらえることが多いんです。それも含めて一つの作品であり、砂辺光久というパッケージだと思っているので。当たり前だけど、そういう部分だけ良くて試合は全然……というのは絶対よくないです。逆に入場は普通でも試合でしっかりと魅せないといけない、と思っていて。だけど僕は入場からゾクゾクするような選手を見てきて、今でもそういう選手に憧れているから、自分の試合でも自然と出て来るのかもしれないですね。
ああいうのは考えてやっているわけではないんですよ、本当に。『次の試合はラウンドが終わったら、こういうことをやってみよう』とか。スープレックスにしても、練習で思いっきり後ろに投げることなんてないですからね」
――もちろんラウンド終了時に仁王立ちするのも練習できるわけがない、と(笑)。
「アハハハ。雰囲気だったり、ケージの中に立った時の自分の立ち振る舞いに関しては、そういうことなんです。見てきたモノがそのまま入ってきて、自分の中でろ過して体現しているような感じで。特にLemino修斗に関しては『対世界』であり、若い選手が世界に挑む大会というイメージが強いじゃないですか。その大会に僕が出る理由というのは、若い選手に対するアピールもありますし、修斗畑の人たちの中にパンクラシストが入ることで、違う色を放つモノじゃなきゃダメだと思っているので。自分の立ち位置は、そういうモノだと考えています」
僕は自分のことをオジサンって言わない。自分が向き合っている相手は十代なんですから
――もう一つ「砂辺光久は砂辺光久である」と感じたのは……パンクラスの試合でもそうであるように、試合で劣勢になっても「砂辺は何かやるだろう」と思わせるし、実際に何かやる。
「やっぱり『この人が勝つよね』と思われている選手が勝つ試合って、何かゾクゾクしないんですよ。かといって別に試合で負けていいとは思っていないし、やられていい時間なんて1秒もないです。やられて、そのまま負けてしまった試合もあります。だけど仰っている『何かやるんじゃないか』という期待があり、そこで勝つことが最高の爆発に繋がると思っているので。やられても、やり返す。その気持ちは持ち続けていますね」
――もちろん、やられてやり返す練習もできるわけもなくて。
「できないですよね(笑)。やられている時は実力だと思っています。『やり返してやろう』という部分についてはプロ根性というか、パンクラシストとしての気持ちなんじゃないかな、と」
――だからこそ梅筋戦も1Rの序盤、ギロチンの形に入られた時も『ここから何かをどうにかするのだろうな』という見方になったことも確かです。ピンチになった時が本当のスタートといいますか。
「周りの人もそう思ってくれるだろうから、期待に応えたい気持ちもありますよね。そこから終盤にマウントを取ってボコボコにして、仁王立ちする。そうじゃないといけないよな、とも思っていますし」
――梅筋戦の直後は「相手がランカーらしいので、俺がランカーに入って上まで行けるかな」とコメントしていました。2連勝後のキャリアについては、どのように考えていましたか。
「久々に連勝できて、自信にはなっています。特に福島戦に関しては、自信がなかったわけじゃないけど、7年ぐらい勝利から遠ざかっていて――確か最後に勝ったのは室伏シンヤ戦(※2018年4月)で、そこからドンドンと負けて『俺、勝ち方を忘れちゃったな』という気持ちもあったんですよ。Lemino修斗で2連勝して『勝ち方って、こんな感じだったんだ』という感覚は戻ってきました」
――しかも地元の沖縄で2連勝。周囲の反応はいかがですか。
「本当に最高ですよね。毎回100人ぐらい、ジム生や仲間を連れて……そこで勝つことができて皆が喜んでいる姿を見ると、良かったなぁって思います。その前は沖縄でいうとRIZINに2回出て2回とも皆の期待に応えることができずに。別に誰かにそう言われたわけじゃないけど、懸かっているものは大きかったです。だから沖縄で、それを払拭する試合は絶対にやらなきゃいけないと思っていました。親父の死もあり、Lemino修斗に出させてもらって、やっぱり沖縄で試合するのは最高だなって感じましたね。
もちろん僕はいずれパンクラスに戻るつもりではいます。それでも自分を応援してくれている方々もそうだし、ジムの子たちに『自分たちはこの先生に習っているんだぞ』という気持ちにも繋がると思うし。それはもう自分の想いだけじゃなくて」
――いずれパンクラスに戻る……その気持ちは理解できます。では現在のLemino修斗とは、砂辺選手にとってどのような存在なのですか。
「僕の中では松根良太さんが創った沖縄修斗なんですよ。そこにLeminoさんが入ってくれてLemino修斗になった、というイメージで。だから松根さんの大会に出たい、という気持ちが強いです。
本当であれば、パンクラス沖縄大会をやりたいという話はしていました。でも今はそれができずに、Lemino修斗が定期的に年2回開催されていて――ちょっと悪い言い方をすると、選手たちも甘えているんですよ」
――甘えている……?
「僕がデビューして最初の頃は、オファーがあれば何でも乗るような感覚がありました。でも今は選手が選んじゃうんです。日本各地からオファーが来ても『いや、次は沖縄大会があるしなぁ』とオファーを流すようなこともあって。そうなると『ハングリー精神ねぇよな』みたいなことは強く思いますね。
それぐらい今の沖縄は恵まれています。アマチュア修斗も以前は沖縄選手権がなく、九州選手権に出場して良い成績を残せば全日本へ、という流れでした。今は沖縄にいながら、地区選手権に出て全日本への切符を掴むことができる。変な話、お金は掛からないじゃないですか。昔は九州選手権がダメだったら四国、近畿と出場していって。その時代を考えると、松根さんの功績はメチャクチャ大きいんです」
――練習環境に関しても、以前は沖縄の選手が他の地域へ出稽古に行っていた。対して今は日本全国から沖縄に、トップ選手が練習に来ています。
「僕もその恩恵を受けていますからね。それこそ平良達郎と触れたいって沖縄に来た選手と、僕も触れることができる。先日は福田龍彌選手が10日間ぐらい沖縄に来ていた時、僕もいろいろ教えてもらったりとか。今までなら試合の1カ月ぐらい前になると、10日から1週間ほど横浜グランドスラムで合宿していました。でも今は県外に行かずに練習することができる。それだけ松根さんがいなかったら受けられなかった恩恵を、十二分に受けているので。平良達郎が修斗王者になってUFCに行き、徳本望美もチャンピオンになって、タイトルマッチを経験している旭那拳がいて……」
――erika選手も女子ストロー級王座決定トーナメントの決勝戦へ。さらに11月29日の後楽園ホール大会では、砂辺選手のクロスラインに所属する当真佳直選手も、内藤頌貴選手とのストロー級王座挑戦者決定戦に臨むことになりました。
「うんうん。その世代は皆、始めた時にTHE BLACKBELT JAPANがあり、他県へ出稽古に行くとかっていう感覚はないでしょうね」
――もう「地方だから……」という言い訳が通じない環境にある沖縄です。もちろんそのような言い訳をする選手もいないでしょう。ただ、砂辺選手の場合はそこに「年齢が年齢だから……」という問題にもぶつかってくるとは思います。しかし砂辺選手の試合は、年齢を一切感じさせない。
「年齢なんて関係ないですよ。福島選手は十代だったでしょう? 自分の息子でもおかしくない年齢じゃないですか。僕は自分のことをオジサンって言わないんです。これぐらいの年齢で『もうオジサンだから労わってよ』とか言う人がいても、自分はそうじゃないと思う。自分はそこに乗っからない。確かに年齢はオジサンかもしれないけど、自分が向き合っている相手は十代なんですから。そこは対等で戦わないといけないし、年齢を言い訳にしたら終わりだと思っています。お客さんもそれを観に会場へ来ているわけじゃない」
――そういう発言をしている方も、きっと砂辺選手の試合を観たら「年齢じゃないな」と感じるかもしれません。
「あぁ、そう思ってくれたら嬉しいです。格闘技をやったことがない人が自分の試合を観て、それこそ『自分がかつて捨てた憧れや諦めてきたことを、やり続けることができるんだ』と思ってくれたらいいですね。何でもいい。『自分ももう一度ギターやってみようかな』とか思ってくれれば万々歳ですよ」
ポスターでもメインイベントの横で大きく扱われて、嬉しくなりました(笑)
――ここまで沖縄大会であっても、砂辺選手が試合順として後半に来ることはありませんでした。それも修斗らしさだとは思いますが。
「それはね、本当に自分も思っていました(笑)。今まで出場した2大会についても、『そこはシビアなんだね』と。今回の試合も最初に発表された時、僕の試合の上にメインイベントと書かれていたんですよ。でも西條英成、藤田大和選手、内田タケル選手が出ると聞いていたし、自分がメインなんてありえるのか――と思って松根さんに確認しました。すると『すぐ訂正します!』という返答があって。ちょっと期待しましたけど、『そうですよねぇ』って思いました(笑)。
やっぱりその部分では甘やかしてくれないですよね。良いと思います。そこで揉まれている、『また1年生からやり直しなさい』という感じがたまらないです」
――Lemino修斗初参戦となった昨年10月は、2回戦で第3試合でしたから。
「そうそう。今の自分の立ち位置を示されるのが、良いんです。だって今まではポスターでもアンダーカードとして小さく載っていた自分が、今回はメインイベントの横で大きく扱われているわけですよ。それを見て嬉しくなりました(笑)」
――次の試合で対戦する大竹選手の印象を教えてください。
「勝っても負けても一本かKO、こういう選手って良いよなと思います。どちらにしてもハズレがない、分かりやすい試合になる。僕にとっては嬉しい相手だし、彼に魅力を感じていますね。
プロとして真剣でやり合うことができる。真剣でやり合うからこそ、スパッと斬られる可能性もあるじゃないですか。チャンバラみたいにパンパンパンとやっているだけだと、どちらが良かったか委ねましょう、という試合になってしまいますよね。そういう試合ではなく、ちゃんと斬り合うことができるから、自分にとっても良いトライになる試合だと思います」
――仰るとおり、スパッと斬られる可能性のある相手です。今回敗れることで現在の2連勝を失いかねない、というリスクは考えなかったですか。
「え? あっ、う~ん……今言われて、初めて『そうなるのか』と気づきました(笑)」
――アハハハ。
「自分としては嬉しいです。福田龍彌選手がよく言うように、ヒリヒリした試合ができるだろうなって気持ちはありますね。お互い、メチャクチャ研ぎ澄まされると思いますよ」
――なるほど。最後に試合への意気込みをお願いします。
「もう毎回言っていますが――これぞパンクラシスト、僕にしかできないハイブリッド・レスリングをお見せします!」
■視聴方法(予定)
11月8日(日)
午後5時~ Lemino10
■Lemino Shooto10 計量結果






























