【RIZIN55】鹿志村仁之介と対戦、太田忍「RIZINで抜けていくためには逆を行っている。だから勝つしかない」
【写真】記者会見、合同公開練習でも鹿志村とともに、プロとして盛り上げるためのやり取りを見せていた太田。と同時に、ファイターとしての矜持もしっかり持っている(C)TAKUMI NAKAMURA
11月8日(日)に千葉県船橋市のLaLa arena TOKYO-BAYで開催されるRIZIN55で、太田忍が鹿志村仁之介と対戦する。
Text by Shojiro Kameike
太田にとっては今年7月、イリスベク・ティレノフに敗れて以来の試合となる。対戦相手は、7月に同じ大会でバンタム級王者ダニー・サバテロに挑戦し、ベルトを巻くことができなかった鹿志村――つまり、再起戦同士の一戦だ。
インタビューが始まると、このマッチメイクに不満があるようにも受け取れた太田のコメントだったが……話が進むにつれ太田のファイターとして、そしてプロとしての矜持が明らかとなっていった。
自分が鹿志村選手に勝って何があるかと言ったら、別に何もない。逆に僕のほうにリスクがある試合
――試合まで約3週間(※取材は10月20日に行われた)。今は追い込みの時期ですか。
「そうですね。試合の5週間前から追い込みを始めて、先週一度落としてから今週また上げるという感じです」
――今回は鹿志村選手との対戦が決まりました。まずは試合が決まった時の心境を教えてください。
「いや、何とも思わない――と言ったら取材にならないですよね」
――えっ、特にそういうわけではないですが……。
「本当に何とも思わなくて、『あぁ鹿志村か』っていう。……何で言うんだろう? 僕も彼も前の試合で負けていますし、『まぁそうか』って感じですかね(苦笑)」
――試合が決定した時に『まぁそうか』という感情しかないのは、これまで他の試合でも同じですか。
「いえ。前回のティレノフ戦も、サバテロ戦も、元谷選手と対戦する時も『勝てば上に繋がっていく』という試合だったので、『ヨシッ!』という気持ちでした。でも鹿志村選手については……前の試合がサバテロとのタイトルマッチだったとはいえ、実力でたどり着いたタイトルマッチというわけでもないし。じゃあ自分が鹿志村選手に勝って何があるかと言ったら、別に何もない。逆に僕のほうにリスクがある試合で、僕が彼に勝っても僕にとってあまりメリットはない。向こうにはメリットだらけだけど――と思いましたね、最初は」
――「最初は」というのは、現在はその気持ちも変化してきた、と。
「んー、まぁ、そう思わないと試合に向けて創っていけないですからね。『(鹿志村は)前の試合でタイトルマッチをやっている選手だし、勝ったら自分がタイトルマッチでもいいんじゃないか』という感じで。
なぜ鹿志村選手が前の試合でタイトルマッチをやったのかは分からないです。RIZINでの戦績でいえば、後藤丈治に負け、安井飛馬と所英男さんに勝って、それでタイトルマッチですよね。その道でタイトルマッチができるなら、誰でもその道を選ぶよ、って」
――太田選手はRIZINでプロデビューし、ずっとRIZINで戦ってきました。その自分がタイトルマッチまでたどり着くには5年近く掛かっている、ということを考えれば……。
「確かに僕は『これに勝ったらタイトルマッチだ』という試合を落としたから、仕方ないとは思っています。でもRIZINにおいて、その実績でタイトルマッチが準備されるのであれば……(両手を上げるジェスチャー)みたいな。RIZINで戦ってきて、戦績を積み上げてきた選手からすると、あまり面白くはないですよ」
――たとえば鹿志村選手でいうと、「サバテロのベルトに挑む前に、まず自分と対戦だろ」というような気持ちがあったのでしょうか。
「僕じゃないにしろ、井上直樹選手とか、佐藤将光選手とか」
――「RIZINトップ戦線にいる選手に勝っていないのに、ベルトに挑むことができるのか」と。
「そうそう。それでサバテロに勝ってベルトを獲っているなら、『それぐらい実力があるんだ』と思います。でもコテンパンにされて負けている。そういう相手との試合は、僕にとってメリットがない。逆に僕は負けたらヤバくなる。だから僕にしかリスクのない試合かな、とは思いますよね」
鹿志村選手に負ける要素はない。彼は極めがメチャクチャ強いけど、それだけ。それ以外、何かイメージありますか?
――リスクがあるというのは、前回の試合でティレノフに敗れていることも関係していますか。
「今回負けたら2連敗になってしまうということもありますけど、鹿志村選手に負けたら僕は結構厳しい立場になりますよね。客観的に見ても」
――時期は離れていますが、ご自身のサバテロ戦と鹿志村選手のサバテロ戦を比較すると、どのような印象を持っていますか。
「それは絶対に、内容的には鹿志村選手のほうが良かったんじゃないですか。1R目は良い内容で、足関も狙って盛り上げましたし。僕みたいにやられ続けて、最後に攻撃して頭から落ちて終わるっていう試合ではなかったから。内容的には鹿志村選手のほうが良かった。まぁ時期も違うし、何とも言えないですけどね。その時のコンディションを考えると、『今だったら違う』という気持ちもあるけど」
――コンディション面でいえば、前回のティレノフ戦は?
「メチャクチャ良かったですよ。ちゃんと1Rも取っていますからね。公式のジャッジペーパーでも、ジャッジ3名が僕の10-9で」
――ただ、試合後の会見でも話に出ていましたが、金的の影響もあり……。
「ローブローが3回あって減点にならず、注意だけで終わりなら僕も(金的攻撃を)やります。同じことが次の試合でも起こったら、その時は試合を続けないし。
僕からすれば、勝てる試合だったと思うんです。次は同じ大会でティレノフと井上直樹選手が対戦するけど、井上選手が普通に勝つでしょうし。それほど強い選手だとは思っていません。だからこそ、あの試合では金的のあと、油断して再開し、試合を落としてしまったことを後悔しています」
――試合後は「試合をやめる選択肢はなかった」という旨の発言がありましたが、試合後に改めて考えると後悔してしまう、ということですか。
「そうですね。試合中は無理ですよ。集中力もプチンと切れてしまうし。ボディをメチャクチャ効かされて、足が動かない状態で再開するのと同じようなイメージで」
――とても分かりやすいです。
「キンタマって内臓が外にあるようなものだから、無理。再開後も頭への攻撃は大丈夫だったけど、ボディが来ていたら一発で倒れていたと思います。そんな状態なのだから、続けるべきではなかった。最後も足が止まったところにヒザをもらったじゃないですか。あれは眼窩底骨折していてもおかしくない場面で。そんな代償を負うのであれば、試合を続けないという選択をするべきだったのかなって思います」
――結果、黒星を喫したティレノフ戦を踏まえて、自身の中で学んだことはありますか。
「金的を食らったら試合をやめる(笑)。それ以外はないですね」
――ローブローのことを除くと、自身としては内容にも手応えはあった、と。
「うん。だから今回、鹿志村選手に負ける要素はない。彼は極めがメチャクチャ強いけど、それだけ。それ以外、何かイメージありますか? あれば逆に教えてほしいです」
――イメージや勝敗はともかく、太田選手の強みとしてスタンドレスリングがあり、そこで鹿志村選手がいかにグラウンドに引きずり込むのか。逆にテイクダウンや引き込みができなかった場合、どのような展開になるのかは興味があります。
「あぁ、そうですよね」
――そう言われると、自身の中では「絶対にできないでしょ」という自信がありますか。
「彼の場合、今まではそれができていたんでしょうね。勝っている試合では――だけど、今まで負けていないわけではない。誰か強い選手に勝っているかと言われたら、ウチの平松翔を相手に開始16秒でアクシデントが起きて、DEEPのベルトを巻いた。それ以外、誰に勝っているか。どういう立場なのか分からない選手ですね」
分かってくれる人にだけ届けばいい、響けばいい。結構ナンセンスだとは思いますよ
――太田選手としてはティレノフ戦のあと、どのような相手と戦いたいと考えていたのでしょうか。
「……まぁティレノフに負けてしまっているから、RIZINから来たオファーは全部受けるというのは当然です。でも分からない。負けたらこういう感じなのか、と。うーん……」
――そうなると、勝って証明していくしかない。単純な言い方になってしまいますが。
「本当にそうだと思います、うん。負けたら次はこういう試合をやって、また積み上げていくしかない。鹿志村選手はDEEPのチャンピオンで、柔術黒帯で、身長もリーチもある……。……結構苦手なタイプだし、もしかしたら僕が負ける可能性もある」
――……いきなり話の方向性を思いっきり変えましたね。
「これじゃ試合に対して面白さを感じてもらえないかな、と思って」
――お気遣い、ありがとうございます。ただ、こちらとしてもファイターのリアルな想いを知りたい面もあります。それこそ鹿志村選手のことを貶めるつもりもなく、太田選手の考えもRIZINで戦い続けてきた選手の意見として尤もだと思いますし。
「そうなんです。僕、マトモなことしか言っていないんですよ。でもマトモなことを言いすぎて、批判されてしまうんですよね。アハハハ」
――SNSなどで展開される、自身に対する意見は気にするほうですか。
「気にしたことは1ミリもなくて、面白いなと見ています。『そういう考え方の人もいるのか』って。そもそも僕に共感できる人って少ないと思うんですよ。僕と同じ考え方ができるわけがない。それは経験してきたことが違うから。育ってきた環境も違うし、やってきたことも違う。だから分かるわけがない、共感できなくて当然だよな、と思いますしね。多くの人が共感できないほうが、僕にとっては嬉しいです」
――しかし、そう思うことができる人のほうが少なくて。
「SNSって、そういうもので成り立っているものですからね。僕自身はSNSを楽しんでいますよ。見ていると『この人、なぜこういうことを言うの?』と思う時もあります。客観的に見たら意見がズレている人もいるし。でも『自分にしか分からない意見だよな』と見ています」
――自分にしか分からなくていいし、自分にしか分からなくても仕方ないと思っているわけですよね。
「ほぼほぼ合っているけど……うん、『分かる人にだけ分かればいいや』と思っているんですよ」
――あぁ、なるほど。
「分かってくれる人にだけ届けばいい、響けばいい。でもひとつ思うのは、RIZINに出場していて、それは結構ナンセンスだとは思いますよ。あくまで興行だから、RIZINで戦って人気を獲得していくうえでは、このスタイルはあまり良くない。だからこそ僕はチャンピオンになりたいんです。このスタイルで人気を集めたい、という矛盾した気持ちではありますね」
――矛盾しているようには感じないです。そのスタイルこそ、試合で勝つことでしか証明されないわけで。
「本当にそうですね。今の日本のMMAでは、実質的にRIZINが一番大きな団体で。そこで抜けていくためには、逆を行っているとは感じています。だから、僕は勝つしかないんです。
だから――弱いと言ったら失礼になるけど、『コイツと?』と思う選手とは戦いたくないんですよ。その選手と戦うために準備するのがダルい。高いチケットを買って試合を観に来てくれるお客さんや、自分のことを応援してくれている人に対して、試合で低いパフォーマンスを見せるのが嫌なんです。でもそれって、相手ありきじゃないですか。本当に誰も相手がいない時に『それでも試合がしたい』という場合以外は、ほぼほぼRIZINの中では上の選手と対戦してきました。
自分でも分かっています。試合をするなら勝ったほうがいい。負けていいと思って臨む試合なんてない。ただ、自分より実力が下の選手と戦い続けていたら、負けるわけがない。実際、自分より下か同じくらいの選手とだけ戦っている選手もいるじゃないですか。僕はそうじゃない。常に強い選手と戦いたい。挑戦したいという気持ちがあるから」
――太田選手としては、まずここで鹿志村選手に勝ち、さらに上に行くマッチメイクが欲しいという気持ちですか。
「そうですね。タイトルマッチがやりたい。サバテロにやり返したい。そういえば井上×ティレノフの勝者が次はベルトに挑戦するんでしょうけど、僕は井上選手と対戦したことはないんですよ。一度決まっていたけど、井上選手の欠場で佐藤将光選手との対戦になって。だからサバテロにもティレノフにもリベンジしたいし、井上選手が相手なら自分が上に行く試合にもなる。あとRIZINでは、後藤選手や福田龍彌選手より下の立場になってしまっているので、鹿志村選手に勝って次は僕より上にいる選手と戦いたいです」
■視聴方法(予定)
11月8日(日)
午後1時~ ABEMA、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!
■RIZIN55対戦カード
<RIZINフライ級選手権試合/5分3R>
[王者]神龍誠(日本)
[挑戦者]トニー・ララミー(カナダ)
<バンタム級/5分3R>
井上直樹(日本)
イリスベク・ティレノフ(キルギス)
<バンタム級/5分3R>
福田龍彌(日本)
キム・スーチョル(韓国)
<バンタム級/5分3R>
鹿志村仁之介(日本)
太田忍(日本)
<フェザー級/5分3R>
アバイジャ・カレオ・メヘウラ(米国)
相本宗輝(日本)
<フェザー級/5分3R>
鈴木博昭(日本)
千春(日本)
<フェザー級/5分3R>
牛久絢太郎(日本)
リー・カイウェン(中国)
<ライト級/5分3R>
キム・ギョンピョ(韓国)
ヌルハン・ズマガジー(カザフスタン)
<ライト級/5分3R>
雑賀“ヤン坊”達也(日本)
倉本大悟(日本)
<バンタム級/5分3R>
中島太一(日本)
溝口司(日本)
<フライ級/5分3R>
力也(日本)
木村琉音(日本)
<フライ級/5分3R>
濱田巧(日本)
関原翔(日本)
<フェザー級/5分2R>
松本尚大(日本)
髙橋正親(日本)
<フェザー級/5分3R>
井上舜矢(日本)
マイティ・Saw(ミャンマー)
<ライト級/5分3R>
ジェイク・ウィルキンス(日本)
山﨑弥十朗(日本)



















