【RIZIN55】7カ月ぶりのヒリヒリ=キム・スーチョル戦へ、福田龍彌「一度全てを受け入れたうえで前に進む」
【写真】取材は10月21日、京都MIBUROで行われた。これまで幾多の修羅場をくぐってきたからこそ、説得力のある福田の言葉だ(C)SHOJIRO KAMEIKE
8日(日)に千葉県船橋市のLaLa arena TOKYO-BAYで開催されるRIZIN55で、福田龍彌が韓国のキム・スーチョルと対戦する。
Text by Shojiro Kameike
今年4月、RIZIN初参戦のアジズベク・テミロフと対戦し、KO負けを喫した福田。試合後は担架で運ばれる衝撃の結果に……。そして骨折と手術のため、ブランクをつくることとなった。「ヒリヒリする試合」を信条とする福田が追い求める理想、そこにはKO負けや骨折のような当然大きなリスクも伴う。だからといって福田が己の理想とするクオリティを曲げることはない。7カ月振りの復帰戦で、キム・スーチョルと対戦――福田の中の炎が、さらに燃え上がっている。
結局、自分にできることというのは、ああいう場面での細かいクオリティを上げていくしかないんです
――練習後のインタビューですが、清々しい表情に見えますね。
「そうですか? 練習終わりだからちゃうかな(笑)」
――それだけ充実した練習ができている、ということではないですか。
「まぁ、手術が終わってからは調子が良くないことのほうが多かったから。今は上がってきている、というのはあるかもしれないです」
――いつ頃、どの箇所を手術したのでしょうか。
「テミロフ戦で左の頬骨が折れて、4月の終わりぐらいに手術しました。試合後すぐに『これは折れているな』と思って、すぐ病院に行って1日検査入院したんですよ。京都に戻ってから、手術の日を決めて」
――KO負けを喫したことはもちろん、さらに手術となれば次の試合は相当先になってしまう。試合をしたい福田選手にとっては、ショックが大きかったかと思います。
「負けたショックも大きいし、そこに骨折というのがダブルで来ましたからね。でも、テミロフ戦については、自分が提供したいものは見せられたんかな、と。どよーんとした気持ちはあるけど、悔いはない。そういう気持ちがグルッと何周もして、今に至るという感じでしょうか。アハハハ。
試合ができない半年間は、やっぱり辛かったです。寂しいし、辛いし、モチベーションも上がらへんしね。でも、その中で自分がやれることをやるしかない。『こうなりたい、ああなりたい』という自分の理想像に向けて、できることを地道に積み上げてきました」
――その理想像については、もともと持っていたものに対して、テミロフ戦後に何か気づいたことなどが加わっていくものなのですか。
「いや、その理想は昔から固まっているんです。自分が理想としているクオリティがあり、そこに向けてやっている。新しい気づきというよりは、そのクオリティを突き詰めていっているような感じ。前回の試合は負けたけど、自分の方向性は間違っていないと確認できましたね」
――確かにテミロフ戦は面白い試合でしたし、もちろんヒリヒリしました。しかし、一度のKO負けで、これだけ試合から離れることになるリスクもあるわけですよね。いかにそのバランスを取っていくのか……。
「うん、そういう声もよく聞こえてきました。まぁ、攻めた結果なんでね。それこそ最後に食らった右アッパーは、まず僕が相手の左フックに合わせて右ボディジャブを突いたんですよ。カウンターというか、後出しみたいな感じで。そこに飛んできた右アッパーは、たぶん狙って出したパンチじゃないと思います。勢いでブンブンと出したら当たってもうた、みたいな。それもあくまで個人的な見解ではありますけど――もしあのアッパーを狙って出していたら、それはそれで彼の技術が凄いなって思いますし。
あの攻防に関して反省点はあります。でも、瀬戸際の攻防って、ああいうものやし、っていう気持ちもあって。ボディジャブを突いた時に、あそこまで頭が流れていなかったらアッパーを食らっていなかったかもしれない。でも、左フックに対して潜りながら入っているので、体も流れてしまうわけで。結局、自分にできることというのは、ああいう場面での細かいクオリティを上げていくしかないんです。より丁寧に基礎をやったり、交通事故を起こさない組み立て方だったりとかを意識して、取り組んできたつもりです」
――狙って出していたとしたら、それこそ天性の当て勘ですね。
「出したら当たります。そこは出せる選手と出せない選手の違いで、だからこそKOって生まれるんですよね。たとえば『今カウンターを打てる』というタイミングで実際にカウンターを出せる選手と、『危ない、怖い』という気持ちでディフェンスをチョイスする選手がいます。そこはもう気性というか、持って生まれたものはあると思うんです。もちろん、徐々に自信がついていって、カウンターをチョイスできるようになることもあるかもしれないけど。
いずれにせよ、テミロフ戦では、危ない場面でも、フェイントに引っかかってこっちの動きを見失った相手がディフェンスをチョイスするわけではない、ということを学べました。そこで手を出せることが、テミロフのような海外選手の強みですよね」
――相手が危ない場面でも手を出してくる。それは福田選手にとって、ヒリヒリさせてくれる要因なのではないですか。
「試合としては面白いですよね。テミロフ戦だってメッチャ楽しかったし。『やったんねん』という気持ちや殺気を感じると、ヒリヒリします。練習でガチスパーではなくマススパーであっても、殺気が消えへん人とスパーするのは好きですね。怪我なんて、しぃひんに越したことはないですけど」
――とはいえ、競技特性上、避けられないことでもあります。
「そう、壊し合う競技ですからね。壊しに行くつもりで殴るということは、自分の手も壊れるし、当たった相手の体も壊れる」
――そういう競技ゆえに、怪我をするリスクがゼロになることはない。だからこそ精度を高めて、相手の攻撃を食らう可能性を下げていくしかないわけですね。
「ただ、そこでディフェンスをチョイスしすぎて面白くない、っていう試合は提供したくないんですよ。やっぱり見ている人がヒリヒリして、見入ってしまうような――危ない距離でやり合う試合が良くて。そのなかでクオリティを高めるということに、こだわってきたつもりです」
自分が一番良いクオリティでキム・スーチョルと向き合っているという状態をつくっている
――手術の際、何週間ぐらい入院したのですか。
「入院は何日かでしたね」
――何日か!?
「不幸中の幸いというか、これで左の顔面の骨はコンプリートしたんですよ。アゴの骨が折れたこともあるし、眼窩底骨折もあるし、今回は頬骨で」
――それをコンプリートというのですか(笑)。
「アハハハ。過去にそれだけ経験しているから、顔面の骨折には慣れたくないけど、慣れちゃっていて。今回も『だいたいコレぐらいやな』と分かっていたとおりの経過でした」
――慣れてしまっているというのは、それだけ福田選手が修羅場をくぐってきたという証でもあります。
「ホンマに、そう思います。顔面を骨折しても動揺することなく。逆に、負けて手術したあと、皆に会っている時に辛さが出てきました。今までKO負けも骨折も経験していて、もちろん負けたことは悔しいけど、そこまで気持ちがドーンと落ちるわけじゃない。でも、周りの人のほうが、自分以上にドーンと落ちていて……。その姿を見ると、僕がドーンとなる。皆が落ち込んでいたり、自分を気遣ってくれたりする姿を見て、『悪いことしたなぁ。ゴメン、悲しませてしまった』という気持ちが強くなって。ボディブローのように効いてきました(苦笑)」
――ボディブローのダメージが抜けてきたのは、いつ頃ですか。
「練習を再開してからしばらくは、自分の動きの悪さに絶望していたんですよ。今までと全然違う気がして。手術した箇所の引きつりとかも気になったり、集中しきれてへん感覚がありました。そのあと、青井人がバックアップファイターとしてRTUに行くことになって、セコンドとして同行した時に、気持ちを切り替えていました。
その頃にはRIZINさんとも次の試合について話をしていて、11月にキム・スーチョル戦を組んでいただきました。前回負けた自分に、こんなにありがたい相手を――ホンマにありがとうございますって感じです。キム・スーチョルって、ウチの先輩が対戦して負けているんですよね」
――キム・スーチョルのデビュー戦は2010年8月、日本のRISING ONで、当時PUREBRED京都所属だった金山康宏選手を腕十字で下しています。福田選手はその試合を会場で見ていましたか。
「もうPUREBRED京都には入っていましたね。でも、アルバイトで人力車を引っ張っていたと思います。あとから『キム・スーチョル、メッチャ強かった』という話を聞きました」
――なるほど。
「キム・スーチョルが相手なら、絶対面白い。全部のスキルがあって、何をやっても強いですからね。喧嘩もできるファイターやし、面白くないですか」
――はい。
「金山さんとの試合からもう16年も経っているのに、今もトップで戦っていて。それができるファイターも、なかなかいないじゃないですか。強いでしょうね……楽しみや。向き合ってみないと分からないけど、それはお互い当日の楽しみということで」
――福田選手は試合で相手と向き合ってから、セットしに行く。その時にセットして出したものが、次の試合で出るとは限らない。過去の試合で出していたかどうかも分からないので、対戦相手からしても福田選手の研究ってしづらいでしょう。
「しづらいと思いますよ。自分はパンチを振るからって、ボクサーと練習をやり込んでも違うものやと思うし。僕もそういう部分は大切にしています。テミロフ戦後に練習を再開すると、全体的なまとまりが悪くなっていたんですよね。まとまっていたものが散らかっている感覚があって。それをまたまとめ直すのが大変でした」
――まとめ直すことができたのは……。
「沖縄から帰ってきた頃かな。9月の頭ぐらいに沖縄へ行って、10日間ぐらい沖縄の子らとたくさん練習させてもらって――(平良)達郎とも練習しましたよ。『ああでもない、こうでもない』と話をしたり、達郎の技術を肌で感じて、気になったことを聞いたりとか。そうやって一回違う環境に身を置いて、京都に戻ってきてから、まとまりだしたかなって感じですね。沖縄で自分の武器も再確認することができましたし。
負けたり、結果が出えへんかったりしたら、それまでの環境を変えたくなる気持ちって出て来るじゃないですか。『この環境がアカンのかな、今までの取り組みはアカンかったのかな』とか。今までやってきたことが間違っていないのに疑ってしまう。それまでやってきた自分を褒めてあげられていない。そう考えているうちは、負けを受け入れることができていないと思うんです。
一度全てを受け入れたうえで、前に進む。テミロフに負ける前までに自分が積み上げてきたものは何も間違っていない。そう再確認することで、より強く『こうだから、こういう戦い方をしよう』と思うことができました。自分が一番良いクオリティでキム・スーチョルと向き合っているという状態をつくっているので、楽しみにしていてください」
■視聴方法(予定)
11月8日(日)
午後12時45分~ ABEMA、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!
■RIZIN55対戦カード
<RIZINフライ級選手権試合/5分3R>
[王者]神龍誠(日本)
[挑戦者]トニー・ララミー(カナダ)
<バンタム級/5分3R>
井上直樹(日本)
イリスベク・ティレノフ(キルギス)
<バンタム級/5分3R>
福田龍彌(日本)
キム・スーチョル(韓国)
<バンタム級/5分3R>
鹿志村仁之介(日本)
太田忍(日本)
<フェザー級/5分3R>
アバイジャ・カレオ・メヘウラ(米国)
相本宗輝(日本)
<フェザー級/5分3R>
牛久絢太郎(日本)
リー・カイウェン(中国)
<ライト級/5分3R>
キム・ギョンピョ(韓国)
ヌルハン・ズマガジー(カザフスタン)
<ヘビー級/5分3R>
マック・パパリイ(サモア)
赤澤幸典(日本)
<フェザー級/5分3R>
鈴木博昭(日本)
千春(日本)
<バンタム級/5分3R>
中島太一(日本)
溝口司(日本)
<ライト級/5分3R>
雑賀“ヤン坊”達也(日本)
倉本大悟(日本)
<フライ級/5分3R>
濱田巧(日本)
関原翔(日本)
<フライ級/5分3R>
力也(日本)
木村琉音(日本)
<ライト級/5分2R>
ジェイク・ウィルキンス(日本)
山﨑弥十朗(日本)
<フェザー級/5分2R>
井上舜矢(日本)
マイティ・saw(ミャンマー)
<フェザー級/5分2R>
松本尚大(日本)
髙橋正親(日本)





















