【Shooto2026#05】約2年振りに戦線復帰する王者、渡辺彩華「見えないトーナメントと見えない勝負を」
【写真】現役・OGともにAACC勢は愛犬との撮影が多い(C)SHOJIRO KAMEIKE
20日(月・祝)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto2026#05で、修斗世界女子スーパーアトム級王者の渡辺彩華が高本千代を挑戦者に迎え、ベルトの防衛戦を行う。
Text by Shojiro Kameike
2023年1月に黒部三奈を倒し、続けて5月にはSARAMIをKOして、わずかプロ4戦目で修斗のベルトを巻いた渡辺。しかし、その後は万智戦とパク・ボヒョン戦で連敗を喫するとともに、それぞれ左目と右目の眼窩底骨折を負い2年もの間、戦線を離脱することとなった。そんな渡辺が遂に復帰し、インフィニティリーグを制した高本を相手に防衛戦を行う。一時は「自分はMMAファイターに向いていない」と引退さえ考えたという王者が、ケージに戻ってきた理由と、大きな変化を語ってくれた(※取材は7月14日に行われた)。
MMAでも柔道をやって勝つのは嫌なんですよ。そうしてまでMMAを戦いたいかといえば、それは違う
――お久しぶりです。渡辺選手のインタビューは2024年8月のパク・ボヒョン戦前以来、約2年振りとなります。
「お久しぶりです!」
――パク・ボヒョン戦の黒星以来、ここまで試合をしていなかったのは目の負傷が原因だったのでしょうか。
「はい。逆の目を骨折してしまって、また……。手術をしないといけない、って言われましたけど保存療法で長期離脱することになりました」
――「逆の目」「また」というのは、2023年10月の万智戦で右目の眼窩底骨折があり、続いてパク・ボヒョン戦では左目の眼窩底骨折で……ということですね。
「そうです。2試合連続で両目の眼窩底骨折、しかも女子のこの階級でというのは聞いたことがなくて。自分のファイトスタイルに体が追いついていないのかなって思いましたね」
――というと?
「MMAのセンスって、いろいろあると思うんですよ。その中で耐久力とかに関しては、他の選手と比べて劣っているなと痛感しちゃいました。あとパク・ボヒョン戦は殴られすぎて、試合中に『ここで倒れたほうが安全かもしれない』というぐらい追い込まれてしまって」
――……。
「結果、試合中に倒れて自分で諦めるようなことはしなかったけど、そんなことを思ってしまう自分はファイターに向いていないんじゃないかと思いました。もうこれ以上、上に行くのは難しいんじゃないかと感じてしまって。そうなると、もう格闘技を続けるのがしんどくなってしまったというか。もう好きっていう気持ちだけで格闘技を続けるのは、体のことも含めて報われない。だから辞めよう、と一回思ったんです。修斗側にもベルト返上を伝えたり、現状と気持ちの面を説明したりと、辞める方向で動いている時期もありました。
でも戦線離脱した後は、本野美樹にセコンドをお願いされたり、なんだかんだで練習をお願いされたりとか、完全に離れられなかったんですよね。そうやって周りの人は頑張っていて、自分はまだベルトを持っている状態じゃないですか。ここで辞めるのもなぁ……と思い始めました」
――それだけ気持ちが揺れ動いていたなか、ハッキリと復帰を決めたキッカケは何だったのでしょうか。
「最終的に『やっぱり続けないといけない』と思ったキッカケは、青木真也さんのYouTubeチャンネルに『負けるのもチャンピオンとしての仕事だ』という動画が上がっていて、それを観てハッとしたんです。その時点で続けることは決めていたけど、絶対に復帰しないといけないって思いました。
それこそ自分は黒部三奈さんをKOして、自分がSARAMIさんからベルトを奪うことに繋がって。ここで辞めたら、そういう選手に顔向けできないと思ったんですよね」
――パク・ボヒョン戦は、あれだけ渡辺選手が右を受け続けているのが疑問でした。試合前から目の負傷があったのでしょうか。
「あの時点で左目は負傷していなかったです。でも右目の眼窩底骨折があったことで、間違いなく左目にも負担が掛かっていますよね。だから左目の動きも悪くなっていたと思うけど、それにパク・ボヒョン戦で気づいたという感じした。
試合が始まって最初にあの右をもらってしまったことが全てでしたね。ダメージもありましたし。そこでうまくダメージを回復させるような戦い方ができればいいけど、自分が選んだのは打ち合いで。ピンチの時にそういう選択をしてしまうことも含めて、自分はMMAファイターに向いていないと思ったんですよ」
伊澤星花と練習して自分を強くするのが手っ取り早いと思って(笑)
――パク・ボヒョン戦がプロ6戦目。まだまだこれから、という時点で両目の負傷があったことは、確かに今後について考えても致し方ないかと思います。
「こんな早い段階で自分の目がその状態になるなんて、全く想像していませんでした。そういうファイトスタイルで戦っている自分も良くないとは思うけど、かといって――私はバックボーンが柔道で、MMAでも柔道をやって勝つのは嫌なんですよ。そうしてまでMMAを戦いたいかといえば、それは違う。自分が目指したいファイトスタイルというのがあって、それがブレるぐらいならMMAは辞めようと葛藤していました。この期間に、会社に入って店舗のマネージャーになったりとか、仕事を頑張っていて」
――おぉっ、それは凄い。
「目標を決めた時の自分って凄いんです。MMAを始めた時も『ベルトを獲る』と決めて、4戦目でチャンピオンになりました。会社に入って『マネージャーになる』と決めたら、半年ぐらいで達成しましたし」
――だからこそ2連敗を喫し、しかも両目の眼窩底骨折があったことで、MMAの目標が見えなくなってしまったということですね。
「……見えなくなりました。修斗のベルトを獲った時は、RIZINのスーパーアトム級で戦うか、世界のストロー級を目指すかと考えていて。でもまず万智に負けたことで、その目標設定ができなくなっちゃったんです。パク・ボヒョン戦も目標がないなかでの試合だったので、そんなフワフワした気持ちで戦う相手じゃなかったと今は思いますね(苦笑)」
――では復帰の決意を固めたのは、いつ頃なのでしょうか。
「半年ぐらい前ですね。美樹さんがバックアップファイターでRoad to UFCに行った時、セコンドとして自分も行ったんですよ。そこでいろいろ聞いていたら――美樹さんって、伊澤星花にDEEPジュエルスのベルトを奪われているじゃないですか。だから絶対に練習したくないと言っていたけど、世界を目指すなら日本の女子で一番強い伊澤星花と渡り合えるようにならなきゃいけない。そう聞いて私が、伊澤星花と一緒に練習している澤田千優に練習して、2人がやっている練習会に美樹さんを連れて行こうと思ったんです。そうしたら『ナベアヤも一緒に練習しなよ』と言われて。辞めるつもりの自分がそんなヤバいメンバーの中で練習することになったんですよ」
――ヤバい(笑)。
「アハハハ。その練習に参加したことがキッカケで、私ももっと頑張ろうと思いました。
本来なら伊澤星花って自分の階級のチャンピオンであり、勝たなきゃいけない相手じゃないですか。修斗のベルトを巻いた当時、私も『伊澤星花に勝つ』とか言っていました。でも一向に距離が埋まらない。私が活躍すれば、伊澤星花はもっと活躍していて全然追いつかない。だったら伊澤星花と練習して自分を強くするのが手っ取り早いと思って(笑)」
――アハハハ、素晴らしい考え方です。
「今はお腹に赤ちゃんがいるから練習はできないけど、いろいろと教えてくれるんですよね。その言葉や考え方を聞いていると『そりゃ強くなるよね』と思うぐらい。試合の対策とかも全部、伊澤星花に教わっています。伊澤星花のエッセンスに、あとはIDEAで松嶋こよみさんの打撃と、澤田千優のレスリングが入ればと思って、所属になったんです。AACCの名前も――阿部(裕幸)さんには感謝しかないし、そのまま使わせてもらいたい。次の試合も阿部さんがセコンドに就いてくれることになりました。そうやって一緒にやっていく形は変わらないですね」
――伊澤選手との練習で得た、最大のエッセンスは何ですか。
「打撃の立ち位置です。今まで自分も感覚でやっていたものを、メチャクチャ修正してもらっています。初めて伊澤星花と向かい合った時、凄いプレッシャーを感じたんです。なぜ同階級でこんなにプレッシャーを感じるんだろうと思って、教わって自分でも分かるようになりましたね。あれを教わっていたら、伊澤星花チャレンジの参加者も強くなりますよ」
――ある意味、渡辺選手も現在は伊澤星花チャレンジに参加中ではないですか。
「実は自分と本野美樹が『ベルトを持って2期生のオーディションを受けるよ』と言ったら、『チャンピオンはいらない』って断られました(笑)」
――アハハハ! 確かに修斗とパンクラスのチャンピオンが参加されたら困りますね。
「他の参加者を全力で倒しに行くのに……」
SARAMIさんや黒部三奈さんと戦った時よりも間違いなくMMAファイターとしての完成度は高まってきている
――オーディションが成立しなくなるので、それはダメです(笑)。話を戻すと、復帰を決めたのが半年前ということは、インフィニティリーグが始まった時は『自身への挑戦者決定戦』と捉えてはいなかったのですか。
「そうですね、ベルト返上の話をしていたぐらいだったので。でも誰が優勝するかを予想すれば、自分も高本千代が上がってくると思っていたし、結果も順当でしたね。いざ自分も防衛戦をやると決めた以上、SARAMIさんや黒部三奈さんが私と戦ってくれた時と同じように、しっかりと試合しようと思いました」
――最もな考えだと思います。ただその場合、渡辺選手の立場は……。
「今の自分に勝てるなら、これから高本さんと何度試合しても自分は勝てないと思います。そう言えるぐらい私は練習しているし、その自分に勝つなら強いと認めざるをえない。それぐらい自分に自信があるんですよ。
高本さんは頑張るグラップラーという印象ですけど、分かりやすく言えば万智のようなタイプで、サイズが小さくなった感じかな。ただ万智よりも、組むまでの打撃でガチャガチャにできるファイターだとは思いますね」
――ちなみに渡辺選手は、Road to UFC初戦のバックアップファイターであった本野選手に同行して現地に行っていますよね。そこで万智選手と何か交流はありましたか。
「相変わらず体がデカいな、って言いました(笑)」
――アハハハ。目の前で万智選手の勝利を見て、羨ましいような気持ちなどはなかったのですか。
「いや、ああいう舞台で海外の選手に勝ったのを見て『ちゃんと強いんだな』って思いましたよ。羨ましさとかではなく、自信になりました。ああいう選手と52キロで試合をして、負けたけどスプリット判定でしたからね。だったら自分は49キロだと負けないな、と」
――お話を聞いていると、パク・ボヒョン戦から2年の時を経て、精神的に大きく成長しているように感じます。それは何か……以前よりスッキリした表情にも出ていて。
「えっ、そうですか(笑)」
――一方ファイターとして、技術的な面はどれほどアップしていると思いますか。
「2年前より倍以上は強くなっていますね。今は負ける覚悟も持っているし、私が勝つためにいろんな人が支えてくれています。ファイターとしては伊澤星花、本野美樹、澤田千優と比べたら、まだまだかもしれない。でも自分の中では、SARAMIさんや黒部三奈さんと戦った時よりも間違いなくMMAファイターとしての完成度は高まってきていると思います」
――なるほど、試合を楽しみにしています。最後に防衛戦への意気込みをお願いします。
「RIZINで女子スーパーアトム級の『見えないトーナメント』ってあるじゃないですか。修斗のチャンピオンなのに私の名前が挙がらなかったのは、2年間何もしていなかった自分の責任だと思っています。だけど自分としては、あの『見えないトーナメント』に出ている選手の誰よりも面白い自信があるので。『見えないトーナメント』と見えない勝負をします。今回の修斗タイトルマッチ、ぜひ楽しみにしてください!」
■視聴方法(予定)
7月20日(月・祝)
午後6時00分~ ツイキャスPPV
■Shooto2026#05 計量結果
<修斗世界女子スーパーアトム級選手権試合/5分5R>
[王者] 渡辺彩華︰49.8キロ
[挑戦者] 高本千代︰49.9キロ
<修斗世界ミドル級王座決定戦/5分5R>
岩﨑大河︰83.9キロ
荒井勇ニ︰83.8キロ
<フライ級/5分3R>
関口祐冬︰56.7キロ
中池武寛︰56.4キロ
<バンタム級/5分3R>
チョウ・スソン︰61.2キロ
ジェイク・ムラタ︰61.0キロ
<女子アトム級/5分3R>
中村未来︰47.5キロ
嶋屋澪︰47.1キロ
<バンタム級インフィニティリーグ/5分2R>
武田勇輝︰61.0キロ
上杉隼哉︰61.0キロ
<バンタム級/5分2R>
人見礼王︰61.2キロ
ライダーHIRO︰60.8キロ
<バンタム級/5分2R>
松下祐介︰61.1キロ
伊集龍皇︰61.2キロ
<フェザー級/5分2>
澤江優侍︰65.8キロ
塩沼諒太︰65.8キロ
<トライアウト フェザー級/3分2R>
田中永遠︰当日計量
加藤岡善︰当日計量



















