【SUPER RIZIN05】Fight&Life#116より カルシャガ・ダウトベック戦に向けて、平本蓮のMMA打撃と剛毅
【写真】試合2週間前から、直前まで岩﨑宗師がLAでギガ・チガゼの指導を行うために不在。最終局面の気持ちと体の創り方は本人に任されている (C)MMAPLANET
8月24日(月)から発売されているFight&Life#116に10日(木)、大阪市西区の京セラドーム大阪で開催される超RIZIN05でカルシャガ・ダウトベックが対戦する平本蓮と師・岩﨑達也の対談が掲載されている。
Text by Manabu Takashima
2024年7月28日の朝倉未来戦以来、766日ぶりの復帰戦。肩の負傷が長引き、2年以上のブランクを経験した。この2年、人として多くのことを経験した彼のMMAがどれだけ進化しているのか。この2年の間に築かれた剛毅會・岩﨑達也宗師とともにダウトベック戦に関連してMMAの打撃、ソヴィエトのボクシング、剛毅の型について語った両者の言葉を抜粋して、ここでお伝えしたい。
「今回の試合は剛毅ボクシング対ソビエト流ボクシング」(岩﨑)
――ダウトベック戦に向けての練習で、スパーリング相手の国枝選手はオーソでした。ダウトベックはサウスポーですが。
岩﨑 左も右もないんですよ。左とか右とか言っていなくて、両方やれよって話です。もちろん右前、左前、どっちで行こうかというはあります。その試合で勝つために、どちらが前の方が良いかというのは。でも、左前で構えていても、一歩左足を下げると右前でしょ?
――ハイ。
岩﨑 止まっていない方が良い。左前、右前、オーソドックス、サウスポーっていうのは居着いた考え方になります。
平本 僕は子供の頃からサウスポーをやっていたけど、右のような安定感はなかったです。右の方が安定していて。試合で選択するのは、ほぼオーソドックスでした。でも剛毅會に来て、四股立ちをして一気に左の乗せるパンチを覚えました。それまでは左を蹴って殴るというムエタイ的なリズムでした。タイ人って、右利きのサウスポーが多いので。その名残りで、ムエタイのジムはやらされている時がありました。それはもうあくまでの蹴りのなかのパンチで。ジャブのように軽くなってしまうから、強く打てる感覚が持てなくて。それも剛毅會で武術の基礎を覚えることで、右左が関係なくなりました。
――互いに連動させて夫婦手になるということでしょうか。
岩﨑 夫婦手というか、剛毅會のコンセプトは自分のやりたいことではなくて、相手の嫌なことをやり切ることです。だから蓮はオーソの方が強いと思っていても、相手はサウスポーで構えられた方が嫌だったら右前で戦うんですよ。
平本 今はどっちが前とかあんまりこだわっていないです。試合がもっと近づくと、サウスポーの相手とやっていくことになりますけど。
――つまり今はまだ対策練習の時期ではないということですか。
岩﨑 はっきり言って、対策を立てる必要はないです。自分をどう創るのか。それだけです。だって、やってくることは分かっているでしょ。なんの対策を立てるんだっていう話ですよ。サウスポーができないなら、サウスポーができるようになりなさいよという話で。オーソドックスしかできないけど、できることだけで対策を立てる。
いや、そうでなくてできないことができるよう自分を創っておかないと。対策練習って、もう皆が動画を見て、分析力もついている。逆に自分を創る作業をやるにしても、自分のことは意外と分からないものだから。
平本 自分の強みは、試合ごとにスタイルを変えることができることだと思っています。このスタイルで行くっていうのは、今はなくて。打撃版のDJ(デメトリウス・ジョンソン)みたいなになりたい。
――左右、上中下、どこからでも攻めることができると。
平本 打撃の数、引き出しの多さ。どんな相手だろうが、相手によってスタイルを変えて戦うようになる。それが理想で。
――平本選手の打撃が、これまでのMMAファイターの打撃と一線を画すのか。そして組みへの対応が、どれだけ成長しているのか。ダウトベック戦が楽しみでならないのですが、そのダウトベックの打撃は、どのような特徴があると考えていますか。
平本 めっちゃカザフスタン・ボクシングです。
岩﨑 今回の試合は剛毅ボクシング対ソビエト流ボクシングなんです。実はディミトリ―・ビボル(現WBAスーパー・IBF・WBO世界ライトヘビー級統一王者。元WBC世界ライトヘビー級王者)とかゲンナジー・ゴロフキン(元WBAスーパー・WBA・IBF世界ミドル級統一王者)に似ています。ここはたまたま二人で研究していたところで。
――ソビエト流ボクシング、カザフスタン・ボクシングの特徴とはどういうところなのでしょうか。
平本 インステップを繰り返し、前手でリズムを取る。アマチュア・ボクシングに近いです。基本に忠実というか。だからアマチュアのボクサーとやるのが良い練習になる。キューバとか米国とか、体のバネをいかしてスピードが速いボクシングとは全く違います。彼らは柔らかくて速い。ソビエト系中央アジアは遅い。でも、体が強いので骨で殴っているような感覚です。ソビエト流ボクシングは、レスリングと合わせやすい。だからMMAに合っていると思います。逆に米国のボクシングは、MMAと混ぜるのは難しい。
――あぁ、だから以前はボクシングとMMAは相互性が感じらなかったのが、中央アジアやロシアのファイターはMMAに合致したボクシングが見られるのですね。
平本 そこにちょっとした極真とムエタイの要素が入っているのが、ピョートル・ヤンですね。ピョートル・ヤンも前手で創っています。出入りが激しくて、近い距離でも蹴りを使うような感じで。ソビエト流ボクシングは、拳の硬さを意識させますよね。だから日本人はあのボクシングはなかなか真似し辛い。でも屈強なレスラーたちは、ソ連式のボクシングを学んだほうが合うと思います。日本の綺麗なボクシングは、レスリングと直結しないので。
「こういうことを言うと宗教的だと指摘されるんですけど、やっぱり信じることで得られる強さってあると思うんです」(平本)
岩﨑 ハンドスピードの速さが重視されているのはね。ソビエト流ボクシングは動きではなく、質量。拳(けん)に質量があります。
――と同時にレスリングと直結できるボクシングだから、前足を潰せるのではないかと。
平本 それはゴツゴツしていても、実は綺麗なボクシングなので。逆にブラジルのカルロス・プラチスとか基礎がないような打ち方で、あれは見えないんじゃないかと思います。型がない強さというか。ブラジル人で型があるのは、最近だとアレックス・ポアタン・ペレイラぐらいじゃないでしょうか。
岩﨑 型がなくて強い人は、自分のやることが通じないと一気に崩れてしまいます。
平本 だから、サトシなんかは調子が良いと打撃も強い。ただ通用しないと、一気に劣勢になる。
岩﨑 ソビエト流ボクシングは、型があります。ソビエトのスポーツというのは、完全に運動力学を利用しています。それも国家をあげて取り組んでいた。でも、その穴は分かっています。数字だけいえば蓮は2年間、試合をしていなく。向うは11連勝なんだけど、そんなことは問題でなくて。こっちが、涎が出るような状態にしてくれる相手です。
平本 キック時代も含めて、過去一番のハードパンチャーだと思います。そうなったときに剛毅會の精神だとか、武の精神という部分が勝負を決めるんじゃないかと思います。驕らない、でも自信はある。最後の意地の張り合いになった時に、才能とかじゃなくて「俺が勝つ」ってなれる選手は、僕も相手をしていて嫌だし。でも、凄くスリルのある戦いですね。
――その言葉を口にするときの表情が、また良いですね。
平本 このストライカー対決に勝てなかったから、UFCとか言っていられないので。ダウトベックは世界的に見ても強いストライカーだと思います。でも、UFCから『この選手、欲しいな』と思われるような勝ち方をしたいッスね(笑)。
岩﨑 6 月に1カ月間、米国に行って思ったことは、まぁ「凄い」ということです。ギガ(チガゼ)だけでなく、べニール・ダリューシュ、アルマン・ツァルキャン、集まっている人間のやる気も凄いし、練習量も凄い。技術も凄い。けれども、私が見る限り一点穴がある。その穴は付け入る隙になります。正直、蓮が今後向うに行こうが、何をしようが、この拳は通用しますよ。
平本 先生が今、LAで着々と良い環境を整えてくれています。RIZINでフェザー級が盛り上がっていても、選手は少ないです。スパーリング・パートナーを探すのも大変で。でも米国に行けば、練習相手がわんさかいるその場に身を置くのが、一番だというはあると思います。
――平本選手の言葉にこれほど力が感じられるのは、剛毅という武術を信じているからであり、また岩﨑宗師との人間関係の上に成り立っているように感じます。
平本 こういうことを言うと宗教的だと指摘されるんですけど、やっぱり信じることで得られる強さってあると思うんです。イスラム・マカチェフの強さって、カビブ・ヌルマゴメドフの存在があるからで。ヌルマゴ軍団の強さはヌルマゴ、そして亡くなったお父さんのアブドゥルマナップ・ヌルマゴメドフがいたから。そういう信じるモノがあると、勝負に迷いが出ないです。岩﨑先生とやっている僕にも、そういう強みがあります。正直、試合に負けると色々なジムの人達から「ウチに練習に来てみたら」と言ってもらいました。でも僕はMMA業界で気が合う人が、ほぼほぼいないんですよ(笑)。
岩﨑 アハハハハハ。気が合うというか、さっきのボクシングの話もそうですけど、好きだからと言ってここまで突き詰める姿勢を、多くの選手は持っていない。結果を大切にし、どういう大会に出るのかっていうはあっても。その突き詰める感覚を蓮は持っている。それは彼が凄く素直だからなんですよ。オープンマインドですしね。
――それでも追求しているからこそ、意見の相違もあるかと。どちらが正解ということでなくて、先生に対して「それは違うな」と思うことはありませんか。
平本 そういう時は僕もそうだし、一番先生との付き合いが長い大塚さん、丈にしても笑い飛ばしています(笑)。それで終わりです。その空気が合わないなら、『出ていけ』って言うだけで。
岩﨑 彼らと付き合う秘訣は、『どうせ、言うことなんて聞かないだろ』と思うことです(笑)。
「先生と出会うまで、僕のMMAの練習はストリートバスケットボールのコートに行って、『シュートを教えてください』っていうような状況だった」(平本)
平本 ハハハハハ。
岩﨑 あと『お前らに分かるわけない』ってね。格闘技は才能があっても、質量だなんだって分からないですよ。その法則性を20代の選手が分かる必要はないんですよ。彼らは勝つことだけを考えていれば良い。それに技術的なことにしても、嫌だったら離れれば良いんですよ。こっちはこっちで、試合まで毎日のように顔を突き合わせて、「どうやったら、嫌な想いをさせることができるか」って、相当に神経を使っていますし。
平本 アハハハハ。
岩﨑 こうやって笑っているけど、凄いプレッシャーなんですよ。でもね、普段から嫌なことに向き合っていると、試合が楽になります。素晴らしい点があるからこそ、もっと良くなるために嫌なことをさせる。さっきデメトリウス・ジョンソンのようになんて言っていたけど、そんなもんじゃないですから。もっと凄いMMAファイターになると、私は思っているので。試合ごとに戦うスタイルが違うなんて、当たり前で。まだ完成していないんだから。
平本 僕が先生の言うことをすんなりと聞けるのは、結構現実的な話になるんですけど……。先生って自分の仕事は別にあって、生活が潤うようにしています。そして「格闘技を教えることは、金にならない」という根本論も、全面的に理解できるんです。僕も現役中に金を貯められるだけ貯めて、引退後はそれを運用して指導をしたいと思っていて。
――本当に現実的な話になりましたね(笑)。そのような生き方を岩﨑宗師は実現していると。
平本 ハイ。僕は引退すると絶対に燃え尽きてしまうはずです。でも格闘技って死ぬまで続くモノで。技術の追求を引退したあとも、先生のようにやっていきたくて。今でも引退したあとの道を考えることがあって、岩﨑先生のように一生格闘技に携わっていたい。
岩﨑 だから道なんですよ。剛毅とは道です。蓮も引退したら達人への道が待っていますよ。
平本 これ以上、面白いモノはないですからね。先生と出会うまで、僕のMMAの練習はストリートバスケットボールのコートに行って、『シュートを教えてください』っていうような状況だったんです。そんな感じで2年間ぐらいMMAをやっていて。でも、僕の打撃に何か言ってくれる人はいなかった。先生は「違う」と言ってくれました。
MMAでは、気持ち良く打てる状況がなくて。そこでどう打つのか、MMAの打撃を初めて指導してくれたのが先生だったんです。気持ち良いところで打てても、MMAでは相手に合わせることができないです。何とも言えない気持ち悪い状況で、打てるのが技術で。
岩﨑 彼の世間的なキャラクターしか知らなかったので、こういうことを言えるのが、意外なところでした。嫌なことに取り組むような稽古ができるというのは、真理が分かっているからなんです。私も人生残り少なくなってきました。だから日本人を強くとか、そんなことでもない。この真理を分かっている人間を強くしたい。だから、もう私が指導をするのは平本蓮とギガ・チカゼだけ。それと丈。ただ、丈はMMAとして一番バランスが取れているから、また少し違っていて。別剛毅というか。打撃の質量が上がると、バランスが崩れるから、そこまで上げることはできない。蓮とギガの2人は、質量を上げっぱなし良いんですよ(笑)。
平本 丈は器用だから、ナイフも拳銃も持っている。僕は大きな日本刀一つ。だから尖り続けていないといけない。その違いがあります。
岩﨑 そういう稽古をしてきたから、もう人間としても初めて出会った時とは別次元ですよ。
平本 2年前の試合後に色々なトラブルがあったことは、コレを読んでいる人は皆が知っていると思います。あの時、本当に空手が沁みたんですよ。本当に辛くて、困っていた時に先生に連絡をして、「今は大変だろうけど、大したことねぇから」って言ってもらえて。「全員、味方だと思うからだ。味方は自分だけだよ」と。あの時の稽古で、先生に「お前、今が一番良い空手だぞ」って言われて。
「2年間を取り返すというより、この2年間も良い時間を過ごせていたので。より良い人生にするために頑張ろうと思います」(平本)
岩﨑 人間は本当に困った時に、スパーリングやミットではなく型です。自分の状態を知るには。
平本 本当にそうなんですよ。あの時もそうだし、肩のケガをした時もやっていたのは型で。型をすることで、精神が安定する。マジで沁みました。型が自分の根本になってきています。逆に調子の良き時は、型がただの動作になってしまうような感じで。何か問題が起こった時ほど、自分のなかで答が欲しくなる。その時にやる型は、凄く沁みます。型は体の栄養だけでなく、心の栄養に繋がっています。
――いやぁ、まさか平本蓮からそのような言葉を聞くことになるとは。岩﨑宗師との関係は正に師と弟子。空手が体育になる以前の沖縄の唐手(からて・トゥデー)の時代に戻ったかのような。2人の関係は人生を通して個別指導する当時の空手になってきているかのようです。
岩﨑 ですから、剛毅會は空手というのを辞めました。
――えっ、空手ではない? 型と基本稽古の大切さを説き続けてきたのに……ですか。
岩﨑 ハイ。剛毅は武術、そして手(てぃ)です。そういう風に武術としてやっていると、格闘技のなかで悩み苦しんでいても、人生の一部分として捉えることができます。その一部分に全身全霊を賭けて挑まないといけない。蓮が今の年齢で、武を究めるようなんて思う必要もないので。それは時間を掛けて、理解することで。今は格闘技の試合に勝つことに集中する。そうやっていると、私の言っていることが後から分かるようになる。でも私は私で追及するモノがあります。そこを平本蓮が追いかけてくる。だから、彼はまだまだこれから伸びますよ。
――UFCを目指す。28歳で、MMA戦績は4勝3敗。2年間のブランクがあった。それでもこの環境で、この2年を取り戻す、それ以上の成果のあるダウトベック戦にしないといけないです。
岩﨑 こんなもんじゃない。こう見えてUFCの選手やトップのボクサーに憧れるところからあるので。
平本 確かにあります(苦笑)。
岩﨑 こないだまで、クロフォード、クロフォードと言っていて(笑)。でも、あの皇治選手とボクシングのエキシビションはやって良かったですよ。あれだけのお客さんの前で、自分がどれだけ動けていないかが分かっただろうし。
平本 いや、その通りでした。間違いないです。
岩﨑 人前でアレをやって、リハビリは完了。2年間のブランクは関係ないです。もっと凄くなりますから。
平本 2年間を取り返すというより、この2年間も良い時間を過ごせていたので。より良い人生にするために頑張ろうと思います。
※ダウトベック戦に向け、ボクサー、キックボクサーとスパーリングを行う理由。岩﨑宗師とギガ・チカゼの邂逅、MMA打撃が存分に語られた両者の対談が掲載されたFight&Life#116は8月24日より発売中です。
■視聴方法(予定)
9月10日(木)
午後3時~ ABEMA、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!
■SUPER RIZIN05対戦カード
<RIZIN&PFLフェザー級選手権試合/5分3R>
[RIZIN王者]ラジャブアリ・シェイドゥラエフ(キルギス)
AJ・マッキーJr(米国)
<ライト級/5分3R>
朝倉未来(日本)
青木真也(日本)
<フェザー級/5分3R>
カルシャガ・ダウトベック(カザフスタン)
平本蓮(日本)
<ライト級/5分3R>
ホベルト・サトシ・ソウザ(ブラジル)
野村駿太(日本)
<フェザー級/5分3R>
斎藤裕(日本)
YA-MAN(日本)
<フェザー級/5分3R>
ヴガール・ケラモフ(アゼルバイジャン)
高木凌(日本)
<女子スーパーアトム級/5分3R>
RENA(日本)
ナターシャ・クジュティナ(ロシア)
<キック71キロ契約/3分3R>
ブラックパンサー・ベイノア(米国)
宇佐美秀メイソン(日本)















