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【UFC331】再起戦へ。剛毅會・岩﨑達也と出会ったギガ・チカゼ「自分のルーツに立ち返ろうと思った」

【写真】非常に落ち着いた口調で、丁寧に――そしてノンストップで話し続けたギガ・チカゼ(C)MMAPLANET

19日(土・現地時間)、カリフォルニア州ロサンゼルスのクリプトドットコム・アリーナで開催されるUFC331「Can vs Pantoja2」でギガ・チカゼが昨年12月以来にオクタゴンに戻り、ジョアンデウソン・ブリトと対戦する。
Text by Manabu Takashima

空手からキック、そしてMMA。ジョージからオランダ、そしてロサンゼルス。チカゼの34年に及ぶ格闘家人生も38歳を向かせ、最終局面を迎えようとしている。

2019年9月に初めてオクタゴンで戦ったチカゼは7連勝を達成し、一時はフェザー級タイトルコンテンダー候補と見られていた。しかし、戦い続けてきた人生は彼の身体を蝕み、ダメージも蓄積し過去3連敗となっている。

チカゼは自らの原点、剛柔流空手時代に学んだスタイルへの回帰を望むも米国では、その知識と技術を共有できるパートナーを見つけることは困難だった。そんなチカゼが昨年末、剛毅會・岩﨑達也宗師と出会った。そこから急速に距離を縮めていった両者。今回のブリト戦では、岩﨑宗師がコーナーに就くという。そんな両者の邂逅と、チカゼの空手論を訊いた。


僕らの時代は柔道の道場にいって、自分たちの腕を試すほどだった。それが空手だったんだ

(C)GOKIKAI

――約3週間後、地元と言っても過言でないLAでジョアンデウソン・ブリト戦を控えています(※取材は1日に行われた。6月に剛毅會の岩﨑達也宗師から、ギガが剛毅會のTシャツを着てナイファンチをしている写真が送られてきて、非常に驚きました。きくと岩﨑宗師がギガにぞっこんで、LAまで足を運び指導をすることがあるとか。

「イエース。皆、知っているように僕は空手出身だ。極真空手と沖縄剛柔流で育った。まず極真を始めて、9歳の時に剛柔流に移った。そこで僕はパータ・チェリゼ先生に出会った。センセイ・チェリゼは東恩納盛男先生を師事している剛柔流の空手家で」

東恩納盛男。国際沖縄剛柔流空手連盟の創始者。剛柔流開祖である宮城長順の下でも稽古していたことがある。

リモートインタビューを受けてくれたリビングには、これだけのメダルとベルトが飾られていた

センセイ・チェリゼからは、本当に多くの事を学んだ。彼が剛柔流……剛と柔が懸け合わさった僕のスタイルを創り上げてくれたと言っても良いぐらいだ。その基礎があったおかげで剛柔流、極真、芦原、糸東流、松濤館という多くの流派の空手大会でゴールドを手にすることができた。

センセイ・チェリゼに創ってもらった基礎は、空手だけでなくK-1、ムエタイでも効果的だった。センセイ・チェリゼの教えを守り、僕はキックボクシングにチャレンジした。キックではGLORYでトーナメント・ファイナルを2度経験し、MMA転向後もUFCと契約してここまで戦えた。

ただしキック、MMAに転じて、僕の戦い方は変わった。実は僕が学んだ剛柔流はテイクダウンも認められていて、数秒間は寝技もあったんだ。剛柔流の剛スタイルは、MMAの一種のようなモノだった。柔スタイルは極真にテイクダウンが加わったルールだった。そしてポイント空手で、スピードとタイミングを磨くことができた。加えて、古流の沖縄スタイルの型競技もあったんだ。

今、ジョージアの剛柔流空手はセンセイ・チェリゼの弟子レヴァン・ロガヴァは独立し、中村哲也先生(国際沖縄剛柔流空手道=IOGKF主席師範)らと協力していた。でも4年前に東恩納先生は伝統沖縄剛柔流空手道連盟(TOGKF)を起ち上げ、中村先生やロガヴァと決別した。

センセイ・チェリゼはTOGKFのジョージアをリードしている。そしてロガヴァはIOGKFの一員として活動しているけど、スポーツ空手……ポイント空手中心になっている。もう僕が習ってきた組み手は、IOGKFでは力を入れていない。

僕らの時代は柔道の道場にいって、自分たちの腕を試すほどだった。それが空手だったんだ。自分たちの流派の競技界に出て、そこで勝てるテクニックを磨くモノじゃない。だから僕らはあらゆる大会に出て、剛柔流を代表し、自分たちの技を磨いていた。

そのために自分たちのスタイルだけでなく、他のスタイルのことを学び、トレーニングに取り入れていた。センセイ・チェリゼはTOGKFのジョージアをリードしている。だから僕はオランダに移り、ラモン・デッカーやコー・ヘーマスと練習をしたし、マイクス・ジムやイワン・ヒポリットのボス・ジムでも練習でき、ダッチ・キックボクシングを学べたんだ。

それから僕はLAに来て、ハファエル・コルデイロの下でシュートボクセ・スタイルを学んだ。同時に柔術とレスリングを学ぶようになったけど、ブラジル流の戦いはとてもアグレッシブだった。

柔術とレスリング、アグレッシブな打撃を続けるなかで、自分のスタイルとの剥離を感じた。僕のMMAにおいて、ベストの戦い方とは何か。それを模索するようになった。僕がLAで経験してきたことでは、テイクダウンを消化したうえでのコンビネーションに限界を感じるようになっていた。

なんせUFCというのは、ワールドクラスのレスラーや柔術家がいるフィールドだからね。そこで僕は自分のルーツに立ち返ろうと思ったんだよ。センセイ・チェリゼに習った空手に回帰しようとね。スタンス、コンビネーションを変え、手数ではなくスナイパーのような精度を武器に戦いたいと思った。

そのために僕の空手を実践できるトレーニング・パートナーが必要になった。実際には、そこまで同じような動きができなくても、僕の頭をスッキリさせてくれるような練習相手を欲していたんだよ。そうすることで、アグレッシブすぎないリミットを設けたMMAが戦えるはずだと思った。

LAに来て、UFCで戦い続けている過程で、本来持つ自分のスタイルではない、過度にアグレッシブな戦いをするようになっていたから。何よりMMAに転じてからだけでなく、オランダ時代から体に染みついてしまっていたんだ。キックもMMAもアグレッシブに戦うことが絶対。そんなコーチングを受けていたから。

自分のルーツに立ち返りたい。でも、僕はLAを拠点にしていてMMAの練習が主だから、ジョージアに戻ってセンセイ・チェリゼの下に戻ることはできない。そんな時にセンセイ・タク(国際空手道連盟極真会館ロサンゼルス支部長、中坂拓)とセンセイ・イワサキ(剛毅會宗師)に出会った。

僕はレン・ヒラモトのビッグファンになった(笑)
まだ世界が知らない技術が日本、沖縄には存在している

最初に僕のレスリングコーチであるクリス・ロドリゲスを通して、ハンディントンビーチにあるUFCジムでインストラクターをしているショーヘイ(山本翔平)に出会った。彼はケガさえなければ、もっとMMAでキャリアを積み上げることができたファイターで、極真空手家だ。そのケガのせいで、UFCファイターのようなフィジカルやシェイプではないけど、軽く彼と手合わせをした。

まずはショーヘイとの出会いに感謝したよ。その時にショーヘイがセンセイ・イワサキのことを話してくれた。僕としては、この出会いは偶然じゃない。意味があるモノだと確信した。僕の持つエナジーと、彼らのエナジーの波長があった。

そしてセンセイ・イワサキが去年の12月にLAにやってきたときに、初めて会った。食事をして、話をした。まだ僕のジムは完成していなかったけど、動きをチェックして『次の試合が決まったら、また来る』と言ってくれた。正直、出会った多くの人がそういうことを口にする。でも、そんなことが現実になることはない。

それから僕も連敗中で、試合期間が空いていた。そんな時にセンセイ・タクが主催する極真トーナメントがあり、彼が僕を招待してくれた。その場にセンセイ・イワサキの姿もあったんだ。そして、より深く話をした。6月に試合が組まれる予定だと伝えたよ。

(C)GOKIKAI

そうしたら、試合前に本当に彼はLAまでやってきてくれて、全てのトレーニングセッションに顔を出してくれた。試合がキャンセルになったけど、しっかりと一緒に練習することができた。あの時、センセイ・イワサキが日本でもチームがあって、良い生徒がいることを知った。実際、それまで彼のチームや教え子のことは知らなかったから、映像をチェックした。その日から、僕はレン・ヒラモトのビッグファンになったんだ(笑)。

最高のスタイルだ。僕がK-1ルールで戦っていた日を思い出させてくれた。レン・ヒラモトのようなストライカーに、MMAで戦うための打撃を指導している。センセイ・イワサキの空手の知識は、絶対に僕にも有効だ。しかも、試合でコーナーに就いてくれるまで言ってくれた。

センセイ・イワサキと僕の出会いは、今後の日本のMMAに大きな影響を与えることになるだろう。今、世界最大のMMAリーグは米国にある。そして日本人ファイターは、レスラーやグラップラーから転じている選手が成功を収めているけど、まだ世界が知らない技術が日本、沖縄には存在しているはずだ。ただし、それらの技が直接UFCで見られることはないだろう。

だからこそ、僕がその助けになることができると信じている。センセイ・イワサキの指導を受けて、日本のスタイルをUFCで見せる。そして、日本から未来のUFCチャンピオンをUFCに送り込むことができるようになるはずだ」

<この項、続く>

MMAPLANET史上初。冒頭の一つの質問でチカゼは13分以上、一気に話し続けた。剛柔流への想い、そして剛毅會との出会い。自らの再起戦についての話題は、後編に譲るとして、ここからは7月24日から発売中のFight&Life#116に掲載されている平本蓮×岩﨑達也対談から、岩﨑宗師がギガ・チカゼとの出会いについて語った箇所を抜粋してお送りしたい。

「ダウトベック戦が終わったら、先生とLAに行って、チカゼと練習したいです」(平本蓮)

平本 キックからMMAに転向したときに、ギガ・チカセの蹴りが素晴らしいと思ったんですよ。腰が回っていないのに、体が入っている蹴り。あの蹴りだと掴まれない。腰を預けずに鞭のように蹴って、しっかりと効かせている。ヒントが欲しくて、色々な立ち技から転向した選手の試合をチェックしていて、チカゼの蹴りは吸収したいと思っていました。そのチカゼが今、先生と一緒にやっている。なんか、縁を感じますね。

――岩﨑宗師とギガ・チカゼが一緒にやっているというのは?

岩﨑 実はLAで何度か、指導しているんですよ。

――!! それはどういうことですか。

岩﨑 去年の10月ですかね、剛毅會アメリカ支部長の山本翔平とギガがUFCジムで知り合って。ギガはジョージアで沖縄剛柔流を学んでいて、米国に移り住んでからも空手の指導者を探していたそうなんです。でも、出会えなかったと。そして私のことを翔平が話し、「ぜひ会いたい」という連絡が来ました。で12月にLAに行った時に初めて会ったのですが、3日前にKO負けし3連敗した直後でした。

――ケヴィン・バジェホス戦ですね。

岩﨑 もうボロボロでしたね。会って話をし、それでも稽古をしたいと。あの時はできないから、2月に用事があってLAに行った時に初めて稽古をし、色々と修正点を伝えました。そうしたら次の試合が決まったら、指導をしてほしいと。

――そんなことが!!

岩﨑 で、6月20日に試合が決まったという連絡がきたので、5月の終わりからLAに行って一緒に練習をし、セコンドにも就く予定でした。

――確かヴィニシウス・オリヴェイラ戦ですが、メディカルのサスペンション期間が、まだ残っていたということで中止になりましたね。

岩﨑 ハイ。それで、2週間前に試合が飛んでしまったんですよ。でも稽古は続け、4週間一緒にやっていました。私は25年前から『アメリカで必要な武術でないといけない』と思ってやってきたので。なんだか、生きる道が見えたような気がしましたね。

――にしても、ギガ・チカゼが型の稽古をしているのですか。

岩﨑 空手家ですから、サンチンもナイファンチも知っています。ただ、剛毅とは違うので、そこを指導して。ギガは站椿もしていますよ。

平本 僕が蹴りを吸収したいと思っていた選手と先生がこうなって。チカゼからのメッセージを見て、先生と一緒に神楽坂でジョージア料理を食ったりしています(笑)。ダウトベック戦が終わったら、先生とLAに行って、チカゼと練習したいですね(※取材後、9月19日のUFC331でチカゼ×ジョアンデウソン・ブリトが決定)。

――いや、スミマセン。チカゼとの繋がりが余りにも意外だったので、本題から外れてしまいました。

岩﨑 いやギガもそうなんですよ。空手で倒し合いをして、GLORYでキックをやっていた。概ね、何でもできるけど、それが繋がっていない。蹴りはMMAで使えますが、パンチはそうでない。ボクシングはできるんですよ。でも、そういうことではない。だから蓮とギガは逆ですね。蓮はパンチが凄く良いけど、蹴りが合わさっていなかったので。

平本 ボクシングとキックをやってきた身からすると、そこが一番難しかったところです。前提が必ず受ける、ガードしてくるなかでの技術で。MMAは初手で外してくるから、距離が遠い。まずそこに慣れるのに時間が掛かりました。しかも、組んでこられる。そうなると、綺麗なミットをやってもしょうがない。基礎として大切でも、そういうミットを究めていっても、MMAには受けるという前提がないから当たらないことに気付きました。『これは当たらない』って(笑)。だから今は初手に対する相手の反応を見て動く。ルーファスポートに行っていた時に、亡くなったデューク(ルーファス)も「立ち技のヤツはハートが強いから皆、打てる。でもMMAファイターはクレイジーだ。動きの予測がつかない」と言っていて。これは凄く腑に落ちたアドバイスだったんですよ。

――中略――

岩﨑 6月に1カ月間、米国に行って思ったことは、まぁ「凄い」ということです。ギガだけでなく、べニール・ダリューシュ、アルマン・ツァルキャン、集まっている人間のやる気も凄いし、練習量も凄い。技術も凄い。けれども、私が見る限り一点穴がある。その穴は付け入る隙になります。正直、蓮が今後、米国に行こうが、何をしようが、この拳は通用しますよ。

平本 先生が今、LAで着々と良い環境を整えてくれています。RIZINでフェザー級が盛り上がっていても、選手は少ないです。スパーリング・パートナーを探すのも大変で。でも米国に行けば、練習相手がわんさかいるその場に身を置くのが、一番だというはあると思います。

■UFC331視聴方法(予定)
8月20日(日・日本時間)
午前6時30分~UFC FIGHT PASS
午前6時00分~U-NEXT

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