【DEEP133】中村大介と対戦、椿飛鳥「寝かせたのに立たれる。これって別にネガティブなことじゃない」
【写真】まさに椿飛鳥らしい発想であり、効果的な戦術(C)TAKUMI NAKAMURA
13日(日)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP133で、椿飛鳥が中村大介と対戦する。
Text by Takumi Nakamura
DEEP初参戦となった昨年11月の牛久絢太郎戦は試合時間わずか58秒、牛久のヴァンフルーチョークで絞め落とされた椿。生き残りをかけて挑んだ今年3月の五明宏人戦では、五明の鋭い打撃を受けながらもしつこく組み続け、最後はバック&左足を制した状態からのパウンドでレフェリーストップを呼び込んだ。
牛久戦の秒殺負けで気づかされた自分の長所と短所、そしてMMAそのものの捉え方の変化。五明戦は椿をMMAファイターとして一回り大きく成長させるきっかけとなった。そこで迎えた中村大介との一戦。ランキング制を採用しないDEEPだからこそ組まれた、椿曰く「画になる」試合で椿が見せたいものは何か。
ゲームに例えるなら、寝かせる・立つ攻防でお互いに体力ゲージが減っているわけです
――前回3月の五明戦ではしつこく組み続けて2RにバックからのパウンドでTKO勝利という結果でした。修斗からDEEPに主戦場を移してからの初勝利でしたが、試合前はプレッシャーもありましたか。
「その一つ前の牛久戦での負けが自分の中ではめちゃくちゃ大きかったんですよね。当たり前と言えば、当たり前ではあるんですけど。あの試合は負け方も負け方でしたし、試合が終わって本当にこれからどうしようというか、DEEPでの立場も危うくなると思っていました。そういう中で五明戦のオファーをいただいて、ここで負けたら終わりの試合ですよね。負けても格闘技そのものは続けられるだろうけど、自分が求める舞台や相手とは大きく差が出るところでやることになるだろうな、と。あまり使いたくない言葉ですけど、負けたらやめなきゃいけないくらいの気持ちではいましたね」
――椿選手も五明選手も直近の試合で敗れていて、マッチメイク的にもここで負けたら先はないというテーマもあった試合だったと思います。
「プレッシャーは毎試合感じていますが、近年では一番プレッシャーを感じた試合でしたね。年齢的にも、ここで負けたら、自分が目指している舞台には立てないだろうし、自分が求めている格闘技選手という定義からは大きく逸れてしまうだろうなっていう。例えばDEEPで試合は出来たとしても、この相手とこの状況でやるのか……みたいな試合だったり、ナンバーシリーズには声がかからなかったり、ここで負けるとそうなっちゃうんだろうなというプレッシャーというか、危機感を持っていました」
――試合は椿選手が五明選手の打撃を警戒しつつ、しつこく組んでいくという展開でしたが、そういった試合はイメージしていたのですか。
「そうですね。牛久戦の負けが今思うと本当にいい経験になっていて、改めて自分の強みや弱みを再考することが出来たんです。あとは試合になった時のメンタル状況など、もう1回整理し直して五明戦に臨んだ感じですね。対五明選手に関して言えば、僕の中で彼は空手のエリートだという位置付けをして、伝統派空手をやったらめちゃくちゃ強いと。なので五明選手に伝統派空手をやらせないことがテーマでした。MMAにおいてそれは組む、しつこく組む。離れて殴って組む、殴って組む……そういった展開に持ち込み作戦ではありましたね」
――当然五明選手もテイクダウンされても立ち上がる・打撃を効かせるという試合展開も考えていたと思いますし、椿選手も一度のアタックでテイクダウン→寝かせることは難しいと考えていましたか。
「はい。仮に僕が一度寝かせたとしても必ず立たれるだろうなと思っていました。一見、組んだ方にとって寝かせたのに立たれることってネガティブに思われがちじゃないですか。でもこれって別にネガティブなことじゃないよなって思うようになったんですよ」
――立たれることはネガティブではない、ですか。
「寝かせる側からすると“立たれた”かもしれませんが、裏を返せば一度は相手を“テイクダウンできた”もしくは“寝かせた”とも言えるし、寝かせた側だけじゃなく、立つ側は立つ側で必ずスタミナをロスしている。ゲームに例えるなら、寝かせる・立つ攻防でお互いに体力ゲージが減っているわけです。じゃあこの攻防で寝かせた側より立つ側の方が体力ゲージが減るとするなら、この攻防を繰り返すと立つ側の方が体力的に削れて先にバテますよね? 立つ側がバテてくれば打撃も当たるし、徐々に寝かせる側が試合を全体的に有利に進められる。そういった仮定を立てて、その意識で練習していました」
――まさに発想の転換ですね。
「僕が五明選手をテイクダウンして寝かせる。五明選手が立ち上がって試合がスタンドに戻る。その時に僕より五明選手がバテている。そうなったら僕は五明選手に立たれたけれど、僕が攻めていて有利じゃないですか。そういう風に発想そのものを変えました。で、そこの攻防が自分の強みと合致していたと思います」
――さらに寝かせる攻防のなかでパンチでダメージを与えていれば、より自分が試合を有利に進められますよね。
「どんな状況かにもよるとは思いますが、結局立ち上がった側が攻めるから有利になるのであって、寝かせる側が後手に回らずに先手を取ればいいと思うし、前回はそういった発想になれた試合で、あとで見返してもそう思います」
――例えば元UFCバンタム級王者のマラブ・デヴァリシビリもテイクダウンの考え方が捉え方が違うように思います。仮にトップキープできなくても、何回もテイクダウンに入ればいいと思って戦っているというか。
「そうなんですよ。テイクダウンして立たれた部分だけを切り取ってしまうと、寝かせられなかった・立ち上がられたという見方しかされないですが、もっと全体的にMMAを見る、それこそ1Rが5分間でそれを3Rもしくは5Rでやると考えると、必ずしもテイクダウンを取っても立たれるという行為が、すべてマイナスではない、むしろプラスに働くことがあると思ったんですよね。
ベラル・ムハマドもそうじゃないですか。ベラルの試合を見ていると結構どっちつかずの時間が長い。でもベラルがポイントを取られるわけでもなくて、組みに行ってテイクダウンできないと思ったらパッと離れて、動きの見切りが早い。ああいう戦い方はすごく自分に合ってるんじゃないかなと思って取り入れたのが五明戦でしたね」
――今の椿選手の話を聞いたうえで試合を見直すと、見ている側の印象も変わりそうです。
「組みがあるから打撃が当たるし、打撃があるから組める。すごくざっくり言うとそれがMMAだと思うし、牛久戦でそこに気付けたかなと思います」
中村選手となら本当にいいMMA、僕が見せたいMMAを世に問える試合が出来ると思う
――さて9月大会では中村大介選手と対戦が決まりました。最初にオファーを受けた時はどのような心境でしたか。
「最初は別の選手でオファーを受けていたのですが、自分の年齢や試合に取り組む労力を考えた時に、ちょっと自分的には乗れない感じの相手だったんですね。僕は仕事もしながら格闘技をやっていて、色んなことを犠牲にして試合をしています。もし次の試合が最後になるかもしれないとなった時に、その相手で後悔するかしないかと言われたら、ちょっと違う相手だなと思ったんですよね。で、五明戦に勝った直後に佐伯(繁)さんと話した時に僕の相手候補で中村選手の名前が出ていたことがあって、僕の方から『例えば中村選手と出来たりしないですかね?』とお願いしてみたら、中村選手と交渉してもらって決まった感じです。客観的に見た時に中村大介×椿飛鳥は、画になるいいカードかなと思ったんですよね。言い方は難しいですけど、すごくちょうどバランスがいいカードというか、お客さんに見せるものとしても自信を持てるカードであり、僕も自信を持って自分を出せるカードだなと思いました」
――個人的にはこの試合が発表された時にいいところを突いたカードだなと思いました。
「やっぱり最近の格闘技はSNSで因縁がある選手同士のカードが組まれたり、どちらの選手がすごく尖った数字を持っていたり、そういう試合が喜ばれがちだと思うんですよ。でも中村大介×椿飛鳥はそういうものがなくても刺さる・喜んでもらえる試合だと思っているので、より幅広く格闘技ファンの人にも伝わる試合だと思います」
――また椿選手がDEEPに参戦しなかったら実現しなかったカードだと思います。
「僕も対戦カードがボン!と出た時に受けがいいというか、そういう自信はあった感じです」
――中村選手は打撃とサブミッションで一芸突破できるスタイルで、誰とやっても負けるリスクがある半面、どんな相手にも勝つ可能性があるタイプだと思います。
「今言われたように中村選手は一発がある選手で、ここぞというところで発揮する力がすごい。格闘技のスキルや技術だけじゃない部分の能力が高いと思います。最近でも6連敗しているのに、RIZINの東京ドーム大会で試合が組まれて桜庭大世選手に一本勝ちしてますからね。そういう特別な才能を持っている選手ですし、技術的な部分での対策はもちろん、絶対に油断はできない相手だと思います。試合終了のゴングが鳴るまで、技術を超えた力で持っていかれちゃうんじゃないかなという怖さを感じます」
――中村選手はスタッツや数字では分析できない強さを持っている印象ですね。
「打率そのものは低いけど得点圏打率はめちゃくちゃ高い、通算本塁打数は少ないけど逆転サヨナラ満塁ホームランを打つ選手みたいな(笑)。そういう選手だからこそ噛み合った試合をするとまずいと思うので、いい意味で噛み合わない試合をしたいです」
――ファイトスタイルが全く異なる2人だからこそ見せられるMMAもあると思います。その手応えもありますか。
「はい。入場のダンスでアピールするとか、公開練習で派手なことするとか、SNSの言動や振舞いが派手とか………僕らはそういうところで注目される試合じゃないと思いますが、男くさいMMAをしたいというか、中村選手となら、そういう僕がやりたいMMAを今の時代に出せるんじゃないかなと思います」
――椿選手のキャリア的には修斗でランキングを上げて世界タイトルを目指す試合をしてきて、DEEPではそれとはまた違う価値観の試合をしていると思います。
「それぞれ違うやりがいがありますよね。修斗時代はランキングに入ることから始まって、ランキングを上げることが目標になって、最後にベルトを獲るという到達点があった。DEEPに来て、もちろんベルトは目標なんですけど、そこに辿り着くまでにランキング制がないからこそ、予期せぬカードが決まったりもする。それこそDEEP初戦でいきなり牛久選手とやったり、五明選手に勝ったあとに中村選手とやったり。こういう試合をやっていくことも自分には合っている感じもありますね」
――もちろん五明戦のように生き残りをかけたシビアな試合もあるわけですし、そこで勝ち切ったからこそチャンスが広がった部分もあると思います。
「そうですね。だから自分自身、今がすごく楽しいです。所属もフリーになってDEEPに来て、もちろん大変なこともありますけど、MMAファイターとして成熟してきた感覚がありますし、練習仲間のメンバーもすごく変わってきて、そういったことも含めて楽しめていますね」
――椿選手の話を聞いていても充実した日々を過ごしていることが伝わってきました。中村戦、楽しみにしています。
「ありがとうございます。中村選手となら本当にいいMMA、僕が見せたいMMAを世に問える試合が出来ると思うし、色んな人に見てもらえる試合も出来ると思います。みなさんも楽しみにしていてください」
■視聴方法(予定)
9月13日(日)
午後5時30分~U-NEXT、DEEP/DEEP JEWELS YouTubeチャンネル メンバーシップ
■DEEP133 対戦カード
<DEEPメガトン級タイトルマッチ/5分3R>
[王者] 大成(日本)
[挑戦者] シビサイ頌真(日本)
<ストロー級/5分3R>
北方大地(日本)
新井丈(日本)
<ライト級/5分3R>
北岡悟(日本)
山崎弥十朗(日本)
<フェザー級/5分3R>
中村大介(日本)
椿飛鳥(日本)
<メガトン級/5分2R>
誠悟(日本)
MAX吉田(日本)
<フェザー級/5分2R>
鬼山斑猫(日本)
奥村アイル(日本)
<フライ級/5分2R>
松岡疾人(日本)
仁井田右楽(日本)
<63キロ契約/5分2R>
髙尾凌生(日本)
NAOTA(日本)















