【DEEP133】北岡悟、2026年9月。「若い子の良い点を認めるっていうのは、僕の得意技ですよ」
【写真】変わらない軸と、変わりつつ軸の周囲。試合の10日前、確固たる北岡と穏やかな北岡がいた (C)MMAPLANET
14日(日)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP133。同大会で北岡悟が山崎弥十朗と対戦する。
Text by Manabu Takashima
今年の2月で46歳になった北岡が、昨年11月以来の実戦に戻る。46歳という年齢と同時に、目に見える彼の現状は4連敗という数字だ。2023年7月から3年2カ月、勝利から遠ざかっている北岡はこの間に妻を娶り、愛娘を得た。
人として生活環境の変化が、ファイターライフに如何に影響を与えるのか。と同時に普遍的に不変である――北岡悟の身の内とは。
妻と娘がめちゃくちゃ可愛しい、大好きだし、愛している
――MMAPLANETで北岡選手をインタビューさせていただいたのは2024年12月のProgress前、MMAの試合では同年4月以来です。あの時は5月の倉本大悟選手との試合前でした。今回、ZOOM取材をお願いすると、「対面で」という返答をいただきました。
「やっぱり顔と顔を合わせてやるもんじゃないですか。コロナが起こってからリモート取材が一般化していて、もちろん大変便利なモノです。でも温度というか、出来上がりが絶対に違うから。高島さんが忙しいのも分かるし、僕だって言えばパンパンのスケジュールだけど、やっぱり顔を合わせてやるもんだろうと」
――実は昨日の夜にMMAPLANETのチーム・ミーティングがあったのですが、「ZOOMでなく対面で」と北岡選手から要望があったと報告すると、中村拓己さんが笑顔を浮かべて、亀池聖二朗さんは「北岡悟らしい」って感激していました。
「アハハハハハ。そうですか。頭をパカーンとやりたくなりますね。アハハハハ」
――結果を残してからという気持ちは、正直強かったです。
「分かっています。それなのに話を聞いて、出したいと思ってくれたんだって」
――話は毎試合、聞きたいですよ。でもファイター北岡悟を勝っていない状態でインタビューするのか。それに自分のインタビューは北岡選手をイライラさせることも多いですし。試合前にやるべきじゃないだろうという考えはありました。
「ハハハハハ。そういうことだと、今回は良いタイミングだったかもしれないですね。イライラするということも、大丈夫ですね。正直、僕も試合まで10日という時点で、この心持を創ることができるっていうのは、分かっていなかったですけど」
――会場では当然のように立ち話はする。そのなかで北岡選手から受ける空気が変化したというのもあります。ただし、現役生活に関していつまで、そしてどの位置で戦っていくのか。そう思っている自分は存在しています。
「僕にはストップをかける人間がいないという話ですか?」
――いえ、そうではないです。それはもう本人とご家族が決めることだと思うようになりました。今回、山崎弥十朗選手と4連敗中で戦う。現役として、どういう立ち位置でMMAと向き合っているのか。話を聞きたいと感じました。
「入籍してから勝っていないですね……なんか説明は難しいです。でも、全部捲る用意はできています。全部、ひっくり返す準備は出来上がったから、あとは見てもらえれば良いかなって。『こういうことをやってきました』、『こういう準備をしてきます』って結局、説明じゃないですか。だから、試合で見せますよっていうことで」
――娘さんが生まれた。親として育てる責任がある。以前とは、また違う形で戦うことや自身と周囲のことを考えるようになったということはありませんか。
「色々と考えることはあります。コレでお金を作ることができるし。これがやりたいし。それこそ妻が許してくれないとできないけど、妻が許してくれているので。まぁ妻も北岡悟と結婚するというとんでもない愚行を働いたわけですけど、それ以外は皆さんが想像できないぐらい理知的な人なんです。我が、妻ながら。
この妻が『ダメ』と言えばできないと思いますし、本当に若いですけど出来すぎた人間なので。妻に『ノー』と言われるような……うん、取り組みだったり内容だったりすると終わりですよね」
――そうだと思います。
「妻と娘がめちゃくちゃ可愛しい、大好きだし、愛しているので。そのために自分のやってきた格闘技でお金が作れて、こうやってまた試合を組んでもらえる。それこそ4連敗、46歳というマイナスのファクターがあるなかで、それなりの条件で戦わせてくれて。相手も遣り甲斐がある相手を用意してくれて、一応見世物としてドンっとおかれるものだから。
そこに向けて最高の準備をして挑む。なので、色々と気にかけてもらっているようだけど、僕自身は余り変わっていない。ただ……なんかその、ウダウダと言っちゃうとアレですけど、心配をしてくださっているわけじゃないですか(笑)。その心配がなくなってしまうようなモノをお見せしますので。『あぁ北岡、まだやるんだね』、『まだ、やれるんだね』っていう試合が行われますので、ハイ」
減量なんて撮影して流せば、一丁前のドキュメンタリーになっちゃいますよ(笑)。でも、それも所詮、裏の話だから
――さきほど「止める人間がいない」という話をされていましたが、こっぴどくやられたという試合内容でもなかった……。だから、もう無理だと言えないというのもあったかと思います。
「それはでも、その時、その時に心を込めて取り組んできたからじゃないですか。でも正直、取り組みが甘くなって、緩くなっていたんですよ。で……いや、あんまり言いたくないですね。試合前には。やっぱり、取り組みは試合に出るモノなので」
――正直、減量に関してはもう厳し過ぎる。それは以前からで、もうそこは言及すべきではない。つまり問題視しないと思っています。ただし、ここ数戦リカバリー後の体調が以前より良くないのではないか。ウェルター級に上げるという選択はないのでしょうか。
「えっ? なるほどぉ、そうなるんですね。これはもう77キロで勝てると思えない。ずっと20年ぐらい、この階級でやっているわけだし」
――年齢を重ねると減量が厳しくなり、階級を上げることは普通に行われていますが、北岡選手はライト級に拘ると。
「階級を上げる人達は、減量が問題だったんでしょう。僕はソレが問題だと思っていないから」
――70.8キロを創れないなら、現役生活を考えるようなことは?
「そうでなくても計量に失敗したら終わり感はありますよね。でも、失敗したことがないから分からないです。そんなことを言っても、落ちても失敗みたいな経験はしているから。それにまだ計量まで10日あって、終わっていないですしね。そりゃあ、もう減量なんて撮影して流せば、一丁前のドキュメンタリーになっちゃいますよ(笑)。でも、それも所詮、裏の話だから。
大事なのはケージの中、リングの中だから。見てもらうべきモノは、ソレです。入場だとか、カメラが回っている場面、こういうインタビューも、トータルで楽しんでもらうモノだっていうのは凄く思っています。けど、一番大事なのはやっぱりケージの中だから。そこで良いモノを見せられるように生きているわけですよ」
――だからこそ、ケージの中の自分を見て欲しい?
「そういう気持ちはあります。本当に色々な人のおかげです……それで、泣きそうになるくらい。本当、本当に……家族もそうだし、ジムも離れていく人もいるなかで、ついてきてくれる人もいる。練習場所も縁あってのもの……ホントに漢字二文字で『感謝』ってやつですよね。
もう本当に感謝の気持ちが出てきます。一番は妻子にだけど、仲間……弟子といえる人間が3、4人いて。よくぞ、ついて来てくれていて可愛いですし。出稽古はロータスだけ行っていて、それこそたまたま縁があってのものだし」
――ここ2、3試合はコーナーマンが、そのロータスの八隅(孝平)さんでなくて、ジムの若手になっていますね。
「ハイ。ここ2試合はジムの子についてもらっています。その子はもうジムにいないんですけどね。凄く優秀で、トレーナー能力もある子でした。彼も格闘技を続けるわけだから、幸あらん事って願っています」
――なるほど、色々とありますね。ともあれジムの若い選手に試合を見守ってもらうようになったのは?
「う~ん、見せて、育てるという意味もあります。やっぱり学べることはあると思いますし。それに若い子の発想をバカにしちゃ、絶対にダメです。次の試合も後釜っていうのか、また若い子がセコンドをやるんですけど、プロはNEXUSで2試合戦っているだけです。22歳、大学4年生。でも間違いなく信用しているから、セコンドに就いてもらうので。
若い子の良い点を認めるっていうのは、僕の得意技ですよ。だって22歳の奥さんがいるんですよ。当たり前ですよ」
――アハハハハハ。失礼しました。思い切り笑ってしまいました。
「若い子からもアドバイスを貰っています。ジムを離れた子と創った2戦、それも今回の試合に生きていますしね。試合で出し切れなかったけど、自分にとって有効な動きは残っています。今の自分は前の2試合より良くなって、ソレを出せるように整っていますし。
真面目に基本に立ち返っているというか。それこそNEXUSのライト級タイトル戦で負けた小牧勇太っていう26歳が、夜にジムに来て黙々とシャドーだけやっている。その姿を見て、シャドーの大切さがようやく分かってきた。そんな今日この頃です。下の子から学ぶべきことは、たくさんあります」
――一回り下ではきかない若いチームメイトということですね。
「そうですね。26歳、26歳、22歳。二回り下もいるわけで。僕はおじさんといるより、若い子たちといる方が楽しいと感じているんだと思います」
有難みが分かるようになったというのはあるんじゃないですか
――自分も記者をしていて、自信たっぷりで目を輝かせている選手たちが本気になって話してくれる時は、何かエネルギーを貰っているように感じます。社会が分かり切って、諭す系の話を聞くよりずっと。まぁ、年を食ったといえば年を食ったわけです(笑)。
「まぁ……自分が老害……っていうか、自分が年寄りだと自覚はしていたいけど、僕は若い子たちとワチャワチャやっているのは好きです。そこでいえば、こないだ椿飛鳥君とYouTubeでおしゃべりするっていうのを撮ったんですよ。
それの撮影後記ってことで、椿君が『北岡さんと一緒の練習場所にいると、やる気が起きる』と言ってくれて。もう……泣きそうになって……」
――涙腺が緩くなりましたか。
「なっていると思います(笑)。椿君が言ってくれて、本当に嬉しかったです」
――それって世間的に見ると、丸くなっているわけですよね。それでも『うるせぇよ』っていうのが北岡選手のイメージだったかもしれない。
「あぁ、別に僕は昔からこういう人間だし。それは皆が知らないだけで」
――それはあの言動をしていると、ファンは知らないですよ(笑)。あれだけ尖がって、自分が良いヤツなんて思われたくないぐらいの勢いだったわけですし。ただデビュー直後から北岡選手の本質は変わっていないと思います。
「ありがとうございます。それでいえば、今は有難みが分かるようになったというのはあるんじゃないですか。椿君の言葉じゃないですけど。だって年を取って試合を勝てなくなっている人間が混ざって邪魔になりかねないじゃないですか。そういうところは弁えているので。
それを椿君が言ってくれたみたいに他の選手のプラスになったり、励みになっていれば幸せなことです。今日も最後のMMAスパーを矢地(祐介)君と、河名マストとやったけど、本当にありがとうって思いますし」
――以前より感謝の気持ちが増えたのか。それとも素直に口に出てくるようになったのか。どちらでしょうか。
「昔より増えたと思います。残念ながら。本当にありがとうって思いましたし。だって迷惑……こんなずっと勝っていないオッサンの相手を一生懸命にやってくれるわけで。もちろん、彼らにとって少しでも良い練習になるようにと思ってはいるけど……。鬱陶しがられても当然なのに……。オッサンが必死になって彼らに向かっていって。ケガのリスクだってある。何より彼らの貴重な時間を奪っているわけだし。これ正直なところなんです」
――なんというか、北岡選手のその言葉が聞けて良かったです。もう山崎選手の印象を聞くとか、本来は必要だと思っていることも尋ねなくて十分(笑)。だから偉そうな言い方になってしまいますが、見せてくれ、と。
「ハイ、見せたいです。見せることができると思います」
■視聴方法(予定)
9月13日(日)
午後5時30分~U-NEXT、DEEP/DEEP JEWELS YouTubeチャンネル メンバーシップ
■DEEP133 対戦カード
<DEEPメガトン級タイトルマッチ/5分3R>
[王者] 大成(日本)
[挑戦者] シビサイ頌真(日本)
<ストロー級/5分3R>
北方大地(日本)
新井丈(日本)
<ライト級/5分3R>
北岡悟(日本)
山崎弥十朗(日本)
<フェザー級/5分3R>
中村大介(日本)
椿飛鳥(日本)
<メガトン級/5分2R>
誠悟(日本)
MAX吉田(日本)
<フェザー級/5分2R>
鬼山斑猫(日本)
奥村アイル(日本)
<フライ級/5分2R>
松岡疾人(日本)
仁井田右楽(日本)
<63キロ契約/5分2R>
髙尾凌生(日本)
NAOTA(日本)














