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【ONE Samurai03】若松佑弥、王座陥落の再起戦「殺すのは相手じゃない。弱い自分をブッ殺す」

【写真】ファイトウィークでもリラックスしている様子の若松。その理由は――(C)SHOJIRO KAMEIKE

12日(土)、横浜市中区の横浜BUNTAIで開催されるONE Samurai03で、若松佑弥が南アフリカのウィリー・ファン・ローエンと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

今年4月、若松はアバスベク・ホルミルザエフに敗れ、ONE世界フライ級王座を手放した。あの敗戦から約4カ月半、無冠となった若松がONE日本大会で再起戦に臨む。ホルミルザエフ戦直後は引退も考えたという若松だが、その気持ちを変えたのは、まさに新王者が自分に見せてきた戦いだったという。現役続行というよりも、新たな自分との戦いへ――打撃が鋭く、獰猛なファイターであるローエンとの試合は、まさにリスタートの第一歩にふさわしい。


この時期にリラックスすることで、今まではすり減らしていた殺気を試合まで温存できる気がします

――再起戦を4日後に控えてのインタビューとなります(※取材は8日に行われた)。現在の心境からお願いします。

「いつもはファイトウィーク……試合の5日前からホテルに入っていて、海外だとそれが1週間前でした。今回は試合の2日前からにしています。試合5日前にホテルに入ると、常に臨戦態勢になっていたり、緊張感がありました。今回は割とリラックスして、いつもと変わらないルーティンをこなしていて。今のところ、これまでの試合よりリラックスできている感じはあります。パンクラスに出ていた頃のような『日常の感じ』です。

いつもファイトウィークに入るとホテルで何日か、オフィシャルの写真撮影やインタビューなどが行われますよね。終われば帰りたい人は帰っていいんですけど、自分は帰るのが面倒くさくて、そのままホテルに滞在して練習したりしていました。でも今回はその公式行事が1日で済むスケジュールになったので、ホテルに泊まるのは計量前日からにして」

――これまではホテルに滞在し、シャットアウトしていたのですか。

「そういうわけではないんです。ホテルにいてもONEのスタッフや、出場選手と会ったりしますよね。そこで自分はどうしても試合モードに入ってしまうんです。自然にアドレナリンが出て来る感じがあって……。それはそれで楽しんではいましたけど、今回のようなスケジュールで過ごすと『こっちのほうが良いな』と思いました」

――ファイトウィークに入り、アドレナリンが出て、ファイターとして鋭さが増していくことが重要だと思います。一方でその状況が続きすぎると、試合当日までにすり減らしすぎてしまわないかな、と心配にはなります。

「まさにそうなんです。自分の場合は、そう意識していなくても自然と試合モードに入ってしまうところがあったので。前回の試合まではリラックスしつつ、どうしても――特に会場に入るとアドレナリンが出て、心拍数も高くなってしまったりとか。

DJと戦った時(※2019年3月のONE日本大会で、デメトリウス・ジョンソンがギロチンで勝利)、DJが『試合直前までリラックスしている』と言っていました。もちろんDJと僕ではタイプが違うことは分かっています。自分は殺気とか、そういうもので戦うタイプのファイターなので。でもこの時期にリラックスすることで、今まではすり減らしていた殺気を試合まで温存できる気がします」

――いつもよりも殺気をため込んで、試合で爆発させることができる、と。

「はい。今回はそれが自然にできる流れになっていて、また新たな自分を見せられると思います。逆にリラックスしすぎると焦る気持ちもあったりします。そうなると自分は余計に『やらないといけない。殺気を保たないといけない』と思ってしまうタイプで。だからこそ今回は良い状態で調整できていると思います」

――自然とその気持ちを抑えることができるのも、ファイトウィークまでにどれだけ準備してきたか。どれだけ自分を追い込んできたか、という自信があるからではないでしょうか。これは格闘技に限った話ではなく、その自信がないと、焦ってしまうことは多いと思います。

「自分は練習もそうですし、生活の中でも食事の面など、やることをやってきたと思っています。だから不安になったとしても『自分はやれることをやってきたから、考えなくていい』と思うことができる。それでも動くことができる環境であれば、ずっと頑張ってしまうんです。でもキャリアを重ねてきて、『今日はこれぐらいで良いかな』と考えることはできるようになってきました」

前回の試合で、新たなハングリー精神をもらいました。次の試合で見せたいし、それこそ自分が追い求めているものなんですよね

――特に今回は、4月にベルトを失って以来の再起戦です。その場合、『もっと練習しないと、もっと何かやらないと』と焦ってしまうファイターもいるでしょう。そのままイーブンの状態で再起戦に臨む選手はいない。若松選手の場合、ベルトを失った直後の心境はどうでしたか。

「直後は、燃え尽きた感じがありました。全てやりきって、ああいう結果が出たので。『どうしたらいいんだろう? 次は何をしようかな』と思いましたね。もう終わりだ、引退しよう、と。全てやりきって負けたのだから、仕方ない」

――……。

「でも1日寝て、起きたら『まだやれる。自分にはこれしかない。まだやるんだ』と切り替えることができましたね。ただ、ダメージを抜くのに2カ月ぐらいは掛かって。その期間に気持ちの浮き沈みはありましたけど、試合が決まった瞬間にバシッとそういうのは吹っ飛んだ感覚がありました。焦るとオーバーワークになってしまう。今回は『できないことがあっても良いかな』と考える部分もあって、妥協ではないギリギリのラインを攻めることはできましたね」

――何にしてもメリハリは重要だと思います。

「なるようにしかならない。だから自分ができるかぎりのことをして『人事を尽くして天命を待つ』という状態まで、やってきました。試合が決まってから7週間、やるべきことはやれたと思っています」

――ホルミルザエフ戦は、打ち終わりに右スピニングエルボーを被弾し、背中からダウン。追撃の鉄槌を受けるなど、ダメージ面も気になるフィニッシュシーンでした。試合後にダメージを抜くのも時間は掛かりましたか。

「傍から見ると結構ヤバいと思われるフィニッシュでしたけど、記憶が飛んだのはあの一瞬だけで。今までめちゃくちゃガチスパーをやっていたり、ダメージが蓄積するようなことをしていたら、記憶が飛ぶのもあの一瞬だけではなかったかもしれないです。自分の中で積み重ねてきたもののおかげで、ダメージも最小限に抑えられているという実感はありました。あと自分は守られているな、と目に見えない力を感じましたし、そのあたりは感謝しています」

衝撃的なフィニッシュとなったホルミルザエフ戦。自分を守ってくれたのは、自身が積み上げてきたものだ(C)ONE

――若松選手は現在31歳。30歳を過ぎると、より考える部分も出て来るかと思います。特に睡眠時間が重要など、自分も年々理解するようになりました。

「めっちゃ重要ですよね。睡眠の質が低いと集中力も下がると思います。ファイターは他に仕事を持ちながら練習している人が多いです。仕事で疲れていても、どうしても練習はしなきゃいけない。そこで麻痺しているというか、疲れている状態でも動けるんです。でもそこで爆発的なパワーを出せるかといえば、そうではなくて。やはり現実的な肉体をつくっていくうえで、睡眠や食事の質は大きく繋がっていくと思います」

――冒頭のお話にも繋がりますが、やはり試合当日にどれだけのパフォーマンスを出せるかが重要であって。それこそ練習中や試合直前の時期に殺気を持ち続けることが目的ではないですからね。

「極論、どれだけ練習ができていなくても、試合の15分間だけ頑張ればいいわけですからね。それはモライシュ戦の時(※昨年3月、ONE世界フライ級王座戦でアドリアーノ・モライシュにTKO勝ち)。怪我のためにできないことがあったとしても、とにかく勝てばいい。ただ、勝つ確率を上げるためには、やるべきことをやる必要があって。それでも負けることはあるけど、ファイターとしてイチかバチかの試合をしているわけではない。だから睡眠や食事など自分がコントロールできるものは、しっかりコントロールしていかないといけないです」

――その点をコントロールしながらも、前回はベルトを奪われてしまった。要因は何だったと思いますか。

「要因ですか、う~ん……」

――個人的な意見としては、序盤から若松選手が押していて、相手も疲労が見えてきていました。同時にフィニッシュシーンは、若松選手の集中力が切れていたわけではない。あの展開で集中力を切らすようなファイターでは、決してない。だからこそ、なぜ最後にあの右スピニングバックエルボーが入ったのか。

「そうですね……、うん……、……、……自分は挑戦者の気持ちで全てやってきました。でも相手から感じたプレッシャーというのは、ハングリー精神そのものでした。技術云々ではなく『勝ちたい』、『地獄に引きずり込んでも勝つ』という想いが伝わってきて。自分もその圧に耐えながら、気持ちが折れることなく、前に前に――そこであのヒジをもらったような気がします。身をもってあのハングリー精神を体験し、見習わないといけないと思いました。

そういう気持ちが自分になかったのかといえば、もちろん持っていたはずです。でも前回の試合で、新たなハングリー精神をもらいました。次の試合で見せたいし、それこそ自分が追い求めているものなんですよね。

若松がハングリー精神を失っていたはずがない。ベルトを失うも、しっかりと気持ちを見せた戦いだった。それでも勝てなかった自分自身を超えていくために、若松は再び戦う(C)ONE

ホルミルザエフ戦も、第三者が見て『こうやれば勝てる』という意見はあると思います。たとえば技術的な面でいえば、あそこで一度引いて、もっとジャブを突いてアウトボクシングするとか、もっと上手い戦い方があったかもしれない。ただ、自分が実際に感じたのは『コイツは凄い気合いの持ち主だな』ということなんですよ。自分も見習うというか、『俺がやりたい戦いはコレだな』と思わせてくれました。どんな相手でも臆せず戦う。負けはしましたけど、そこは僕に足りないところなんじゃないのかな、って」

――なるほど。

「よく『何にも囚われない戦い』と言いますけど、時間や構えにも囚われない。ただ勝つことだけに執着して、何が何でも勝つというファイターになりたい。その部分で、相手が上回っていた。僕が求めている強さというのは、ああいう『どちらが地獄に引きずり下ろすか』。どんな形でもああいう死闘を制する最強の男になりたい、と感じました。

やっぱり相手も強かったですし、ONEのチャンピオンはああいうファイターでないといけない。そして自分がもう一度、そこから引きずり降ろさないといけないと思っています。そのために、今までと同じように戦うのか。あの時の自分を超えて、何にも囚われない戦い方をするのか。それが自分にとって次のステップですね」

自分が目指している最強というものは、映像で視て理屈だけで終わるようなものとは違う

――その次のステップに進むための初戦、対戦相手のウィリー・ファン・ローエンについては、どのような印象を持っていますか。

「危ない選手ですよね。若くて戦い方も綺麗、だけど殺傷能力が高いし、ガッツもある。特に、打撃が突出した新MMA世代を引っ張っていくような人材だと思います。試合が決まった時は正直、怖さもありました。今回は『ホルミルザエフに負けた戦いを、どう落とし込んできたか』が問われる一戦です。

技術云々じゃない。振り切って、何もとらわれない。『なんだこのMMA』と思われるような戦いを求められている。自分はそう求められているものを超えていけるんじゃないかって楽しみもあります。いつも言っていることですけど、それが自分との戦いで――今回の試合は、自分自身を超えることができるのかどうか、です」

――ローエンは凄く綺麗な戦い方をしますが、一発一発に威力があるし、利かせたら一気に獰猛に攻めて来る。だからこそ自身の気持ちを試される戦いでもあると思います。

「相手は危険なファイターです。でも自分が目指している最強というものは、映像で視て理屈だけで終わるようなものとは違うと思っています。そんな相手との試合をあっけなく終わらせ、『やっぱり若松は強かった』と思われるような戦いをしたい。あと4日、前回の弱い自分を越えて、もっと強い自分を見ることができるかどうか。今の自分は、今まで一番覚悟が決まっているので、楽しみにしていてください。

本当に――殺すのは相手じゃない。弱い自分をブッ殺すという意味で、もう吹っ切れました。そのつもりで何も考えずに倒しに行きます」

■放送予定
9月12日(土)
午後4時15分~U-NEXT

■ONE Samurai03対戦カード
<キック・アトム級/3分3R>
吉成名高(日本)
ハー・リン・オム(ミャンマー)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
若松佑弥(日本)
ウィリー・ファン・ローエン(南アフリカ)

<ムエタイ・フライ級/3分3R>
吉成士門(日本)
スーブラック・トー・プラン49(タイ)

<キック・フライ級/3分3R>
陽勇(日本)
常陸飛雄馬(日本)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
箕輪ひろば(日本)
宮澤雄大(日本)

<ムエタイ・アトム級/3分3R>
奥脇竜哉(日本)
チョーディー・マクジャンディー(タイ)

<キック・フライ級/3分3R>
吉田晄成(日本)
ジャオ・ジェンドン(中国)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
伊藤盛一郎(日本)
黒部和沙(日本)

<ムエタイ・ストロー級/3分3R>
品川朝陽(日本)
トゥアキアオ(タイ)

<キック・フェザー級/3分3R>
亜維二(日本)
田中佑樹(日本)

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