【LFA227】Fight&Life#114より。ムリシャ戦敗北、上久保周哉―寝技の真実―「汗と血の滑りは全く別物」
【写真】日々積んできたモノを、勝とうとしてくる相手にぶつける。本当に凄まじいことが、ケージの中では行われている (C)MMAPLANET
本日23日(木)から発売中のFight&Life#114に、2月28日にカリフォルニア州ベンチュラのベンチュラ・カントリー・イベンツ・センターで開催されたLFA227で、ムリシャことハファエル・ド・ナシメントに敗れ、LFAで初黒星を喫した上久保周哉のインタビューが掲載されている。
Text by Manabu Takashima
大量の流血、不可解なブレイクと予想できないことが起こった15分間。コントロールだけでなく、ダメージも与えた2Rをなぜ上久保は落としたのか。競り合いになった試合のなかで、上久保自身が感じた課題とは?
一目瞭然でないから、伝わり辛いのかグラップリングの攻防だ。それは一本勝ちできた時にしても、プロセスは理解されないことが多い。ただ一本という結果が、求められる。
分かりやすさが、格闘技をビッグビジネスにすることは百も承知したうえで、上久保とムリシャの試合で繰り広げられた攻防とは、どうようなモノだったのか。そこにMMAの本質があるといっても過言でない――両者の戦い。同インタビューで、上久保自身がその攻防と技術面と心理面から振り返った箇所を切り抜いて紹介したい。
相手を大きく見過ぎていたのか。もしくは自分を信じ切れていなかったのか。そこに関しては、後悔が残っています
――今後、変えて行った方が良い点。つまりは修正すべき点が見つかったということかと思いますが、試合の撮影をしていて打撃の受け方、その見た目の印象が悪いと感じました。ダメージはないのに勿体ないと。
「僕の受け方は良くないですね。それは股関節の手術をしても、今も残る悪い部分が関係しています。立ち方のバランスが安定していない。それにしても見栄えは良くない。相手にケージを背負合わせるという部分では空間は支配できていたと思うんですけど、ドライブする幅であったり、課題は残りました。
それと今回は対戦相手も組みで勝負してくると思っていたので、向こうから組んでくるという想定もしていました。僕が組んだ後に、向こうから仕掛けてくるとか。今から思うと、そこを必要以上に警戒し過ぎたのかと。テイクダウンをしてから余裕をもってポジションを取りに行けるだけの力の差は試合中も感じていたのに」
――難しいですよね。警戒してないと、ダメだったかもしれないですし。
「そうなんですよ。警戒するから上手くいく部分もあるので。ただ、今回に関しては警戒し過ぎました。練習なら攻めている部分でも、行かなかった。それは勿体なかったです。組み技で優っているという確信が持てなかったのも事実で。勝っているのか、誘われているのか。その判断がつかなかったので、警戒し過ぎてしまいました」
――ムリシャは過去の試合で、積極的に一本を取りに行くファイターだったので致し方ないかと。
「もっと積極的に組んでいるし、カウンターでも取りに行っている。それは11勝のうち9度のフィニッシュというレコードに表れているから、勝負に来ると思っていました。相手を大きく見過ぎていたのか。もしくは自分を信じ切れていなかったのか。そこに関しては、後悔が残っています」
――ムリシャは下になっても、立ちあがったり、ポジションを取り返したりということではなく、背中をつけてヒジを頭に入れることでダメージを与えるという印象点を取りに来ていました。頭の位置が、いつもより低くヒジを受けてしまったように見えました。どのような理由で、低めに頭を置いていたのですか。
「過去の試合で見たムリシャのアームロックが頭に残っていて。それこそギロチン、ニンジャ、ダースを極めていました。なので、まずは足を封じた方が安全だと思って。頭を高くするよりも、足を崩した方が楽だという風に考えてしまっていました。映像を見返すと、頭を上げた方が良いポジションを取れていたと思います。同時に練習でも、足を束ねて一度抑えてから上がっていたのに、本来はやらないといけないことをするのが遅れました」
――相手の仕掛けを警戒し過ぎたというのが、そこですね。
「普段の練習でアームロックなんて極められることはないのに。僕が磯野さんに習ってきた柔術はそういうものではない。後手に回った相手のカウンターの仕掛けには、対応できるようになっていたのに」
――打撃を受けたこともあり1Rは落としました。2Rはどのように挽回しようと考えていましたか。
「頭の位置を変えて、高い位置で抑える。バックに回って殴り、明確にポイントを取ることでした」
――上久保選手のパンチも当たり、相手も相当にバテていました。ただ、あの下からのエルボーを多用してスクランブルしない。結果的にジャッジは3者とも2Rをムリシャとした。立ちあがらず、仕掛けもない選手のエルボーが評価されるなら、なかなかMMAとして厳しいと感じました。が、ここも割り切りが必要なのかもしれないですね。
「現場では磯野さんから『多分……微妙ではあるけど、落としている可能性は全然あるから。ここも取られたと思って、3Rは攻めて行こう』と言われていました」
――磯野さんは本当に、冷静に試合を見ることができるのですね。2Rを取られたと思えるとは……。
「スタンドの打撃に関しては五分五分だったと思います。でもテイクダウンを狙って、組んでドライブしたなかで頭から金網に突っ込んでカットしました」
僕自身、相手の攻撃だけど、何だったんだろうって感じだったので。それか貰ったダメージで、記憶が飛んだのかと
――カットはケージサイドにいても、いつだったか分からなかったです。だから打撃が擦れてカットしたのかと。そこにエルボーを受けるわけで、印象点が悪くなったといえばそうなのかもしれないですね。
「あの後もポジショニングに関しては、安定して取れていました。ただ血で滑って抑え込みきれなくて、蹴り上げで印象点を持っていかれたかというのはあります」
――あぁ、確かに。蹴り上げを顔面に受けていました。
「足を触っていても、血で滑って捌けない。ここはもう練習のしようがなかったですね。汗の滑りと、血の滑りは全く別物でした。ぬめりが違うというか。経験したことがないので、どうしたら良いかと……」
――ジェルで近いモノを創る必要があるかもしれないですね(苦笑)。
「ジェルとか、ワセリンをめちゃくちゃ塗ってもらうとか。滑るモノに対してどうすれば良いのか。そこに関して、自分の攻撃手段は幅が少なかったです」
――立ちあがり際にバックという展開に持ち込めなかったですね。
「もう向こうは立つことを捨てていましたね。下からダメージ点を取れば、どれだけ寝技で圧倒されていてもラウンドは取れる。そういう感覚だったのだと思います」
――パスをして、マウントを取り。バックも取った。そして殴った。でも、ポイントは落とした。
「正直、ダメージという部分に関して五分か五分以上、ポジションも取ったし攻め込んだ。映像を見返すと感覚として2Rは取ったかと思います。これで取れないのは厳しいなぁって。ただ指摘されたように、あのカットが相手の攻撃だと思われると……。僕自身、相手の攻撃だけど、何だったんだろうって感じだったので。それか貰ったダメージで、記憶が飛んだのかと」
――ああぁ、そういう気持ちになってしまうのですね。
「僕自身、戦っている時はポジショニングは圧倒しても、あの流血でダメージを取られたと思っていました。エルボーでカットしたとジャッジが勘違いしても、まぁしょうがないですよね。そう思われるほど、僕はエルボーを貰っていたので。
それよりも、ある種バックを取りに行った方が、勝率が高いと思っていた。僕がこれまで積み上げてきたMMAは、それほどバックの優先順位は高くなかったのに。バックは取れたら取るモノで、取りに行くモノじゃない。それが僕のなかのMMAの基本でした。それなのにバックを取ろうとしていた。そこは考え直さないといけない部分です」
※1、2Rに続く最終回。あの不可解なレフェリーストップをどのように上久保は見ているのか。UFCに辿り着くために、絶対的な条件フィニッシュ至上のMMAへの想いとは。まるで底なしの海底を探るかのような、深いMMA論が聞かれた上久保周哉インタビューが掲載されているFight&Life#114は23日(木)より発売中です。

















