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【Lemino Shooto05】吉野光とリザーブ戦、伊集龍皇「2年間を一気に埋められるような、大事なチャンス」

【写真】2年のブランクを経て復帰。現在21歳で、なかなか山あり谷ありのキャリアだ(C)SHOJIRO KAMEIKE

19日(日)に沖縄市のミュージックタウン音市場で開催されるLemino Shooto05にて、バンタム級サバイバートーナメントのリザーブファイトで伊集龍皇吉野光と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

伊集は幼少期に柔術を始め、キッズMMAを経て2021年に修斗で史上最年少のプロ昇格。翌年プロデビューし、ここまでの戦績は5勝1分と無敗を誇り、しかも4連続フィニッシュ中だ。現在21歳。今回が2年振りの試合となるが、実績で大きく上回る吉野を相手に、いかなる試合を見せるか。「自分に失うものはない」と語る伊集のキャリアに迫る。


自分は今21歳——ここで戻れなかったら、もう戻ることはない。もう一度やれるところまでやってみよう

――2024年4月の健太エスペランサ戦以来、2年振りの試合が決まりました。

「はい。今回は試合に出ていなかった2年間を一気に埋められるような、大事なチャンスを頂いたと思っています」

――なぜ2年もの間、試合から遠ざかっていたのでしょうか。

「健太エスペランサ選手との試合後、ちょっと格闘技へのモチベーションを失ってしまって……。でも中池武寛や、今回同じ大会に出る友利幸汰とかジムの後輩たちが勝ってランキングに入っていることに影響を受けました。自分は今21歳——ここで戻れなかったら、もう戻ることはない。もう一度やれるところまでやってみよう、と思ったんです」

――なるほど。現在21歳の伊集選手ですが、キャリアを調べてみると幼少期からの柔術やMMAの成績がたくさん出てきます。何歳の時に格闘技を始めたのですか。

「5歳の時、パラエストラ小岩で柔術を始めました。もともと父が会員で、子供たちにも習い事をさせたいとパラエストラ小岩に入れてくれたんです」

――同じパラエストラ小岩に所属している伊集虎皇選手は兄弟なのですね。

「はい。虎皇は1歳下の弟で、一緒に柔術を始めました。よくリングネームみたいって言われますけど、本名です(笑)」

――MMAと柔術を含め、キッズ時代は何戦ほど経験しているのでしょうか。

「何戦ぐらいだろう……MMAは20~30戦ぐらいで、柔術はもう数えきれないぐらい試合に出ていますね。MMAを始めたのは小学5年生の時です。当時、まだ少なかったですがキッズMMAの試合が組まれるようになり始めて。僕も遊びレベルではありましたけどMMAみたいな練習はしていたので、ちょっと試合に出てみようかと――そのあたりからMMAを真面目にやってみようと思った記憶があります」

――MMAを始めた当時、意識していた選手はいますか。

「跳びつき系の技が好きで、佐藤ルミナさんの試合を視ていました」

――完全にお父さん世代の影響ですよね(笑)。

「アハハハ! まさにお父さんがルミナさんの試合映像を見せてくれて、僕も『秒殺』というものを意識するようになりました。素早くパッと極めて勝つのがカッコイイな、と」

――プロキャリアでも早い時間でのフィニッシュが多い伊集選手です。引き込みながらすぐ腕十字の体勢に入っている柔術の試合映像を視ました。ポイントやアドバンテージを押さえつつ、チャンスがあればサブミッションを狙うというスタイルではなく。

「自分はまさにそんな感じで――引き込んでもスイープより極めに行くほうがメインで試合を組み立てたくなっちゃいますね」

――その一方で、MMAでは下から攻め続けるよりも、必ずトップを狙いに行きます。

「やっぱり柔術と違ってパンチがあると、なるべく上を取ったほうが安全ですよね。サトシ選手や鹿志村仁之介選手のように、下から極めるスタイルにも憧れはあるんですけど」

――憧れはあるものの、そのスタイルを選択しない。それはMMAに打撃があるという点以外に何か理由はあるのですか。

「まずそれほどテイクダウンに自信がない、という点ですね。柔術だと自分からテイクダウンに行く瞬間が少なくて、自分が引き込むか、あるいは相手が座ったらパスを狙いに行くとかですよね。MMAだと投げたいけど投げ切れない時に、自分から下になる。そこでまず柔術の形——しっかりとガードをつくってからスイープして上を取り返す、というスタイルになってきました」

――そうなるとスクランブルの展開にも自信はありますか。

「自信はあります。自分は極めに行きたいほうなので、スクランブルが発生したほうが極めるチャンスも多くなりますよね」

最年少というのも記録としては嬉しいけど、それよりも不安のほうが大きかったです

――柔術やキッズMMAを経て、15歳の時に修斗で最年少のプロ昇格を果たしています。

「15歳でも、16歳になる年であればアマ修斗にも出ることができます。自分が早生まれだったこともあって、当時はプロになることを目指して練習だけでなく大人と試合できる大会にも出ていました」

――それは当時、史上最年少プロ昇格を狙っていたのでしょうか。

「いえ。『今プロになったら最年少みたいだよ』と聞いて『へぇ、そうなのか』と思った程度で、そこまで意識はしていなかったです。最年少といっても、ちょっとズルしているような感じでしたし……」

――ズル、というのは?

「ちょうどコロナ禍で、その年は全日本選手権が開催されず、各地区選手権の優勝者がプロ昇格するという形でした。僕は北信越選手権で齋藤奨司選手に勝って優勝していました。あれから5年ほど経って、随分と差は開いてしまいましたけど(苦笑)」

――……。

「自分は他の選手よりもアマチュアの経験が浅い状態でプロになり……最年少というのも記録としては嬉しいですけど、それよりも不安のほうが大きかったです。自分の実力がどれくらいなのか、ハッキリ分からない状態だったので『プロでどこまで行けるんだろう?』と。経験不足でプロになった。でもプロになったからには、もう負けられないというプレッシャーもありました」

――結果、プロ2試合目で現環太平洋王者の川北晏生選手と対戦し、ドローに終わった時は「やっぱり……」と思いましたか。

「そうですね(苦笑)。川北選手との試合は自分の中で壁が見えたというか、『こんなことしかできないのか』と落ち込みました」

――後の王者である齋藤選手と川北選手を相手に、そのキャリアで勝利あるいはドローというのは、今考えると十分な結果かもしれません。ただ当時は不安であったのも分かります。川北戦で感じた壁とは?

「試合の中での引き出しの少なさですね。川北選手は実績があって、自分がやるべきことを淡々と続けることができる。自分は試合中に焦ってしまう。そういう差はあったかと思いますね」

――試合では川北選手が体を振りながら、どんどん距離を詰めてくる。対する伊集選手は下がって回ることが多かったです。

「そこなんですよ。自分は距離を取ったあと、詰め切ることができない。その展開が2R続いてしまいました。正直、自分の中では『負けたかな……』と思いました。それぐらい手応えはなかったです」

――川北戦後は4試合連続でフィニッシュ勝利を収めています。川北戦を経て何か大きな変化があったのでしょうか。

「自分から攻めるようになったとは思います。川北戦の次は関根累選手との試合でした。関根選手はストライカーなので、先に相手に距離をつくられてしまうと不利になる。グラップラーとしては殴られたくないけど、速い段階で組もうと決めていたことが結果に繋がったんじゃないかと思っています」

――柔術だと自分からアタックしに行くことが多いのに対し、MMAはそうではなかった。それは打撃に対する不安があったということですか。

「ありました。もちろん打撃も練習しているし、自信がないわけではないんですよ。でもブッ飛ばされる怖さもあって、川北選手との試合の時はその怖さを壊せなかったです」

――そんな打撃への怖さへの反動なのかどうか……、2024年1月の藤田ムネノリ戦では下から三角で固めて、すさまじいヒジの連打をブチ込んでいました。

「アハハハ。あの試合は藤田選手のディフェンスが固くて、残り時間も少ない。三角は得意だけど、あまり深く入っていなくて『マズイ』と思ってヒジを連打しました」

――現在のMMAでトップの奪い合いが主になるなか、当然のことながら下になることもある。そんななかでスイープができ、さらに下から固めつつヒジの連打が打てることも強みだとは思います。

「そうですね。ただ固めているだけだと勿体ないし、できるだけ削っていきたいです。できればストップしたいと思って連打していました」

今の僕は負けて失うものなんて何もない。このチャンスを生かして、しっかり勝ちに行きます

――そして健太エスペランサ戦から2年の時を経て今回、吉野選手と対戦します。

「オファーが来た時は正直、吉野選手のことを知らなかったんです。でも調べていくと『メッチャ強い人だ』と思いました。僕は自分と同じゴリゴリのグラップラーと対戦するのが初めてで、そういう意味でもかなりのチャレンジという感じです。

でもグラップラー同士ではありますけど、スタイルは全然違いますよね。吉野選手はしっかりテイクダウンとポジションを取って、各ラウンドでポイントを取りきる。自分は動きながら極めに行きたい。正直、吉野選手は自分にとって苦手なタイプだなって思います。結構しんどい試合になるだろう、というのは覚悟しています」

――吉野選手はポジショニングのタイプとしてスイープしづらいし、かつスクランブルも強い。そのなかで、いかに自分の得意なフィニッシュする試合に持ち込むか。

「今回のテーマとしては各ラウンドゆっくり使いつつ、極め急ぎ過ぎないようにしたいです。一回ポジションをキープされたら吉野選手はメッチャ強い。そういう展開はなるべく少なくして、自分もチャンスがあったら狙うけど、こだわりすぎないようにしたいですね」

――伊集選手にとっては「3ラウンド使って極めに行く」という初めての展開になります。

「今回が初の3回戦なので、体力の使い方だったり、試合の組み立て方が今後メッチャ生きると思うので楽しみです」

――今後というのは?

「修斗の上位ランカーとの試合を実現できるように。そのためには3Rしっかり戦えるようにならないといけないので」

――この試合がサバイバー・トーナメントのリザーブマッチであることは意識していますか。

「意識しています。といっても『勝ったらトーナメントに入れるんだぁ』というぐらいですけど(笑)」

――リザーブ戦で勝利してトーナメントに入った場合、齋藤奨司選手との再戦が実現する可能性もあります。

「そうなったら面白いですけど、まずは吉野選手との試合に集中しています」

――2年振りの復帰戦の相手が吉野選手とは厳しいマッチメイクかと思います。

「もともと吉野選手の相手は決まっていて、その相手が出場できなくなったので自分にお話が来たと聞いています。もちろん強い吉野選手が相手ということで、受けるかどうか悩みました。でも、今の僕は負けて失うものなんて何もないんですよね。むしろ吉野選手ほどの実績のある方が、僕との試合にOKしてくれて感謝しかありません。僕はこのチャンスを生かして、しっかり勝ちに行きます」

■視聴方法(予定)
4月19日(日)Lemino

■Lemino Shooto05 対戦カード

<ウェルター級/5分3R>
西條英成(日本)
マコア・クーパー(米国)

<女子アトム級/5分3R>
徳本望愛(日本)
リー・ボ・バエ(韓国)

<バンタム級サバイバーTリバイバル2026リザーブファイト/5分3R>
吉野光(日本)
伊集龍皇(日本)

<ストロー級/5分3R>
当真佳直(日本)
友利幸汰(日本)

<フライ級/5分3R>
梅筋毒一郎(日本)
砂辺光久(日本)

<63キロ契約/5分2R>
チョン・プイ・ウィング(香港)
竹見隆史郎(日本)

<バンタム級/5分2R>
松岡琉之介(日本)
水嶋敬志(日本)

<バンタム級/5分2R>
藤谷敦史(日本)
下間英史(日本)

<バンタム級/5分2R>
彬大(日本)
親盛拓巳(日本)

<フライ級/5分2R>
竹本蒼天(日本)
玉城悠(日本)

<アマチュア 女子ストロー級/3分2R>
横田翔子(日本)
宜保紅里(日本)

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