【RIZIN LANDMARK12】大島沙緒里の挑戦を受ける、伊澤星花「アームロックを狙ってきてほしい」
【写真】まさに過信ではなく、自信がうかがえる伊澤 (C)TAKUMI NAKAMURA
11月3日(月・祝)に神戸市中央区のジーライオンアリーナ神戸で開催されるRIZIN LANDMARK12にて、RIZIN女子スーパーアトム級王者の伊澤星花が2度目の防衛戦で大島沙緒里と対戦する。
Text by Takumi Nakamura
7月の超RIZIN04でシン・ユジンに一本勝ちし、デビューから続く無敗記録を16まで伸ばした伊澤。今大会では9月のDEEP後楽園大会で須田萌里に勝利して王座挑戦をアピールした大島を迎え撃つ形となる。
カード発表会見で伊澤は大島を「私の下位互換だと思っている」と話したが、そこには常に進化を続け、試合の度に新しい自分を見せるという伊澤のファイターとしてのポリシーがある。プロとしての練習はもちろん、ジムでの指導や伊澤星花チャレンジなど、自身が取り組むすべてのことが伊澤星花というファイターを成長させる要因になっている。
――今大会では大島沙緒里選手を挑戦者に迎えての防衛戦となりました。大島選手のことはいつ頃から意識していたのですか。
「自分よりも半年ぐらい(大島は)デビューが早くて、その時から活躍していたので、すごく意識していた選手ですね」
――それはどのような部分で、でしょうか。
「同じ柔道出身ということで、戦い方を参考にしたりもしていました」
――柔道家がMMAに転向したら、こういう動きをすればいいんだという目線で見ていたのですか。
「そうですね。大島選手はアームロックとかすごく極め技を持っていて、デビュー当初から極めて勝っている印象があったんです。逆に私は初めの頃はなかなか極めて勝てなかったので、こうやって極めるんだみたいなところをすごく参考にしていました」
――伊澤選手は9月のDEEPで大島選手が須田萌里選手に勝利して挑戦をアピールした試合を解説していましたが、あの試合を見ていて大島選手のパフォーマンスにどのような感想を持ちましたか。
「もともと強い選手だと思っているんですけど、前回の試合を見ると自分の方がより強いなと思いました」
――デビュー当初こそ参考にしていた部分はあっても、今はMMAファイターとして自分の方がレベルが上だと思っていますか。
「そうですね。打撃ももちろん自分の方が強いし、寝技でも極め技のレパートリーや極める力も自分の方が強いんじゃないかなと思います」
――伊澤選手は新しい技やファイトスタイルを学ぶ場合、練習で気づくことが多いのか、人の試合を見てインスピレーションを受けるのか。どちらが多いのですか。
「どちらもありますね。私は色んなレベルの人と練習していて、当然強い人ともやるし、逆に指導しながら(会員や生徒と)やったりもするんですね。指導している最中に『この技結構いいかも』と閃いて、それを強い人と練習する時に試す、みたいな。そういう良い流れが出来ています。だから自分の試合や練習で思いつくことが多いかもしれないです」
――プロ練以外の指導やジムの会員さんたちと練習することもプラスになるのですね。
「はい。自分は教えながらめちゃくちゃ自分のプラスになると思っています。もともと教員になりたかったので教えるのも好きですし」
――実力が拮抗した選手と練習して得るものがある一方、余裕を持って練習できるからこそ分かるものや発見もありそうですね。
「逆に私はそっちの方が技術のレベル自体は上がるんじゃないかなと思います。自分より格上の選手とやると、技術を出す・使うというよりも気持ちで戦うみたいになっちゃうんです。それよりも自分より少し下の選手を相手に色んな技術を使って、そこを高めながらぶつけるイメージで練習した方がいいですよね」
――競り合う練習と技を覚える練習は別物ですよね。
「格上の相手だと必死にやられないようにしがみついて終わるみたいなこともあるじゃないですか。もちろんそういう練習も必要だと思いますが、あくまで自分の技術を高めるためには下の選手と練習した方がいいと思います」
――伊澤選手が対戦カード発表会見で大島選手のことを下位互換だと例えていましたが、逆に伊澤選手は常に新しいスタイルで戦うことを意識していて、そういう部分で他の選手と差がつくのかなと思いました。
「毎試合、毎試合やることを変えた方が見ている人も飽きないし、何より自分自身ずっと強くなりたいんですよ。こうしてチャンピオンにはなれましたけど、アマチュアの選手やプロで勝ったり負けたりしている選手よりも、自分が一番強くなりたいという気持ちを持って練習しているなと思います」
――強くなりたいという気持ちは格闘技を始めた頃から変わらないのですね。
「変わらないどころかどんどん上がっていますね。周りの選手を見て『こんなこともできるんだ』と思うこともあるし、各分野のプロフェッショナルと関わると、やっぱりみんなその分野では強いわけじゃないですか。当たり前ですけど打撃の専門家と練習すれば打撃が強いし、寝技の専門家と練習すれば寝技が強い。だったら自分も打撃も寝技ももっと練習して上手くなりたいし、全方向にそれを広げているところです。私は自分が知らない動きに出会うのはすごく好きだし、そのために色んな人と練習したいです」
――先ほどは指導の話もお伺いしましたが、伊澤選手は選手育成を目的とした「伊澤星花チャレンジ」という企画も実施中です。色んな形で女子格闘技を盛り上げたいという気持ちもありますか。
「めちゃくちゃありますね。それこそ女子格闘技は男子格闘技と比べると競技人口も少ないし、注目度も少ないなということをチャンピオンになって改めて実感しているので。でも女子格闘技は膠着も少ないし、技術が出しやすい部分もあるんで、試合はすごく面白いんですよ。だから色んなことをして、女子格闘技を盛り上げていきたいと思っています」
――動きが止まらない・お互いアタックし続けるという部分では女子の方が上回っているところがあるかもしれません。
「力がない分、動きが出やすいと思うし、インパクトはなくても知恵の輪的な面白さを見てほしいなと思います」
――ご自身の練習、指導、伊澤星花チャレンジと、色んなことから刺激を受けているようですね。
「今は自分の練習も指導も含めて、朝から夜までずっと格闘技をやっていて、毎日刺激だらけですね」
――それだけ格闘技漬けの毎日で息詰まることはないですか。
「全然しないですね。むしろ毎日強くなっているのが分かるし、伊澤星花チャレンジでは指導する立場なのに自分が一番強くなっちゃって困っています(笑)」
――伊澤選手の周りにいる選手たちは「トップにいく人はこういうものなんだ」ということを伊澤選手から感じているんじゃないですかね。
「みんなに結構引かれていますね、『星花さん、いつ休んでるんですか』って(笑)。でも自分では『頑張っています』『一生懸命やっています』と思っていても、上に行けない選手はたくさんいると思うんですよ。それは頑張りの量が足りていないか、頑張る方向が間違っているからだと思うんですよね。人それぞれやり方はあると思いますが、自分は頑張る量と方向が正しかったからチャンピオンになれたと思うし、そういう一つの正解を間近で見てもらいたいです」
――11月に防衛戦ということで、この試合をクリアすれば大晦日に試合をする可能性も出てきます。当然そこは狙っていますか。
「もちろんです。そこまで考えての今回の試合なんで。初めて大晦日に試合をしてから4年連続で出ているので、今年も大晦日に試合をして1年を締めくくりたいです」
――もし大晦日に出ることになったとしたら、どのような試合をしたいですか。
「まずは次決まった試合に全部かけて…ですね。大島選手のことを自分の下位互換とは言っているんですけど、一発があって本当に強い選手なので。そこもしっかり対策して(大島が得意な)アームロックの対処もめちゃくちゃ練習して、圧倒的に伊澤が強かったという試合にしたいと思っています」
――大島選手の強い部分を警戒した上で圧勝するということですね。ただ今日のインタビューを聞く限り、伊澤選手がアームロックの対処をたくさん練習していたら、逆に伊澤選手の方がアームロックが得意になっているのではないですか。
「そうなんですよ。アームロックの対処を練習していたら『逆にこうやって取り返せるんじゃない?』みたいな段階まで来て、一手先・ニ手先まで閃いちゃいました。なのでぜひ大島選手にはアームロックを狙ってきてほしいし、早くそれを試合で見せたいです」
■視聴方法(予定)
11月3日(月・祝)
午前11時30分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!