【ZFN ORIZIN02】もう負けられない。チェ・ソンヒョク戦へ、河名マスト「舐められたままで終われない」
【写真】ダメージが抜け、よりスマートになった新しいマストに期待(C)TAKUMI NAKAMURA
7日(土・現地時間)、韓国はソウルのスポモチブでZFN ORIZIN02が開催され、日本から河名マストが出場しチェ・ソンヒョクと対戦する。
text by Takumi Nakamura
昨年8月のRoad to UFC準決勝でのシェ・ビン戦、12月のZFN02でのユ・ジュサン戦と2試合連続でのKO負けを喫した河名。この半年間はダメージを抜きつつ、目的別の練習メニューを取り入れて復帰戦に備えてきた。
今回のソンヒョク戦は主催者のジョン・チャンソンから直接コンタクトがあって決まったものだが、河名は「仕事があることに感謝している」と言いつつ「ソンヒョクにとってちょうどいい相手として呼ばれている」とも捉えている。日本人が狩られる場となりつつあるZFNで、現状を変えて未来を切り開くための勝利を目指す。
結局、僕のファイトスタイルで勝つためには組み伏せることが一番
――大会直前のインタビューありがとうございます(※取材は3日に行われた)。今回はいつ出発になるのですか。
「木曜日に出発です。今日は昼のプロのグラップリング練習に出て、強い選手とガチっと組む感触を確かめて、夜は軽くMMAの組む練習をして…という感じです」
――今回は2度目のZFN参戦となりますが、オファーそのものはいつ頃にあったのですか。
「4月末ぐらいですかね。ちょうど前回の試合(昨年12月のZFN02でユ・ジュサンにKO負け)も含めて2連続KO負けしたこともあったので、ダメージを抜こうと思って3カ月ぐらい休んで、6月から8月の間に試合が決まればいいと思って練習をしていたんですよ。そうしたらコリアンゾンビ(ジョン・チャンソン)から直接DMが来ました」
――チャンソン本人からの連絡だったんですね。
「はい。今年4月にZFN ORIZINの第1回大会があって、その時にも一度オファーを受けたんですよ。ただその時はまだダメージあったので『また次オファーをください』と言ったら、ちゃんとオファーくれたという感じですね」
――先ほど河名選手の言葉にもあったように前々回の試合で初のKO負けを経験し(昨年8月のRoad to UFC準決勝でシェ・ビンにKO負け)、2連続KO負けとなりました。この結果をご自身ではどのように受け止めていますか。
「自分の頑丈さを信頼しすぎたこと、シェ・ビン戦に関しては最初に自分がパンチを当てちゃったからこそ『ここからどうしよう?』という焦りと『打撃でいけるんじゃね?』というおごりが生まれて、自分の中で感情がぐちゃぐちゃになった結果、KOされてしまいました。ある種、自分のレスリングを信じられていなかったというか、自分のやるべきことを信じられていなかったことが前回と前々回のKO負けにつながったんだと思います」
――ではその反省点を活かして自分を作り直すという意味で、もう一度自分のレスリングや組を信じるところから練習を再開したのですか。
「そうですね。結局、僕のファイトスタイルで勝つためには組み伏せることが一番なんですよ。僕のスタイルは組み伏せる中にサブミッションやぶん殴ってKOするというゴールが出てくるのに、そこを勘違いしてしまいました。組み伏せる=レスリングというゴールが見えていないまま走っていたので、改めてゴールを明確にしたという感じです」
――何のために組み伏せるかという部分でぶれてしまったことが反省点だったのですね。
「はい。結局僕が『組めるのかな? どうかな?』と不安に感じながら戦っていると、自分からテイクダウンもいけないし、打撃でも太刀打ちできない。それで自分自身が中途半端になって構えそのものも崩れてしまい、それで相手の一発をもらって負けるという悪い流れができちゃっていましたね」
――ただしMMAである以上、レスリングを活かすためにも打撃をやらなければいけないし、グラウンドでコントロールするためにはサブミッションのアタックも必要です。そのバランスはどう考えていますか。
「中途半端な距離で戦わないようにすることを意識しています。相手に触れていればレスリングに近い動きになるし、相手の手の感覚も味わうことができる、中途半端な距離で打撃をもらわないように(距離を)修正しています。寝技の部分では極め技のレパートリーを増やすことですね。今も寝技のクラスには出続けているので、その中で自分に合ったものをフックして、それをプロ練のスパーリングでチャレンジするという感じです」
アマチュアの若い子たちが入ってきて、その選手たちと一緒に練習する時間が増えた
――試合間隔が約半年空いたことで自分のスタイルを修正することができましたか。
「脳をリフレッシュさせることも含めて、ですね。あとは去年から少しずつロータスにアマチュアの若い子たちが入ってきて、その選手たちと一緒に練習する時間が増えたんですよ。どうしてもプロのMMA練に出ると『組まないとやられる!』という危機感を持ってやることになるのですが、アマチュアの子と練習する時には相手の打撃をちゃんと見て組みに繋げたり、色んな目的を持って練習できるんですよね。そうやって目的別にトレーニングをすることができたんじゃないかなと思います」
――プロ練でレベルが高い相手ばかりだと競り合う・やられないための練習がメインになって、自分からアタックする練習や攻める練習は少なくなる面もあると思います。
「もちろん(プロ練で)自分はやっつけに行くんですけどやられることがあるし、そういった緊張感や恐怖感のとのせめぎ合いの練習にはなると思います。プロ練ではとにかく相手の足を触るとか早く相手に触らなきゃという気持ちが先行していたのが、アマチュアの子と練習すると相手の動きを見ることが出来るようになったというか。自分が相手に触れにいって、相手がパンチを返したところにテイクダウンを合わせたり、本当にごく当たり前のことですけど、それを改めて修正というか積み上げられたかなと思います」
――ハードにコンタクトできない時間があったからこそ出来た練習かもしれないですね。
「そうですね。突っ込まないようにちゃんとブレーキをかけるというか、ブレーキをかけるからこそ見える景色がありましたね」
――では対戦相手のソンヒョクにはどんな印象を持っていますか。
「サウスポーで右フックというか右手=前手で距離設定して、左の大砲(ストレート)や蹴りをぶち当ててくる、ザ・サウスポーという感じの選手かなと思います」
――サウスポーでも技巧派ではないハードヒッターというタイプだと思います。
「とにかく左をぶん回して当たったらKO勝ちするし、当たらなかったらやられるみたいな感じですよね」
――分かりやすいと言えば分かりやすいスタイルですが、対戦相手としては危険な武器を持った相手です。言える範囲でどんな試合をイメージしていますか。
「それこそこの半年間でやってきたことを試合で出す。相手の大砲を封じつつ、相手に触ることを意識して戦おうかなと思います。特に今回はオーソドックス×サウスポーなのでお互いの前手が当たりやすいし、そういった距離設定の部分でやってきたことが出せるんじゃないかなと思います」
――河名選手のキャリアとしては連敗からの復帰戦でもあり、ZFNで河名選手にKO勝ちしたユ・ジュサンがUFCと契約しました。色々と思うこともあると思うのですが、ここからの再起という部分に関してはどんなことを考えていますか。
「ジュサン以外にも同じ日に試合出ていた選手がUFCとダイレクトで契約したり、DWCSに繋がったりというのがあったので、今の中途半端な位置にはずっといられないなと思います。どこかで突き抜けるために、今回まずしっかりやっつけなきゃなと思います」
――河名選手はZFNがUFCと直結するイベントだということを肌で感じたわけですか。
「そうですね。直で(UFCと)契約してない選手でも、ユン・チャンミンのようにRTUに繋がった選手もいるので。これはめちゃくちゃ僕の推測なんですけど、今回のようなZFN ORIZINのような大会が続いて、年に1回~2回ペースで昨年僕が出たようなナンバーシリーズが開催されると思うので、そこに繋がるような勝ち方ができればなと思います。ZFNにこだわりはないですが、とにかくUFCに辿り着くことを考えているので、そのための近道になる場所で戦いたいです」
――チャンソン本人からDMが来てZFN参戦が決まるというのはビッグチャンスですね。
「ただ、見方を変えれば、僕の“RTU準決勝敗退”という経歴はちょうどいいと思うんですよ」
――ちょうどいい、ですか。
「これからZFNでUFCを目指す選手にとって僕はちょうどいい指標であり、かませ犬的な扱いですよね。ある程度の実績があってダメージも溜まってきていて……そういう意味で呼びやすい相手なんだと思います(苦笑)。仕事があることに感謝する一方、舐められたままで終われないという気持ちもあるし、ソンヒョクにとってちょうどいい相手として呼ばれている自覚を持って戦わなきゃいけないと思っています」
――もちろんそういった評価や声をひっくり返すつもりですよね。
「逆にここでちゃんと勝つことで継続参戦できると思うし、結果を出すことでプロモーターとの信頼関係も生まれると思います。そういう意味でもZFNに呼んで仕事をくれたことに感謝しながらぶっ飛ばしたいなと思います」
――今年のRTUは日本人の苦戦が目立つ結果となりました。河名選手はRTU以外のルートでUFCを目指していますが、この現状をどう捉えていますか。
「国単位で考えると、韓国の選手はめちゃくちゃ練習量が多くて基礎体力があると思うし、中国にはUFC PIがあって食事面もサポートされて強くなる環境がある。日本の格闘家はそこまでお金があるわけじゃないし、UFCを目指そうと言ってもトレーニングに集中・全振りできる選手は少ないと思います。ただその分精神的にハングリーになれるわけだし、例えば米国で喧嘩自慢の人間がジムに来てプロを目指して必死に頑張るというのと変わらないと思うんですよ。
結局その人間がどうなりたいかで環境も変わるし、やるやつはどんな状況でもやる。そして試合では勝たなければ意味がないし、結局はやることをやる、勝ち続けるしかないんだと思います」
――それでは最後に日本から応援してくれる人たちにメッセージをいただけますか。
「先週土曜日は韓国でRIZINがありましたが、今週僕は1人で韓国で戦ってきます。是非こういうやつがいるんだ!?という意味でも僕の試合を見届けてください」
■視聴方法(予定)
6月7日(土・日本時間)
午後4時00分~ZFN オフィシャルYouTubeチャンネル