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【RIZIN WS01】キム・スーチョルと13年ぶりの対戦、佐藤将光「昔話でもしようやと、ど突き合いたい」

【写真】地に足がついた個性。佐藤の魅力だ (C)TAKUMI NAKAMURA

31日(土・現地時間)、韓国はインチョンのパラダイスシティにおいてRIZIN WORLD SERIES in KOREAが開催され、佐藤将光がキム・ス―チョルと対戦する。
Text by Takumi Nakamura

佐藤とスーチョルは2012年6月に韓国Road FCのバンタム級王座決定トーナメント補欠戦で対戦。本戦=3Rは佐藤が優位に試合を進めるも、試合は延長戦へ。スーチョルのヒザ蹴りで佐藤が顔面をカットし、ドクターストップでスーチョルに軍配が挙がった。

あれから約13年の時を経て、RIZIN韓国大会で再び拳を交えることになった両者。佐藤はスーチョル戦の感慨深さと共に「目の前の試合を楽しみ切るだけ」と話し「ちょっと昔話でもしようやという感じで、ゆっくりど突き合いたいです」と佐藤独特の表現で試合前の心境を語ってくれた。


RIZINに参戦する時、ぼんやりとどこかでスーチョル戦のオファーが来るだろうなとは思っていました

取材があった日の合同練習会で、ファンの質問に答える形で三角絞めをレクチャーした佐藤

――韓国大会まで一週間となりました(※取材日は24日に行われた)。

FightBase都立大の代表として所属選手のセコンドにつく姿を見ることも多い佐藤選手ですが、仕上がりはいかがですか。

「今週に入ってから試合のイメージが固まってきましたね。試合になった時にびっくりすることはないだろうな、みたいな。そういう感覚が掴めてきました。ぼんやりしたものがちょっとずつ形になっていく感じがしています」

――それは何か理由があるのですか。

「試合の3週間前ぐらいからリバーサルジム横浜グランドスラムの髙城(光弘)くんにお願いして、スーチョルの映像を見てもらったうえで、仮想スーチョルとして月・火・水でスパーリングに付き合ってもらっているんですよ。今回スーチョルのように突っ込んでくるタイプが周りにいなくて、ちょっとイメージが掴みづらかったんです。

それで髙城くんにスパーリングパートナーをお願いしたんですけど、高城くんとスパーリングを始めた1週目は全然上手くいかなかったんです。それが2週目から段々と感覚が掴めてきて、3週目に入ってこれで多分上手く行くだろうなというのが見えてきた感じですね」

――いつもだったら普段練習しているメンバーから仮想対戦相手を見つけて、そこでイメージを作っていくのですか。

「はい。練習相手に(対戦相手に)動きを寄せてもらったり、色々とお願いしてやっています。前回牛久(絢太郎)くんとやった時も武田(光司)くんに動きを寄せてもらって、セコンドにもついてもらいました」

――試合まで2週間を切ったタイミングで試合のイメージが掴めるというのは時間がかかった方ですか。

「時間はかかったかもしれないですけど……スーチョルはタイプが変わっているので、そういう意味で遅い気がしますね。いつもは試合映像を見た時点で、ぼんやりイメージができてくるんですけど、今回はちょっとそれが難しかったです」

――スパーリングパートナーとして髙城選手を選んだのは、髙城選手とスーチョルに共通点を感じからですか。

「そうですね。髙城くんはスイッチもするし、ガードに乗っかるところも結構近いかな。組み際の削りも髙城くんは上手いし、ヒジやヒザも出せる。体格や身長もだいたい同じような感じなんで、僕の周りでは一番ス―チョルに近いのが髙城くんかなと思いました」

――それだけスーチョルのファイトスタイルが彼独自のものという捉え方をしているようですね。

「そうですね。スーチョルはオリジナル、そういう選手だと思います」

――スーチョルとは13年前の2012年6月にRoad FCで対戦していて、延長ラウンドでTKO負けしています。あの試合以降のスーチョルにの印象は?

「キャリアを重ねてどんどんアグレッシブになっていますよね。僕とやった頃のスーチョルは試合中に積極性が垣間見えることはあっても、今みたいな感じではなかったんです。今よりももう少し臆病に戦っていて、今はネジが外れているぐらい行ききれる選手になったと思います」

――キャリアを重ねてアグレッシブになるというのは珍しいですね。

「多分自分のことを信じきっているんだと思います。自分で自分を洗脳しているというか。そういう感じがします」

――このタイミングでスーチョルと戦うことになって、オファーを受けた時は不思議な感覚もありましたか。

「RIZINに参戦する時、ぼんやりとどこかでスーチョル戦のオファーが来るだろうなとは思っていました。ただ年末のRoad FCのトーナメントの決勝戦が再戦になると聞いていて、スーチョルは先にそっちの試合が決まると思っていたんです。(※スーチョルは年末にRoad FCの決勝でヤン・ジヨンと対戦。試合はバッティングによりノーコンテストとなり、2025年への延期が発表されていた)だからしばらくスーチョル戦はないだろうなと思っていたらオファーがあったので少し驚きましたね」

リベンジに燃えているというよりは新たな気持ちで戦う

――佐藤選手にとってはリベンジマッチですが、リベンジという意識が強いのか。それとも試合間隔が空いているので新しい気持ちでの戦いなのか。どちらでしょうか。

「どちらかと言うと後者ですね。自分は過去に石橋(佳大)さんとかギロチン(齊藤曜)選手と再戦しているんですけど、あの時は1年以内のスパンでの再戦だったんです。でも今回は10年以上空いているから、リベンジに燃えているというよりは新たな気持ちで戦う、ですね」

――そういう意味でも過去に肌を合わせた感覚を思い出すというより、新たに対策を練り直してイメージを作っているんですね。

「はい。13年前の試合も1回見ましたけど、そのあとに何回も見るということはなかったです。それよりも彼の最近の試合を割と多く見ていましたね」

――RIZINでは去年9月に井上直樹選手にKO負けしていますが、スーチョルの実力をどう分析していますか。

「めちゃめちゃ強い選手ですよ。フィニッシュに向けてずっと動き続ける選手は怖さがあるので嫌な相手ですよね。彼が負けるとしたら、完全に意識を飛ばされて戦えない状態にならない限りは、最後まで倒しに来る選手だと思います。自分からポイントを取っているから相手の攻撃を凌いで流すみたいな姿は見たことないですね」

試合はセッションみたいなもの

――佐藤選手はそういった相手と戦うことにスリルを感じますか。

「めちゃくちゃ緊張感があります。ゲームをしてくれる選手の方が怖さはないですよね」

――冒頭の話にもあったようにスーチョル攻略法が見えてきていますか。

「と、思うんですけどね。でもそれはやってみないと(分からない)。いざ向かい合ったら思ったより距離が違うかもしれないし、テイクダウンに来ると思ったら来ないかもしれないし、逆に距離を置いてくるかもしれない。実際に牛久くんとやった時も、テイクダウンを狙ってくると思っていたら打撃で来て。あとで聞いたら打撃でいく作戦だったと言っていたので、そういうこともありますよね」

――ただ想定外のことが起こった場合の対応力は佐藤選手も自信があるところだと思います。

ジャムセッションに対応するには、それだけ引き出しの多さが必要になる

「そうですね。

だから試合はセッションみたいなものですよ。ある程度自分に引き出しがあれば、合わせられると言えば合わせられる。時には相手に飲み込まれることもありますけど、その辺りが試合の面白さですよね」

――対戦相手の対策を練る一方、自分の技の引き出しを増やすという意味ではどんなこと練習しているのですか。

「今回は結構早いタイミングで試合が決まりましたが、最初のうちはぼんやり対戦相手をイメージして自由に練習します。そこから試合が近づくにつれて対策練習がメインになって、こういう時はこうなりそうとか、それぞれのシチュエーションにおける問題点を解決しておくとか、そういう練習に走る感じですね。普段試合がない時はもうちょっと遊び心を持って新しい技を取り入れたり、前回の試合で出た課題点を修正したり。

あとは練習仲間の試合が決まって相手の真似をしていると、その動きが得意になることがあるんですよ。例えば相手がギロチンが得意な選手だとすると、自然とギロチンを真似するじゃないですか。それで研究していくうちに、こうやって極めているんだというのが見えてきて、自分が得意になることがありますね」

――今回のスーチョル戦以降、佐藤選手はどんな展望を考えていますか。

「展望……ないなぁ。目の前の試合を楽しみ切るっていうだけで」

――ファン目線で言うとバンタム級戦線の行方を占う一戦として注目されていると思います。

「そうですね。ちょうど試合前だから先のことを考えられないのかもしれないですけど、今はこの試合に集中しないといけないなと思いますね。ここで勝たないと何も始まらないし、負けたら今後どうなるんだろうなと思うし。先のことを考えてもしょうがないので、それを考えるより今に集中しています」

――今回の試合は昔からMMAを見てきた人間からすると、非常に感じるものがある試合です。

「一部の人にはめっちゃ刺さる試合ですよね」

――まさに僕は“一部の人”側なんですけど(笑)、ここまで長くMMAを続けている選手そのものが少ないし、紆余曲折ありながらもそれぞれの団体でトップ戦線に居続ける選手は数が少ないと思います。そういう選手がこのタイミングで13年ぶりにリマッチするというのは感慨深いです。

「カード発表会見でも『お互いの信じた道を突き進んで、ここで戦えることに感謝して、その気持ちをぶつけたい』と喋らせてもらいましたが、本当に僕も感慨深いなと思います」

――試合としてもお互いの総力戦でどんな駆け引きがあるのか楽しみにしています。

「おそらく駆け引きするのは僕の方で、彼は彼のすべてをぶつけに来ると思います。それを僕がどう捌くか、それとも受け止められるのかどうか。出来れば長く戦って、お互い身につけたものや今まで作ってきたものをちゃんと出し合いたいです。出会い頭の一発で終わっちゃうのは悲しい気がするので。ちょっと昔話でもしようやという感じで、ゆっくりど突き合いたいですね」


■RIZIN WS KORE視聴方法(予定)
5月31日(日)
午後2時~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

■RIZIN WS01対戦カード

<ライト/5分3R>
キ・ウォンビン(韓国)
ホベルト・サトシ・ソウザ(ブラジル)

<バンタム級/5分3R>
キム・スーチョル(韓国)
佐藤将光(日本)

<ライト級/5分3R>
大原樹理(日本)
ジョニー・ケース(米国)

<女子スーパーアトム級/5分3R>
シン・ユリ(韓国)
ケイト・ロータス(日本)

<ライト級/5分3R>
キム・シウォン(韓国)
宇佐美正パトリック(日本)

<バンタム級/5分3R>
ヤン・ジヨン(韓国)
金太郎(日本)

<フェザー級/5分3R>
ジ・ヒョクミン(韓国)
武田光司(日本)

<フェザー級/5分3R>
ソン・ヨンジェ(韓国)
中原由貴(日本)

<63キロ契約/5分3R>
クォン・ヨンチョル(韓国)
三浦孝太(日本)

<キック67.5キロ契約/3分3R>
ジョ・サンへ(韓国)
宇佐美秀メイソン(日本)

<キック62キロ契約/3分3R>
カン・ボムジュン(韓国)
井上聖矢(日本)

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