【RIZIN OTOKOMATSURI】今年42歳、東京ドームで6年振りのMMA。上田貴央「ドッキリだと思った」
【写真】この間のグッドシェイプは、バルクアップ(C)TAKAO UEDA
明日4日(日)に東京都文京区の東京ドームで開催されるRIZIN男祭りのオープニングファイトで、上田貴央がヴィニシウスと戦う。
text by Manabu Takashima
6月に42歳になる上田にとって、2019年5月以来、6年ぶりのファイトが東京ドームのRIZINとなった。なぜ、自分にオファーがあったのかを理解し、その上で信頼できる面々の後押しを受けてリングに戻る気持ちを固めた。
当日にはセコンドも控えているなかでの試合出場は、批判もされる。ただし上田は世間一般でも、格闘技界の住民でもなく、自身の身近にいる仲間のために実戦の舞台に戻る。
追い込み練習をするとマイナスになる。腕の筋肉は見せ物で、1分半で上がらなくなる等々、現実を受け入れたうえで勝機があるという上田。その勝機を見出すMMA眼は、チームの面々を支える日々によって養われた。
──凡そ6年ぶりのMMAがショートノーティス出場のRIZIN、東京ドームという特殊すぎる状況の上田さんです。
「ハイ。ここで試合をするかということに関しては3週間前ほどに話が来ました。あの時点で発表されたカードで、チケットを買っていない人達にチケットを売る。試合が発表されている選手とファンが被らない、そんな変化球を投げる必要があるなかで声が掛かった。そういうことだと理解しています。
その話がマネージャーから、うちの選手や親しい人のグループLINEに来た時、『68キロ契約です』というメッセージを見てドッキリだと思ったんです(笑)」
──アハハハハ。
「でも相手の出場が決まって、体重が合う選手を探していて僕の名前が挙がったと。あの時、皆に反対されると思ったのですが、(鈴木)隼人君や(渡辺)華奈をはじめメンバーが『やろう』、『出よう』とお祭り騒ぎになって。格闘技界の大きな世界観だとか、そういうことはなしに僕にとって一番近くて大事にしてきたメンバー全員が『出た方が良い』と喜んでくれた。それは僕がやって来たことが肯定されたということだったので」
──つまりメンバーは、上田さんは試合ができると判断していると。
「そう思ってくれていると思います。隼人君が相手の試合映像をすぐチェックして『勝ち筋がある』と言ってくれたんです。殴られて負ける可能性もあるけど、上手く戦えるルートがあると。僕も映像を見て、そう思いました。だから罠にハメれば勝てると思っています。
でも3週間しかないから、細かいことはできないし大恥をかくことになるかもしれない。『お前、目立ちたくて出てきやがって』と言われるかもしれない。それでも、僕の一番大切なメンバーが賛成してくれた。それは僕の人生に〇をつけてもらったと思ったので、皆が喜んでくれる選択をしました」
──実は2日前に大脇征吾選手の取材でグランドスラム横浜を訪れた際に、勝村周一朗代表との雑談中に「上田さんの取材をしたいけど、仕事が立て込んでいて厳しくて」と話しました(※取材は1日に行われた)。すると勝村代表が「絶対にやってあげてください。アイツは誤解されている部分もあるけど、本当に選手想いなヤツなんで」と懸命にプッシュしてくれて。あの激熱な言葉に後押しされ、インタビューをお願いしようと思い直しました。
「ありがとうございます。勝村さんにそう言ってもらえるって、本当に生き方を肯定してもらったことになります。勝村さんも自分の大切な仲間のためにチームを創ってやってきた人で。あの人みたいになりたくて、僕もやってきたので。
それが本当にメンバーに応援してもらった部分と同じで。試合が決まれば、そこから『ジムの宣伝になるな』とか打算的な気持ちは出てきましたけどね(笑)」
──ハハハハ。当然です。
「僕は今回、試合をします。勝っても負けても、そのあとに田丸(辰)君、冨沢大智をサポートする。それが僕の一番やりたいことです。試合をして、セコンドをすることに批判もあると思います。試合をしても、選手のことをしっかりとケアをする。それができると、ちゃんと見せたいです。
ただ神龍(誠)に関しては、ずっと一緒にいてくれる人が必要なので。今回はセコンドから外れます。ウォーミングアップまで一緒にやって」
──その気持ちがあるなかで、試合に向けて動き始めて「以前とは違う」と感じたことは? そもそもフライ級だった体も今は全く違うわけで。戦うための体とシェイプの体は違うと思います。
「追い込み練習をしたら、負ける。この短期間に全てのプロ練習に参加して、体を酷使すると勝つ確率は落ちる。そう思いました。体はもう見た目だけ。カッティングもトレーナーです。ファイターでなくて(笑)」
──見た目だけ……。そこを避けた表現をしたつもりだったのですが(笑)。
「アハハハハハ。それなりのモノには見えるでしょう。でも隼人君も言っていたけど『1分半で腕がパンパンになって動かなくなる』って。それは自分でも分かっています。それなのに追い込んで、あの頃に近づこうとすると体が壊れてマイナスなるだけ。それは初日で分かりました。
なので今回は追い込まない。完全にズルい手だけで戦う。自分は弱いんだと認めて、抗わない。今の手持ちの装備だけで勝つにはどうするのか。そこを徹底する。どれだけダサくても、手持ちの武器だけでゲリラ戦をするしかないです」
──そして勝算は?
「あります。今の僕でも制限速度を設けると、トップファイターともスパーができます。ただ、練習は速度制限があっても試合は無制限ですからね。そうなると勝てるわけがない。なので、速度制限のあるゲームをどれだけ実行できるかです」
──多くの選手の戦略を立てる今の日々が、本人の試合にも生きてくるということでしょうか。
「100パーセント、それです。現役時代の10倍ぐらい、できることが増えています。ただし、速度はあの頃より劣るので戦い方も当時とは全く違うモノになります。僕、実は渡部修斗に誘われてコンバットレスリングの試合に出て、当時ONEで戦っていた選手から腕十字を取れたんです(笑)。
75キロ契約でも、引っかけて取ることができました。フィジカルで全く敵わなくても、取ることもできる。その感覚は実戦で得ることができたので。ただ打撃に関しては、ガードの上からでももらうと倒れると思います。シャットダウンです」
──という怖い話を楽しそうにしていますね。
「自分に期待していなので。勝っても、負けてもこれで終わり。過去28戦とは、全く違う感覚で試合を戦うことになると思います。その感覚を楽しみたいですね」
──そんな東京ドームがあるのも、悪くないですよね。
「逆にさいたまスーパーアリーナ、後楽園ホールでもチケットがソールドアウトなら、この機会はなかったです(笑)」
──SNSでボロクソに言われることが多い上田さんだからこそ、痛快です。
「アハハハハハ。何を言われても、自分が大切な人たちを信頼しているので大丈夫です」
──分かります。そこは本当に。逆に今の世の中を生き抜く上で真理かと思います。そんななか敢えて聞かせてください。渡辺華奈選手の普段の様子はどのような感じでしょうか。
「凄く慮ってくれています。自分の試合の時は、そんなことないのにナーバスになって『吐きそう』って言っていますね。僕の試合のことを考えると緊張して、怖くて、吐き気がするそうです」
──そんな渡辺選手も含め、大切な仲間に何を見せたいですか。
「僕が格闘技をやってきた人間。向き合ってきた人間だと見てもらって、皆の代表はコレを一生懸命やれる人間なんだよと伝えたいですね。格闘技の深さ……僕が偉そうに言えないですけど、格闘技はパワーだけじゃない。弱くても勝てる。矛盾しているかもしれないけど、5月4日は僕の方が弱いけど、勝ちます。僕の方が弱いけど勝てるということを見せることができれば、皆だって勝てる。それがMMAの一番の魅力だから」
■視聴方法(予定)
5月4日(日)
午前11時30分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!
■RIZIN OTOKOMATSURI 対戦カード
<RIZINフェザー級選手権試合/5分3R>
[王者]クレベル・コイケ(ブラジル)
[挑戦者]ラジャブアリ・シェイドラエフ(キルギス)
<フェザー級/5分3R>
朝倉未来(日本)
鈴木千裕(日本)
<フェザー級/5分3R>
高木凌(日本)
秋元強真(日本)
<フェザー級/5分3R>
萩原京平(日本)
西谷大成(日本)
<RIZINワールドGPヘビー級T一回戦/5分3R>
上田幹雄(日本)
シビサイ頌真(日本)
<RIZINワールドGPヘビー級T一回戦/5分3R>
スダリオ剛(日本)
ジョゼ・アウグスト(ブラジル)
<RIZINワールドGPヘビー級T一回戦/5分3R>
マレク・サモチュク(ポーランド)
ダニエル・ジェームス(米国)
<RIZINスタンディングバウト特別ルール 98キロ契約/3分3R>
皇治(日本)
シナ・カリミアン(イラン)
<59キロ契約/5分3R>
神龍誠(日本)
伊藤裕樹(日本)
<ライト級/5分3R>
中村大介(日本)
桜庭大世(日本)
<バンタム級/5分3R>
ダニー・サバテロ(米国)
太田忍(日本)
<フライ級/5分3R>
ヒロヤ(日本)
篠塚辰樹(日本)
<フライ級/5分3R>
ジョン・ドッドソン(米国)
征矢貴(日本)
<キック 63キロ契約/3分3R>
朝久泰央(日本)
ウザ強ヨシヤ(日本)
<フライ級/5分3R>
山本アーセン(日本)
冨澤大智(日本)
<フライ級/5分3R>
平本丈(日本)
田丸辰(日本)
<75キロ契約/5分2R>
佐々木大(日本)
中谷優我(日本)
<フェザー級/5分2R>
上田貴央(日本)
ヴィニシウス(ブラジル)
<キック 57.5キロ契約/3分3R>
赤平大治(日本)
橋本楓汰(日本)