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【RIZIN OTOKOMATSURI】ダニー・サバテロ、RIZIN初陣を振り返る「RIZINの美しいベルトが欲しい」

【写真】実は可愛らしい系の目をしているサバテロに、シンボライズといえるサングラスを外してスクショを撮らせてほしいとリクエストすると二つ返事で了承をしてくれた(C)MMAPLANET

4日(日)に東京都文京区の東京ドームで開催されたRIZIN男祭りで、RIZINルール初挑戦となったダニー・サバテロが太田忍を3R TKOで下した
text by Manabu Takashima

(C)RIZIN FF

そのサバテロ。

イタリアンギャグスターの異名を持ち、対戦相手をこき下ろすトラッシュトーカーとして有名だ。太田戦でも試合前から得意の口撃で優位に立っていたサバテロは、レスリング対決となるかと思われた勝負で、打撃で太田を圧倒した。最後はダブルレッグを切り返し、太田が頭からキャンバスに突っ込み気を失いかけたところでパウンドの追い打ちをかけてTKO勝ちと強いインパクトを残した。

そのサバテロ、試合後のポストファイト・インタビューではアグレッシブな言動も聞かれたものの質問を一つ一つ丁寧に回答し続け、「実はめっちゃ良いヤツじゃないか」という評判がメディアの間で囁かれるようになった。

衝撃的──と表現して良いRIZIN初陣から2週間(※取材は17日(土)に行われた)。改めてインタビューを敢行すると、プロフェッショナルMMAファイターではなく人間ダニー・サバテロとしての言葉が多く聞かれた。


アリーナのファン皆とハイファイブをしたかったよ

──男祭りの会見後、メディアルームでは「サバテロ。凄く良いヤツ」という会話が記者の間でなされていました。試合前のトラッシュトーカーぶりとは違う、人間性があふれ出るコメントが多くて。

「試合前は対戦相手のことをボロクソに言う。なぜなら、俺の夢を潰すために立ち塞がろうとしている相手だからだ。そういう相手に勝つには、憎しみを持つことも必要になる。それぐらいの気持ちでないと、勝負だからね。でも、試合が終わればそういう感情を持たなくてよくなる。今回もそうだ。試合が終わった直後から、シノブ・オオタに対して尊敬の念を抱くようになっていた。もう敵意を抱いたり、憎む必要はない。そういう感情が燃え上がるのは、試合前だけだから。試合が終われば、脳みその構造が変わったみたいに対戦相手をリスペクトするようになるんだよ」

──では、改めてRIZINという舞台での初勝利。どのように捉えていますか。

「世界中のどの団体だろうが、あれほど素晴らしいイベントを目にしたことがない。東京ドームの夜に経験したことはファイターだけでなく、あの場にいた皆にとってスペシャルなモノだったはずだ。素晴らしいファイトに、素晴らしいファン。俺もスーパースターのようなデビューができた。最高の夜で、今もまだ余韻に浸っているよ。早く次の試合が決まってほしいという想いがある一方で、あの雰囲気にまだ酔っていたいと思ってしまう。RIZINが世界で一番のショーを開き、そのなかで俺も自分の能力、世界のトップであることを見せることができた。やるべきことをやり……夢が現実になったよ。

ファイトウィークもファイターが試合に集中できるように、全てがスムーズだった。対戦相手をぶっ飛ばすという使命を持って日本に行ったけど、新しい環境に慣れようと思って過ごしていた。試合に勝つための環境をRIZINはしっかりと与えてくれた。61キロは134.4ポンドで、俺がこれまで戦ってきた136ポンドとも違っていた。この差が、どんな影響を与えるかは分からなかった。ただ1ポンド以上の違いがあったけど、絶対に計量失敗だけはしたくなかったんだ。これまでのMMAキャリア、レスリング・キャリアと同様にね。

より体重を落とさないといけないことも、モチベーションにした。この素晴らしいショーに、体重オーバーという汚点を残してはいけないって。そして五輪シルバーメダリストという日本のヒーローに勝てた。レベルの高い、最高の試合で勝てて最高だったよ。

試合後には控室に戻るまでファンとハイファイブを続けた。本音を言えば、アリーナのファン皆とハイファイブをしたかったよ。もちろんそんなことはできないけど、皆の気持ちが俺には届いていた。イベント後もファンからハグをされ、サインと記念撮影を頼まれ続けた。俺はこれまで「ファッ〇ユー」と叫んでくるような連中のことは、こっちもファッ〇ユーと言い返して嫌ってきたんだけど、あんなに日本のファンが応援してくれていると思ってもいなかった。日本では可能な限り、ファンのリクエストに応えたつもりだ」

──ところで打撃で試合を支配するという意外な流れとなりましたが、太田戦のゲームプランはもともとどのように考えていたのですか。

(C)RIZIN FF

「ゲームプランはシンプルだったよ。

ゴングが鳴れば、ぶん殴る。その通りになった。皆、俺のことをレスラー、ベストグラップラーでベストMMAレスラーだと思っていたはずだ。

でもRIZINという場で戦うには、それでは十分でないことは分かっている。もっとファンをエキサイトさせたい。あれだけのファンの前で、退屈な試合はできない。倒す勢いを持ち続けて戦うこと。それも思っていた通りになった。

(C)RIZIN FF

ただ俺は五輪シルバーメダリストを相手にしても、テイクダウンを奪えることは証明しておきたかった。

だから1Rの序盤にテイクダウンしたんだ。あれで俺の方が優れたレスラーだと示すことができた。結果的に、その後の試合展開から、どの局面でも俺が上回っていることは分かってもらえただろう」

五輪シルバーメダリスト・レスラーが、俺が練習仲間との毎日の練習で磨き上げてきたテクニックの餌食になったんだよ

──太田選手はポストファイト・インタビューで「レスリング勝負をしたくないから、距離を取って打撃で来た。それが意外だった」と言っていました。

「シノブ・オオタとレスリングがしたくないのではなく、レスリングでも上を行って打撃で戦った。あのままテイクダウンを狙い続けると、何度でもテイクダウンを奪えた。グラップリングでも、ストライキングでも俺のペースで試合を進めることはできた。

運動量を落とさず、MMAにおいて最高のスタミナを持つからこそデキる戦いをしようと思っていたんだ。その通りになった。テイクダウンも見せたし、打撃でも圧倒した。3Rはフィニッシュする前から、彼はダメージが蓄積していた。この勝利で、タイトルショットに近づくことになればと思っている」

──これも試合直後のコメントなので、映像をチェックしたら意見が違うことは十分に考えられますが、太田選手からは「最後は自爆。まだ戦えた」という言葉も聞かれました。

(C)RIZIN FF

「試合直後で、アドレナリンも分泌し続けていたに違いない。

試合内容も覚えていないはずだ。映像をチェックして、如何に負けたか分かっただろう。あのフィニッシュは自爆じゃない。俺のテクニックだ。五輪シルバーメダリストが、テイクダウンを狙って自分から頭を突っ込んでノックアウトされるなんてないだろう(笑)。レスリングを始めたばかりの素人じゃないんだから。

五輪シルバーメダリスト・レスラーが、俺が練習仲間との毎日の練習で磨き上げてきたテクニックの餌食になったんだよ。ただのスラムでなく、トリッキーな技術だ。肩に抱えられた状態で、腰を肩からずらして相手の足をツイストする。腰が肩から離れてないと、彼が頭から突っ込んでいたとしてもあんな風に思い切りぶつけることはない。

彼の耳は俺の腰の辺りにあったからずらした。足を捻って、俺の腰を先にマットにつかないように仕向けたからこそ、あんな風に頭をぶつけたんだよ。もう意識が飛んでいたよ。スピードがあったから、思い切り突っ込んでいった。あのスピードがなくても、あれは頭から落ちる技術なんだ。多くの人が、まだMMAでは見たことがないテクニックを俺は習得している。シノブ・オオタがあの状態で戦えていたら、レフェリーは試合を止めなかった。そうなっていれば、俺はもっと殴れば良かっただけさ」

──ダニーの専売特許ですから、詳しくは聞かないのがマナーだと思います。

「ありがとう」

ファンクロール・イン・エアー、俺はそういうグラップリングの技術をファンにもっと披露していきたい

──ただ一つだけ。あの動き、あの理屈、メカニズムは倒された瞬間に仕掛けるファンクロールを空中で仕掛けたということでしょうか。

(C)RIZIN FF

「そうだ。

レスリングではあんな風に肩に担ぐというシーンは多くない。でも、あのテクニックはファンクロールだ。テイクダウンをされた時に、相手の足をツイストする。それと同じ理屈だからね。それを空中で仕掛けた。どれだけの勢いで頭から突っ込んでいくのかは、俺でなく仕掛けた方次第なんだ」

──太田選手が頭を打つことを回避していたとしても、ダニーは上を取っていたのでしょうね。

(C)RIZIN FF

「まさに、その通りだ。

参ったな、そこまで正確にあの攻防が理解できるなんて。だから、日本は最高だよ。本当にMMAを分かっている。あそこで彼がダメージを受けていなくても、俺がトップを取って殴っていた」

──DJの腕十字もそうですが、ダニーのファンクロールもグラウンドで仕掛ける技を空中で仕掛けた。そのクリエイティブさ、そして精度を高めるための練習量を想像すると本当に脱帽モノです。

「あのハイレベルなスキル、動きは多くの人が理解できなくても、ハイライトリールになる。DJのアームバーもそういう動きだ。ファンが理解できなくても、構わない。MMAってそういうモノなんだ。ほんと、分かっていなくてもエキサイトできる。それでもアクシデントだと思うファンが大半だろうから、もう少しテクニックを理解してもらえたらなとは思うけど……。ファンクロール・イン・エアー、俺はそういうグラップリングの技術をファンにもっと披露していきたいんだよ」

──そんな話を訊いていると、打撃戦にならなくてもテイクダウンからスクランブルやグラウンド戦ももっと見たかったと思ってしまいます。もちろん、あそこまで打撃で圧倒していればその必要はなかったのですが。

「まだ、RIZINでの戦いは始まったばかりだ。俺が如何にグラウンドで強いかはこれから見てもらうよ。技術的にもそうだし、グラウンドの攻防でファンに喜んでもらえる自信も当然持っている。それもRIZINルールだから可能になるんだ。グラウンドでのヒザ蹴り、サッカーボールキックをベスト・グラップラーが使いこなせば、どれほどエキサイティングなファイトになるのか。最高にエキサイティングなファイトを日本のファンに見てもらうことになるだろう。

寝技でヒザを対戦相手に叩き込むだけでなく、柔術で仕留めることもできる。スタンドでも戦えるし、ハイレベルなグラップリングを見せることもできる。最終的には世界で最高のMMAを披露することになる。相手がナオキ・イノウエになろうが、俺がバンタム級最高のファイターであることをどの局面でも見せていく。まだRIZINでは1試合しか戦っていないのだから、現時点では何も見せていないのと同じだよ」

──今、RIZINバンタム級チャンピオンの名前が聞かれましたがタイトル戦、タイトル戦でなかろうと次の試合が楽しみです。

「俺は毎日だろうが、戦っていたい気質なんだ。ケガをしていようが、ケガがなかろうがいつも戦っていたい。可能な限り、すぐにでも試合がしたい。もちろん、ナオキ・イノウエと戦う準備はできている。RIZINの美しいベルトが欲しいから、ホントぶっ飛ばしてやるよ。RIZINとサインをする前から、ナオキ・イノウエと戦いたいと思っていたんだ。

この前の勝利、試合内容でタイトルに挑戦する資格はあると思う。ただRIZINがタイトル戦を用意しないなら、それでも構わない。誰と戦いたいとか、誰かと戦わないといけないとか、そんな相手はいない。ただタイトル挑戦の機会を得ることができるまで、RIZINが用意した相手を1人ずつ倒していく。順番を守れというなら、従う。今ナオキと戦っても、俺が全ての局面で上回っている。どっちの手持ちの札が多いか、テーブルに並べてハッキリさせようじゃないか」


■RIZIN WS KORE視聴方法(予定)
5月31日(日)
午後2時~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

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