【ONE172】日本VS世界だけじゃない!世界VS世界=スーパーレック×アナン、ディベラ×サムエーにも注目
【写真】スーパーレックとナビル・アナンのONEムエタイ世界バンタム級王座統一戦。改めてこのビッグマッチを日本で見られることは貴重だ(C)TAKUMI NAKAMURA
23日(日)に埼玉県さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで開催されるONE172「TAKERUTAKERU VS RODTANG」。日本のトップ選手が世界の強豪に挑むカードが並ぶ今大会だが、外国人対決でも注目のカードが組まれている。
text by Takumi Nakamura
MMAPLANETではスーパーレック・キアトモ―9×ナビル・アナンのONEムエタイ世界バンタム級王座統一戦、ジョナサン・ディベラ×サムエー・ガイヤーンハーダオのONEキック世界ストロー級暫定王座決定戦にも注目したい。
昨年1月のONE日本大会で武尊とのフルラウンドに及ぶ激闘を制し、日本でも一躍名を馳せたスーパーレック。武尊戦は自身が保持するONEキックボクシング世界フライ級王座の防衛戦だったため、日本のファンにとってはスーパーレック=キック王者のイメージが強いかもしれないが、武尊戦以前の13戦の内訳はムエタイが9戦、キックが4戦とムエタイでの試合の方が多い。
武尊戦後の最初の試合=昨年6月のゴントーラニー・ソー・ソンマイ戦もムエタイルールで行われ、同年9月のONEデンバー大会(ONE168)ではジョナサン・ハガティーの持つONEムエタイ世界バンタム級王座に挑戦。右のヒジ打ち一発でハガティーをKOし、ムエタイでは一階級上のタイトルを獲得している。
スーパーレック自身が「ムエタイルールでは自分の本来のスタイルを見せることが出来る」と語っているように、ヒジと首相撲が解禁されたムエタイルールこそスーパーレックの真の実力が発揮できると言っても過言ではない。
しかし対戦相手のアナンも一筋縄ではいかない相手だ。タイ・パタヤ出身、フランス系アルジェリア人の父とタイ人の母の間に生まれたアナンは、WBCムエタイの世界王座獲得後の2023年6月からONEに参戦。ONEではフライ級~バンタム級と60kg台で試合をしているアナンだが、身長195㎝、リーチ200㎝という規格外のリーチと体格を誇る。
ONEではロングリーチを生かしたパンチとヒザ蹴りを駆使するファイトスタイルで勝ち星を積み上げ、今年1月のニコ・カリロ戦ではカリロを3ノックダウンで下し、ONEムエタイ世界バンタム級暫定王座に就いた。
スーパーレックとアナンはアナンのONEデビュー戦=2023年6月に対戦している。この時は24㎝の身長差がありながら、スーパーレックがアナンのジャブをブロックして右ローを返して前進。右ローをフェイントにした右のボディストレートを効かせると、一気にアナンをロープまで後退させて右ボディストレートから顔面への右フックでアナンをなぎ倒した。
初対戦ではスーパーレックのローとボディで下から崩す作戦がずばり当たった形だが、その後のアナンの戦いぶりを見るとジャブの精度と威力が増し、そこからのヒザ蹴りへの移行も非常にスムーズになっている。アナンが暫定王座を獲得したカリロ戦ではカリロの右ローを足を引いてかわす・ワンツーを合わせるといった対処を見せつつ、鋭いワンツーでダウンを奪うと、パンチとヒザ蹴りの連打から右ハイキック、パンチの連打でダウンを追加してKO勝利している。
前回の対戦のようにスーパーレックが序盤からローを効かせることは容易ではなく、アナンもスーパーレックの圧力に下がることはないだろう。そうなった場合にスーパーレックがどう対処するのか。試合を重ねるごとにロングリーチを活かす戦い方が確立されてきたアナンはスーパーレックにとって難敵であることは間違いない。
ジョナサン・ディベラ×サムエー・ガイヤーンハーダオは高度な技術戦が期待できる顔合わせだ。ディべラはGLORYがアメリカで大会を開催していた時期(2016年~2018年)にGLORYを中心にキャリアを積み、2022年10月からONEに参戦。ONE初戦でジャン・ペイメンとのONEキックボクシング世界ストロー級王座決定戦に勝利してベルトを巻き、ダニエル・ウィリアムスを下して初防衛にも成功した。
昨年6月にプラジャンチャイ・PKセンチャイムエタイジムに敗れて王座陥落となったが、12月にはルイ・ボテーリョを下して再起を果たしている。サウスポーから繰り出す左ストレートと左ロー・ミドルを軸に攻撃を組み立てるファイトスタイルは、ヒジ・首相撲なしのキックルールにおいて非常に完成度が高いものだ。
対するサムエーはルンピニースタジアムの2階級制覇など輝かしい実績を残して、2018年からONEに参戦。ONEでもストロー級でムエタイ&キックボクシング王座、フライ級でムエタイ王座のベルトを巻いたレジェンド的な存在だ。昨年10月に40歳となったが、現在はアクラム・ハミディとジャン・ペイメンを下して2連勝中。ONEで敗れた相手もプラジャンチャイとハガティーというチャンピオンクラスだけで、そのテクニックは衰えることを知らない。
キックルールに特化したディベラとキック・ムエタイの両ルールで戦えるサムエー。同じ構図となったディベラとプラジャンチャイの一戦は、序盤はディベラがスピードと手数でペースを掴んだものの、3R以降はプラジャンチャイが右ミドルとヒザ蹴りでディベラのパンチとステップを封じて判定勝利している。
サムエーも前半のラウンドでディベラの動きを見て、後半はそこを突くような試合をしてくるだろう。ディベラとしてはプラジャンチャイ戦の反省も踏まえ、前半のラウンドでポイントを取るだけでなく、いかにダメージを与えられるか。後半に巻き返しを許さない試合展開を作れるかが鍵になる。
今大会は日本VS世界がメインコンセプトとなっているが、世界VS世界のビッグマッチを日本で見られる貴重な機会でもある。ぜひ日本のファンには世界最高峰の戦いとしてスーパーレック×アナン、ディベラ×サムエーの王座戦も楽しんでいただきたい。
■放送予定
3月23日(日)
午後2時30分~U-NEXT
■ONE172対戦カード
<キック・フライ級/3分5R>
ロッタン・ジットムアンノン(タイ)
武尊(日本)
<ONEキックボクシング世界フェザー級暫定王座決定戦/3分5R>
タワンチャイ・PKセンチャイムエタイジム(タイ)
野杁正明(日本)
<ONEムエタイ世界バンタム級王座統一戦/3分5R>
[正規王者]スーパーレック・キアトモー9(タイ)
[暫定王者]ナビル・アナン(アルジェリア)
<ONE世界フライ級(※61.2キロ)王座決定戦/5分5R>
アドリアーノ・モライシュ(ブラジル)
若松佑弥(日本)
<ONEキックボクシング世界女子アトム級選手権試合/3分5R>
[王者]ペッディージャー・ルッカオポーロントン(タイ)
[挑戦者]KANA(日本)
<ONEキックボクシング世界ストロー級暫定王座決定戦/3分5R>
ジョナサン・ディベラ(カナダ)
サムエー・ガイヤーンハーダオ(タイ)
<キック・フェザー級/3分3R>
マラット・グレゴリアン(アルメニア)
海人(日本)
<ムエタイ・アトム級/3分3R>
ラック・エラワン(タイ)
吉成名高(日本)
<ライト級(77.1キロ)/5分3R>
エドゥアルド・フォラヤン(フィリピン)
青木真也(日本)
<キック・バンタム級/3分3R>
ジョン・リネケル(ブラジル)
秋元皓貴(日本)
<ライト級(77.1キロ)/5分3R>
エイドリアン・リー(シンガポール)
小川健晴(日本)
<ムエタイ・フライ級/3分3R>
ヨードレックペット・オー・アトチャリア(タイ)
吉成士門(日本)
<キック・フライ級/3分3R>
ザカリア・ジャマリ(モロッコ)
陽勇(日本)
<キック・132ポンド契約/3分3R>
スリヤンレック・ポーイェンイェン(タイ)
龍聖(日本)