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【ONE FF100】台湾在住・ONE無敗の日本人、青柳克明「僕自身の成長が台湾のMMAの発展にも繋がる」

【写真】MMAファイターとしての成功はもちろん、台湾のMMAを盛り上げたいという想いを持ってONEで戦う青柳(C)TAKUMI NAKAMURA

14日(金・現地時間)、タイはバンコクのルンピニースタジアムでONE Friday Fights 100が開催され、青柳克明が韓国のチャン・ソンギュと対戦する。
Text by Takumi Nakamura

青柳は日本人の父と台湾人の母の間に生まれ、中学時代に台湾に移住。16歳で柔術を始め、MMAファイターとしての道を歩み始めた。2024年からONEに参戦し、韓国人選手に2連続KO勝利を収めて連勝街道を突き進んでいる。

そんな青柳は台湾に活動の拠点を置き、自らのMMAチーム=Blastを立ち上げ「僕自身の成長が台湾のMMAの発展にも繋がる」「自分だけが強くなるのは意味がない。台湾のMMAを盛り上げるためにも、みんなで強くならないとダメ」と自身の成功だけでなく、台湾のMMAシーンを盛り上げたいと語る。


――MMAPLANETでは初インタビューの青柳選手です。青柳選手は台湾在住の日本人MMAファイターとしてONEで活躍されていますが、台湾にはいつから住んでいて、格闘技を始めたきっかけは何だったのですか。

「僕は父親が日本人・母親が台湾人で、父親の仕事の関係で中学生の時に台湾に引っ越したんですよ。それで日本の大学に行くつもりだったのですが、そのまま台湾に残ることになって、今も台湾に住んでいます。格闘技を始めたのは16歳の時で、同級生の友達が格闘技をやっていて、彼に誘われてブラジリアン柔術を始めました。カルロス・トヨタさんの道場の支部が台湾にあって、はじめはそこに通っていて、そこからBMF Spaceに移り、今は自分のチーム=Blastを作って活動しています」

──柔術を始めて、すぐに柔術にのめり込んでいったのですか。

「柔術がバックボーンではあるんですけど、柔術と並行して立ち技の練習もやっていて、MMAには興味があったんです。それで練習を始めて半年ぐらいで散打の大会に出たら、その大会で優勝することができて、そこから本格的に練習を続けようと思いました」

──散打はサイドキックを多用したり、変則的な動きをする選手が多いですが、それでも大会で優勝できたんですね。

「そうですね。ただアマチュアの試合だったし、ルールや競技のことはあまり考えすぎず、とりあえず思いっきりパンチで殴りまくって勝った感じです(笑)」

──その頃から格闘技で生活していこうと思っていたのですか。

「台湾ではスポーツそのもので食っていくことが非常に難しく、スポーツをやっている大抵の選手はトレーナーになって競技を続けるんですよ。僕自身、今もパーソナルトレーナーの仕事をやりながら、格闘技を続けています」

──なるほど。台湾はスポーツ選手という職業そのものが成り立ちにくいのですね。

「野球やバスケはプロとして成立するのですが、格闘技はまだ時間がかかると思います。例えるなら2000年頃の日本の格闘技のようなイメージで、まだ発展途中ですね。ただ僕はONEで試合を出来るようになったので、今は選手活動をメインでやるつもりで考えています」

──台湾の格闘技事情についても聞かせてください。台湾は柔術のジムが多いのですか。

「台湾には日本人の柔術の先生が結構いて、柔術のジムはたくさんあります。あとはムエタイやキックボクシングのジムも多くて、日本のRISEにワン・チンロン選手や狂狼選手が出ています。MMAのジムはまだ少ないのですが、徐々にこのブームは広がっていくと思います」

――台湾ではONEが一番人気があるイベントなのですか。

「UFCとONEを見ている人が多いです。大きく分けるとMMAを好きな人はUFC、ムエタイやキックも好きな人はONEというイメージです。もちろん両方の大会を見る人もいます」

――青柳選手自身はどういった経緯でONEに参戦するようになったのですか。

「今の僕の先生がジェフ(・フアン)先生で、ジェフ先生は元々ONEの選手だったんです。その時のトレーニングパートナーがONEで働いていて、去年5月に僕が台湾でボクシングの試合に勝ったあと、僕のプロフィールをONEに送ってくれたんです。そうしたらONEからオファーを頂きました。ONEの試合が決まったときは凄く嬉しかったのですが、今までになかったプレッシャーと緊張を感じましたね」

──2024年7月のONEデビュー戦ではチョン・ジュンヒに1RKO勝利でしたが、あの時は緊張していたのですか。

「はい。台湾ではMMAがそこまで人気のある格闘技ではないので、台湾の選手がONEやUFCのようなビッグマッチに出られると思ったことがなかったんです。だからONEで試合することは夢みたいなもので、本当に嬉しかったですね」

──続く2024年10月のイ・ジュンファン戦も右ストレートでのKO勝利でした。青柳選手は自分の打撃、特にパンチに自信を持っていますか。

「今はレスリングとボクシングに専念しているのですが、周りの人からは瞬発力がすごくて、僕の右ストレートは異常に硬いと言われます。実際に右のパンチで何回か相手をノックアウトしてきて、それで自信を重ねてきたので、今は右ストレートを自分の武器にして試合をしようと思っています」

──ジュンファン戦での右フック・ストレートの打ち分けが印象に残っているのですが、あれは意識しているものですか。

「僕自身そこまで意識していないのですが、右ストレートとフックは自信があるので、それを使い分けながら打っています」

──当初はONEと契約できてうれしいという立場だった青柳選手ですが、ONEでは2戦2勝2KOです。ONEで勝ち星を重ねることで自信もついてきましたか。

「自信になっているというより、自分が確実に進化していることを実感しています。もちろん試合のオファーが来るたびに緊張しますし、プレッシャーも感じるんですけど、それが逆に興奮するような感じでたまらないです」

──ちなみにご自身のチームはどんな練習環境なのですか。

「自分のチームを立ち上げた……と言ってもジムを作り始めて内装している途中で、今はそれぞれボクシングとレスリングのトレーナーの所に行って練習しています」

──練習環境という部分で、例えばタイでキャンプを張ったり、台湾以外で練習するという選択もあったと思います。青柳選手の場合は台湾に拠点を置いて活動していきたいという想いがあるのですか。

「そうですね。どうしても台湾の練習環境は完璧ではないし、サポート環境など厳しいところはあります。その中でも僕はボクシング専門のジムに行ったり、大学のレスリング部に行ったり、自分でプランを立てて、自分のものにするという形で練習しています。もちろんタイミングが合えば海外でも練習しますし、実際にタイのAKAタイランドや僕の憧れの山本“KID”徳郁さんのジム(KRAZY BEE)で練習したこともあります」

──青柳選手はKID選手に憧れているのですか。

「はい!KIDさんと魔裟斗さんは台湾でも伝説的な存在で、台湾の格闘技ファンはみんな知っています。僕も16歳の頃にKIDさんの試合を見て、KIDさんに憧れて、どうしてもKIDさんにお会いしたかったんです。ただ僕がKRAZY BEEに行った時はもうKIDさんが病気で大変な時期で、お会いすることは出来なかったのですが……KIDさんのジムで練習させてもらえたことは本当に嬉しかったです」

――青柳選手は日本で2度試合をしていますが、練習で来日しているタイミングで試合をしたのですか。

「僕は日本の清水俊一選手とも知り合いで、清水さんに『日本で試合をしたいので、もし清水さんから繋がりができたらお願いします』とお願いして、清水さん経由でZSTとクロスオーバーからオファーをいただきました。3月にONEの日本大会がありますが、次に日本大会がある時には必ず出たいので、それまでは頑張らないといけないですね」

──さて今大会で対戦するチャン・ソンギュにはどんな印象を持っていますか。

「過去にONEで一戦やっていて、何回も映像を見ましたが、正直に言うと実力がよく分からなかったです(苦笑)。立ち技もそこまで強くないし、寝技もやるんだけど粘り強いわけではない。だから実際に戦ってみてどうなんだろう?という意味で注意している感じです。僕自身、この試合に向けて色んなフェイントを練習してきたので、それを試合で出したいです」

──今回も会場が沸くようなKO勝ちを見せたいですか。

「もちろん見せたいですね。で、今回は勝った後にリング上でのバク宙とかもやってみたいです(笑)。僕もONEでは3戦目ですし、みなさんに『ONEのバンタム級は“Blast”青柳克明だ!』と思ってもらえる存在になりたいです」

──青柳選手はMMAファイターとしてどんな目標を持っていますか。

「MMAファイターとしての目標は、もちろん第一にONEで成功すること。そして、それだけではなく台湾のMMAを盛り上げることを意識しています。僕自身の成長が台湾のMMAの発展にも繋がると思うし、僕が強くなり続けて、台湾の選手たちに『みんなも頑張ればこの素晴らしい舞台に立つことができるんだよ』と伝えたいですね。また自分がONEで活躍して色んなつながりを作って、Blastを通して台湾の選手を日本や海外の試合に派遣していきたいです」

──自分が台湾のMMAを盛り上げるきっかけになりたいという想いがあるんですね。

「自分だけが強くなるのは意味がないし、周りの人たちと一緒に台湾のMMAを盛り上げるためにも、みんなで強くならないとダメだと思っています」

──今回のインタビューを通して、青柳選手のことを知った人も多いと思います。応援してくれるみなさんにメッセージをいただけますか。

「僕のチーム名でもある“Blast”には爆発した時に起こる爆風みたいな意味があるんですね。元ネタは漫画『ワンパンマン』のヒーローランキングで1位になったBlastというキャラクターで、それがいい名前だなと思っていただきました。今回の試合に向けて技術はもちろん、フィジカル、精神面、全てを高めてきたのでONEの舞台でBlastの名に相応しい試合を見せたいし、Blastから風を起こして台湾のMMAを世界に発信していきたいです。応援よろしくお願いします!」

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