【Pancrase352】合島大樹戦 へ、後藤丈治「俺たちが今、本当にスゲェモノを見せ続けないといけない」
【写真】Where there is a will, there is a way──志あるところに道あり(C)MMAPLANET
9日(日)に横浜市中区の横浜武道館でPancrase352が開催される。同大会で61カ月振りにパンクラスで戦うのが後藤丈治だ。
Text by Manabu Takashima
強さを追求し、世界に挑む志を持ちパンクラスからRoad to ONE、修斗、所属ジムの自主興行TTFC、RIZIN、ONE FF、そしてDEEPと戦場を問わず戦ってきた。その結果、レコードは綺麗でなくなった。特に昨年はイリアス・エジエフ戦、マンド・グティエレス戦とタフな海外勢に連敗を喫してしまった。
この敗北があったことで課題をあぶり出し、MMAを戦う上での軸を再確認した後藤。合島大樹戦を前に、さらに純化した自身の征く道を言葉にした。
自分が分かっているからこそデキないことが増えた
――日曜日に5年1カ月振りのパンクラス再出場となります。
「そうですね。上京して4試合はパンクラスで。Road to ONEから修斗で戦うようになりました」
──以来TTFCを挟み修斗からRIZIN、ONE FF、そしてDEEPと果敢に挑戦をしてきました。ただし、結果的に昨年はONE FFのイリアス・エジエフ戦、DEEPのマンド・グティエレスと連敗。グティエレス戦は負けていないという気持ちもあるかと思いますが、この2試合をどのように振り返ることができますか。
「強くなるために必要だった試合だと、今は捉えています。落ちきったところからの立ち上がり方を学べました。本当に強いヤツらと戦うのは、そんなに甘くねぇぞというのを教えてもらいました。
あのタイミングで戦えて良かったです。ああいう奴らがゴロゴロいる。結局、UFCで活躍しているラウル・ロサスJrもマンドと競り合いをして、ギリギリのところで競り勝っている。ああいう戦いをしていかないといけないのも事実なんで」
──グティエレス戦、競り負けた感もなかったです。
「終わったことですが、勝ったとは思っています。でも、もっとやれることがあった試合です」
──初回で勝ち切りたかった。ただし、そこから挽回するのが彼らの強さ。背中をつけた状態が長かったのは勿体なかったように見えました。
「そこは修正点ですね。今までの自分だったら、ガムシャラに立っていた。それがデキることが増えて、自分が分かっているからこそデキないことが増えた。その2つがあって、覚悟を持ってどちらかに振ることが必要だったと思います」
──下ができても、絶対に下にならない。その意識が必要だったのかもしれないですね。結果論ですが……。最終回もカーフを効かせて、サイドを取られてもバギーチョークを仕掛けていたわけですし。
「レフェリーも人間ですから、色々な見方があるでしょうしね。だから講習会にも参加しました。負けが増えたわけだし、これから挽回しないといけないけど良い経験ができたと思っています」
──勝利の先はUFCという一本道ではない日本のMMAにあって、戦うごとに出場プロモーションを変えるデメリットもあるかと思われます。
「パンクラスで戦うことになったのは、3月には試合をしたかったからです。長南(亮)さんはDEEPにも話をしてくれていました。まとまったのがパンクラスだったんです」
──契約なき拘束は、日本のMMAを強くするためには本当に見直す時期が来ていると思います。
「そういうことなんです。全ての団体をリスペクトしているので、自分の価値が高くなればどこでも戦える。そういう特別な存在になることも目標の一つです。一番は世界に向けて戦うこと。上久保(周哉)さんのように、とんでもないバケモノに挑むことが俺にとっては格好良いMMAファイター像です」
──そのような目標があるなかで、今回の合島選手との試合の意味というのは?
「ソコに挑戦していくための試合にしたい。そう思っています。その過程においてパンクラスの王座につながっていくなら、そこも挑戦していきたいです。透暉鷹選手と戦うカリベク・アルジクル・ウルルも本当に強い相手ですしね。彼も超えないといけない壁だと思っています。強くなってバケモノに挑む。その目標に向かって、手段は問わないです。だからこそ勝たないといけない試合です。
会見の時も言ったのですが、『覚悟を決めて戦う』というシンプルなところに今回は意識をおいています」
10年後、20年後。俺がもう引退した後、死んだ後かもしれないけど、誇れる未来を創りたい
──合島選手も5年半の活動停止期間があり、試合に戻ってきた。相当の覚悟を持って戦っていると思います。
「格闘技が好きで辞められない選手。だからラストチャレンジ、全てを賭けて戦っているように感じます。それだけの覚悟を持ってやっていると思います。でも俺はそれだけじゃなくて、相手の人生を終わらせる。殺す覚悟までできているので。そこを差は出ます」
──合島選手と戦うなかで、勝負とは別にこれからを見据えたパフォーマンスが見られるのか。そこも求められるファイトかと思います。
「去年の2試合で、今回のテーマである覚悟という部分は本当にデカいと感じました。特にイリアスと向き合った時、初めて何かがある。恐怖ではないけど、ヤベェモノが奥に潜んでいるなと。なんというのか、感じたことがない違和感……。他の外国人とも違う。宗教かもしれないけど、信じているモノがあって胆が据わっている。それが覚悟で。覚悟の差を感じました。
外国人選手でもトレント・ガーダムや同じRIZINだと(日比野)エビ中(純也)とかっていう選手達と向き合った時、『俺が飲んだな』って思ったスけど。イリアスだけは……ちょっと凄かったですね。ああいう風に呑まれた弱い自分から、抜け出すための1年間でした。やはり、そこですね」
──戦略だったのかもしれないですが、グティエレス戦では打撃を入れる距離を創るために回る展開が多いように感じました。拳の圧で前に出ると、あの時のように組まれないのではないかという理想論が頭に浮かびました。
「もう、間違いないです。あの試合は自分がイメージしている戦いの流れが、甘かったです。正直、日本人選手が相手だと初回の左ストレートで倒れていたと思います」
──ハイ。
「でも、アイツは倒れなかった。あの一発は捉えたんですけどね。見えていないところからのアッパーで、腰も落ちました。けど頑張ってくれましたね(苦笑)」
──そして後藤選手が言われた寝技ができるようになって、できないことが生まれた。選択肢の多い、MMAならではの難しさです。同時に我々は無責任に、だからこそMMAは面白いと断言できる部分で。
「本当にそうっス。絶対にそうです。この面白さ、奥の深さを今の格闘技好きの人達が分かってくれるのか。まぁ、でもそこは言ってもしょうがないですよね。これが面白いので。結局は自分次第。数字の奴隷みたいになっちゃっている子がたくさんいるなかで、本当に俺たちが変えてやる。本当にスゲェもんを見せて、絶対に変えることができると俺は思っているので。
俺もそうだし、先陣を切ってやってくれている上久保さんのような人もいるわけで。俺はそっちに続いて、そういう存在になっていきたい。10年後、20年後。俺がもう引退した後、死んだ後かもしれないけど、誇れる未来を創りたい。そのためには俺たちが今、本当にスゲェモノを見せ続けないといけない。そう……めっちゃ思っています」
──素晴らしい言葉の説得力が増すのは、たった一つの結論しかないことは後藤選手もよく理解していると思われます。
「ハイ。振り切れたなって思われる試合をします」
■視聴方法(予定)
3月9日(日)
午前11時45分~U-NEXT