【Pancrase352】フライ級QOP杉山しずかに挑戦、渡邉史佳「テニスの動きが右ストレートに繋がっている」
【写真】インタビューは2月21日、タイトルマッチ調印式の前に行われた(C)SHOJIRO KAMEIKE
9日(日)に横浜市中区の横浜武道館で開催されるPancrase352で、渡邉史佳が杉山しずかの持つフライ級QOPに挑戦する。
Text by Shojiro Kameike
プロデビューから2年、わずか4戦目でベルトに挑む渡邉はビュー戦こそライカに敗れたものの、昨年はNØRI、端貴代とランカーを連覇してタイトルマッチに辿り着いた。幼少期からテニスを始め、大学時代に格闘技へと転向した渡邉。その代名詞ともいえる右ストレートと、MMAファイターとしての成長について訊いた。
――これからタイトルマッチの調印式を控えている渡邉選手です。大学時代にテニスから格闘技へと転向されたそうですが、テニスは何歳から始めたのでしょうか。
「たぶん4歳か5歳ぐらいからです。気づいたらテニスをやっていた、という感じですね。大学3年の途中まで続けていたけど、その頃にコロナ禍があってテニスの試合がなくなり、『とりあえず体を動かしたいなぁ』と思ってボクシングを始めました。ボクシングのプロライセンスを取得したあと、MMAも楽しそうだなぁと思ってMMAのジムに通いました」
――ボクシングではプロライセンスを取得していながら、プロ選手になろうとは思っていなかったのですか。
「う~ん、テニスをやっていた時も『プロになれたらいいなぁ』というぐらいの気持ちはあったんです。でも成績的に、それは現実的ではない。ただ、何かのスポーツのプロ選手になりたいという気持ちは持っていて。
ボクシングジムに入った時、ちょうど他にもプロテストを目指している子たちが何人かいて、ジムの方から『来年プロテストが行われるから受けてみる?』と誘っていただいたんです。その時は自分自身、プロのファイターとはどういうものかは全く想像もしていなくて、本当に興味でボクシングのプロテストを受けたという感じですね」
――MMAを始めたのは、ボクシングのプロテストを受けたあとですか。
「はい。MMAも楽しそうだなと思って――これも本当に興味本位でした。『MMAを始めるなら女の子がいるジムがいいんじゃない?』と言われて、札幌のマルスジムに行きました。マルスジムにはソルトさんや中村未来選手がいたので。あとは自宅から50メートルぐらいのところにあるウィラサクレックジム(WSRムエタイジム)でも練習させてもらいました」
――札幌格闘技を網羅していますね。まずボクシングを始めた時、テニスの動きとボクシングの動きは全く違ったものでしたか。それとも比較的やりやすかったでしょうか。
「比較的やりやすかったですね」
――試合を視ていると、テニスの足捌きがMMAの試合に生きているのではないかと。
「えぇ~、どうなんだろう? どうですか(笑)」
――こちらに訊かないでください(笑)。プロデビュー戦の時からフットワークで使うヒザの動きが、新人のレベルではなかったように思います。
「えっ、そうですか。確かにテニスで培っていた動きのベースが、少しずつ打撃にもハマッてきているように感じます」
――プロデビュー戦では、元ボクシング世界王者のライカ選手に右を何度も当てていました。
「さっきボクシングやMMAを始めたのは興味本位と言いましたけど、実は試合が決まった時、ライカ選手がどういうファイターなのかを知らなくて(苦笑)」
――えっ、それは……。
「皆から『すごい選手だよ』と言われて、私は『そうなんだぁ』という感じで……その頃から『自分の打撃が当たれば倒れるだろう』という変な自信を持っていました。練習の段階から手応えはありましたけど、それだけまだ、ちゃんとMMAと向き合っていなかったんですね。でもデビュー戦でライカ選手のようにキャリアのある選手と対戦できたことで、『MMAってこういう感じなんだ』というのが分かってきました」
――判定は僅差のスプリットでライカ選手の勝利でした。ご自身が勝っているとは思わなかったですか。
「いや、あの時は自分では分からなかったですね。あとあと見返したら『もしかしたら……』とは思いましたけど仕方ないです」
――他のスポーツを経験しているファイターに訊いていることなのですが、たとえばテニスの動きが右ストレートに繋がっている部分はありますか。
「あります! テニスって小さい頃から、ソフトボールとかをネットに向かって思いっきり投げるという練習をするんです。百回、二百回――自分は小さい頃から、それをやっていました。テニスではサーブを思いっきり打つじゃないですか。フォアハンドも腕を一度引いてから前に出す。そういう動きはボクシングを始めた頃から、パンチを出す時にやっていました」
――テニスにおけるボールコントロールが、右ストレートを出す動きに繋がっているわけですね。組みの動きはいかがですか。ライカ戦でも綺麗にテイクダウンしていました。
「正直、何とも言えなくて……。よく分からないけど、体が勝手に動いていました(苦笑)」
――これは失礼ながら、あの時は技術云々ではなく足腰の強さ、粘りを感じました。
「そうですね。練習していても、スポーツ経験のない一般女性とは全く違うとは思います」
――なるほど。渡邉選手が現在所属しているFIGHTER’S FLOWに一般的ではない女子ファイターについては……。
「アハハハ! (渡辺)華奈さんはレベルが違いますね。もう異次元、エグい、ヤバい。練習場所に同じ階級の女子選手、なかでも華奈さんがいることは大きいですね。私にとっては『先輩の華奈さん』というより『あの渡辺華奈選手』と思ってしまうほど、大きな存在です」
――それは渡辺華奈選手が「気安く先輩って呼ぶんじゃないよ」と壁をつくっているのではないですか。
「この小娘が――なんて。華奈さんはそんな人じゃないです!」
――ノリツッコミありがとうございます(笑)。試合の話に戻ると、端戦ではさらに右を振るう数が増えたかと思います。何か成長や変化があったのでしょうか。
「FIGHTER’S FLOWでは鈴木隼人コーチのもと、徹底的にレスリングをやり込みます。そのおかげで以前よりも組みに自信を持つことができました。『こういう時はこうすれば大丈夫』と自分の中でも分かってきているから、思いっきり振れるようになってきているのかもしれません」
――組みに自信が生まれたからこそ右を振ることができる。だからこそ左のパンチに繋がるようになったのでしょうか。端戦では左でダウンを奪っていましたが、それまでの試合ではあまり左のパンチの印象がなかったです。
「うん、そうですね。返しの左は大事だと思っています。試合の中でも成長させてもらいました。デビュー戦からライカ選手、NORI選手、そして端選手と――毎回『おぉっ!』という感じではありましたけど、それが『やるしかない』という気持ちになって」
――そこに不安や恐怖などはなさそうですね。
「いやいや、毎回、不安と恐怖しかないですよ。試合が決まって2週間ぐらいは、『もう嫌だ! 嫌だ!!』みたいな気持もあります。でも試合当日ケージの中に入ったら、もうやるしかないですから」
――杉山選手を相手に、どのような試合を見せたいですか。
「チャンピオンはMMAの全てをやってくる選手ですね。端選手もそうでしたけど、経験値に関しては自分より遥かに上です。その差をどう超えるのか、いろいろ考えています。
まずは自分の強み、自分のやりたいことを徹底的にやらせてもらいたいです。自分のパンチをブチ当てることしか考えていません。
私が獲れば、FIGHTER’S FLOW所属としては1本目のベルトになります。華奈さんも4月からPFLの2025年シーズンが始まるので、しっかりベルトを巻いて華奈さんに繋げます!」
■視聴方法(予定)
3月9日(日)
午後11時45分~U-NEXT
■Pancrase352 対戦カード
<フライ級QOP選手権試合/5分5R>
杉山しずか(日本)
渡邉史佳(日本)
<ストロー級KOP選手権試合/5分5R>
黒澤亮平(日本)
植松洋貴(日本)
<バンタム級/5分3R>
井村塁(日本)
松井斗輝(日本)
<ライト級/5分3R>
粕谷優介(日本)
ラファエル・バルボーザ(ブラジル)
<フェザー級/5分3R>
Ryo(日本)
山本歩夢(日本)
<女子ストロー級/5分3R>
藤野恵実(日本)
本野美樹(日本)
<バンタム級/5分3R>
合島大樹(日本)
後藤丈治(日本)
<バンタム級/5分3R>
矢澤諒(日本)
山木麻弥(日本)
<ウェルター級/5分3R>
村山暁洋(日本)
長岡弘樹(日本)
<フェザー級/5分3R>
遠藤来生(日本)
木下尚祐(日本)
<フライ級/5分3R>
山﨑聖哉(日本)
時田隆成(日本)
<バンタム級/5分3R>
前田浩平(日本)
梅原規祥(日本)
<バンタム級/5分3R>
千種純平(日本)
松井涼(日本)
<フライ級/5分3R>
今井洋希(日本)
稲垣祐司(日本)