【ONE FF97】ミラルペスと初の国際戦、畠山隆弥「今回の試合はバレンタインデー・ナイト。甘い夜に」
【写真】現地到着の翌日、体重調整も兼ねて街を歩いてからのインタビューに。本日、計量とハイドレーションテストはクリアしている(C)SHOJIRO KAMEIKE
14日(金・現地時間)、タイはバンコクのルンピニースタジアムでONE Friday Fights 97が開催され、畠山隆弥がフィリピンのジェイソン・ミラルペスと対戦する。
Text by Shojiro Kameike
畠山は現在、修斗世界ストロー級1位にランクされている。同級では年末年始にかけて、田上こゆるが旭那拳との王座決定戦を制してベルトを巻き、練習仲間である当真佳直が山上幹臣と挑戦者決定戦の意味合いを持つ試合に臨むなど大きな動きを見せていた。
そんななか昨年11月にマッチョ・ザ・バタフライをKOしてトップランカーとなっていた畠山の動向は――と思われていた矢先、今回のONE FF参戦が発表された。2月12日、試合に向けて現地している畠山にONE FF出場の真意と、ここ2試合で見られたスタイルチェンジについて訊いた。
――今回、畠山選手のONE FF参戦が決まって驚きました。畠山選手は昨年11月にマッチョ・ザ・バタフライ選手をKOして、修斗世界フライ級でトップランカーになっています。同じ沖縄の練習仲間でもある旭那拳選手や当真佳直選手がタイトルに絡む試合が組まれるなか、畠山選手もそこに割って入る試合を選んでいくと思っていたからです。
「そうなんですね。実はONE FF出場を選んだ理由の一つに、拳さんや当真選手のことがあったんです」
――というと?
「練習仲間として拳さんや当真選手が、どんどん上に行ってベルトに絡んでいくと思っていました。僕も修斗のベルトは巻きたいですよ。ただ……これは甘いと言われるかもしれないけど、やっぱり沖縄の練習仲間同士で試合はしにくいです。
そんな頃にONE FF出場のオファーを頂いたんですね。僕も今まで海外で試合をしたことがないし、国内で外国人選手と対戦したこともなくて。ここで一度、外国人選手と対戦できるチャンスを頂いたのでオファーを受けました」
――そうだったのですね。いつ頃から海外勢との対戦を意識するようになったのですか。
「2021年から2022年にかけて連勝していた頃ですね。特に同じジムの平良達郎がVTJでアルフレド・ムアイアドと対戦しているのを見て、自分も海外の選手と戦ってみたいなって気持ちを持ち始めました」
――畠山選手は4連勝後、一度の引き分けを挟んで現在3連勝中です。もともとグラウンドで攻め立てることが多かった畠山選手が、昨年4月の牧ケ谷篤戦では右カーフから左ジャブと右ストレートで相手をコントロールしていました。このスタイルチェンジは何がキッカケだったのでしょうか。
「マッチョ・ザ・バタフライ戦の後にもマイクで言ったんですけど、大西司さんという方にミットを持ってもらい始めたことが大きいんですよ。大西さんはもともとパラエストラ愛媛で柔術をされていた方で。その大西さんが沖縄に来て、ミットを持ってもらったら、距離をつくり方がよく分かってきたんですよね。
ミットだけでなく考え方も――この場合はどうするか。相手がこうしてきたら、自分はどう返すのか。そういうことを頭の中で考えるだけじゃなく、しっかりと紙に書き出すように言われました。おかげで自分の中でも理解できるようになってきて」
――ただ話を聞いたり体を動かすだけではなく。
「はい。自分は天才でも何でもなくて。かといって努力タイプなんて言うのも恥ずかしいぐらい、とにかく何度も何度も繰り返して、ようやく身についてくる人間なんですよ。そうやって教えてもらったおかげで、牧ケ谷戦も試合をコントロールできたし、マッチョ戦でもKO勝ちすることができました」
――マッチョ戦は距離のつくり方から最後の右スーパーマンパンチ、返しの左フックまで「しっかりと出来上がっている」という印象を受けました。
「ありがとうございます。最後の左フックは特に、何も考えず自然に出たパンチでした」
――そんななか、マッチョ戦の後には衝撃のオチが待っていて……。
「えっ、何ですか」
――畠山選手が衝撃のKO勝ち直後、MVP獲得のためにと一発ギャグを披露したのに、肝心のMVPは別の選手に贈られました。正直なところ一発ギャグより、あの展開のほうが最高に面白かったです。
「アハハハ! いや、あれはね――メインでKO勝ちして、MVPは確信していたんですよ。それで一発ギャグをやったあと、さらにMVP獲得のウィニング一発ギャグを考えていました。いろんなパターンがあるので、どれをやろうか考えていたら『MVPは友利選手に……』と(笑)。あの時の僕、文字通り鳩が豆鉄砲くらったような顔をしていて」
――確かにMVPを贈られてもおかしくない試合内容だったと思います。だからこそ、一部では「試合直後の一発ギャグがマイナス要素になったのでは?」とも言われています。
「えぇっ、マジですか! それで落ち込んでいたけど、MMAPLANETさんの記事で気持ちが救われたんですよ」
――どういうことですか。
「レポートの最後に『さらに大会MVPが欲しいと一発ギャグを披露したが、MVPは大田ノヒロをKOした友利幸汰に贈られている』と書かれていて。皆から『こんなことを書かれているよ』と笑ってもらえました。ありがとうございます(笑)」
――ちなみに、タイでも一発ギャグは披露するのですか。
「実は先ほどオフィシャルのインタビューを撮影してきたんですよ。そこで向こうの質問が終わったあと『すみません、一つだけ……』と」
――おぉ、沖縄大会の計量後に謎のパフォーマンスを見せる時と同じ展開ですね。
「謎、って(笑)。英語で披露してきたので、その映像が使われるかどうかは――ONEのみぞ知る、です」
――分かりました、それは期待せずに待っています。今回の試合はONEストロー級=修斗でいえばフライ級リミットの試合となります。これまで56.7キロで試合をしたことは?
「コロナ禍の時にありますね。当日56.7キロとか、通常の1階級上の契約体重だった時期です。今回も1階級上で戦うことになるので、減量はそれほど問題ないんですよ。むしろベストコンディションでタイに来ることができました。ただ、水抜き禁止でハイドレーションテストが初めてなので、最後にどれくらい調整すれば良いのかが不安な部分ではあります」
――対戦するジェイソン・ミラルペスの印象を教えてください。
「僕より身長は10センチ低いけど手足は長く、やりづらいタイプだと思います。戦績も3勝1敗とキャリアでは僕のほうが上回っていますけど、そんなキャリアの差は関係ない強い相手ですね。映像を視ると、しっかりと打撃出してくると思ったら、寝技でもガンガン攻めてきますし」
――あとはロープ際の魔術師といいますか、テイクダウンの攻防で腕をロープに引っかけたり、反則ではないですがケージキックならぬロープキックでポジションを入れ替えたりする試合巧者の印象も受けます。
「そこはTHE BLACK BELT JAPAN沖縄にも金内サイダー雄哉さんというダーティーな方がいますから大丈夫です(笑)。というのは冗談ですけど、試合に向けて松根(良太)さんとも話し合ったんですよ。『世界にはいろんなタイプの選手がいる。結局は、どんなタイプが来ても抑え込めるように自分を高めていかないといけない』と言われました」
――なるほど。
「先ほども言ったとおり、僕は天才でも何でもないです。一つひとつ積み上げて、ここまでやってきました。もちろん対策はありますけど、自分が勝つためにやることは変わらないと思っています。今回の試合はバレンタインデー・ナイト。甘い夜にしますので、ぜひ試合をご覧ください!」
■視聴方法(予定)
2月14日(金・日本時間)
午後9時30分~U-NEXT