【UFC311】人間永久電池。序盤劣勢のデヴァリシビリがRが進むほどウマルを圧倒、3-0で防衛に成功
<UFC世界バンタム級選手権試合/5分5R>
マラブ・デヴァリシビリ(ジョージア)
Def.3-0:49-46.48-47.48-47
ウマル・ヌルマゴメドフ(ロシア)
サウスポーに構えたウマル。デヴァリシビリと同様に、すぐに距離を詰めることはなく様子見で距離を取る。蹴りの間合いから、右ジャブを伸ばしたウマルはデヴァリシビリの左ローに左を合わせていく。直後に距離を詰めて、押し倒すように突っ込んだデヴァリシビリはすぐに起き上ったウマルにボディショットを入れる。続いてボディから左右のフックは空振りとなったチャンピオンは、続くシングルレッグを切られると同時に右フックを2発見せた。
ウマルが左ミドルを届かせ、右ミドルからワンツー。距離が近づくと、逆にシングルレッグを仕掛ける。反転して足を抜いたデヴァリシビリに、ウマルは跳びヒザを狙う。これは空を切り、ウマルは蹴りからテイクダウンへ。受けのレスリングも強いデヴァリシビリはパンチが届く距離で拳を振るう。しかし、間合いを取り直したところで右ストレートを被弾。インパクトで挑戦者がとってもおかしくないラウンドとなった。
2R、前足でハイを狙ったウマル。デヴァリシビリのジャブ後に、左を伸ばす。続いて組みにきたところでショートのコンビを入れる。それでも前に出るデヴァリシビリだが、ダブルは取れず未だにケージに押し込むこともできていない。と、右オーバーハンドからシングルを切ったウマルがスプロールからバックに回る。そのままワンフックでグラウンドに持ち込んだウマル。リストコントロールを切ったデヴァリシビリがスタンドに戻る。王者の右オーバーハンドからシングルにも足を掴ませないウマルは、逆に蹴りを見せて組みも仕掛ける。
デヴァリシビリはシングルを蹴って、ショートのワンツー。さらに左からボディを見せて、距離を詰める。ついに右を振って組んだデヴァリシビリが、ケージにウマルを押し込むことに成功する。ウマルは押し返してヒザ蹴り、オクタゴン中央に戻るとデヴァリシビリが離れた。ウマルは王者のステップインにカウンターを合わせようとして、右を当てる場面も。殴られても組もうとするデヴァリシビリを組ませないウマルが、この回も取った。
3R、ウマルは後ろ足だった右で前蹴りを見せ、そのまま前足としてサウスポーで構える。凄まじい圧とともに距離を詰めたデヴァリシビリのテイクダウン狙いも、姿勢こそ乱したが切ったウマルはスピニングバックフィストを簡単にかわす、デヴァリシビリは蹴りに右を合わせて、前に出る。そこに一発でなくコンビで待ち受けるチャレンジャーは、またもシングルレッグをスプロールする。
左インローが急所をかすめるが、試合は続きデヴァリシビリがショートを入れる。さらに右オーバーハンドで圧を掛けるなど、王者の勢いがウマルを上回り始める。ここでテイクダウンを狙ったウマルは、逆にシングルレッグで倒される。スタンドで待ち受けたデヴァリシビリは、いよいよエンジン全開となったかダブルレッグでテイクダウン──と思いきや、ウマルは後方にフリップしてスクランブルに持ち込む。
ケージに押し込まれながら笑顔を浮かべ、観客席を見やった王者はウマルが離れると右を振って前に出る。ウマルもカウンターの右フックを繰り出し、左インロー。そしてシングルレッグからバックに回る。尻もちをつかされたデヴァリシビリは、直ぐに立ち上がって観客席に右の拳を突き上げた……が、終盤にテイクダウンを許したことはどうジャッジに影響を与えるだろうか。
4R、圧を掛けるデヴァリシビリ。ウマルはカウンター狙いというよりも受け身となり──居着き始めたか。手数で上回るデヴァリシビリが、シングルレッグでテイクダウン。立たせて、ダブルレッグで尻もちをつかせる。懸命に立ち上がったウマルの顔には、完全に疲労の色が浮かんでいる。パンチ、テイクダウンと攻勢のチャンピオンが右ボディストレート。
ウマルは口が開いているが、それでもダブルをスプロールする。近い距離のパンチの打ち合いでも、圧で上回るデヴァリシビリが右をヒット。さらにボディを入れて、組みへ。対応したウマルは逆にシングルレッグも、序盤のような力強さはない。それでもカウンターを決めたウマルだが、勢い取り戻すことはできない。デヴァリシビリも当然疲れているが、能動的に動き続けている。チャンピオンの動きに反応するという動きが続くウマルは、シングルに出てヒザをついて動きを止めるシーンも。ならばと立ち上がったウマルに組みついたデヴァリシビリがテイクダウンを決めて、スクランブルでバックへ。組んでパンチを入れるデヴァリシビリは、完全に勢いでウマルを上回った。
最終回、ファンを煽ったデヴァリシビリは、すぐに距離を詰めることなく間合いを測る。スピニングバックフィストは空振りとなった王者は、直後にテイクダウンを狙う。ウマルは切って、ジャブを伸ばす──が、体が流れている。必死で続くシングルを切ったウマルに、連続でテイクダウンを仕掛けるチャンピオン。倒せなくとも、反応させパンチを見せて組んで一気にドライブ。ケージにウマルを押し込み、ボディロックへ。自ら離れたデヴァリシビリは左に回るウマルのシングルをスプロールし、右を届かせる、左を返したウマルも最後の力を振り絞る時間帯に入ったか。
ウマルは左ミドルを決め、真っ直ぐ飛び込んできたデヴァリシビリを押し返す。デヴァリシビリはシングルレレッグへ、腕を差して耐えたウマルが左を伸ばす。チャンピオンはニータップ、切ったウマルが左ハイを狙う。続いてジャブを当てたチャレンジャーは、シングルを切りスイッチで前に出る。残り40秒で、右をヒットさせたデヴァリシビリは動き止まったウマルをテイクダウン。そのままスタンドで待ち受けてファンに両手を広げてアピール。直後にダブルレッグで倒し、立ち上がったウマルをボディロックで後方に組み伏せたデヴァリシビリはパンチも落とさず、抑えもせずに観客に勝利をアピールして立ち上がって試合終了を迎えた。
凄まじいスタミナ、精神力。序盤は完全に試合をリードされながら、3Rで流れを変えて4Rと5Rは圧倒したデヴァリシビリ。ジャッジ48-47が2人、49-46が1人と王座初防衛に成功したデヴァリシビリは、ダナ・ホワイトに「言いわけしない。でもケガをしていたんだ。UFCは全てを与えてくれた。どれだけガッカリしたか……」と話し、ジョー・ローガンのインタビューへ。
「僕はマシン。実は6日前に足をカットし、感染した。今日はまあ動けた。でも、しっかりと練習できなかった影響はあった。ウマルはタフ、良いファイターだ。彼は僕を年寄りだと言ったけど、確かに年寄りだ。でも毎日、ハードワークをこなしている。オールドスクールはハードワークを信じている。皆、自分を過小評価してイジメないでくれ。自分を信じよう。なんでも可能になるから。僕はアンダードッグだった。でも、自分を信じていた」と絶叫した。
対してウマルは「1Rが終わって、拳を折ったみたいだ。だから自分の戦いができなかった。ビデオを見てみるけど、僕は負けていないと思う。彼はタフだと分かっていたけど、とにかく拳をやっちゃったから」と話した。