【UAEW57】2025年も砂漠の国へ。ファン・プエルタと対戦する藤田大和「しっかりインパクトを残します」
【写真】写真は2024年12月上旬撮影。この直後、今年初戦の試合が決まるとは……(C)SHOJIRO KAMEIKE
17日(金・現地時間)にUAEはアブダビのSpace42アリーナで開催されるUAEW57で、藤田大和がファン・プエルタと対戦する。
Text by Shojiro Kameike
昨年5月、UAEWフライ級王座決定戦でイアゴ・ヒベイロに敗れた藤田は、4カ月後にバトゥカン・バイスエフを下して再起を果たしている。MMAPLANETでは2024年12月初旬、バイスエフ戦の振り返りと2025年の展望についてインタビューを行っていた。その時点ではまだ次戦が決まっていなかったが、直後にUAEWから今年初戦のオファーがあったのは既報どおりだ。ここでは昨年末のインタビューと、今回現地入り直後のコメントをお届けしたい。
バイスエフ戦はギロチンが評価された
――今年9月のバイスエフ戦(※インタビューは12月9日に行われた)は、スプリットの判定勝ちでした。裁定が下った瞬間、意外そうな表情を浮かべていたね。
「正直、負けたと感じていました。こちらも完全に寝かされていたわけではないけど、自分もギロチンが判定に対して効果的だったという感覚もなくて。でもスプリットだと聞いた時点で、『これは勝ったかも』と思いました(笑)」
――試合映像では、ポイントまでは確認できませんでした。
「採点を確認すると、1Rと3Rは僕が取っていましたね。あとで山﨑(剛Me,We代表)さんがジャッジに訊いてみると、やはりギロチンを取りに行ったことを評価したそうです」
――ただ、ポイントの取り合いとしては自分が押されていると感じていた。チームとしてインターバルでは、どのような指示を出されていたのでしょうか。
「結構ケージに押し込まれて、自分が座った状態や、バックにつかれていることが多かったですよね。だから『もうちょっと行かないといけない』とは言われていました。自分自身でもそう思っていましたけど、ギロチンにこだわってしまったというか」
――トップをキープしているだけではコントロールとみなさない、という採点基準に変わったのか。こればかりは結果論になりますが、過去のUAEWの採点基準とも違ったように思います。
「ケージ際で押さえ込まれていても、下からコツコツ殴っているほうが判定で勝つという試合が、たまに日本でもあるじゃないですか。その採点基準は認識していました。ただ、自分も下から殴っていたわけでなくて……」
――一方、バイスエフもトップキープから殴ってきませんでした。
「そうですね。ポジションのキープは凄かったですけど、最後のほうは特にレフェリーもアクションを促していましたよね」
――ポイントは背中をマットに着かされているかどうか、でしょうか。藤田選手の場合、ケージに押し込まれても尻もちを着いている状態でケージに体を預けていました。
山﨑 藤田はあの状態からの展開が強いんです。だからバイスエフもピッタリとくっついたまま、特に殴りに来ることもなく、無理に背中を着かせに来ることもなかったんだと思います。
――反対に背中を着かされている側がコツコツ打撃を出していても、それで優位になると考えるのは難しいです。藤田選手としては、まず背中を着かされない。キープされても尻もちを着いた状態で、という意識は強かったのですか。
「はい。それは今回の試合だけじゃなく、MMAを始めた頃からシチュエーションを想定して練習していました。尻もちを着いた状態で、押し込まれたところから取りに行ったりとか。今までUAEWの試合では、その良さを出すことはできていたと思います。でもバイスエフは攻め方がタイトで、自分から展開をつくりづらい面はありました」
山﨑 前日のルールミーティングの前に、バイスエフがストレッチとか動いているところを見ていて、すごくタイトさがあったんです。体を小さくしたり、ピッタリとくっついてくるようなストレッチが多くて。これがケージ際の攻防で出て来るかな、とは考えていました。
――相手がタイトに攻めて来ると、スタミナが削られたりすることはなかったですか。
「スタミナを削られることがなかったです。動きがなかったので、むしろ座った状態で考えたり、呼吸を整えることができました」
――そのおかげか、最終回は開始早々から攻めていくことができました。
「インターバルの間に、もっと動きを出すように山﨑さんから言われました。そこで自分からテイクダウンを狙いに行ったり、バックを取られたところから足を狙ったりとか。それがギロチンに繋がったりしたので、良かったと思います」
一歩一歩、UFCを目指していきたい
――スクランブルの末に立ち上がって打撃戦を挑むことより、ギロチンのほうが優先度は高いのでしょうか。
「いえ、そういうことはないです。ギロチンは体が勝手に動いたという感じですね。今回は力まずに良い時の動きを思い出そうと考えていました。タイトルマッチの時は力み過ぎて、足も動いていなかったですし。だから打撃に関しては深くこだわっていなかったです。右カーフも警戒されまくっていましたからね(苦笑)」
――カーフキックを警戒されたことは、何か試合に影響を及ぼしましたか。
「特には――焦りとかもなかったですね。いずれ組んでくる、そこに合わせていこうと考えていました。自分から攻めるよりも相手を誘う、というのは良くないかもしれないですけど」
――ギロチンという武器があるからこそ、相手の動きを誘えるのではないですか。それはMMAファイターとしての幅が広がったことでもあると思います。
「ギロチンもそうですけど、いろいろ得意な部分は増えてきています。それを試したかったけど、やらせてもらえない部分はありました(苦笑)。ギロチンを狙った時も、深く入ったけど相手の体の力が強くて、足も組ませてもらえなかったです」
――判定の結果については異論もあるでしょう。しかし、まずは勝ったことで生き残りました。やはりUAEWのベルトに再挑戦したいですか。
「はい。僕はイアゴ・リベイロとリマッチをやりたいです。もうどんな選手かも分かっていますし、いつでも再戦したいですね」
――まだ次戦は決まっていないのでしょうか。
山﨑 年内か年始には試合したい、と伝えています。でもUAEWって急に試合が決まったりするんですよ。毎年1月には大会を開催しているので、可能性はあると思っています。1月のあとは3月にラマダンがあるようなので、ラマダンが終わって5月ぐらいになるのか……。2年ぐらい試合をしてきて、何となくUAEWの状況も分かってきました。UAEWで戦ってきて愛着もありますし、ベルトを獲りたいです。その先にUFCも見据えていますし、僕たちは一歩一歩その目標に近づいていきたいですね。
――UFCに向けて一歩一歩……昨日、同じフライ級で朝倉海選手がUFC初戦でベルトに挑みました。そのことについては何か思うところはありますか。
「やっぱりUFCの壁は高いですね」
――はい。
「初戦でベルト挑戦については――最初は『まさか!?』とは感じましたよ。でも僕は海君の強さも知っているから、別に変だとは思わなかったです。UFC側としてもパントージャがランカー全員に勝っていて、そんななかでフライ級を盛り上げるためには海君が挑戦することが良かったんでしょうし。
こちらは一歩一歩、UFCを目指してやっていきますけど、そのほうが凄いとかは思っていないです。それが美学――という考えもないですし。今、僕たちはUAEWが良いと思って、戦う場所として選びました。まずはそのUAEWでベルトを獲りたいですね」
強い相手を用意してもらいました
前述のとおり、このインタビューが行われたのは12月9日だった。山崎代表によれば2日後に大会出場のオファーが届いたという。年内に契約書にもサインをしたが、その後に対戦相手が変更となり、今年に入ってファン・プエルタと59キロ契約で対戦することが確定した。
そして藤田と山﨑代表は1月12日夜に日本を経ち、フライト→乗り継ぎ→フライト→車とハードな移動を経てアブダビのホテルに到着。翌日のプレスカンファレンス後、藤田に今回の試合について訊いた。
――今回はハードな移動だったと聞いています。コンディションに影響はないですか。
「アハハハ。到着した時は眠かったですけど、もう長時間座っていた腰の感じや、寝不足気味なのは解消されました」
――12月のインタビュー時点では、次は年末か年始に試合をしたいと言っていました。その直後にオファーがあったそうですね。
「はい。そのタイミングで大会が開催されることが分かって、数日後に対戦相手の提示がありました。そのあと対戦相手が変わって『えっ!?』とは思いましたけど、それでも試合をしたい気持ちのほうが強くて。対戦相手の変更について動揺はなかったです」
――59キロ契約については?
「まぁ……相手も準備期間が短いので、仕方ないですね。僕もこの体重で試合をするのは初めてで、2キロがどう影響するのかは分からないです。ただ、2キロ分減量は楽です」
――最初に決まった相手はCFFCフライ級王者のプミー・ヌクータで、ヌクータの欠場が決まるとすぐに代替選手を見つけてくれた。それだけ藤田選手に出場してもらいたい、というプロモーター側の熱意や期待もうかがえます。
「スタッフの方も皆、『帰ってきてくれたね!』と歓迎してくれている雰囲気はあります。それとプレスカンファレンスでも、一般のお客さんが盛り上がってくれていて。僕が出た時に歓声が挙がっていたので、現地でも認知されているのかなと思いました」
――では対戦相手、プエルタの印象を教えてください。
「今まで戦ってきたなかで一番実績のある選手です。当初の相手とは構えも何もかも違いますけど、気持ちの面では全然問題ないですね。1カ月前から試合に向けて準備できていたので」
――対戦相手がプエルタに正式決定したのが1月6日、対策練習ができる期間も短かったと思います。
「とりあえず相手の得意なところを頭に入れておいて――という感じですね。まぁ、やるしかないです。今回はいろいろあったけど、強い相手を用意してもらいました。一本かKOか、しっかりインパクトを残します!」
■UAEW57 視聴方法(予定)
1月18日(土・日本時間)
午前0時~ UFC Fight Pass
※前日の同時間帯にはUAEW56が開催される