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【UFC307】ラストファイトへ、カーラ・エスパルザ「長い旅路の終わり。でも楽しむためにココに来た」

【写真】ファイトウィークとは思えない幸せな過ぎる家族の一コマ (C)MMAPLANET

5日(土・現地時間)、ユタ州ソルトレイクシティのデルタ・センターで開催されるUFC307「Pereira vs Rountree」でカーラ・エスパルザが1年11カ月振りにオクタゴンに戻ってくる。
Text by Manabu Takashima

昨年9月に母になったエスパルザが、出産後に初ファイトをテシア・ペニントンと戦う。2度のUFC世界ストロー級王者は何を想い、母としてケージに足を踏み入れるのか。彼女の心境を尋ねたくインタビューを試みると、エスパルザは「この試合が最後」と話し、その心境を語ってくれた。


――カーラ、ZOOMの画面からトレーニングを終えたばかりに見えますね。

「そうね。ホテルの練習スペースで汗を流して、気分は爽快ね」

――少しZOOMに入ってくるのが遅れていたので、てっきり授乳中かと思っていました。

「アハハハ。練習をしながら、ファイトウィークになってもベイビーの世話をしているのは確かね(笑)」

――2022年11月以来のオクタゴンとなりますが、この間には昨年の9月に出産を経験しています。お母さんとなって、ファイトに戻ってきた心境を教えてください。

「最高ね。でも、本当に毎日が目が回りそうなほど大変で。強いファイターと、良き母の両立は大変だわ。でも、試合をするのだからやり切るしかないわよね」

――私の妻は3度出産をして、格闘家ではないですが出産の度に体の具合が変わると言っています。カーラの場合は、何かフィジカルの違いを感じますか。

「そうね、ファイターには細かいケガがつきものだったけど、いうと一晩休むと大丈夫っていうモノも今ではしっかりと体を休める必要が出たかなと思う。それが出産とどれだけ関係しているか、確かなことは言えないけど。私自身の体の変化は見られるわ」

――赤ん坊は泣きたいときに泣いて、時間の理念など吹っ飛んでしまった日々を思い出します。まさに忍耐の日々でした。

「ホントにその通り。ベイビーはベイビーに必要なことを、必要な時に私に求めてくるわ。ただ、私には凄くサポートしてくれる主人がいてくれて。そこは本当に助かっているから感謝の限りね」

――出産を経験すると、メンタルが強くなるということは?

「絶対的にね。何かハードなことがあっても、ベイビーが困難を乗り越えるモチベーションになっているから。この子の存在が私のメンタルを強くしてくれるし、ボディケアにも神経が行き届くようにしてくれているわ」

――その一方で日本の女性アスリートは妊娠を機に、現役を退くというケースが多かったです。

「私がこの子を授かった時、もうキャリアは15年を迎えていて2度のUFC世界チャンピオンも経験していたから、やり切った感はあったの。MMAにおける夢は達成したし、これからはベイビーと共に生きていこうと思ったわ。特にベルトを取り返した時に、はっきりと達成感を感じていたし。私の人生はネクストチャプターに入り、24時間ずっとこの子の母親でいようと思うようになったわ」

――もうベストファイターの座に戻ろうとは思わない?

「ノー。もう自分のキャリアには満足しきっているから、今が引退のタイミング。私は人生の第2章を歩むことにしたの」

――えっ、つまりは今回が引退試合ということですか。

「そうよ」

――スミマセンでした。全く知らなくて。それは……試合前ですが、おめでとうと言わせてください。

「ありがとう(笑)。そう、今が潮時よ。最高のタイミングで、最後の戦いに臨むことができるわ」

――最後にもう一度、母親になってから戦おうと思ったのは?

「そうね……妊娠をして、出産を経験して……でも、区切りをつけたかったのかもしれない。とにかく、土曜日の試合が私にとって最後のMMAになることは間違いないわ。そう、人生の区切りのファイトね」

――試合前からエモーショナルになることはないですか。

「もちろん。長い旅路を終えようとしているのだから。それは感傷的になるわ。でも、私はここに楽しみに来たわけで。息子の前で戦って、グローブをケージに置くまで全力で戦うわ。

もうMMAと一定の距離を置いて、家庭に入る。でも、時々セミナーとかできれば良いわね」

――実は昨年の春にチーム・オーヤマでトレーニングをしていた澤田千優選手が、たった2度だけカーラがトレーニングセッションに姿を見せてくれた時に受けた教えが凄く勉強になったと言っていました。そのカーラの知識をチーム・オーヤマで後進の指導に生かすことはないのかと。

「彼女とのトレーニングセッションは覚えているわ。私も凄く楽しかった。彼女もそうだし、他の選手にも何かを伝えることはできると思う。もちろん、チームメイトの役に立ちたい。役に立てるだろうし。でも、人生のプライオリティは良き母であること。だから常駐の指導者になることはないだろうし、さっきも言ったようにセミナーなんかで私の知識をシェアできれば良いかなと思っている感じね」

――今回の引退試合、カーラが全てを出し尽くしたファイトを楽しみにします。

「試合に出る限り、私のゴールは勝利を手にすること。最後の試合でも自分の手が挙げられるために戦う。テシアはリマッチで絶対に勝ちたいと思っているでしょうけど、今回も私が勝つ――絶対にね。これまで打撃を見せる機会が少なかったから最後の試合で、私のストライキングを見せることができれば楽しい時間になるかなって(笑)」

――素晴らしい意気込みです。引退試合の前にありがとうございました。

「こちらこそ、ありがとう。私の現役最後の声を日本のファンに届けてもらえて嬉しいわ。2010年……私がデビューした年にメグミ・フジイと戦って以来、日本のファンが応援し続けてくれたことは本当に嬉しかった。長い間、ありがとう」

■視聴方法(予定)
10月6日(日)
午前7時30分~UFC Fight Pass
午前11時00分~PPV
午前7時00分~U-NEXT


■UFC307対戦カード

<UFC世界ライトヘビー級選手権試合/5分5R>
[王者] アレックス・ポアタン・ペレイラ(ブラジル)
[挑戦者] カリル・ラウントリー(米国)

<UFC世界女子バンタム級選手権試合/5分5R>
[王者] ラケル・ペニントン(米国)
[挑戦者] ジュリアナ・ペニャ(米国)

<バンタム級/5分3R>
ジョゼ・アルド(ブラジル)
マリオ・バウティスタ(米国)

<女子バンタム級/5分3R>
ケイラ・ハリソン(米国)
ケトレン・ヴィエイラ(ブラジル)

<ミドル級/5分3R>
ロマン・デリツ(ジョージア)
ケヴィン・ホランド(米国)

<ウェルター級/5分3R>
スティーブン・トンプソン(米国)
ジョアキン・バックリー(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
マリナ・ホドリゲス(ブラジル)
イアズミン・ルシンド(ブラジル)

<ミドル級/5分3R>
イホール・ポティエリア(ウクライナ)
セザー・アルメイダ(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
アレキサンダー・ヘルナンデス(米国)
オースティン・ハバート(米国)

<女子ストロー級/5分3R>
カーラ・エスパルザ(米国)
テシア・ペニントン(米国)

<ライトヘビー級/5分3R>
オヴァンス・サンプレー(タヒチ)
ライアン・スパン(米国)

<ウェルター級/5分3R>
ティム・ミーンズ(米国)
コート・マッギー(米国)

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